1. トップページ
  2. モノづくり入門
  3. 【第22回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識

モノづくり入門

【第22回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識

投稿日時
2025/08/25 09:22
更新日時
2025/08/25 09:26

射出成形とは

今回は射出成形とは何ぞやの番です。当欄で何度か触れましたが、モノづくりで大量生産のカギを握るのは「型」です。射出成形もそうで、少し前に取り上げた鋳物が、超高温の溶けた金属(通称・湯)を鋳型に流し、冷まして固めて取り出すことで生まれたように、射出成形では、プラスチック素材(等)を溶融して型に注入し、固めて押し出すサイクルにより、プラスチック製品の大量生産を可能にします。小物だとサイクルタイムは10秒くらいでしょうか(モノによって異なるけど)。

この場合、商売として見れば、チャリンチャリンと、まあ一回あたりは小銭ですが十秒周期で利益が生まれ、昼夜稼働させれば大儲けも可能︱といった話になります。余談ながら、本紙協力のカメラマンで何故か被写体を「桜と工業系」に絞っている某氏が、業界のツテを頼りに射出成形機を買おうとしたことがありました(周囲が甘くないよ、と最後止めたよう)。サイクルタイムが1秒短くなれば生産量は上記の場合10%増えるわけで、「高速機で財をなすゾ」とカメラマンは夢見るようにつぶやいていたような…。

閑話休題。射出成形機には油圧式やサーボ式などの種類があり、いまはコントローラで高速稼働を適正制御する方法が主流になっています。材料に流動性を与える工程(可塑化工程)と射出工程を上手に分け、安定性を高める成果も特定メーカーが生んできました。ただ充填時や型締時の圧力加減など難しい設定要件が多く、経験やノウハウは今も問われるようです。カメラマンからの急転身はやはり難しいということですね(記事くどい!)。

射出成形機の市場は読み難い面があります。世界市場の規模試算は調査機関によって異なります。また押出成形機、ブロー成形機などを含めたプラスチック加工機械として統計が発表される場合もあれば、搬送系など前後工程を含めて市場をみる場合も。もっとも成長率としては多くが年率3~5%ほどを見通しており、伸びしろはあると言えます。


隣の芝生はよく見えない?


射出成形機は「生産のための機械」。本来、工作機械など「加工のための機械」とは隣り合う関係にあるはずですが、工作機械・工具などのプレーヤーとは、例外もあるといえ、つくる人も売る人もおよそ顔ぶれが違っているようです。いわば「生産」と「加工」の両市場の間に距離がある。加工機械に特化した展示会で、射出成形機の出品を断るケースも少なくなく、浅学の筆者に言わせれば「隣の芝は互いによく見えない」一面があります。しかし加工→型→モノの生産という流れに沿った連携プレーは大事で、全体高度化には市場の垣根を超えた協業がもっと必要でしょう。

(日本物流新聞2025年8月25日号掲載)