マテハンメーカー4社が導く省力化の最適解——「人を守る経営」を支える
- 投稿日時
- 2026/03/24 11:33
- 更新日時
- 2026/03/24 12:55
【座談会】をくだ屋技研×大有×オムニヨシダ×アムンゼン
人手不足の深刻化や働き手の多様化を背景に、マテハン機器に求められる役割が変わってきている。完全自動化の実装が未だ限られる中、現場では「いますぐ楽になる」省力化機器への関心が再び強まりつつある。一方で、『スペシャルな人材』の減少を受け、標準機だけでは解けない課題も増えてきた。現場を支える機械とは何か。マテハン機器メーカー主要4社の経営層が、市況、製品戦略、協業、今後の方向性を語り合った。

特長ある製品でつながる
――物を「運ぶ現場」で活躍するマテハン機器を主に手がける4社にお集まりいただきました。得意領域はそれぞれ異なりますが、現場改善に共に取り組むケースも多いと聞いています。
近藤(浩太郎・アムンゼン) 私どもが得意とするのは、空気の力で重量物を吸着・持ち上げて、持ち上げたものをXYZ方向に動かす装置「イージーリフト」です。ただそれだけでは現場の課題の一部しか解決できません。その前後には上下階への移動や投入といった工程があり、そこにはそれぞれ得意な会社さんがいます。互いの製品が組み合わさることではじめて現場全体が楽になります。例えば、オムニヨシダさんとは最近も冷凍コンテナから精肉を取り出す現場でご一緒していますし、大有さんとは粉体の投入工程などで連携させていただいています。をくだ屋さんの製品は、もはや現場で見かけないことがないと言ってよいほど広く現場に浸透しているので、言わずもがなです。
道家(隆行・オムニヨシダ) 当社主力の垂直搬送機は、上下階のモノの流れを担っています。近藤さんがおっしゃるように横の動きや積み替えとなると、各社さんの力が欠かせません。をくだ屋さんの製品は当社の工事現場でも長年使わせていただいていますし、大有さんからは垂直搬送機の引き合いをいただくなど、販売面でもご協力いただいています。当社単体では入り込めなかった現場に、こうしたつながりで入れていただくことも少なくありません。
市原(浩一・をくだ屋技研) 当社はキャッチパレットトラックをはじめ、「運ぶ」ことに特化した製品が中心です。ただ、皆さんがおっしゃるように、現場には運ぶ前後にも必ず別の課題があるものです。搬送した先でアムンゼンさんのイージーリフトで荷下ろしをする、オムニヨシダさんの垂直搬送機を経由して別の階に搬送するなど、各社さんとは自然な形でつながっています。

「水」で動く、世界初のパレットトラック。をくだ屋技研の「パステルシリーズ」は、作動油の代わりに約70%が水で構成される水系制御液「エネスイ」を採用。万一の液漏れ時も海洋汚染を最小限に抑え、不燃性で人体にも安全
また、当社の製品は壊れにくいことが強みで、ありがたいことに長年使い続けていただけるのですが、そうした信頼関係の中でお声がけいただく協業形も中にはあります。大有さんには長年、当社の油圧シリンダーをリフター系機器に組み込んでいただいています。そうした部品レベルのつながりが発展して、今では共同で新しい製品を開発するところまで来ています。
宮永(恭佑・大有) 当社は特型(特殊機械)のメーカーでありながら、他社さんの製品を一緒に提案・販売する商社的な役割も担っています。例えば粉体の現場で考えると、固まった原料をほぐす工程は当社のブレーカが担い、それを運ぶのはをくだ屋さん、上の階へ搬送するのはオムニヨシダさん、パレットからデパレタイジングするのはアムンゼンさん、という形でそれぞれが得意な「点」と「点」をつなぎ、全体がよりうまく動くようにしていく。今日お集まりの皆さんとは、そうした形で日頃からお付き合いさせていただいています。
景況感、25年は快晴、26年は晴れ時々曇り
――そうした協業が広がる背景には、現場の効率化をさらに一歩進めたいというニーズがあるのではと推察いたします。近年は物流の2024年問題などもあり、省力化への関心は高まっていますが、実際の引き合いや受注状況はいかがでしょうか。
近藤 物流の2024年問題は世の中で大きく騒がれましたが、正直なところ騒いだ割には案件化していないというのが実感です。問い合わせは確実に増えました。ただ、受注として見ると前年並みの微増にとどまっています。
――受注につながりにくい理由は。
近藤 皆さんまだまだ試行錯誤されている。何をするにもお金がかかるわけですから、どこにどれだけの人材、お金を投入するのかというところを悩んでおられる。例えば、トラックドライバーの荷待ち・荷役時間の削減に向けて関心の高い、パレ/デパレタイジング工程やデバンニング作業の省力化ついて考える時、お客様がまず最初に食指を伸ばすのは完全な無人化や自動化です。ここの領域は、新興企業や海外メーカーも含め、多くのプレーヤーがさまざまなソリューションを提案し、現場でのテストも盛んに行われています。しかし、いざ実装しようとなるとコストが高すぎたり、技術面のハードルが残っていたりして、適用できる現場が限られる。でも、現場の改革は進めないといけないとなると、次の選択肢として現場を確実に楽にするイージーリフトなどに再び目線が向けられる。足元はまさにそういう段階だと見ていますし、26年はそこがさらにはっきりしてくるのではないかと思っています。
――道家さんはいかがでしょうか。
道家 主力の垂直搬送機については、物流倉庫の新設ラッシュを追い風に、今期も非常に忙しくさせていただいています。一方で、近藤さんがおっしゃった通り、パレ/デパレタイズやデバンニングを中心に、これまであまり省力化の取り組みが進んでこなかった領域についても、引き合いが増えてきたと感じる1年でした。とりわけ、規制の強化などを受けて、現場ではパレットの活用が非常に進んでいて、その運用にパレット交換機「パレスルー」の導入はかなり進んでいます。当社・奈良第二工場にあるデモ機でのテストの引き合いなども増えていますよ。
――具体的にどのように使われているのでしょうか。
道家 一口にパレットといっても、輸送時に使うものと倉庫内、特に自動倉庫で使うものは同じではありません。紛失リスクや回収コストを抑えるために、輸送時はレンタルパレットやワンウェイパレットを使いたい一方、自動倉庫側では一定程度の耐久性が求められるからです。そうなると、どこかでパレットの入れ替えが必要になるわけですが、大量に積替えが発生する現場もあり、パレスルーへの関心が高まっているというわけです。
――26年度はいかがでしょうか。
道家 主力の垂直搬送機については今期ほど楽観視していません。建設業界での働き方改革や資材高騰の影響で、建設コストが大きく上がり、新設計画の見直しや遅れが出ています。なので、設備投資を控える動きが一部で出てくる可能性はあります。その分、パレスルーやデバンニング装置「エクステナー」など、垂直搬送機以外の領域をしっかり伸ばしていく必要があると考えています。
――市原さんと宮永さんは現況をどう見ていますか。
市原 我々も市況そのものは堅調だと見ています。ただ、単純に「省力化ニーズが旺盛」というわけではなくて、既存設備を活かしながら小回りの利く改善を求める案件が増えている印象です。当社にも自動化やロボット化の相談は寄せられますが、よくよく話を聞いてみると「今の現場をどう続けるか」といった緊急性の高い案件も多いです。その際、自動化設備やロボットなどは導入までに時間がかかりますし、古い倉庫や工場が多い日本ではそもそもそうした設備が入れられない場合もあります。そういう意味では、設備導入を考える上で技術や価格だけでなく「すぐ効く=即効性」が重要なポイントになっていると思っていて、当社のように現場に入れやすくすぐ使える製品を持つメーカーにとっては、26年も引き続き追い風であると見ています。
宮永 近藤さんや市原さんがおっしゃられたように、無人化やロボット化への関心は高いと感じていますが、実際にはそれが適している現場とそうでない現場があることが、少しずつユーザー様の側でも見えてきつつあると思っています。当社のお客様には、セル生産方式で物を作るところが多く、ライン生産のように全体を連続して自動化するのが難しいケースも少なくありません。ですから、一度ロボット化を検討してから、最終的に「やはりまずは現実的なところから始めたい」と当社の製品に戻ってこられることも多いです。そうしたこともあってか、24年度は過去最高の業績でしたし、25年度も例年以上の業績で推移しています。

大有のフレコン解砕機『ハードブレーカ』。最大1000㌔クラスのフレコンを全自動で粉砕できる
――26年はいかがでしょうか。
宮永 26年の滑り出しは、ここ2年の勢いと比べると若干出足が鈍い印象はあります。ただ、悪いというわけではなく、引き合い自体は継続している。むしろ、お客様の目線はより現実的になってきている印象です。そうしたニーズに対して、市原さんがおっしゃるようにすぐに効く機械を提案できるかどうかが、これからますます重要になるのではないかと思っています。
人を守る経営へ、マテハンで変える
――皆さんのお話を聞いていると、マテハン機器の役割が単に現場を効率的に回すことだけではなくなってきているように感じます。市原さんは何かお考えはありますか。
市原 人手不足が深刻化する中で、人材の採用や定着、安全配慮も含めて、いわば人材戦略が企業の経営戦略において重要性が増していると感じています。その際、マテハン機器は現場で物を運ぶ価値だけでなく、「重い」「きつい」「危ない」作業を人から機械へ置き換えるといった価値の提供にも寄与しているのではないでしょうか。高齢者、女性、外国人材など働く人の幅が広がる中で、負荷の高い作業を残したままでは人材は定着しません。私は「省力化=人を守る経営」だと考えています。つまり、マテハン機器の活用を通じた省力化は、企業の人材戦略を支える基盤となりつつあって、単純な投資対効果だけでは測れなくなってきていると考えています。
――「人を守る経営」という言葉は象徴的ですね。
市原 ええ。弊社は創業以来、特別な資格がなくても誰でも扱える、シンプルで壊れにくい、現場が混乱しない、そういう機械を大切にしてきました。派手ではないかもしれませんが、誰でも扱える機械を入れることが、結果として現場を守り、企業の競争力にもつながっていくのだと思います。
宮永 今のお話は本当にその通りだと思います。これから先も人手不足は続くわけですから、「人がいない」と嘆いているだけでは仕方がない。人がいない中で、どう人材を配置して、どう現場を回すのかを考えること自体が、これからの企業経営の戦略の一つになっていると思います。
その意味で、現場にマテハン機器を入れることが、単に一工程を効率化するだけの意味ではなくなってきている。危険な作業を減らす、作業負荷を軽くする、少ない人数でも回せるようにする。そうしたことを通じて、経営側が「現場をちゃんと見ていますよ」「守ろうとしていますよ」というメッセージを発するためのツールにもなる。マテハン機器の活用が人材を定着させるための投資であるという意味合いは、これからさらに大きくなるのではないでしょうか。
道家 そうですね。我々のパレスルーやエクステナーも、今いらっしゃる社員の方に長く働いてもらうための投資として導入いただく側面も実際にある。宮永さんがおっしゃったように、企業にとって一生懸命社員のことを思って動いていますよという意思表示は重要になってきていると我々も感じていて、そうした要求はさらに高まると見ています。

オムニヨシダのパレット交換機「パレスルー」。AMRとの連携なども模索する
――デバンニング作業は特に過酷だと聞きますね。
道家 夏場になるとコンテナの内部は50℃近くなる場合もあります。従来の環境のままでは誰もやりたがらないわけです。だからといって、ほぼバラ積みなので自動化も難しい。現段階では、環境を改善するしかないわけですが、その一つの解が当社のエクステナー。コンテナ内に自走式の作業台車が入り込むことで、従来バケツリレーのようにして荷物を搬出していたデバンニング工程に必要な作業人員を大幅に削減できる装置です。ロボット化だけでなく人での移載も楽になるので、これまでも作業負荷低減にも貢献してきました。しかし近年はさらにその側面が強まり、スポットクーラーを組み合わせた猛暑対策や、アムンゼンさんのイージーリフトを組み合わせ重量物搬送のさらなる作業負荷低減などにも関心が高まっています。以前よりも従業員の労働環境の改善につながるような活用方法が模索されていると感じています。
近藤 以前は、現場がどれだけ大変でも、設備投資の判断をする側が「人でやった方が安い」とコストだけで判断してしまうことも少なくありませんでしたね。でも今は、そういう時代ではなくなってきています。作業負荷の高い現場では、人が採れない、採れても続かない。最悪の場合、トラブルになる可能性さえ出てきています。そうなると、宮永さんがおっしゃったように、マテハン機器は単なる設備ではなくて、採用や定着、労務リスクへ対応するためのツールとして見ないといけなくなる。
実際、当社の装置を導入いただいたお客様でも、経営者が社員を守ろうと「腰痛対策」の一環として導入を決めていただいたケースがあります。大きな事故がなくても、無理な作業は従業員の身体に積み重なっていきます。そうした「見えにくい負荷」まで経営者が気にする時代になっている。マテハン機器メーカーもそうしたことを考慮に入れて開発・提案していくことが、これから求められていくことかと思います。
市原 今も人手を伴う現場は動いているわけですから、そこをどう素早く楽にしていくか。この視点が、これまで以上に大切になっていると思います。
アシスト機能付きに高ニーズ
――省力化に対する考え方を変える必要があるということですが、実際に今売れている、ニーズが高まっている商品について教えてください。まずは道家さんから。
道家 垂直搬送機以外のところで言うと、先ほどから話に出ているパレスルーです。物流施設などだと、1日に何十パレット、何百パレットと積み替えるのはごく普通にあります。それをこれまでは派遣の方などにやっていただくのですが、1日8時間その作業を続けるのはかなりしんどい。そうすると人材が定着しないですし、集まりづらくなります。さらに、人件費も上がっているので、機械化に積極的なマインドになっています。似たような現場は全国各所にあるので、1台入ると、同じ様な物を扱う別の拠点でも入れようなど、横展開も含めて好調です。人から機械に置き換えようというニーズは、これからも少なくないと思っていて、我々としても力を注いでいます。
近藤 そうですよね。結局は人でやるしかないと言われてきた工程で、もうさすがに続けられないと機械化・省力化を検討いただくケースが増えています。先ほどから話題に挙がっているパレット関係やデバンニング作業など、工場や倉庫の出入口付近の工程は特にそうです。昔から「何とかしたい」と言われ続けていたけれども、なかなか本格的には動かなかった。ところがここにきて、さすがにもう現場が回らないと引き合いが増えています。オムニヨシダさんのエクステナーも、まさにそういう背景の中で必要性が高まっている製品だと思います。
――アムンゼンさんも独自でもコンテナ内に入って作業ができる商品を用意していますよね。
近藤 そうですね。以前からソリューションとしては用意しており、提案もしてきました。しかし、これまで話をしてきた現場理解の醸成に時間がかかったことに加え、意外かもしれませんが「電源」が当社製品にとっては高い導入障壁になっていました。一般的なコンテナ内には電源がないですし、倉庫側にもフォークリフトを充電する場所にしか電源が無くて、そこは遠くて使えないなど、どんなにツールが現場にマッチしていても使えない現実がありました。そこで、バッテリー駆動式のデバンニング装置「イージーデバン」を商品化したところ、「それならば」と結構引き合いをいただいている。ここは、これからも伸びていきそうだと手応えを感じています。

アムンゼンのデバンニング装置「イージーデバン」
宮永 搬送の周辺に課題があるというのはまさに近藤さんがおっしゃる通りです。搬送を楽にしたいという話で現場に入ってみると、その前後にも問題があってそちらの方がむしろ深刻な場合が多々あります。当社のフレコンバックブレーカや袋体ブレーカは、そうした現場課題から開発した製品です。
――現場にはどういった課題があったのでしょうか。
宮永 従来、フレコンバックや袋体に入っている原料をほぐす作業は、人がバットで叩いたり、フォークで落としたりして何とかしていました。しかし、これは危険な作業が伴いますし、若い男性やフォークマンがいないと作業が進まないなど、属人性も高くなってしまっていた。これではまずいよねという現場の声から開発しました。やっていることは点での課題解消だったのですが、ここを機械で安定的にほぐせるようになると、その前後の搬送や投入工程も機械化しやすくなり、全体がスムーズに動き始める。提案次第で、現場の機械化・省力化が一気に進むのもマテハン機器の強みですね。
――市原さんはいかがでしょうか。
市原 当社でいま一番伸びているのは、やはり電動車です。電動アシスト付キャッチパレットトラックやアシスト付き油圧式昇降台車「プッシュキャデ」、AGV・AMRなどを含む多種多様な電動化領域が25年は盛り上がりました。その理由はもちろん作業負担の軽減や効率化の観点もありますが、先ほど話をした働く人が変わってきているということが大きいと思います。高齢者、女性、外国人材など、現場で働く人の幅が広がる中で、従来の手動式のキャッチパレットトラックだけでは対応しきれない場面が増えてきたのではと見ています。

をくだ屋技研のアシスト式油圧昇降台車「プッシュキャデ」
――確かに、アシスト関係の製品は展示会などでもよく見かけますね。
宮永 当社でもアシスト関係のニーズは高まっていますし、重要だと捉えています。従来、当社製品は外付けユニットを付加する形でアシストに対応してきましたが、需要の高まりを受けて、ナブテスコ社のアシスト車輪を組み込んだ製品群を開発しました。このアシスト車輪は、同社の車いすの技術に由来しており、一般的なアシストと比較した際に、安全性と操作性が高いのが特徴です。今年から販売しており、弊社のほとんどの車輪付きの製品に付けることができます。
ここがひとつ重要なポイントで、例えばドラム缶を持ち上げ、反転し、内容物を投入・撹拌する機械は従来、移動は作業者の力に頼っていました。しかし、200キロや300キロのドラム缶を保持したまま移動する場面もあり、現場には大きな負担がかかっていました。こうしたアシストの非適用領域にも活用を広げられると見ています。
――アシストが必要になる領域が拡大していく。
宮永 これまでは「誰かが扱える」ことが前提でしたが、これからは「誰もが同じように扱える」ことが求められる時代になりつつあります。今後、製品開発を進めていくうえでも、この視点は非常に重要だと考えています。

大有のドラム缶運搬回転機「ハイリフト」のアシスト車輪搭載モデル
近藤 当社もアシストに関しては注目しています。旋回式(ジブクレーン)のイージーリフトの場合、アーム先端部分での作業はしやすいのですが、根元での作業になると横方向の移動に重さを感じるという課題があります。既に、回転軸のところにトルクセンサーをつけてアシストするといったことは考え始めていますが、制御が簡単ではないのでまだ実現はできていません。しかし、今後の開発で力を入れていくのは間違いなくこうした部分になると思っていて、ただ重量物を楽に持てるようにするだけではなくて、もっと自然に扱えるようにする、そうしたところまで技術を突き詰めていきたいですね。
市原 当社はいち早くこの領域に取り組んできたため、ノウハウはある方だと自負しています。近藤さんが悩まれているように、結局アシスト機能だけ載せても、全ての人にとって扱いやすいとは限らないです。実際の現場では、ほんの少し押し出しが軽くなるとか、切り返しがしやすくなるとか、そういう細かな差が実は効いてくる。アクセルを入れたら力強く前に進むだけでは、怖くて使えません。特に女性や高齢の方、経験の浅い方が使った時に、「これなら自分でもいける」と思っていただけるよう、メーカー側でしっかりと制御を作り込むことが、結果として現場人材の裾野を広げることにもつながると思っています。アシスト技術は無人化や自動化などの派手な技術ではないかもしれません。しかし、人が主役の現場を支えていくにあたって、大本命技術の一つだと思っています。人と機械が真の意味で協調し、ハイブリッド型で現場を運営していくために、製品ラインナップだけでなく、技術をさらに磨いていきたいと思っています。
――道家さんはこうしたアシストの話を受けていかがでしょうか。
道家 皆さんのお話を聞いていて、機械を使って現場をいかに楽にしていくかが改めて重要になっていると思いました。当社の場合、アシストそのものを前面に出しているわけではありませんが、パレスルーやエクステナーなど、これまで人が何とかしてきた工程をしっかり機械で支えていく。その積み重ねが、結果として現場の人材課題の解消にも寄与するのだと思います。
また、市原さんが広い意味での電動化へのニーズが高まっているという話がありました。当社でも、昨年夏ごろから、奈良第二工場でAMRをパレスルーやロボットと連携して動かすデモンストレーション展示を始めました。これまでも、AMRと当社の垂直搬送機を連携して、上下階の搬送を一体で自動化したいという問い合わせはありました。実際に機械を改造して対応したこともあります。こうしたニーズに対し当社からも提案できるよう、AMRの取り扱いを始めました。
――AMRは自社製ですか。
道家 いえ。AMR自体は購入品です。当然、ソフト設計・開発・据付・試運転調整などは全て当社でできる体制は整えています。既に引き合いはいただいていて、今後成約していくものも出てくるのではと期待もしています。他にもアーム型ロボットを活用したカゴ車への積み付けや様々なメーカーと手を組んでシステムアップする提案などでも実績が出てきており、少しずつオムニヨシダが垂直搬送機以外のところもやっているということを知っていただけるようになってきたのではないかと感じています。将来への種まきだと思って、いただいた仕事を着実にこなしていきたいと思います。
コラボレーションが物流・製造の現場を変える
――今日お集まりの皆さんは、物流・製造現場の改善に各社特長のある製品づくりだけでなく、そうした製品をつなぐことが重要だとお考えです。改めて、各社の連携が重要であるとお考えの理由を教えてください。
宮永 まず、世の中が大きく変化している今、現場課題をスピード感を持って解消していくには、メーカー同士の協業が大きなテーマになると思っています。そうした中で、当社の役割というのは申し上げてきたように、マテハン機器を「点」として提供するのではなく、点と点を「線」としてつなぎ、時には「面」として工程全体まで考慮に入れながら、設計・提案していくことだと考えています。今日お集まりのメーカー様とも、例えば、オムニさんの垂直搬送機とコンベアでパレット積みされた原料を搬送し、をくだ屋さんリフターで荷下ろしを行い、キャッチパレットで移動し、アムンゼンさんのイージーリフトでデパレタイズする。その後、当社の投入機で原料を供給する、といった一連の提案を日頃から行っています。これにより、お客様は改善の選択肢や幅を大きく広げ、より現場に適したソリューションを実装しやすくなります。我々としても、製品単価を上げざるを得ないこの時代に、価格に見合う、あるいはそれ以上の価値を提供し、お客様に選んでいただくためにも、こうした連携を重視しています。
近藤 本当にそうですね。協業というと、仲の良いメーカー同士で一緒にやりましょう、という話に聞こえるかもしれませんが、実際にはもう少し実務的な意味合いが大きいと思っています。現場に入って話を聞くと、最初に見えていた困りごとだけでは済まず、話がどんどん広がっていくことは結構あります。また逆に、当初は大きな構想だったものが、予算や現場条件を見て、もっと小さく、もっと現実的な解に絞った方がいいとなることもあります。その際、メーカー同士が繋がっていると、途中で広げるのも縮めるのもやりやすい。
市原 提案のスピード感も変わってきますよね。当社がオムニさんの領域も、大有さんの領域も、アムンゼンさんの領域も全部自社で賄おうとしたら、ものすごい時間がかかりますよね。皆さん特長のあるいい製品を作っているので、それをお客様の要求に合わせて組み合わせていく。そうするとお客様の元に早くソリューションを届けることができますよね。お客様は今まさに困られているので、デリバリーの速さというのは非常に大きな価値になると思いますし、メーカーとしても勝手知ったる製品を繋げることで付加価値の高い提案が行える。提案の幅も広がりますし、単純に作業も楽になります。
道家 お客様側からすると、「誰に何を相談したらいいかわからない」ということは多いと思います。どうしても当社は垂直搬送機のイメージが強いので、やっぱりその相談をいただくことが多いです。しかし、実際の現場ではその先にパレットの載せ替え作業が発生していたりする。工程が近ければ当社から提案することも可能ですが、離れていると気が付けないこともあります。それが、いろんなメーカーさんと日頃から繋がっておくと、その先でニーズがあった際、お声かけいただける。今日お集まりのメンバーとは日頃からそうした関係が築けています。当社としても、自社の製品だけでは課題を解決できない時に、「それはうちではできないですね」で終わってしまっては、広がりがありません。そこで、「あの会社の製品と組み合わせたら解決できるかもしれません」となれば、垂直搬送機以外のご相談も「オムニヨシダに声をかけてみようか」と思ってもらえるのではと思っています。お客様からの期待に応えるためにも、こうした協業は非常に重要な取り組みだと思っています。

オムニヨシダはロボットシステムにも力を入れる
――横のつながりが重要であることはわかりました。しかし、メーカー同士が繋がる必要があるのかという疑問もあります。その点いかがでしょうか。
近藤 一般的なエンジニアリング会社の進め方だと、まず綿密な打ち合わせをして、かなり分厚い仕様書をつくって、条件に合うメーカーを並べて、数週間から数カ月かけて積算して、ようやくお客様に提案書が返ってくるという流れになりますよね。でも、その間に予算が変わったり、人事が変わったり、新製品が出たり、生産計画が変わったりすることは普通にある。そうすると、本当はもう一回検討し直した方がいいのに、時間と手間の制約で仕様変更を諦めてしまうことも往々にしてあります。メーカー同士が直接つながるやり方は、そういう硬直を減らせる可能性があると思っています。
宮永 そこは私もすごく共感します。もちろん大きな案件ではエンジニアリング会社さんの力が必要な場面もありますし、全部をメーカー直結でやれるわけではありません。一方で、現場の困りごとって、そんなにきれいに整理されていないんですよね。最初から百点満点の仕様書があって、それに合うものを当てはめればいい、ということばかりではありません。近藤さんのおっしゃるようにメーカー同士の協業には高い柔軟性がありますし、お互いの機械の強みや弱みについても分かっています。なので、マテハン機器をただ並べて100+100+100=300の価値ではなく、それぞれの良さを引き出して500にも600にも価値を付加した提案ができると信じています。
市原 既存の建屋や既存設備を生かしながら改善したい、という案件がすごく多いじゃないですか。そういう現場は、新設ラインみたいに最初から全部を設計し直せるわけではないので、どうしても途中で見直しや微修正が入ります。その時に、メーカー同士で直接話せる関係があると強い。当社の台車一つ入れるにしても、通路幅はどうか、高さはどうか、次工程でどう受けるかで最適な形が変わってきますから。だから、協業って最終的に一緒に売るかどうかだけではなくて、途中のすり合わせをどれだけ柔軟にやれるかという話でもあるかなと思っています。
近藤 そうですね。宮永さんがおっしゃったように、メーカー同士の横のつながりって、お互いの品質や提案力、技術力をちゃんと分かっているからこそ成り立つんだと思います。お客様に対して、「この会社さんなら任せられる」と言える関係があるかどうか。そこがないと、いくら製品が並んでも線にはならない。逆に、そこがあると、一社では出せない引き出しが一気に増えていく。協業って、製品を足し算することではなくて、提案の引き出しを増やすことなんじゃないかと思います。
「スペシャルな機械」求められる時代に
――最後に各社の今後についてお聞かせください。まずは市原さんから。
市原 最近、専用機の比率が非常に増えていて、売り上げの40%を占める領域になっています。標準機だけでは対応しきれない現場が増えてきているのだと思いますが、ここを単に一品一様の特注品で終わらせるつもりはなくて「未来の標準機」として育てていきたいと思っています。ある現場でつくった専用機が、別の現場では新しい標準になっていく。そういう積み重ねでしか、変化の激しい現場には対応できないのではないかと思っています。ですから、社内でも専用機対応の体制はかなり意識して強めていますし、現場の声を拾いながら、より早く、より確実に形にしていくことが重要だと感じています。
――専用機へのシフトは、標準機の領域で中国を含めた海外製品が流入しているなど競争環境の変化が関係しているのでしょうか。
宮永 そこは少し違うと思っています。もちろん標準品の競争が厳しくなっているのは事実でしょうけれど、だからといって消極的に当社でいう特型(専用機)へ寄っているという話ではないと考えています。じゃあ何が理由かというと、一つ大きいのは、現場を回すのに前提となっていた「スペシャルな人材」が減っていることだと思います。ここで言うスペシャルというのは、いわゆる職人さんのような人だけではありません。力の強い若い男性であるとか、フォークリフトを自在に扱える人であるとか、現場の勘所を分かっていて、多少無理のある工程でも仕事を吸収してくれていた人たちのことです。昔は、そういう人材が豊富にいることを前提に現場が回っていた面があると思うんです。でも今は、そういう前提では組めなくなってきている。だからこそ、機械の側を現場に合わせ込んでいく必要がある。結果として、スペシャルな機械、つまり特型や専用機のニーズが増えていくわけです。我々としてもこうした流れはしっかりと捉えていきたいと考えています。
近藤 当社も標準品をそのままお客様に届けるケースというのはどんどん減っています。「扱うものは段ボールで、それを運ぶための装置です」という案件はほぼありません。その際、注意しなければいけないのが、お客様から提出された仕様書通りの物を作ったら良いというわけではないということです。つまり、お客様からの「作業者の負担をできるだけ軽くしたい」という要求に対し、すごく軽くて扱いやすい製品だけれども、タクトタイムが倍になってしまっては、現場で使われなくなってしまいますよね。導入したけど現場で使われないマテハン機器って意外と多くて、ここは本当に注意しないといけないと思っています。加えて、市原さんがおっしゃっていたように、特注対応が増えると企業経営の観点から見ると効率が悪くなってしまいます。間違いなく特注対応のニーズは増えていて、当社としてもそこに対応していくことは非常に重要であると考えています。いかに特注対応の効率を高めていくかが今後の課題になると思います。
道家 当社で言えば、それが単体製品だけではなくて、システムでどう応えていくかという話につながっていくのだと思います。皆さんがおっしゃったように、垂直搬送機だけ、パレスルーだけで現場課題が解ける時代ではなくなってきています。前後工程をどうつなぐのか、どこまで一体で提案するのか、そこまで含めて考えないとお客様の困りごとに応えきれない。当社としても、そうしたシステムでの提案には今後力を入れていきますし、垂直搬送機ではないオムニヨシダも知っていただければと思います。



(日本物流新聞2026年3月25日号掲載)