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職場の熱中症対策義務化を商機に

投稿日時
2025/04/24 13:17
更新日時
2025/04/24 13:33

今年もまた猛暑到来

2023年、2024年の夏は2年連続で観測史上1位の猛暑となった。気象庁は2月25日に夏の天候の見通し(全国・6月~8月)を発表。「暖かい空気に覆われやすいため、気温は全国的に高いでしょう」とした。

また今年大きなポイントとなるのは6月1日に施行される職場の熱中症対策の義務化だ。熱中症の早期発見と、重症化を防ぐ体制づくりを課すもので、直接的に対策製品の購入や設備の設置を求めるものではないが、熱中症対策の必要性の機運醸成が期待され、メーカーにとっては商機となるだろう。

気象庁によれば、ベンガル湾付近からフィリピンの東方海上にかけて海面水温が高く積乱雲の発生は東南アジア付近からフィリピンの北東海上にかけて多くなるという。

上空の偏西風はユーラシア大陸から日本付近にかけて平年より北を流れやすく、チベット高気圧は平年に比べ北側で強い。また、太平洋高気圧の北への張り出しが強い。

これらの影響により「日本付近は暖かい空気に覆われやすい」とする。Weather X(日本気象協会)も「2025年は過去2年には及ばないものの、気温は平年よりかなり高く、猛暑となるでしょう」とする。猛暑の工場環境を乗り切る商品やソリューションを取材した。






職場での熱中症対策、罰則付きで義務化

6月1日に施行


厚生労働省は、職場での熱中症対策について「労働安全衛生規則」の一部を改正する省令を4月15日公布。6月1日に施行される。事業者が対策を怠った場合は6カ月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金が科される。

熱中症の重篤化による死亡災害を防止するため、熱中症のおそれがある作業者を早期に見つけ、その状況に応じ、迅速かつ適切に対処することが可能となるよう、事業者に対し、「早期発見のための体制整備」「重篤化を防止するための措置の実施手順の作成」「関係作業者への周知」を義務付ける。

■熱中症の死亡災害が30人越え

熱中症の死亡災害が2年連続で30人を超え、令和6年もそれを上回るペースで発生したと見られている。熱中症は死亡災害に至る割合が他の災害の約5~6倍。ほとんどが初期症状の放置・対応の遅れだ。

また死亡者の約7割は屋外作業であるため、気候変動の影響により更なる増加が懸念されている。

今回の改正では、熱中症を生ずるおそれのある作業(WBGT28℃又は気温31℃以上の作業場において行われる作業で、継続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれるもの)を行う際に(1)熱中症の自覚症状がある作業者(2)熱中症のおそれがある作業者を見つけた者、がその旨を報告するための体制(連絡先や担当者)を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知することが求められる。

また(1)作業からの離脱(2)身体の冷却(3)必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせること(4)事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先及び所在地等など、熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置に関する内容や実施手順を事業場ごとにあらかじめ定め、関係作業者に対して周知することも必要となる。

福岡資麿厚労大臣は「熱中症の死亡災害の減少に向けて取り組んでいきたい」と会見で語った。

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暑さに慣らす「暑熱順化」9割知らず

日赤調べ


日本赤十字社(日赤)は4月15日、熱中症にまつわる意識や行動について、全国の10代~60代以上の男女、合計1200人を対象に調査(「熱中症に関する意識調査・2025年」)した結果を公表。

徐々に暑さに体を慣らしていく「暑熱順化」の認知度については、「聞いたことがあり、意味も知っている」と回答したのは全体の12.0%(144人)。反対に、「聞いたことはあるが、意味までは知らない」「聞いたことはなく、意味も知らない」と回答したのは88.0%(1056人)にも上ったことなどが分かった。

日赤事業局 救護・福祉部健康安全課長の齊藤紀彦氏は「調査結果では、若い年代ほど熱中症に対する危険性の認識が低い傾向にありますが、熱中症は命を落とすリスクや後遺症が残る可能性もある怖い病気です。なってしまってからの正しい手当も重要ですが、ならない方法を知ることも大切です」「夏が来てからでは手遅れの予防策もあります。暑くなったときに体温調節ができる身体をつくっておく暑熱順化もその1つで、普段からやや暑いと感じる気温のもとで軽く汗ばむ程度の運動を日常から行うことが暑熱順化には有効です」とコメントした。






天気予報をAI分析

太陽光発電と蓄電池で電力最適化


大阪商工信用金庫などが主催し初開催された「大阪脱炭素ビジネスコンテスト」で最優秀賞を受賞した「未来のコト(社名)」。同社の「スマートグリッドマネジメント」は、電気代の市場価格、天気予報、蓄電池の残量などのさまざまな条件をクラウドで一元管理し、最適な電力をAIが判断するもの。

「明日は晴れるから太陽光発電が十分見込める。よって本日、蓄電池の電力を使い切る」「現在は、晴れている昼間は電力を買う方が安いので、太陽光発電の電気をすべて売ってしまう」など太陽光発電を利用する事業者にとって電気代が安くなる最適な選択を自動で行う。中農竜二社長は「電力の需要は増えていく一方だが、原子力発電所を含め大規模な発電所をすぐに建設することは難しい。スマートグリッドを活用して電力の需要と供給を最適化していかなければ、日本の電気は足りなくなってくる」と話す。スマートグリッドは同社だけでなく多くの事業者が次世代のエネルギー供給網として社会実装に取り組む。マネジメント.jpg

ベースとなるのが空調省エネシステム「スマートマネジメント」であり2022年より数十施設に設置してきた。スマートマネジメントでも採用されている「エアコン室外機のインバーター制御」が一つのターニングポイントだった。

かつてエアコンはオンオフしかなかった。その後デマンドコントロールからインバーター化されたが省エネシステムは「オンオフ切り替え」から抜け出せていなかったと同社長。2017年、「オンオフではない自動制御でインバーターモーターの回転数を下げて、効率のよい運転でデマンド値を抑えるシステムをパチンコ店に設備した。それで日本冷凍空調設備工業連合会の懸賞で最優秀賞をもらった」(同社長)とする。

エアコンの室外機に勝手にアダプターを取り付けて大丈夫か、との顧客からの懸念も多くあった。最優秀賞をきっかけに日本の大手エアコンメーカーに働きかけ、保証書(同社のシステムを組み込んでもメーカー保証が継続)をもらうことが叶った。これが稀有の事例となり大阪脱炭素ビジネスコンテストでの評価にもつながっている。スマートマネジメントを簡単に説明すると、外気温が低ければ換気扇で外気を取り込み、エアコンを抑制するというものだ。

スマートマネジメントが現在の気象と室内温度の関係を見て省エネ運転を実施するのに対し「スマートグリッドマネジメント」は未来の天候(気象予報)などを活用する。もちろん天候だけではなく、工場なら稼働状況、商業施設なら集客状況なども加味する。

■太陽光発電過多、需給バランス崩れる

電気料金を市場連動型で契約した場合、これまでは夜間に電気を使用する際は、高い電力を調達するほかなかった。しかし、太陽光発電と蓄電池の連携が可能なシステムを導入すれば夜間の高い電力を調達する必要がなくなり電気代を大幅に削減することができる。

「太陽光が普及した結果、需給のバランスが崩れ、昼間の電力は非常に安い。投資効果を考えれば、晴れている日は、太陽光で発電した電気は蓄電池にためて置き、電気を買う。電気代が高い夜は蓄電池に蓄えた太陽光発電電力を使えばいい」(同社長)となる。こうした制御を効率的に行うには、一週間程度の天気予報と連動しなければならないわけだ。

「スマートグリッドマネジメント」は、カーボンニュートラルに資する最先端技術の開発・実証にチャレンジする企業を後押しする大阪府の「カーボンニュートラル技術開発・実証事業」にて採択され、大阪・関西万博で成果が発表される。今後、商業施設、レジャー施設、大規模工場に実際の導入を目指す。「早ければ、来年春に、実際の施設に導入される予定だ」(同社長)とする。

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中農竜二社長






スイデン、業務用スポットエアコンを初のノンフロン型


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ノンフロン型スポットエアコン「SS-25LNシリーズ」

スイデンは、業務用スポットエアコン初というノンフロン型スポットエアコン「SS-25LNシリーズ」を発売した。

冷房能力は高水準でありながら「GWP1」と環境にやさしい優れたグリーン冷媒「R1234yf」を採用。「カーエアコンや自動販売機に使用されており安全性は認められている」(同社)とする。フロン排出抑制法の対象外であり、3カ月に一度の簡易点検と廃棄時のガス回収の手間やコストが軽減される。

同社は企業理念に「私たちは、常に次代をみつめ、快適を『かたち』にするモノづくり、そして夢づくりを通じて環境にやさしい社会づくりへの貢献を基本理念として取り組んでまいります」を掲げており同製品はそれを体現するものと位置づける。

仕様については現行機種と同等で、冷風ダクトの風向き調節、位置調節が可能で、SS-DLNタイプは自動首振り装置が内蔵されている。「キャスター付で設置・移動が簡単、一般的なエアコンと同じ冷房構造なので、しっかり冷えた風を提供することができ局所的に冷風を送ることが出来る」

ホコリに強い全閉モータを採用。モータ周囲の空気がモータ内に流入しない構造のため、ホコリの多い現場でも使用可能だ。熱交換器一体型の機構をしておりドレン水量が減少。半透明のドレンタンクでドレン残量が一目でわかる。

またドレンタンクを取出し、ドレン口にホースを差し込むと直接排水することができる。別売りの延長冷風ダクト、延長排気ダクトが必要だが、冷風ファン・排気ファンにシロッコファンを採用する事でダクトを延長し冷風を遠く離れた人へ運び、排気熱を室外に排気が可能。

「高い冷房能力で快適な職場づくりへ貢献する」(同社)とアピールする。






ナカトミ、大型スポットクーラー

トレーラーの積み下ろしに


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【写真左】大型スポットクーラー「SPC-100B」、【写真右】45センチツインジェットファン「SJF-450TW」

夏場のトレーラーのコンテナや大型トラックの箱型荷台(バン)内での積み下ろし作業は過酷だ。特に奥まったところでの作業はまさにサウナ状態。スポットクーラーでは冷気が届かないし、送風機を使って風を取り入れても一定以上は涼しくなりにくい。そんな時に活躍するのがナカトミが新発売する大型スポットクーラー「SPC-100B」。トルネード効果と大風量で到達距離は最大で約17mにもなり前出の積み下ろし作業だけでなく、大型倉庫や工場でも活躍する。従来のスポット冷風と違い、広がるように風を送る拡散送風式・拡散送風クーラー「SPC-70P」(新発売)にも引き合いが多い。三相交流200Vと強力で首振りルーバーと合わせて、より広範囲の空間に冷風を送る。

■同時に2カ所に風を送るファン

天吊り・床置き式除湿機「TFDM-25」も新たに上市。天井裏や床の狭いスペースに設置可能な同製品。湿度を下げてクーラーの効果があがるだけでなく、鉄工所などでワークを錆びさせたり、倉庫や工場の厄介者であるカビやシミの原因、「結露」を防ぐ。ドレンポンプを搭載し、自動で効率よくドレン水を排出。蒸発器部分には耐食性に優れたカチオン電着塗装が施されている。

他にないアイデア製品としては45㌢ツインジェットファン「SJF-450TW」が注目。これまで、複数個所に風を送りたい場合は、複数台ファンを設置しなければならずスペースが必要だった。同機種は上下左右に別々に角度調整可能なファンを縦に配置。省スペースで別々の場所に風を送る。また個別にオン・オフできるのもうれしい。

同社では環境に配慮した冷媒R32を採用したラインナップが拡大中。環境配慮だけでなく従来機より約2度程度低い温度を実現。性能面でも訴求できる。





(日本物流新聞2025年4月25日号掲載)