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モノづくり入門

【第28回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識

投稿日時
2025/11/28 10:52
更新日時
2025/11/28 10:53

機械要素部品について――その(2)

機械要素部品の2回目の記事として、工作機械を構成する要素部品を見ていきます。

前回、機械要素部品は動力の伝達・変換や、運動の支持・案内などに使われると書きました(実際の定義はもっと多く、細分化もされます)が、これらはすべて工作機械に欠かせず、視点を変えて機械要素部品の全容を知ろうと思えば、多くの要素部品を必要とする自動車か、この工作機械を見ることが近道かと思います。

工作機械は基本、その運動をワークに転写していく機械なので、まず精密な直線運動がキモであり、そのための直動運動案内にはガイド、リニアガイド、油静圧案内、VV 転がり案内などが使われます。次いで運動を変換・伝達するためにボールねじ(回転運動→直線運動)はじめカム、軸、軸受(ベアリング)、歯車、ベルト、スピンドル、チャックなど。また随所に油空圧機器、配管、継手。そして制御系。また工作機械特有のコラムやベッドなど多種の要素部品(装置)が機械の中にひしめいています。

こうした要素部品は工作機械メーカーにとって絶対に欠かせず、慎重に調達(自前もあるが)かつ管理されています。近年はバーコード等を使ったデジタル管理が主流でしょう。ただ調達難に陥るケースもあり、リーマンショック(08年)後の回復期や、工作機械の需要が好調だった2018年頃には、品薄になった要素部品を巡って「争奪戦」が起き、要素部品を欠いて納期回答できないといった現象も数多く見られました。それだけ要素部品は大事なわけです。

もちろん、要素部品を単に組み合わせるだけでは優れた工作機械はできません。キサゲなどをはじめとする各メーカーのノウハウや擦り合わせ技術が必要で、今もノウハウに差別化の源泉があるとされます。

ただ、日本で「機械要素部品」産業が高度に集積されたがゆえ、工作機械産業も世界トップクラスに昇りつめたと断言できるでしょう。機械要素部品メーカーはおよそ剛性・荷重・サイズ違いなどで型式・品番を膨大種揃える必要があり、後発メーカーが出にくいとの指摘を聞きます。技術・競争力・実績ともに優位に立つ日本勢の今後の活躍に期待したいものです。


機械要素部品、民生分野でも


今回、工作機械のなかの機械要素部品をみてきましたが、本文で取り上げた多くの要素部品は民生分野でも活躍の場を広げており、身近な家電、パソコン、玩具などに使われています。直動案内大手T社は自社のガイドを応用し、住宅やビルの免振・制震装置で実績を重ねています。要素部品マーケットはアイデアと実践力次第でさらに広がりそうです。  



(日本物流新聞20251125日号掲載)