モノづくり入門
【第27回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識
- 投稿日時
- 2025/11/10 15:31
- 更新日時
- 2025/11/10 15:35
機械要素部品について――その(1)
当欄では切る・削る・磨く・成形する・結合するといったモノづくりの基盤について、その技術と関係する設備機械類を概観してきました。今回から数回は「機械要素(部品)」について見ていきます。

機械要素(部品)は略して「機素(キソ)」と呼ばれることもあり、ダジャレになってしまいますが、まさに機械づくりの「基礎」になる部品類といえます。動力の伝達・変換や、運動の支持・案内などに使われます。例を上げると正しい直線動作を実現する直線運動案内。力の伝達に欠かせないベアリング、歯車、ベルト、滑車、バネ類。締結で使うねじやリベット。緩衝に使うダンパー。ほか数多くの要素部品がほとんどの機械を、そしてモノづくり全体を支えます。海外製の機械では、ガイド(直動案内)などの主要要素部品を日本製などで統一し、品質を安定させた事例が過去から多くありました。こうした取り組みは今、広がっているようです。要素部品の選定調達に関与しながら、実際の製造は外注するファブレスメーカーも増えています。
今回はそうした機械要素部品のうち、動力伝達を「助ける」ベアリング(軸受)に少し着目してみましょう。市場は世界全体で約7兆円、日本だけでも約4000億円あり、国内市場だと、卑近な例で薄型テレビの出荷額に比肩し、テレビ以上の成長が見込まれます。いわば表舞台に立たない縁の下の力持ちが機械なら、ベアリングはさらにその機械内部の隠れたところに市場があるわけですが、相当に大きい規模です。
中世期の天才レオナルド・ダ・ビンチがベアリングを発案しスケッチしたことが知られますが、その絵のレプリカなるものをみると、素人目には今のベアリングそのものに映ります。
その、古くて新しいベアリングは機械内部にある数多くの軸の回転運動を滑らかにして機械の動きを支えます。外輪と内輪からなるリング形状をし、内外輪の間にあるボール(転動体)が軸の回転とともに回ることで摩擦が軽減され、動力の損失を防ぐ仕組みです(文章では伝わりにくいですが)。また転動体の回転により軸回転の精度も安定します。
部品共通化と要素部品
QCD(品質・コスト・納期)を巡る競争が続くなか、自動車も機械類も「部品共通化」がキーワードの一つになっています。そこでより重要視されるのが機械要素部品。最近取材したアジア系の梱包・包装機械メーカーでは「当社製は直動案内や主要回転軸、制御系が日本製。機械の板金カバーと消耗品は自国製。共通部品をベースに組み合わせによってラインナップもカスタマイズ対応も充実させている」とのこと。
日本の要素部品は、世界でビジネス機会を増やしています。
(日本物流新聞2025年11月10日号掲載)