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モノづくり入門

【第24回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識

投稿日時
2025/09/25 13:14
更新日時
2025/09/25 13:16

金属AMのいろいろ

付加加工について記した前回の最後に「次号は金属AMの種類を概観」などと書き、自分自身やや後悔しています。

というのも多様な金属AM装置が生まれ、「概観」といえど全体を把握して書くのは当欄のスペースからも困難。AIなら瞬時にまとめそうですが、これは記事として反則ですし、そもそも通りいっぺんのことは掲載したくない...。

で、今回はマーケット的視点を少し交え「金属AMのいろいろ」を、ざっくり以下...。

まず金属AMの種類を普及上位からみると(注。学会の分類法とは異なります)、ちょうど大相撲番付表の東西横綱の位置に「PBF」と「DED」がデンと構えます。そのヨコで樹脂材料を扱ってきた「MEX(FDM)」や「MJT(NPJ)」が、金属への対応も進み番付表の文字を大きくしつつある感。それにしても「英字3つ並べりゃいいもんじゃない。分かりづらく、つかみが弱いじゃないか」と愚痴がこぼれそうですが。

気を取り直し、横綱の一人(人間じゃないが)PBF=粉末溶融結合法は金属パウダーを敷き詰める方法で、レーザーや電子ビームを使って焼結・造形します。DED=指向性エネルギー堆積法は、レーザーや電子ビーム、アークなどで金属を溶かして堆積。課題の大物造形でも注目されます。FDM系は樹脂と金属を混ぜ合わせ、後工程で脱脂。NPJ系は金属粉末を高速高圧で吹き付け圧接——など。

他方、金属材料は金属パウダーと溶接ワイヤが主流です。つまり金属AM装置は、それぞれ多くの造形法×多種熱源×多種材料の組み合わせで種類増大中です。さらに切削機能を持ち形状精度を高めるタイプ(積層の都度切削や最終のみの切削)、複数のレーザーで生産性を上げる機種、異種金属の同時造形を可能にしたものなどが注目されます。また材料は溶接用ワイヤが安価ながら、一長一短あって導入には熟慮検討が必要でしょう。

以上から金属AMは作り手も多様。専業、工作機械系、溶接機系、電機系、3D設計関連のメーカーやベンダー。ほかレーザー発振器や各種センサ等をセットアップして販売する会社も出、番付波乱の戦国時代に? 


経験&実績がモノをいう


金属AMの普及には「経験と実績」がモノを言いそうです。例えば歯科医による歯の詰め物は、以前からのCADCAM冠(機械系CADCAMと少し意味が違います)の延長として、今や1拠点で個々の患者にあった数百・数千の金属の詰め物を一気にAM造形する工程が世界の一部で定着しています。他分野でも先進事例の検証を経て、安心・安全に活用できる環境が次第に整っています。逆を言えば、そのための「時間」は必要だったということでしょう。



(日本物流新聞2025年9月25日号掲載)