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モノづくり入門

【第34回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識 
切削工具----その(2) コーティングについて

投稿日時
2026/03/10 16:12
更新日時
2026/03/10 16:17

前回、切削工具の3つのポイントとしてそのうちの2つ、「材質」と「刃先形状」について書きました。今回は残る「コーティング」をみてみましょう。

工具をタフにするには材質が大事ですが、性能向上はコーティングがポイントです。もっとも、非コーティング工具も被削物によって最適で、強靭さなど母材特性を生かした切れ味の鋭さほか、再研磨の容易さが好まれます。つまりコーティングありき、というわけでもありません。

それでも主流は超硬製の7割以上を占めるコーティング工具です。加工の高能率化、工具の長寿命化、耐熱性・耐摩耗性・耐欠損性の向上、難削材&新素材対応などに貢献できるためで、年々、複雑多層構造のものが増え、ナノコンポジットタイプだと、極薄膜の積層で1000層以上になる例もあります。

コーティング層(膜)の生成方法は、化学反応を使う「CVD法」と、母材表面に薄膜を堆積する「PVD法」に2分されます。CVDは母材への密着性に優れ、PVDは刃先の鋭さで優れるとされます。ただこれは一般論に過ぎないでしょう。卑近な例で強引に譬えると「和食に合うのは醤油、洋食はソース」と言ったとして、実際のプロの味付けはもっと凝っており、単純な決めつけが時に意味をなさないのに似ています。

「複雑多層化」するコーティングに関しては、四半世紀ほど前、膜にシリコンを加えた工具が登場し業界で話題になったのを記憶します。前出のナノコンポジットコートもその頃から広がりました。今後も多様なコート材が出そうです。他方、素材の厚膜化でも成果を聞きます。

窒化チタン、窒化チタンアルミ、ダイヤコート…。これらがコート素材です。各素材の詳細はネットで出るので割愛しますが、大事なのは適材適所の活用と、条件最適化でしょう。「メーカーから条件等で推奨値をもらうが、独自で最高効率の条件を出している」の工場オーナーの声もあり、何よりコーティング工具の上手な使い方が大切です。




比較検証——そうなんだろうけど…


小さな切削工具が加工全体の生産性を変えるのであれば、それはもうプライスレスな価値といえます。しかし購入する側は使わないと分かりません。かつては露骨な宣伝もありました。雑駁にいえば切削工具の新製品について、A社はB社製の1.5倍生産性と謳い、B社はC社の1.5倍、C社はA社製より能率30%アップなどと。どの商品が本当に優れているのか?ー苦笑した覚えもあります。チャンピオンデータとの比較でそうなるのでしょうが。ようは嘘でないけど客観評価が困難。ユーザーは知識と情報量を増やし、見る目を養う必要がありそうです。



(日本物流新聞2026年3月10日号掲載)