1. トップページ
  2. モノづくり入門
  3. 【第20回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識

モノづくり入門

【第20回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識

投稿日時
2025/07/25 10:13
更新日時
2025/07/25 10:18

次代のスタンダードに? ギガキャスト

当欄で前回、鋳造を取り上げましたが、今回は鋳造技術の延長線上に突如現れた話題の「ギガキャスト」を見てみましょう。

数十~百点以上もの部品を一度の鋳造で製造する技術が「ギガキャスト」です。2010年代にテスラがEVボディの一部の一体成形を可能にする技術を確立し、時を経て他国のカーメーカーなどが追随、いまは設備プレーヤーも中国ほか世界で増えています。100年に一度の変革期とされる自動車産業を象徴する革新的製造法です。EV台頭とともに注目されたがゆえ、EVやや失速気味のいまは話題もひと段落の感がありますが、国産ギガキャスト機だけをみても、ダイカストマシンに強いUBEマシナリー、芝浦機械が、ここ型締力で4000~1万2000トンレンジの機種をラインナップで生産するなど動きはむしろ本格化しています。ちなみに先鞭をつけたテスラは当初「メガキャスト」と呼んでいました。ギガはメガの1000倍なので、それだけグッとビッグに期待値も膨らんでいる? もっとも、ギガでよりビッグを目指すといった単純なことではありませんが。

ギガキャストでは一部に破損や部品の不具合が出た場合、部分修理で済まない場合も出てやっかいと言われます。また精度公差の部材・部品による違いにどう対応するか。それ以前に設計が文字通り型にはまって斬新さや意匠面でマイナスとの指摘も。現場に近い研究者・技術者からは「修理やメンテナンスを考慮し、今後は一体成形を追うのではなく、対象に応じ分割製造するのがベター」の意見も聞かれます。

マシンは超大型だけに運ぶのも大変です。雑駁に言えば横に長い23階建てのビルを運搬するイメージ。陸送では当然バラして運送しますが、それでも大きいので警察への事前申請が必要でしょう。海上輸送も船の手配や輸送に膨大な手間と費用がかかります。いや、それ以前に工場にそもそも受け入れスペースがあるのか。無いなら建てるのか。港沿岸部の大工場なら納入メドもつきやすいが土地はあるのかなどと一筋縄にいきません。


大きく薄い肉


ギガキャスト機は話題とはいえ、まだ業界はマシン個々の性能を評論する段階に至っていないようです。ただギガキャストを活かし「より強く・より軽く」を実現しようとの狙いはユーザー業界にあり「大面積薄肉対応の高速射出性能が問われる」と聞きます。また機械性能だけでなく、現場のインテグレーションも重要ですが、先行する中国でも「任せられる会社は中国全土に12社しかない」と現地主要メーカーから昨年聞きました。競争本格化はこれからのようです。



(日本物流新聞2025725日号掲載)