モノづくり入門
【第29回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識
- 投稿日時
- 2025/12/25 16:06
- 更新日時
- 2025/12/25 16:12
機械要素部品について――その(3)――センサー
機械要素編の最終回「その3」として、センサーに注目してみます。
前回までの2回、動力の伝達・変換や、機械運動の支持案内などに使われる機械要素について、平たく機械の「基礎」を支えるものでと書き、ベアリング(軸受)や直動案内を中心にいくつかの機械要素を「森」を眺めるように記してみました。
あらためて機械要素全体を深い森(実に深い森!)に譬えれば、そのなかでとびきり存在感を増す急成長の
「木」にあたるのが、ほかでもないセンサー(感知器)といえるでしょう。

温度、輝度、圧力、スピード、加速度、振動、電流量、位置や距離、物体や人の検知などセンサーの種類と役割はいま枚挙にいとまがなく、機械づくりにおいてQCDすべてのカギになっています。クルマの自動運転などは一面、センサー技術の賜物ともいえるでしょう。今のモノづくりはこうした各種センサーで捉えたデータを共有し「見える化」につなげています。
そういうわけでセンサー市場は急拡大中です。2010年代初めは世界規模で数兆円と言われましたが、現在は複数の公的統計機関や大手の民間調査がセンサーの世界市場を約20~35兆円などと試算しており、これがさらに10年内に40~65兆円規模へ拡大すると見立てています。各調査が対象にするセンサーの種類に違いがあるため、額よりも伸び率の方を注目してください。また需要地をみると、アジア太平洋地域で相対的に高い伸び率が見込まれるなど、需要の裾野も大いに広がってくるようです。
センサーが感知して発信する信号情報(デジタルデータ)は、AIによって精緻に分析され、ある種の法則性を提示したり、高度な自動化や工程最適化につなげたり、機械の診断・予防保全などに活用されるなど、利活用の面においても広がりが見られます。
産業用に限れば、センサーの作り手は日本企業が多く、世界シェアの5割近くが日本製とも指摘されます。モノづくりを支える機械要素の、そのトップクラスの成長株を日本勢がしっかり育てているあたり、頼もしい限りです。
センサー技術どこまで
センサーの種類は様々。いろんなタイプが機械にクルマにロボットにと使われ、そのレベルも様々です。高感度タイプのセンサーは高価なため十分な普及が難しい等の指摘もあり、競争は技術と価格の両面で激化するでしょう。
関心の高いロボット分野では、ハンドにつく新たな「視触覚センサー」なども注目されます。形状にバラつきがあり、柔らかくて掴みにくい惣菜や野菜も、このセンサーをベースにしたロボットハンドで盛り付けが柔軟にできるという、事例が増えています。
(日本物流新聞2025年12月25日号掲載)