モノづくり入門
【第21回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識
- 投稿日時
- 2025/08/07 15:49
- 更新日時
- 2025/08/07 15:52
鍛造とは
早いもので当連載も20回超え。飽きた人もいらっしゃるでしょうが、もう少し続けますのでどうぞお付き合いのほど。
前々回は鋳造を、前回は鋳造技術の発展形「ギガキャスト」を取り上げました。今回は鍛造です。
かつて通商産業省(現・経済産業省)に「鋳鍛造課」がありました。モノづくりの基盤技術として代表的な鋳造や鍛造(等)の育成・高度化に向け、課題を把握し産業政策を展開する課でした。

鍛造も鋳造も中小零細が大半を担い、かつては3K(きつい、汚い、危険)が言われ、またかつても今も「なりて不足」が課題で斜陽産業のイメージを濃くしています。しかし自動車や建機など今も鍛造技術が必要な産業は多くあり(鋳造もそう)、産業として振興が求められます。
鍛造とは金属を叩いて成形する加工法です。侍映画などで、鍛冶屋が熱して赤くなった日本刀をカツカツ叩いて仕上げるシーンがよくありました。叩くから金属の内部粒子が密着し、鍛えられバキバキの筋肉質になります。名刀も超一級の包丁も、鍛造が名品のゆえんを引き寄せています。つまり金属強度の向上が最大級のメリットです。鍛造は形状の矯正、押出し加工、穴抜き加工、打ち抜き加工等に利用されます。
さて、鍛冶屋は典型的な労働集約型の職業ですが、ハンマーなどで叩く方法(自由鍛造といいます)とは別に、型鍛造では型を使って機械で成形するため大量生産に向きます。完成部品は精度が出て個体差が少なく、内部欠陥(巣)も無い、熱にも圧にも強い部品になりえます。熱にさらされるエンジン回りの部品では、型鍛造による軽量アルミ系部品の採用比率が伸びています。
鍛造は1000℃を超える高熱下で行う熱間鍛造、常温で行う冷間鍛造、熱間と冷間の中間的な温度環境で行う温間鍛造などがあります。想像してお分かりのように、熱が高いと成形しやすいけれど精度を出すのが難しく、温度が低いと完成品の精度は上がるけれど、成形が難しいという二律背反的な違いがあります。
橋本先生
本文で触れた通産省・鋳鍛造課出身の大学教授では橋本久義氏が有名です。現在は政策研究大学院大学名誉教授。何千社もの町工場の現場を視察研究し、著書も「町工場こそ日本の宝」「町工場が滅びたら日本も滅びる」(ともにPHP研究所発行)など多数。本紙取材にも複数回応じ、小生はアフター5で橋本氏主宰の研究会や懇親に何度か参加させていただきました。氏は何度も「人を大事にする日本には圧倒的優位がある」旨、過去から説いていますが、今の時代だからこそ反芻したい言葉だと思います。
(日本物流新聞2025年8月10日号掲載)