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【建設業界】「労働生産性」向上の要所

投稿日時
2025/06/09 10:04
更新日時
2025/06/09 17:39

矢野経済研究所が2025年1月に発表した「国内建設8大市場(住宅・店舗・オフィスビル・ホテル・工場・物流倉庫・学校・病院)」によると、2023年度の建設8大市場の市場規模は、工事費予定額ベースで24兆2089億円。新型コロナウイルス禍で延期されていた工事の再開や建設需要の回復もあり、建設市場は拡大傾向で推移していた。

一方で、2021年頃から建設資材価格や労務費の上昇など、建設コストは急激な高騰に見舞われている。調査報告では労務費高騰の要因として建設業界の人手不足を挙げている。業界全体で高齢化や労働者不足の進行により人員の供給不足が進み、需給バランスにより労務費が上昇しているとしている。

2024年度の建設8大市場の市場規模は、物価上昇に伴う建設コスト高騰の影響を受けて拡大する見込み。都心におけるオフィスや商業施設などの大規模再開発や半導体工場、物流施設などの建設需要は堅調とみられている。

一方で、人口減少による需要縮小や建設費高騰による規模の縮小などマイナス影響も継続するため、今後は市場全体では縮小。2030年度の建設8大市場は22兆4889億円(2023年度比92.6%)と見通している。

加えて建設業界の倒産状況も深刻だ。東京商工リサーチの報告では、2024年の企業倒産件数は1万6件。うち建設業の倒産は飲食業についで多く、1924件(前年比13.6%増)に達している。これは2015年以降の10年間で最多である。また帝国データバンクによると、2024年上半期に発生した182件の人手不足倒産のうち、建設業が55件を占めているという。

■変わりゆく建設現場

こうした中、2024年4月に国土交通省は「建設現場のオートメーション化」に向けた取組みとして、「施工のオートメーション化」、「データ連携のオートメーション化」、「施工管理のオートメーション化」を3本の柱とする「i-Construction 2.0」を策定。これはICT活用を建設現場に導入することによって建設生産システム全体の生産性向上を図る取組みとして2016年から推進されてきたi-Constructionの発展形だ。

その成果として2024年に国土交通省は、直轄事業においてICT施工による作業時間の短縮効果をメルクマールとした生産性向上比率(対2015年度比)が21%となったことを報告している。加えて、国土交通省は2023年度から直轄土木工事において、建設工事で扱う情報のデジタル化を原則化するなど、建設業の在り方を根本的に変えようとしている。

また、人口のシュリンクが確実視される中、将来にわたり持続的にインフラ整備・維持管理を実施するためには、ICTの活用だけではなく、自動化へとシフトしていくことも必要不可欠だ。i-Construction 2.0では、2040年度までに3割の省人化を掲げており、現在よりおよそ1・5倍の生産性向上を目指すとしている。





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各社みどころ


建設業界における生産性向上、効率化、デジタル化を推進する最新製品・ソリューションの展示会「第7回国際建設・測量展2025」が6月18日から21日に幕張メッセで開催される。昨年の同展は455社が出展、4万7294人が会場に足を運んだが、今回展は前回をさらに上回る規模での開催が見込まれる。その見どころを探った。


ポータブル発電機における国内トップシェアを誇るデンヨーは、建設現場のCO2排出削減など環境負荷に配慮した製品を展示する。

燃料電池式可搬形発電装置「FCTP-7000」は豊田自動織機が開発した汎用型のFCモジュールを採用した発電容量7kWの発電機。トヨタ自動車の燃料電池自動車「MIRAI」に搭載されている第2世代燃料電池セルを使用したFCスタックに、エアコンプレッサー、水素循環ポンプなどをパッケージ化したもの。

写真1デンヨーFCTP3100.jpgデンヨー「FCTP-3100」

同社では2019年から燃料電池式可搬形発電装置の開発に取り組み、FCモジュールの冷却構造を独自開発。従来より約20%の小型軽量化により可搬性が向上、屋外現場へのスムーズな移動と容易な設置を実現する。

「FCTP-3100」は帝人が展開する英インテリジェント・エナジー社が開発した燃料電池モジュールをベースに開発された発電容量3kVAタイプの発電機。キャスター付きで可搬性に優れ、野外イベント会場や工事現場、災害現場などでの活用が見込まれる。

水素専焼発電機「HCG―45RSK」はクボタが開発を進める産業用水素エンジンを搭載した可搬型エンジン発電機。「可搬形発電機のボリュームゾーンである45kVAのディーゼル発電機をベースに開発を進め、2025年以降の市場投入を目指す」(同社)

現場環境の向上に最適な製品群を揃える丸山製作所は温水のウルトラファインバブルと結晶融解効果による高い洗浄力を誇る「MUFB高圧洗浄機」を提案する。

「当社のウルトラファインバブルは、1000分の1㍉の微細な泡が極めて小さい隙間に入り込み、自己加圧効果による30気圧もの内部気圧で超高圧の爆発力を生じさせるため、きわめて洗浄力が高い。すでに多くの洗浄や除菌の現場、農業用途など幅広く活用されている。建設現場や作業現場におけるしつこい油汚れや沿岸部における潮風、冬場の融雪剤により付着した塩などを素早く除去できる。これまでの水道水による洗浄に比べ、作業時間の短縮や使用燃料の削減も実現する」(同社)

写真2丸山製作所.jpg丸山製作所「MUFB高圧洗浄機」

様々な清掃機器を手掛ける蔵王産業は、日本専用モデルの左運転席仕様小型路面清掃車「アルマジロAM―9DⅢLH」を出展する。「従来のモデルは右ハンドル仕様だったため車線を逆走しなければならなかったが、左ハンドル仕様により路肩の清掃などをよりスムーズに行えるようになった。この安全面が評価され、国土交通省新技術システムNETIS―VEに登録されている」(同社)

■現場の暑さ対策に新提案

現場における作業者に対する提案も目白押しだ。独自の空冷服、水冷服の開発・販売を手掛ける山真製鋸は水冷ベストの新製品「アイスマンプロXⅡ」を出展する。同社のアイスマンシリーズは、特許取得のアイスドリップコントロールにより、ベストに張り巡らされた管を通じて効率的に冷水を循環、空冷服では凌ぎきれない酷暑現場で重宝されている。

「従来品は凍らせたペットボトルを使って頂いていたが、最新モデルでは専用のチャージボトルを用意した。これにより連続使用時間が約1時間伸び、最大で約3時間持つ」(同社)。

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山真製鋸「アイスマンプロXⅡ」

スポーツウェアでお馴染みのミズノはワークウェア、ワークシューズに加え産業用ヘルメット「FT01」を提案する。同製品は独自の後頭部フィッティング構造により、頭を包み込むようにヘルメットがフィットする。これは同社が野球用ヘルメットで培ったもので、ベースランニングの際の走者の動きがヒントとなっている。

「個々の頭の形の違いに対応し、動いてもズレにくく、作業の快適性だけでなく安全にもつながる。またヘルメットとライナーの間に空間を作ることで前方の通気孔からの風が頭頂部を通って後方に排出されるため、作業時の暑さやムレを和らげる」(同社)

写真4ミズノ.jpgミズノ「FT-01」






AIRMAN、コンプレッサのトップ企業が本気で目指す「脱炭素」


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AIRMANの水素専焼エンジンコンプレッサ

今春の社名変更で北越工業から「AIRMAN」となった同社がCSPI︱EXPO(国際建設・測量展)で発表するのが、本体も中身も脱炭素を掲げた発電機とコンプレッサだ。

本体には日本製鉄のGXスチール(経済産業省が定義したグリーントランスフォーメーション推進のためのグリーン鉄)、「NSCarbolex Neutral」を採用。こちらは日本製鉄による温室効果ガス削減プロジェクトによるCO2排出削減量を組織内でプールし、その削減量を任意の製品に配分して証明書と共に供給する鉄鋼製品だ。これにホンダ製のFCモジュールを搭載した水素発電機、水素専焼エンジンコンプレッサを出展する。

さらにバイオ燃料発電機も出展。こちらは軽油、B100燃料、HVO燃料の仕様を前提とした45kVAのエンジン発電機。燃料の媒質状態を計測し、充填された燃料を自動で識別するほか、CO2の削減量と排出量を積算し表示し、CO2の見える化を実現している。

「水素発電機、コンプレッサは量産化に向け評価試験を行った後、土木、建設、港湾などの工事現場の電源や水素生成設備を有する企業・団体等の電源としての実証試験を進めていく。またバイオ燃料発電機は早期の市販化を目指し、脱炭素社会の実現に貢献していきたい」(同社)






フコク、搬送から加工まで−−−−鋼材加工現場に省力化提案


建設資材の要と言える鋼材加工。その加工から搬送まで最適な省力化ソリューションを提案しているのがフコクだ。

重量があり、変形しやすい大型鋼板など運びづらい重量物の搬送に最適なのが、同社が販売する無動力式の「JVDバキュームリフト」。

電源等一切の動力を必要としない真空吊り具で、S型(シングル)は機械加工や製缶加工に適しており、石材やガラス材など多彩な材料を安全で確実に搬送する。M型(標準マルチ型)は2個以上のパッドを持つタイプ。パッドが横一列の配列となっており、横幅のたわみが少ない鋼板の搬送に適している。さらに定尺鋼板型は、大型の鋼板を水平かつ安定したバランスで搬送が可能。建築向け資材加工はもちろん、プラズマ切断機やレーザー切断機など板金機械への搬送にも活用されている。

 さらにエア式、電動式のバキュームリフトもラインナップ。こちらは独自の技術による真空ポンプユニットを搭載し、安全性と作業性を両立した。最大12㌧以上の搬送を可能とし、建設資材加工以外にも、造船所や製鋼所、橋梁建設現場、プラントメーカーなどが採用。大型鋼板の安全かつ確実なハンドリングを実現している。

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JVDバキュームリフト

鋼材の溶接に不可欠な開先加工機も数多く揃えている。自社開発の開先加工機「BCM」シリーズは、加工する板厚に応じた4機種をラインアップ。小型・軽量に設計された「BCM―mini2型」の適合板厚は6~12㍉。特に5~10㍉厚のステンレス材加工で威力を発揮する。

同社でもっとも出荷台数が多いのが中型機の「BCM―12N型」。適合板厚は6~19㍉程度で、専用の走行台車により大型鋼板の加工にも対応する。建設機械、造船等、あらゆる業界で活用されているベストセラー機種で、国内のみならず欧米への輸出実績も多数ある。9~22㍉程度の中厚板の開先加工に威力を発揮するのが「BCM―16N型」。「中厚板は従来プラズマや機械加工で開先加工を行っていたが、時間的にもコスト的に負担の大きな作業。BCM―16Nなら、これまで数日かかっていた加工を数時間で行える」(同社)。

「BCM―20N型」は、30㍉以上の厚板加工向けの大型機。「近年、32~40㍉といった厚板の開先加工需要が増えている。こうしたニーズに応えて開発した」(同)。

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厚板にも対応できるBCM-20N型

いずれの機種も自走加工が可能で軟鋼からステンレス、アルミ、高張力鋼など溶接構造物に使用するほとんどの材質に対応。カッターは、材質及び加工量によって異なるが、目安として約300㍍加工できる。再研磨も可能でコストパフォーマンスにも優れる。

同社ではこの他にも可搬性に優れたパイプ向け開先加工機「ポータブルベベラーB―500」や全自動開先加工機「AutoCUT500」など、国内外の優れた開先加工機を幅広く取り揃えている。




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