モノづくり入門
【第26回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識
- 投稿日時
- 2025/10/24 16:19
- 更新日時
- 2025/10/24 16:21
溶接の基本のキ
前号で「結合(接合)加工」を取り上げました。今回は結合加工を代表する「溶接」にフォーカスします。自転車、自動車、造船、飛行機と身近な乗り物はすべて溶接が製造の主要工程にあり、電化製品、住宅機器、住宅など暮らしの中の多くのモノにも溶接は不可欠です。統計を見ると国内の溶接消耗市場は年1500億円水準ですが、溶接の産業界・社会への貢献度はさらに大といえます。物理、化学、電気工学、金属材料学など様々な「学」が、溶接を進化させています。

ただ、部外者が溶接の全体を知るには骨が折れることでしょう。溶接は「融接」「圧接」「ろう接」の3種類がまずあり、それぞれに様々な溶接方法がぶら下がっていて種類が複雑多様です。
ここではメインストリームのアーク溶接をみてみましょう。融接の一種で、アーク放電を熱源として金属を溶融し一体にします。熱は数千℃から場合によって2万℃にもなるそうです。
アーク溶接には手溶接が主流の被膜アーク溶接、半自動・自動溶接に向くMAG溶接、MAGが不得意なアルミなど非鉄金属用途に適したMIG溶接があります。
溶接時にガスを与えて酸化を防ぎ金属を保護することも大事なポイントで、被膜アーク溶接では溶接棒の被膜剤を熱でガス化して保護。MAGやMIGは活性ガスを噴射して保護効果を出しています。また(活性ガスではない)アルゴンやヘリウムの不活性ガスを用いる溶接法にTIG溶接があります。
知っておきたいことは溶接棒や電源棒のこと、トーチのこと、直流・交流のことなど様々ありますが、初歩の「基礎知識」に限定した本稿では「主流はアーク溶接。そのなかの手溶接、MIG、MAG、TIG溶接が不動のレギュラーメンバーとして活躍中」とまず捉えましょう。アーク溶接以外のガス溶接、電子ビーム溶接、レーザービーム溶接なども見落とせない存在ですが。
日本の技術に世界が注目
溶接といえば、自動車生産ラインの両サイドに群生(?)するような多数の溶接ロボットか、逆に一人の職人がお面(遮光マスク)片手に作業する溶接シーンのいずれかが最初にイメージされそうです。ナント、どちらも日本が世界トップの技術です。後者の手溶接では某コンサルが「日本発のユーチューブ溶接技術動画が海外で高い人気、重宝されている」と興奮気味に話していました。本社運営のモノづくり総合ニュースサイト「モノクエ」でもこうした技術動画を紹介しており、ニッチな深いノウハウが語られています。電流の大きさなどの条件設定でヒントを与え、「プールが揺れて少し沈んだら棒を入れて余盛りをだしましょう。裏波は…」などなど。門外漢にはなんのことか分かりませんが。
(日本物流新聞2025年10月25日号掲載)