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国際物流総合展2025:物流改革で社会課題解消へ

投稿日時
2025/09/08 15:16
更新日時
2025/09/08 15:19

物流業界最大級の展示会「国際物流総合展2025 第4回 INNOVATION EXPO」が9月10日からの3日間、東京ビッグサイトで開催される。物流関連2法の改正・施行により、荷主・物流事業者の対応が急務となる中、法対応や効率化をテーマにした提案が各社から相次ぐ。変革期の物流を支える技術と知恵の一端を探る。

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昨年行われた国際物流総合展2024の様子。8万人超が来場した

国内最大級の物流専門展示会「国際物流総合展」のスピンオフ展示会として2019年度(開催は2020年2月)に始まった「国際物流総合展INNOVATION EXPO」。国際物流総合展の来場者からの「最新の物流業界の製品情報を毎年知りたい」といった声や、ソリューションベンダーやスタートアップなど変化の速い出展企業からの「2年に1回の開催ではスパンが長すぎる」といった声に応えて開催が決まった。初回は225社・団体、778ブースで始まったが、4回目となる今回展は462社・団体、1859ブースと国際物流総合展と遜色のない規模へと成長している。来場目標も当初の5万人から1万人引き上げ6万人を予定するなど、関心の高まりも感じられる。

今回展のテーマは「物流を止めない。社会を動かす。」。社会インフラとしての存在を高めている物流業界だが、物流の2024年問題を始め課題も多くある。そうした課題を乗り越えるとともに、社会課題の解決をリードし「世界を動かす原動力」となるきっかけとなることを目的とする。

東6、7ホールで行われる主催者企画展示「止めない物流、進化するラストマイル~自動配送ロボット・ドローンの最前線~」についても、主催者事務局は「一足先の物流を念頭に置いた」とコメント。これまで同展ではあまり展示が多くなかった自動配送ロボットやドローンなどの領域にフォーカスをあて、新たなシナジーを生み出すことを目指す。

ほかにも、出展者プレゼンテーションセミナーやロジスティクスイノベーションフォーラムでは、メーカーやサービス提供者が法改正対応やDX化の具体策を紹介する場として機能する。セミナーは2会場(東6、8ホール)で3日間にわたり約30セッションが予定されており、会議棟で行われるフォーラムでも有識者による多角的な視点からの講演が用意されている。また、会期2日目の9月11日にはロジスティクス・物流に興味のある大学生・大学院生を対象とした「学生のための物流展見学ツアー」も行う。伊東電機やEXOTEC NIHON、日本通運などのブースを最大100人の学生が訪問予定で、各ブースで企業説明を行うほか、人事担当者との交流会なども企画する。

■法改正意識した提案多数

今回展の柱の一つが、今年4月に施行された物流関連2法改正に伴った関連製品・システムだろう。本改正では荷主と物流事業者に対し物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務が課された。中でも一定規模以上の企業には、中長期計画の作成や定期報告などの義務付けが行われることとなっており、違反した場合は罰則もある。そのため、システム・製品ともに充実している「荷待ち・荷役時間の短縮」関連の製品は導入が活発になっており、会場でも関心が高まりそうだ。

トラック予約受付サービスで5年連続シェアナンバーワンの「MOVO Berth(以下、Berth)」を手掛けるHacobuは、「MOVO」シリーズを出展。トラック予約受付機能だけでなく、取引構造の可視化や積載情報の管理機能など、今回の改正のポイントを抑えたシステム構成となっている点が特長。また、昨年サービスを開始した物流DXコンサルティング「Hacobu Strategy」も出展。物流課題だけでなく、経営課題の解消まで視野に入れた物流DXを支援する考えだ。

今年5月、Berthとの連携を開始した監視カメラ大手・i-PROはAIカメラ「i-PRO Remo.」を出展。タイムトラッキング機能を用い、トラックの入退場や滞在時間を可視できるだけでなく、Berthと連携することで、受付や荷役登録の自動化を可能にした。荷待ち時間の削減に直結した提案を加速する。

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i-PROのAIカメラとMOVO Berthの連携イメージ

23年よりBerth との連携を進めてきたソニーセミコンダクタソリューション(SSS)もエッジAIセンシングプラットフォーム「AITRIOS」を活用した車番認識や荷役時間の自動取得を実演する。待機時間の可視化から改善策のレポート作成までを自動で行うデモンストレーションやトラック架台の積載率を認識するソリューションの展示などを行う。

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SSSのAITRIOSに対応したAIカメラ。イメージセンサーとAIロジックチップを一体化したセンサー「IMX500」が搭載されている

配車管理の他にも、トラックと倉庫の接続点であるトラックバースでの積み付け積み下ろしの自動化に取り組んでいるのがXYZ Robotics。移動式バンニング/デバンニングロボット「RockyOne(ロッキーワン)」と固定式のパレタイズデパレタイズロボット「RockyLight SE」を組み合わせて、トラックからのデバンニング→パレットへのパレタイジング、パレットからのデパレタイジング→トラックへのバンニングを完全自動化したラインを提案する。ニトリグループなどでも実証が進むシステムで、法改正が決まって以降、引き合いが増えているという。「コンテナからの荷下ろし作業は人でも集まりにくい。従来倉庫内の人材を呼び集めて複数人で1~2時間かけて行っていた作業をロボットに置き換えることが可能になる」(同社担当者)。

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XYZ Roboticsの移動式バンニング/デバンニングロボットRockyOne。国内では5台が稼働する 

物流制度が大きく変わる今、現場の課題とテクノロジーを結びつける本展は、変化に即応し、次世代の物流戦略を構想する上で欠かせない展示会となりそうだ。






オカムラ、倉庫最適化システムを初披露

物流業務の可視化・予測が可能に


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オカムラのブースイメージ

物流業界が抱える人手不足やコスト高、作業の属人化といった課題に対し、オカムラはソフトとハードを融合させた新たな解決策を提示する。今回初出展となるのが、5月に発売を開始した倉庫最適化システム「Optify(オプティファイ)」。

オプティファイは、WMS(倉庫管理システム)に加え、倉庫の最適化を支援するBI(ビジネスインテリジェンス)機能「Opt BI」を搭載。庫内作業の進捗をリアルタイムで可視化し、AIによる作業量予測を行うことで、属人的な判断に頼らず効率的な現場運営を実現する。工程別・エリア別に進捗を色分け表示するダッシュボードにより、遅延リスクや残業要否を即座に把握することも可能。過去の実績やイベント情報を基にした時系列予測により、繁閑に応じた計画立案も容易になる。

従来、WMSとマテハン機器間の連携には多くの調整や開発コストがかかっていたが、オカムラは自社のWCS(倉庫制御システム)との高い親和性を活かし、システム導入のリードタイムとコストを大幅に削減。保守も含めた一元対応が可能となり、倉庫新設や改修におけるプロジェクト管理の負担も軽減できる。

また、既存設備との連携にも柔軟に対応し、異なるマテハンメーカー製品との接続も視野に入れた拡張性を持つ。中長期的な経営分析にも活用できる設計で、現場リーダーのみならず、経営層の意思決定を支援する視座の高さも強みになる。

ブースではオプティファイの実演デモに加え、ロータリーラックやロボットソリューションの実機デモンストレーションも実施。物流戦略の立案や倉庫全体の最適化を支えるパートナーとして、オカムラの提案力が光る内容となっている。「まずは課題を聞かせてほしい」と同社担当者が言うように、来場者との対話を重視するオカムラの姿勢は、物流DXの第一歩を後押しする確かな入口となりそうだ。






ピカコーポレイション、現場の効率化と安全性を両立する昇降ステップ

安衛則の推奨内容にも合致


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出展するトラック昇降ステップ 手すり付き

4年ぶりに国際物流総合展に出展するピカコーポレイションは、労働安全衛生規則の一部改正によるトラック荷役作業時の墜落・転落防止措置に適合する「トラック昇降ステップ 手すり付き」を中心に、様々な製品を提案する。

目玉のトラック昇降ステップ 手すり付きは、トラックのあおり部分へ設置することで、昇降時に発生する転落リスクを軽減する。脚部のアジャスター機能で高さ調整ができるため、様々な現場で柔軟・迅速に対応できる。また、あおりを下ろした状態での取付けも可能だ。

「規則の一部改正により昇降設備の設置義務が最大積載量5㌧以上に加え、最大積載量2㌧以上(5㌧未満)の貨物自動車にも対象が拡大した。当社の製品は規則で推奨されている『手すりのあるもの』『踏板に一定の幅や奥行きのあるもの』に適った製品。既に多く受注をいただいているが、効率化と労働環境改善の両立が求められる物流現場にもっと知ってもらいたい。現物も展示するので、ぜひ体感しに来てほしい」(同社担当者)

このほか、アルミ製作業台「Danchi(ダンチ)」シリーズやモジュール型組立式作業台「Pモジュール」なども提案。ダンチは製品ラインナップが147種あり、より安全で使いやすい作業環境を提供。オプションラインナップも豊富で実用性と利便性を大幅に向上できる。Pモジュールも現場に合わせた製品をWeb上で選定でき、納期も1週間前後と短い。効率化と安全性を両立する新たな選択肢として注目される。

物流現場では安全対策の見直しと同時に作業効率化も求められている。同社は、こうしたニーズに応える製品ラインアップを通じて、次世代の現場づくりを支援する構えである。






HAI ROBOTICS、3月発表の自動倉庫を初出展

高密度保管と生産性を両立


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ケースハンドリングロボット(ACR)のパイオニアであるハイロボティクス(Hai Robotics)は、最新の自動倉庫「HaiPick Climbシステム」を日本で初めて実機展示。シンプル、効率的、柔軟な次世代の自動化ソリューションを押し出す姿勢だ。

HaiPick Climbシステムは、ラックを自ら登ってケースを自動搬送するロボット「HaiPick Climber」と、ワークステーション、ラック、トート、スマート倉庫管理プラットフォーム「HaiQ」などを組み合わせた一体型の自動倉庫システム。

最大12メートルの高さのラックに対応し、ラック間隔は0.9メートル。これにより1000平方メートルのエリアに最大3万個の保管ロケーションを提供できる。従来の自動倉庫や棚搬送ロボットと比べて省スペースかつ高密度な保管を実現し、物流施設のスペース効率を大きく向上させる。

導入の柔軟性の肝となるHaiPick Climerの昇降アームは、ラック片側のガイドレールにドッキングしながら昇降する。ラック間を跨って昇降する必要が無いため、ラックおよび床面の工事に対して高い精度を要求しない。これによりプロジェクト導入時間を短縮し、中小規模の倉庫や物量の変動が起こりやすい成長企業の拠点でも導入が容易になるという。

倉庫管理プラットフォームであるHaiQは、独自のアルゴリズムを活用し、ロボットの動作や作業タスクの管理を一元的に行うことでルート計画などを最適化。3000台以上の規模のロボットを導入した際も効率よく動作させることができる

同社は本展示を通じて、日本市場における物流DXを支援し、労働力不足やスペース制約といった現場課題の解消に尽力したい考えだ。



(日本物流新聞2025年8月25日号掲載)