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モノづくり入門

【第23回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識

投稿日時
2025/09/10 13:28
更新日時
2025/09/10 13:31

付加加工とは

金属を削って形にする切削加工は除去加工とも言われます。穴あけも、切断も研磨も、視野を広げてカンナで木を削る、切り絵、虫歯を取り除
く...も、広義の除去加工といえるでしょう。除去加工はいたるところにあります。

対して付加加工は文字通り付け加えることでモノを成形します。代表するのがAM(アデティブマニュファクチャリング、いわゆる3Dプリンター)です。素材を薄い層にして積層して固め、これを繰り返す(付加し続ける)ことでモノを作ります。除去加工では素材の一部(時に大部分?)を無駄にして目的形状物を削り出すため、エコの対極になってしまいますが、AMだとそういう無駄も理屈上抑えられます。

付加加工が浸透すれば製品形状の自由度も大きく増します。例えば万博のキャラ、ミャクミャク君の複雑怪奇(?)な金属立体モデルなんかも、3Dスキャンデータと金属AMがあれば短時間でほぼ簡単にできるでしょう(著作権侵害に注意!)。削りでやるには時間も労力も必要で、5軸加工機などの設備も要ります。3Dプリンターが普及するにつれ、技術的・コスト的に実現不能だった形状(モノ)がどんどん生まれ、設計の制約も解かれるでしょう。

ただ難点も少なくなく、金属AMの場合、積層した金属(粉)が経年劣化しないか。金属によって素材としての向き不向きがまだある。そもそも粉末金属が高価だ…ナド。こうした点をどう乗り越えるか、注目されます。

AMの利用は金属製造業よりも、民生的な市場で伸びているように見受けられます。樹脂材料の3Dプリンターで小道具をつくったり、棚をこしらえたり。小型住宅などももう珍しいものでなくなりました。また既報のように、鉄道の駅舎をAMで作り(和歌山県有田市)、それも出力後の躯体組立がわずか2時間という世界初の事例も出ています。これは無人の極めて小さな駅舎ながら、AM得意の装飾もついていて、見た目にも「イケてる」感じです。

次号では金属AMを中心に、AMの種類を概観していきます。


ブームと現実、マインドチェンジを


付加加工を代表する本格的な金属AM装置は90年代から有望視され、一時は大ブームにもなりました。しかし試作用から製造用への移行という狙いが広く現実化したかというと、まだまだの感。調査機関は有望性を指摘し続けますが、現場のマインドチェンジが進まないと「期待ほどではない」状況が今後も続くかもしれません。世界と比較した、日本での特に製造業における利活用の低さも気になります。何か起爆剤が欲しい感じです。ただふと気づくと、今はいろんな工場に小型の3Dプリンターが置かれてあることに気づきます。成長期入りは「まだ」か、いよいよ「もう」はじまるのか。



(日本物流新聞2025年9月10日号掲載)