【EXPO2025】大阪・関西万博特集
- 投稿日時
- 2025/03/10 10:50
- 更新日時
- 2025/03/10 13:45

再びモノづくり大国へ生まれ変わる【reborn(リボーン)】
大阪・関西万博がいよいよ4月13日から10月13日の184日間、大阪・夢洲(ゆめしま)で開催される。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」だ。
今特集で日本物流新聞社は、中小企業・スタートアップ企業の技術を世界に発信するリボーンチャレンジを中心に、万博を通じて日本のモノづくり業界の底力を世界に発信し、世界各国と協調しながら再び世界をリードする大国へとリボーン(生まれ変わる)するための、ヒントを掴むべく取材を進めた。
日本物流新聞/大阪・関西万博特集に寄せて
2025年日本国際博覧会 大阪パビリオン推進委員会会長/大阪府知事 吉村 洋文
いよいよ4月13日に夢洲で、大阪・関西万博が開幕します。期間中は2800万人以上の来場を見込んでいます。今回の万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。「いのち輝く未来社会」とは何か、という人類共通の問いに対して、約160の国と地域がそれぞれの技術を結集させ未来を切り拓いていく、まさに「未来社会の羅針盤」です。
会場では、世界最大級の木造建築物「大屋根リング」が皆様をお迎えするとともに、各参加国や企業等のパビリオンが建ち並びます。
中でも、地元自治体として出展する「大阪ヘルスケアパビリオン」では、「REBORN」をテーマとして、産学官民が一体となり、オール大阪の知恵とアイデアを結集させ、来館者がわくわくしながら明るい未来を感じることができるパビリオンをめざしています。
パビリオン内にある「リボーンチャレンジ」では、万博に向けて新技術開発などに取り組む、大阪の中小企業・スタートアップが、毎週入れ替わる形で出展します。会期中、毎週異なる26のテーマで400を超える企業が展示や体験を通じて、その技術力や魅力を発信します。
参画する多くの企業の皆様には、大阪ヘルスケアパビリオンで、素晴らしいアイデアや最先端の技術を披露いただき、我々大阪の中小企業・スタートアップはここにありということを、ともに世界の多くの人々に広めていきたいと考えています。
ぜひ多くの皆様に大阪ヘルスケアパビリオンにお越しいただき、驚きや発見に満ちた感動を味わっていただくとともに、イキイキと明日に向けた一歩を踏み出せる「未来の都市」を体験していただきたい。次代を担う子どもたちには、五感を通じてリアルに体感してほしいと願っています。
また、大阪・関西万博には、パビリオンのほか、空飛ぶクルマをはじめとした未来社会ショーケース事業、連日開催されるナショナルデーイベントなど、見どころが盛りだくさんです。開幕はもう間もなくです。ぜひ一度だけでなく何度も万博会場に訪れたいと思っていただけるよう、関係者一丸となって全力を尽くします。
大阪ヘルスケアパビリオン
2025年大阪・関西万博で、開催地自治体である大阪府・大阪市は、産学官民が一体となり、オール大阪で、「大阪ヘルスケアパビリオンNest for Reborn」を出展する。
出展参加するにあたってのテーマは「REBORN」、このテーマには“「人」は生まれ変われる”、“新たな一歩を踏み出す”という意味を込めている。また中小・スタートアップ企業の技術を世界に発信するリボーンチャレンジも実施する。
オール大阪の知恵とアイデアを結集させ、訪れた人々が「いのち」や「健康」、近未来の暮らしを感じられる展示を実現するとともに、大阪という都市の活力・魅力を世界のより多くの人々に伝えていく。
■リボーン体験ルート
大阪ヘルスケアパビリオンでは「ミライの都市生活」を展示テーマに掲げ、様々な展示を展開。メインとなる展示が「リボーン体験ルート」。ここでは、来館者の心血管や筋骨格、肌、髪などの健康データをもとに生成される「ミライのじぶん」(アバター)が、ミライのヘルスケアやミライの都市を通して生まれ変わることを体験できる。
リボーン体験ルートを構成する各展示は、大阪ヘルスケアパビリオンの協賛企業が技術・アイデアを結集したもので、健康、医療、美容、食から住宅、教育、交通まで、多彩に展開する。体験時間は約60分で、事前予約が必要なルートだ。
既に昨年10月に完成したパビリオンの建物の内部では現在、3月の完成をめざして展示工事が進められている。
また、万博会期は半年間だが、大阪の魅力やホスピタリティとともに世界に発信するこの取組みは、一過性のイベントで終わらせることなく、ハードとソフトの両面でレガシーとして後世に承継し、大阪の成長と経済発展につなげることをめざす。
【海外パビリオン】マレーシア館
ソンケット織り表した竹のファサード
多様な文化とビジネス機会を提供
完成したマレーシア館
2月末日、マレーシアパビリオン(延床面積2516.53平方メートル、3階建て)の建設を担当した大成建設からマレーシア政府への引き渡しが行われた。
マレーシア館のコンセプトは「調和の未来を紡ぐ」。人と自然、テクノロジーが絡み合いつながる様子を表現した。隈研吾建築都市設計事務所による印象的な竹のファサード(正面の外観)は、「伝統的なソンケット織りの美しさを映し、職人技と現代の持続可能性を融合したもの。マレーシア館に足を踏み入れれば、豊かな文化遺産や技術の進歩、SDGSの取り組みなどあらゆる感覚に出会えます」とマレーシア投資貿易産業省(MITI)Ellyza Mastura Ahmad Hanipiah万博事務局シニアディレクター (以下同)は紹介する。
「1階ではマレーシアの多様な伝統と料理、芸術を体験でき、上層階では持続可能なエネルギーやバイオ・テクノロジー、スマート・シティ開発における画期的なイノベーションをお見せします」。大きな見どころの一つは「調和の樹」。先住民の職人の手で複雑に編まれた葉で飾られたインスタレーションが、多様性に富むマレーシアの統一を象徴する。
このほか、竹と油ヤシの幹による建築やソーラーパネル、自然通風による換気などでマレーシアの持続可能性への取り組みを表した。
マレーシア館の引き渡しが行われた(左はMIDAグラムムザイリ所長、右は大成建設関西支店 執行役員 足立憲治支店長)。
「伝統と技術が共存する方法を示し、文化と環境の遺産を守りながら発展することを万博のマレーシア館を通じて伝えたい」と語る。
「マレーシアはインタラクティブな展示やパフォーマンス、料理文化を通じて、包括性と協力のメッセージを発信し、各国が協力し合うことを奨励しています。万博のは 新しいつながりを築き、世界的な行動を促すプラットフォームとして機能し、調和のとれた未来というマレーシアのビジョンと一致しています」
■日系企業のビジネス機会創出の場として
「スマートリビングやエネルギー移行、持続可能な農業などの主要産業への投資とコラボレーションを促進します。マレーシアのグローバルビジネスハブとしての役割も強調したい」とも語る。
マレーシアの多様な文化が織りなす当パビリオンでビジネス・マッチングやセミナー、ポケット・トークなどのビジネスプログラムを毎週開催するなどビジネス機会にも力を入れる。
「電気・電子(IC 設計およびウェーハ製造)、特殊化学品、航空宇宙、医薬品、医療機器などの付加価値でイノベーション主導となる分野、特に先端材料、電気自動車、再生可能エネルギー、炭素回収・利用・貯蔵の4つの成長分野に焦点を当てます。テクノロジーの枠に留まらず、マレーシアの文化的豊かさとホスピタリティの面からも多様性、団結を感じていただきたい」
また、MIDA(マレーシア投資開発庁)による日系企業向けのイベントも行われる。
4月16日(水)にはビジネスセミナーとビジネス・マッチングを開催。「午前中は最大40人を招待してセミナーを、午後からは海外投資先にマレーシアを検討されている日系企業に向け、MIDA担当官と一対一で質疑応答していただけるビジネス・マッチングを開催します」(MIDA大阪・ 石田みすず投資担当官)。
【リボーンチャレンジ】中小・スタートアップの技術を世界へ
■たまゆら
出展期間 9月2日~8日
ヨシ素材が紡ぐ未来のユニフォーム
万博スタッフのユニフォームに採用されたヨシ素材の帽子を紹介する営業企画室・岡本明グループ長
たまゆらは「未来のユニフォームプロジェクト ユニフォームの力で社会を変える」と銘打ち、ヨシ繊維を用いたユニフォームと、世界的なデザイナーであるコシノジュンコ氏とのコラボで、サステナブルかつデザイン性の高い独自のユニフォームの魅力を発信する。
万葉集にもその風景が詠まれた琵琶湖のヨシの群生地。古くからヨシは葦簀(よしず)やかやぶき屋根に使われてきたが、建築資材の近代化により使用量が減少。しかし放置すると景観悪化・水質悪化につながるなど課題があった。作業服やユニフォーム販売を手がけるたまゆらは現状に着目し、ヨシを原材料にした生地を次世代ファッションとして活用。生育過程でCO2を取り込むヨシの再利用によりカーボンオフセット効果も見込める上、生地は独特の光沢やほどよいコシで独特の味わいがある。
「世界的デザイナーのコシノジュンコ氏も将来性やそのポテンシャルを評価し、昨年自身のコレクションでメンズスーツにヨシ生地を採用。また、滋賀県では9月から開かれる国スポ・障スポでユニフォームとして選ばれた」(営業企画室岡本明グループ長)などすでに注目度が高い。
同社は本出展のほか、ヨシ素材を活用した帽子2700人分を万博の運営スタッフユニフォームとして協賛。材料となるヨシは滋賀県高島市と協力して行った「収穫プロジェクト」で集まったボランティアなど人の手で刈り取ったもの。万博終了後は回収し、軍手や建築資材へとリサイクル、あるいは地元での活用やレガシーとなる残し方を検討している。
また、万博に出展する発酵食品のレストランに同社のユニフォームが採用されるなど、出展期間以外でも同社の取組みを目にする来場者も多いはずだ。
■ベッセル
出展期間 5月27日~6月2日
空飛ぶクルマの整備工場 工具で貢献
初期企画案。ここからブラッシュアップされたものが展示される
ベッセルは空飛ぶクルマの未来整備工場(2035年)で働くメカニックの整備作業を想定し、「整備に必要な工具を自動で運び込んでくれるツールキャビネット」と「作業手順や不備を指示してくれるセーフティーゴーグル」「作業環境に合わせて体温調整や作業負担を軽減してくれるアシストウエア」をデザインしたCG映像と、ツールキャビネットのコンセプトモデルを展示する。現在は引き出し型のキャビネットが主流で、使わない工具も含め大量に収納し、そこから必要な工具を探している。ツールキャビネットは空飛ぶクルマの機体データとリンクしており、修理・点検に必要な工具をピックアップし作業者に随行。ツール収納部がせり上がりしゃがまずにピックアップできる。機体をスキャンし外観で修理が必要な箇所を作業者に知らせる機能を付与したバリエーションもある。
同社企画部の長田吉生氏は「2035年に整備作業がロボットに完全に置き換わるとは思っていない。我々は工具メーカーであり、人が使う工具で如何に作業者負担を軽減するかを考えた」と話す。「ツールキャビネットに入っている工具は、現在我々が販売しているもののほか、将来のコンセプトモデルも。動くツールキャビネットも『ここまで考えたのだから実用化したい』との声もあり、AMR(自律走行搬送ロボット)の知見は我々にはないので、実現にはどこか専門企業と協働することになるが、開発の可能性もある」とする。
同社は、11社と共同展示となる。「我々のブースが真っ先に来場者を迎える位置にある。我々が通常出展する展示会は目的をもって来られるが、今回はそうではなく『何か面白いものはないかな』と来られるので興味をもって足を止めてもらうことが重要。真っ先に目につく我々のブースで興味を持ってもらい、他の10社へと誘導したい。ゆえに時間をかけて、見ごたえのあるブースにブラッシュアップしている」と意気込む。
■EX-Fusion
出展期間 5月13日~5月19日、5月20日~5月26日
レーザー核融合が導く理想の未来
「無尽蔵のエネルギーを得た社会で、人は何を作るのかが見てみたい」とEX︱Fusionの松尾一輝社長は言う。仮にエネルギーが使いたい放題なら、どんなにエネルギー効率が悪い物でも躊躇なく作れるようになるかもしれない。そんな夢の社会を実現する鍵こそ、同社が研究を進めるレーザー核融合だ。万博ではこの技術と、そのレーザー技術を今のモノづくりに転用した場合に何が起こるのかが老若男女だれにでもわかりやすい形で展示される。
レーザー核融合は超高出力のレーザーを使って核融合反応を起こす技術だ。3㍉程度の小さな燃料ペレットを容器内に射出し、ハイパワーのパルスレーザーの圧力でペレットを1億℃以上に加熱・圧縮することで核融合反応が起こる。理論上、1㌘の燃料から石油8㌧の莫大なエネルギーを生みだすことが可能で、燃料に使う重水素は海水からほぼ無尽蔵に取得可能、トリチウムも核融合で自給自足できるため理想的には冒頭のように電気が使いたい放題になる。CO2も排出せず、自然条件にも左右されない究極のエネルギーを、人類は手に入れることになる。
核融合発電は原子力発電とよく比べられるが、原子力は核分裂反応が連鎖的に起きるため制御が必要であるのに対し、核融合は外部からの圧力がなければ核融合反応が起こらない。地震など有事の際も安全性が高く、原子力のような高レベルの放射性廃棄物も出ないなど原子力とは別物の安全性の高い発電方法とされている。
レーザー核融合炉の商用化は2040年までに達成される見込みだが、レーザーは汎用性が高い技術のためそこに至るまでの過程で様々な産業分野へ応用が可能だ。核融合のためには10㌔ジュール10㌹の超高出力レーザーを10㍍先の高速で動く3㍉の球に1㍈の精度で追尾して照射する必要がある。高出力のレーザーを精緻に制御する技術が、例えばモノづくりに革新をもたらす可能性がある。
ハイパワーのレーザーは従来、制御が難しく発火の恐れもあることからレーザー加工機では加工できるワークの厚みやサイズが限られていた。同社のレーザー技術を使えばウォータージェットでしか切断できなかったCFRPの切断が可能になり、車両のような大型のワークを「ぶつ切りにする」ことも十分可能になる。加工面の品位も制御で高められる。
さらに出力を上げれば、宇宙デブリの捕捉・除去にも使えるかもしれない。レーザーをデブリに照射しその反射で所在を掴み、さらに高出力のレーザーでデブリを減速させ大気圏内に落下・除去する「人工流れ星」の研究も進んでいるという。
松尾社長は「これは想像の域ですが、飛行中のドローンにレーザーを照射して無線給電することも可能になる」と話す。ドローンの飛行時間は大幅に伸び、活用範囲が大きく広がるだろう。さらには将来的に宇宙空間で太陽光発電を行う場合に、レーザーを照射して地上で受け止めることで電力を受け取ることも可能になるかもしれない。こうした様々な副産物が、レーザー核融合という究極のゴールの手前に控えているのだ。
万博では5月13日~5月19日、5月20日~5月26日の2回に分けて展示を行う。前半ではレーザー核融合を身近に感じられるような、誰もがワクワクするエネルギーの未来をわかりやすい形で提示する。後半ではレーザー技術をモノづくりに応用したレーザー加工機を用いて、動画などを通じ今の製造業にレーザーが貢献する様子を来場者へ伝える。どこをどう切り取っても夢がある、まさに万博を象徴するような展示となりそうだ。
■大阪ラセン管工業
出展期間 10月7日~13日
最先端の「柔らかい金属」が生む未来
金属製フレキシブルチューブ「ワームフリーフレックス」が万博で大幅進化する
1912年創業と日本最古となる、フレキシブルチューブとベローズのメーカーの大阪ラセン管工業が表現するのは、「未来体験」そのもの。曲げたり伸縮させたりできる金属製フレキシブルチューブ、ベローズはガス配管や半導体製造装置、水素産業などあらゆるところで使われているが、同社は高い柔軟性と耐久性をもつ「ワームフリーフレックス」と、「世界最小径」という内径1・6㍉の「マイクロミニフレックス」を万博出展に合わせさらにブラッシュアップ。
「医療」「宇宙」をそれぞれテーマとし、医療には「超極細フレキシブルチューブ」、宇宙は「畳むことができるベローズ」を新たな提案製品として開発し、来場者にお披露目する。
フレキシブルチューブにおいては、管が細くなればなるほど、医療分野における用途が広がり、さらなる技術革新につながる。「超極細フレキシブルチューブ」は従来の最小内径1.6㍉からさらに半分ほどの内径を目指し、内視鏡やカテーテルでの活用を見込む。壁2面と床1面をモニターにしたVR空間を用意し、血管のなかをフレキシブルチューブが通り抜ける映像で体内でのカテーテルの動きを表現。
ミクロの世界から一転して、畳めるベローズの活躍が期待される壮大な宇宙空間へ映像が続く。「畳めるベローズは使わない時は伸縮して小さくなり、使うときは伸ばせる。宇宙輸送における省スペース化と自由に長さを変えてご使用いただける利便性を目指して開発を進めている」(小泉星児社長)と話す。
VR空間特有の没入感で、来場者の印象に強く残る仕掛けを用意する。
小泉星児社長
関西で支える万博・協賛メーカー
アイコム、衛星通信対応の地震監視装置
災害時の重要なデータ通信を確保
サプライヤーとして貸与する衛星通信トランシーバー「IC-SAT100M」。複数の端子で接続可能で音声やデータを送れる。
総合無線機メーカーのアイコム(大阪市平野区)は「運営参加 サプライヤー」として協力、衛星トランシーバー 「IC―SAT100M」を貸与する。IMV(大阪市西淀川区)による地震計と連携し、衛星通信対応の地震監視装置を3基、会場に設置する。
「地震発生時に地震の性質などを測定する地震計は二次災害の抑制に活用されるが、大規模災害で通信障害が起こる可能性がある。当社の衛星通信トランシーバーなら地上のインフラがダウンした場合でも重要なデータを送信できる」と地震対策として確実な通信体制を提供する。
ボタン一つで複数の相手と通話できる衛星通信トランシーバーは、緊急時でも速やかに重要な情報を伝達できる。上空約780㌔の低軌道を周回するイリジウム社の衛星ネットワークを使うため音声遅滞が少なく、リアルタイムな通信ができるのも特長だ。
「砂漠や海上といった過酷な状況にも対応できる衛星通信トランシーバーで、音声だけでなくデータを送れることも万博を通して知ってもらいたい」(宣伝広告部・松田和也チーフメディア広報)
リングスター、対馬のオーシャンプラスチックを公式ストアの買い物バスケットに
公式ストアに協賛する、27㍑(右)と16㍑の2サイズのバスケットを手にする、唐金𠮷弘社長(右)とマーケティング室・唐金祐太室長
頑丈なプラスチック工具箱のパイオニア、リングスター(奈良県生駒市)は、長崎県対馬市に漂着した海洋プラスチックごみ(オーシャンプラスチック)を使用した「対馬オーシャンプラスチックバスケット」を協賛品として提供する。持ち前の耐久性や機能性へのこだわりで生み出した「再生プラスチックなのに長く使える」買い物バスケットだ。漂着したオーシャンプラスチック(特に年間2万個以上が漂着するというポリエチレン製の青いポリタンク)を10%配合しつつ、独自のリブ構造などで従来製品と同じ耐荷重を実現。「ひっくり返しても360㌔の耐荷重があります」(マーケティング室・唐金祐太室長・以下同)。ハンドルを内側に倒せば同サイズのバスケットを中身が入ったままスタッキングできる。
海に一度流れ出たオーシャンプラスチックは汚損しており、回収からリサイクルまでのプロセスに時間とコストがかかるため再利用のハードルが高い。同社は「プラスチックを扱うプロだからこそ『正しく向き合う』」姿勢で、これまで約832㌔の海ごみを削減。「海洋プラスチックごみが発生すること自体が問題で、再利用で使用量を増やせば解決、ではない。海洋プラスチックごみの現状を知ってもらうために作った製品」と話す。
大阪万博/トピックス
山本金属製作所、工作機械がAMRで移動する未来
リボーンチャレンジで展示
工作機械が移動する未来の工場を表現した
山本金属製作所は機械加工やFSWのデータ化を推進する「MULTI INTELLIGENCE」や、クーラントの状態をモニタリングする「COOL-i」などで知られる。また、工作機械CNCと小型計測機器を接続し、データ収集とフィードバック制御を行うソフトウェア「Advanced Control」も展開。座標情報や負荷情報を同時に収集し、高度な加工分析や閾値に基づいたフィードバック制御を可能にすることで、加工プロセスの最適化に貢献する。
同社は現在のスマートファクトリーをより進化したものをリボーンチャレンジで展示したい、との思いでコンセプトを練った。「現在は工場の中を、ロボットを載せたAMRが動き回り、ワークや工具を運んでいく自動化が浸透しつつある段階だ」(担当者)とし、その先の世界として、工作機械がAMRに乗って移動する世界を想像した。工作機械が動けば、工場のレイアウトが自由自在に変えられ、多品種少量の最適生産が叶うという。
同社の新商品でエンジニア教育ツールの小型工作機械「ARTizerno」をベースにAMRや小型精密計測機でその世界観のコンセプトをコンパクトに表現する。このような未来の工場が実現するための課題は「工作機械を自由にレイアウトできる世界では、どの配置が最適な生産に向くかのシミュレーションが重要になる」(同)とし「職人さん頼りだった加工を見える化してデータを蓄積して分析するというのは当社が現在取り組むストロングポイントであり、未来の工場でも生かせるのでは」という。
デザインにもこだわっている同社。「ARTizerno」も美大出身の社員が機械のデザインもてがけており「当初、外装の曲面部分の加工で線がはいってしまっていた。デザイン上どうしても滑らかにしてほしくて無理を言った。また機種名の掘り込みも、ロゴが映える深さに調整した」という。展示機の細かなデザインへのこだわりにも注目があつまりそうだ。
Osaka Metroの大型EVバス、運転者を必要としない自動運転車(レベル4)目指す
Osaka Metroは、大阪・関西万博開催期間中の来場者輸送を担う舞洲パークアンドライド一部区間で、国内初(同社調べ)となる一般道における大型EVバス(=写真)での自動運転車(レベル4)の認可を、2月18日に取得した。
同認可は、道路運送車両法に基づき、運転者を必要としない自動運転車(レベル4)として、国土交通省近畿運輸局から認可を受けるもの。今後、道路交通法による特定自動運行に係る許可、道路運送法による事業計画変更認可申請の認可を得ることで、万博期間中のレベル4輸送を目指す。
ケンミン食品、小麦アレルギーの人でも食べられるお米のラーメン
射出成形金型企業の協力で四角い形状に
焼ビーフンで知られるケンミン食品。小麦アレルギーでラーメンが食べられなかった人も含め「すべての人に美味しいラーメンを」をコンセプトにした「未来のラーメン」を大阪・関西万博に常設出店する。ビーフンは押し出し式で麺線が丸くなる。押し出し式でラーメン独特の食感を生む四角形状を作り出すには精密加工ができる射出成形金型の加工企業の協力が不可欠だった。
スープも麺もグルテンフリーの「黄金の鶏油しょうゆラーメン」(=写真)が「⼤阪・関⻄万博」にお⽬⾒えする。ラーメン職⼈・⼤⻄益央氏が率いる、ボストン「Tsurumen」。同店の名物である王道の醤油ラーメンを軸に「宮崎地頭鶏の清湯(チンタン)」ならではの滋味深さを追求した一杯となる。
■父の夢を自分の夢として
仮に四角いダイスを作って押し出しても、当初は四角い形状だが押し出し直後に角が取れて丸みを帯びてしまう。四角い形状を保つダイスは、誰もやっていなかった。精密加工ができる射出成形金型の加工企業に依頼してついに完成したという。
高村祐輝ケンミン食品社長は「父である二代目社長の高村一成は1955年生まれで、前回の大阪万博に思い入れがあった。いつか万博にケンミン食品を出したいと夢見ていた。父の願いを思い出し、また大西益央氏の『すべての人に美味しいラーメンを』との理念を世界に広めるきっかけになると出展に至った。親の夢と自分の夢を叶える場にしたい」と話した。
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【インタビュー】ダイヘン 技術開発本部 インバータ技術開発部長 鶴田 義範 氏(EVワイヤレス給電協議会 事務局長)
【インタビュー】りそな銀行 法人・プレミア戦略部部長 小山 泰志 氏
(日本物流新聞2025年3月10日掲載)