モノづくり入門
【第16回】いまさら聞けないモノづくりの基礎知識
- 投稿日時
- 2025/05/23 14:06
- 更新日時
- 2025/05/23 14:10
成形加工と型
素材を加熱や加圧などを通じ特定形状にすることを成形加工と言います。

成形加工には鋳造、鍛造、射出成形、プレス成形、圧延、押出しなどがありますが、特徴としてほぼすべてで「型」を利用することがポイントです。溶かした金属を型に流し込んで成形する鋳造。同様に溶かしたプラスチックを型に流し込む射出成形。素材を型にあてがい圧力をかけて目的の形状を導くプレス成形や板金の曲げ。また型(類)で叩いたり強く押し付けて成形する鍛造。型が各種成形に対し、公約数的に絡みます。
ビジネスの視点で成形加工の全体をみると、特に日本の場合は、プレス成形はプレス業が、鋳造は鋳造業が担当と専業が多く、特筆点として「型」もまた独立系の多くは金型製作専業であり、成形加工はほぼ行なっていないという構造です。成形機を設置する独立系金型工場もありますが、多くは「テスト成形のために設置した」と返ってきます(取材経験から)。
翻って台湾などアジア地域では、まず型を作り、型を売ることはあってもむしろ、成形工程で利潤を上げようとするプレーヤーが多いと指摘されます。日本の場合、型の発注者(つまりお客さん)が成形業であることが多く、日本の型業者は顧客のビジネス領域に踏み込ま(め)ないという、ある種、住み分けが続いています。この日本の構造を技術的に見た場合、型から成形への流れの中で、全体最適においてディスアドバンテージがあるということも取り沙汰されます。
成形はおよそ量産で用いる加工法です。型を使うので大量生産ですべての加工物に一定の品質を与えられます。ただし量が見込めないと仕事になりません。例えば100均ショップに並ぶプラスチックの石鹸箱。型費用はモノによりますがざっと100万円以上でしょう。つまり〇万個以上売れないと採算に乗りません。また型製作には時間もかかり、型種により定期メンテナンスも必要です。付言すれば型では作れない形状も多くあります。
ほか成形不良や樹脂漏れなど、成形業にも課題は多いようです。このため現在は成形に適した設計の見直し、流動解析、各種シミュレーションなどを精緻に実践するとともに、中量産品用の型製作をはじめ、肉盛り・部品交換などのメンテナンスをAMで行う試みも一部で進んでいます。次回からは成形加工についていくつか種類別にみていきます。
多数個型と大量プラ成形
型からの成形品を説明する際によく引き合いに出されるのが身近な「たい焼き」です。しかし離型性の悪い成形材(例えばパッキン用ゴムなどは離型時間が長い)だと、通常一個取りの「たい焼き」スタイルでは満足な量が得られず、型は「多数個取り」構造が主流になります。屋台の「タコ焼き」なら一発50個くらいでしょうが、工業用品だと千個取りも目にします。いかに早く効率よく成形品を大量に生むか、挑戦が続きます。
(日本物流新聞2025年5月25日号掲載)