メーカー首脳19人が語る2026年の展望──中東リスクと「HV回帰」が変える設備投資の潮目
- 投稿日時
- 2026/03/24 09:00
- 更新日時
- 2026/03/31 15:04
自動車投資の再始動と半導体・造船・航空機の成長
2月28日に始まったトランプ政権のイラン攻撃作戦は、記事執筆時点で泥沼化し容易に出口が見えない。イランはエネルギー輸送の要衝ホルムズ海峡の封鎖を継続。サプライチェーンの混乱と原油高が世界経済のリセッションリスクを大幅に高めている。
日本工作機械工業会は年始に2026年の工作機械受注額を前年比6%アップの1兆7000億円と見通した。中東情勢の悪化で達成を危ぶむ声が聞かれる。だがその逆風下にも国内生産財市場には長く続いた「端境期」を脱する兆候がいくつか芽生えている。
生産財各社は何を有望視するのか。本紙は前号からメーカー首脳ら19人の「リレーインタビュー」を掲載してきた。そこでは自動車のHV回帰に伴う投資の再開を期待・あるいは実感する声が複数あった。東京精密の吉田均会長は「自動車分野も回復の動きがある。ここ3、4年はEVシフトで設備投資が止まっていたが、HVの再注目でエンジンラインの新設や設計変更が動き出し、測定機器需要が戻ってきている」と語る。牧野フライス製作所の執行役員西野正氏も「自動車関係に復調の兆しがある」と言う。
動くのはEVよりHVか。ヤマハ発動機の小林一裕ロボティクス事業部長は次のように語る。「EV関連の投資がそのまま戻っているのではなく、一度止めた投資を各社が選別し、続けるべき案件から再始動している。この数年のEV一辺倒ではなく、足元ではHV関連の動きが活発。足元の需要や採算を踏まえ、現実的なテーマから投資が再開されつつある」
高市政権が重点戦略に掲げる半導体も有力。京セラ執行役員機械工具事業本部長の柳澤秀二氏は「半導体製造装置向けが好転しており、グループ内関連事業の動向を見ても、26年の需要増は間違いない」とする。川崎重工業ロボットディビジョンソリューション営業部澤田純一部長(4月1日付)は「半導体市場の拡大に伴い、クリーンロボットの売行きがすごく好調」と足元の実感を語った。
日本半導体製造装置協会は26年度の日本製装置販売高を前年度比12%増の5兆5004億円と予測。中東情勢によるヘリウム不足が達成に影を落とすが、AI需要に支えられ長期では成長する目算が強い。東京精密吉田会長は次世代半導体技術のハイブリッドボンディングについて「チャンスだと確信している。今年後半から引き合いが増え、28年頃に拡大すると見ている」と力強い。
■ドッグは30年超まで埋まっている
造船、航空機も活況。本紙取材で航空機の堅調さを語ったのは東京精密、牧野フライス製作所、京セラなど。造船は35年に24年比で建造量を倍にすべく官民1兆円規模の投資枠組みが用意される。パナソニックコネクト溶接プロセス事業部の大塚隆史事業部長は「タンカー含め世の中の船が老朽化を迎えるタイミング。ドッグは30年超まで埋まっていると聞く。この需要は30年まで続く見込み」と展望する。
もっとも建造量倍増は容易ではない。帝国データバンク(TDB)が3月18日に発表した調査では、現状の取引規模が倍になると造船サプライチェーンで最大1.2万人が不足するという。
だが人手を補う設備投資も容易でない。造船は自動化が難しいとかねて指摘される。TDBの意識調査で、造船サプライチェーン400社で25年に設備投資を予定するのは34.5%と、過去5年で最低だった。見送り理由は「人件費高騰による利益率の低下」が15.2%。船舶用の厚板が高騰しており、コスト高が今後も投資の重石になるだろう。
山田マシンツールの山田雅英社長は「当社は工具・装置の輸入が多く、円安で利益が圧迫されるかもしれない。為替次第のところがある」と語った。不安定な為替も無視できない懸念事項だ。
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引用したインタビューの多くはイラン攻撃以前に行ったもので、中東情勢が長期化した場合の影響はまだ見通せない。だが、世界を巻き込む巨大リスクはいち企業が日頃の備えで回避できるものでもない。緊迫は続くが、霧が晴れた後の成長を掴む動きを取りたい。
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