検証! 物流自動化の最前線
- 投稿日時
- 2025/09/29 09:51
- 更新日時
- 2025/09/29 14:01

「国際物流総合展2025 第4回 INNOVATION EXPO」が9月12日までの3日間、東京ビッグサイトの東展示棟で開催された。前回展を上回る国内外から486社・団体が出展し、5万2856人が足を運んだ。ソリューションベンダーやスタートアップなど変化激しい企業からの要望で、国内最大級の物流専門展示会「国際物流総合展」のスピンオフ展示会として始まった経緯もあり、最新の技術やソリューションが多数並んだ。
単一から複合へ
昨年の国際物流総合展でも一部見られた、様々な自動化ソリューションを複合的に見せる展示が本格化した。特に倉庫全体のつながりを意識した自動化提案が各所で見られた。
その筆頭が、会場で最大ブース(90小間)を構えた野村不動産。前面に押し出した「Techrum(テクラム)」は、2021年に始めた企業間共創プログラムで、パートナー企業122社のうち16社と共同で、物流倉庫の自動化を総合的に見せた。
なんつねは野村不動産ブースで段ボール自動開梱機を紹介した
テクラムを通したオペレーションの効率化に向けた提案件数は25年8月時点で200件を超え、23年の10件から急増している。同社担当者は「自動化・省人化による物流課題解決に向けた成果を着実に積み上げている」と実感を話す。
ブース内に展示したソリューションも各社単独で展示するのではなく、メーカーや機器のジャンルの垣根を越えたデモンストレーションを意識した。
ユーシン精機のデパレタイザーと連携したなんつねは、米・ROBOTICA製の段ボール自動開梱機「ABOT」を披露。食肉スライサーメーカーとして知られる同社だが、物流現場などにも製品の拡販を進めている。
「時間当たり最大450箱、デュアルラインなら850箱処理可能。元々は食品工場の課題解決のために世界中を探し回った。最も性能の良かったシステムのため食品以外にも当然対応でき、他の業界からの引き合いが増えている」(同社担当者)
柔軟性の高いソーターシステム「t-Sort」が現場で高い評価を受けるプラスオートメーションも、入庫から出荷までを想定した自動化ソリューションを披露。昨年取り扱いを始めた自動倉庫「AirRob(エアロボ)」を中心に据えながら、かご台車を自動で搬送するAMRや可搬重量1500㌔グラムのAGF(無人搬送フォークリフト)などを出展。「倉庫全体の自動化を提案しながらも、『現実味』は意識した。現場に合わせて提案できるのが当社の強み。T-Sortで感じていただいている安心感はお伝えできたのでは」と話す。
プラスオートメーションの自動倉庫「AirRob」
棚搬送ロボットで知られるギークプラスも、「PopPick」だけでなくAMRやACR(ケースハンドリングロボット)を組み合わせて使用する「RoboShuttle」などを出展。最大12㍍の高さまでロボットが入出庫でき、2つのケースを収められるダブルディープ仕様のため保管効率を飛躍的に高めることができる。小型のAMRと組み合わせることで、人の作業と比べて最大8倍の生産性を出すことが可能になる。
ギークプラスはACRとAMRを組み合わせたシステムを展示
様々なブースで見られた中国・ZIKOO社のパレットシャトルの代理店を務めるPhoxterも、パレットシャトルやカゴ車搬送用AMR、協働ロボットなどに加えて、国内初となる生成AI機能を搭載した独自のAMRを連動して見せた。生成AI搭載のAMRは、ロボットにトラブルが発生した際、ログ収集や手順の提示、保全通知を自動で支援する。「稼働停止時間を抑え生産性向上できる」という。今後はエージェント機能なども搭載予定。
手前に写るAMRがPhoxterが手掛けた生成AI搭載モデル
再注目を受けるソリューションも
WMSとBIツールを組み合わせた倉庫効率化システム「Optify」を初披露したオカムラは、ブース中央に自動倉庫システム「Rotary Rack H」を出展。1978年の発売から国内で1000機以上の納入実績を誇る歴史の長いシステムだが、「近年、ロボットを活用したシステムが多いため、逆に新しいと感じていただける。性能もコストもロータリーラックで十分な場合も多く、引き合いが増えている」と同社担当者は話す。
オカムラが1978年以来、刷新し続けてきた自動倉庫システム「Rotary Rack H」。再注目されている。
国内で700社、2000システムにデジタル仕分け装置を納入してきたタカハタ電子にも、作業ミスの低減や作業の標準化に悩む企業から問い合わせが増えているという。
「物流人材が減っている一方で、仕向け先は増えたり複雑化している。何とか業務改善できなかとお声かけいただく」(同社 物流システム部 営業グループ 参事 板垣 直志 氏)
同社は現場に最適なシステムの構築を得意とする。そのため、これまで収めてきたシステムには2つとして同じものがないという。会場ではデジタル表示器を専用レールにワンタッチでつけ外し可能な新製品などを披露し人垣ができた。
タカハタ電子は様々なデジタル仕分け装置を披露した
物流の2024年問題対応
トラックドライバーに対して労働規制が適用された「物流の2024年問題」に端を発し、物流現場の働き方の見直しが急速に進んでいる。特に、今年度から来年度にかけて物流関連2法の施行が進められることで、より厳格な現場対応が求められるようになりつつある。中でもトラックドライバーの荷待ち・荷役作業時間の短縮とトラックへの積載効率の向上は喫緊の課題として、各種ソリューションの現場展開が急がれており、会場では様々な提案がなされた。
トラック荷役を一気に終わらせてしまおうというのがJoloda Japanの自動積載ソリューション。倉庫のバースに専用のコンベヤシステムを設けることで、トラックへの積み込みを2分ほどで終わらせてしまう。トラックだけでなくコンテナなどにも対応し、既に国内でも飲料メーカーと日用消費財メーカーで活用が進んでいる。同社担当者は「国内はウィングタイプのトラックが多い点が障壁となっているが、導入企業では圧倒的な生産性を実現している。パレット以外にも変わったところで言えば石材などにも対応したことがある。是非、荷役作業にお困りの方は問い合わせいただきたい」と話す。
国内ではパレット輸送が進む一方で、海外から届くコンテナ内は荷物が上から下までぎっしりと詰め込まれている場合が多く、デバンニング(積み下ろし)工程は自動化が難しい領域の一つだ。国内でも自動化に取り組む企業はあるが、実用段階に至っている企業はまだない。一方、「世界の工場」である中国では、逆にコンテナへの積み付け(バンニング)作業の自動化ニーズが高まっており、そこで活躍しているのがXYZ Roboticsの「Rocky One」だ。会場では据付け型パレタイジングロボット「RockyLight SE」と組合せて、コンテナからのバン/デバンニング作業の自動化を披露した。同社担当者は「荷役作業の削減が喫緊の課題であると共に、きつい労務内容に人手も集めにくくなっているため、足を止めていただく方が前回展より明らかに増えた」と手応えを話す。
XYZ Roboticsのデバンニング装置「RockyOne」
荷役作業や庫内作業の効率化は自動化システムを入れればある程度解決する可能性がある一方で、積載効率の向上は各社の物量が限られていることや復路で引き受ける荷物がないなど、一社単独では向上する余地がほぼないといった課題がある。そこで鈴与が提案するのが在庫型食品協働配送の仕組みだ。鈴与物流センターと輸送網を活用し、同じ配送先を持つ企業の荷物を物流センターで在庫をして、適宜荷合わせして配送するというもの。製品の引受や配送も同社の輸送力を使用するため、他社との面倒な調整などをする必要がない。北関東や東海、北陸地域をカバーすることで、国内最大の消費地である東京への輸送力不足に対応したい考えだ。「既存のお客様だけでなく新規のお客様からの問い合わせも多く、関心の高さを強く感じている」(同社担当者)という。
メーカーと一緒に掴んだ物流改善と新ビジネスの萌芽
日本出版販売 物流企画部 企画課 尾形 萌花 さん
尾形さんの背後に見えるのがラピュタロボティクスの自在型自動倉庫「ラピュタASRS」
「自動化は導入して終わりではない」
国際物流総合展2025の会場でそう話したのは、日本出版販売(日販) 物流企画部 企画課の尾形萌花さん。昨年10月に開所した同社の物流拠点「N-PORT新座」(埼玉県新座市)に、ラピュタロボティクスの自在型自動倉庫「ラピュタASRS」導入を主導した一人として話した。
ラピュタASRSは2023年8月に発売された製品で、導入としては日販が2例目。しかし、91台のロボットを稼働させる大規模導入は初めてで、受け入れ側の日販も自動倉庫の導入は初と、難しい挑戦だった。
「最初のハードルは社内の説得でした。実績のない機械に対する社内の不安は大きかったです。ですが、一緒に成長していける『伸びしろ』をラピュタさんに感じお願いしました」
尾形さんは選定理由をそう語る。しかし、稼働直後には社内からの指摘が現実のものとなった。ネットワークの不良だけなく、原因不明のシステム停止が連続し、計画していたスケジュールは大きく後ろ倒しになった。
「最終的にフル稼働できたのは半年後でした。その間は社内から苦言が出ることもありましたが、ラピュタさんに常駐で対応いただくことで乗り越えることができました」
現在、1時間当たり300行の安定出荷を実現。導入前と比べ生産性は3倍、保管効率は2倍まで高めた。
「現在は目標である400行の安定的な稼働に向けて取り組んでいます。進めていく中で、機器側だけでなくオペレーション側にも改善余地があると分かってきたので、ピッキング方法の見直しなど細かな修正を日々行っている最中です」
N-PORT新座ではラピュタASRSなどを活用することでできたリソースを活用し、3PL事業の展開も進めている。尾形さんは「将来的にはラピュタASRSをもう1システム導入し、新事業で活用していきたいです」と笑顔で語った。
ピカコーポレイション、高まる物流現場の労働安全ニーズ
見積依頼〜納品まで1週間の作業台
工場関連の来場者から注目を集めたPモジュール
4年ぶりに国際物流総合展に出展したピカコーポレイションは、「物流展は製造業の方も多く来場されると聞いていた。実際、工場関係の方に多く立ち寄っていただき製品をPRできた」(同社担当者)と出展の手応えを話す。
イチ押しは「Pモジュール」。現場に合った作業台をWEB上で選定、図面確認、見積依頼できるシステム。6種類の作業台から必要なタイプを選択し、寸法や手すりの有無などを選べば、すぐに図面を作成・確認することが可能。従来、特注品は同社の社員が現場に訪問し詳細な打合せを行ってから見積書を作成、納品していたため、1・5~2カ月ほどの時間がかかっていた。Pモジュールなら見積依頼から納品までを1週間ほどに短縮できる。
「食品や薬品工場でよく使っていただいていますが、自動車やクリーンルームなどでも採用が広がっており、会員数は右肩上がりです」
本展では「安全対策意識の高まり」を感じたようだ。「トラックドライバーや現場作業者の高齢化が進んでいるため、安全対策より高めていきたいという来場者もいた」とし、労働安全衛生規則の一部改正によるトラック荷役作業時の墜落・転落防止措置に適合する「トラック昇降ステップ 手すり付き」などを提案したという。
サトー、台紙レスラベル対応の自動印字貼付機
ノンセパ対応で重さや外径も縮小できる
物流現場の自動化を推進するサトーは、台紙レスラベル「ノンセパラベル」に対応した自動印字貼付機「NLR4000SR-T」を初披露した。従来の台紙ありラベルに比べて1.2倍の巻き枚数を実現し、ラベル交換頻度を約17%削減。交換時間も従来の3分の1に短縮し、作業者負担を軽減につなげたい考えだ。
「最大毎分40枚の処理スピードは維持しながら台紙レス化に対応している。台紙を廃棄する手間や環境負荷も抑えられる」(同社担当者)
展示会場ではゼブラ社のOCR対応スキャナ、プラスオートメーション社の小型仕分け装置と連携し、バーコードの読み取りからラベル貼り付け、仕分けまでの自動化デモンストレーションを行った。
シャープ、中量棚レイアウトそのままで導入可能な自動倉庫
ロボットとケース収納部は分離できる構造となっており、処理性能も追求できる
近年、ユニークな物流機器開発に取り組むシャープは、今使用している中量棚をそのままのレイアウトで自動倉庫化可能な「スリムスタッカー・ロボットストレージシステム」を出展した。
「これまで倉庫を自動化する場合、大規模な改修が必要な自動倉庫か人の活用が必須のピッキングアシストロボットしか選択肢がなかった。本製品はその間を狙った」(同社・宮﨑篤史参事)
本製品は通路幅900ミリのレイアウトに対応しているため、既存の設備やレイアウトのままピッキング業務をGTP(Goods to Person)化できる。10センチの高さからハンドリングでき、棚の一番下の段にもアクセス可能。荷姿もロボットアームが吸着できる面を用意すればよく、オペレーションをほぼ変えることなく導入できる。
寺岡精工、薄さ5ミリから自動計測可能な採寸計量器
寺岡精工は今年発売予定の採寸計量器「SQ-1200」を初出展。荷物を置くだけで三辺データと重量を1秒ほどで計測できる。600ミリ角の荷物まで対応し、物流センターやオフィス内でのサイズ計測を自動化する。
物流現場の人手不足に対しても、本製品を使用し荷物の受付業務をセルフ化することで、集配施設の無人化やコンビニのセルフレジ対応を実現できるとみる。
「荷物を受ける台をメッシュ化することで、最小5ミリの高さの荷物も測ることができる。近年需要が増えているメール便は、高さの計測が難しいことに加え、規定のサイズを超えると発送者のもとに戻す必要がある。間違いのない計測で手戻りを削減し、ラストワンマイル配送の効率化に貢献したい」(同社担当者)
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【インタビュー】Exotec Nihon 代表取締役 アジアパシフィック地域社長 立脇 竜 氏
(日本物流新聞2025年9月25日号掲載)