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モノづくり入門

【第33回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識 
切削工具----その(1) 今どきの工具の形

投稿日時
2026/02/25 14:56
更新日時
2026/02/25 14:59

切削工具を知り尽くせば一生食えると、むかし業界の先輩に言われました。切削原理から材質、刃物の種類、コーティング、被削材と工具の関係...。実際、すべて知悉する人は限られるはずで、知り得れば重宝されそうです。しかし全部学んでも、切削工具は進化中で追いつくのが大変でしょう。

加えて職業としての切削工具使いでは「基礎学」が網羅しないだろう、工具摩耗と切削精度等の関係、近年増加の新素材・複合材料への対応なども知りたいもの。購入する工具の「個体差(ばらつき)」にも注意が要ります。また現場では何より、工具の切り込み深さ・送り速・回転数などの条件が重視されるでしょうし、寿命の見切りや再研磨も…。

などと考えると、何を学び何を当欄に記すべきか悩みますが、現場目線を入れながら今の切削工具の世界をえいやっと、複数回でスケッチしてみます。

まず「差別化」に目を向けます。差別化は業種を超えて共通する勝ち残りのファクターですが、切削工具における差別化は大きく3つ、バイトでもエンドミル・ドリル等においても「材質」、「刃先形状」、「コーティング」だと指摘されてきました。工具材質はかつての特殊鋼主体から超硬金属に移行し、CBN、ダイヤモンド(単結晶・多結晶)工具でも新製品が目立ちます。同じ材質でも粒子を焼き固めるなど、メーカー各社がノウハウを加え違いを出しています。

次に「刃先形状」ですが、すくい角やねじれ角の設定などに差別化要因があり、その延長線上として、不等分割(不等リード)といってリード角を刃によって変えることで切削抵抗を抑える技術も進んでいます。また異形工具と呼ぶ、既存の形を超えた形状のものもあれば、エンドミルで6~8枚刃などの超多刃タイプ、極細径10ミクロン仕様なども出ています。こうした工具の「形」の変化には、工具パスを出すCAM業界も必死に食らいついて対応しており、工具と工作機械、CAM、その他周辺機器が一体で切削加工の進化を呼び込んでいます。次回は「コーティング材」を見てみます。


超硬工具とレアメタル


主流の超硬切削工具はタングステンやコバルトなどのレアメタルでできています。強度・硬度・耐熱性の実現にレアメタルが欠かせないためです。しかし対中関係悪化でタングステン(世界生産量の80%以上が中国)の入手難懸念が浮上。日本は4半世紀ほど前から代替材の開発やタングステンリサイクルに取り組んでいますが、決め手のソリューションは見つかっていません。切る、削る、磨くといったモノづくりの基盤技術が鉱物資源に支えられていることを再認識するとともに、なんとか打開策を開いてほしいと願う次第。





(日本物流新聞2026年2月25日号掲載)