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熱いぞ! 夏物商戦! 暑すぎる夏を安全に楽しむアイテム

投稿日時
2025/06/12 17:26
更新日時
2025/06/12 17:36

年々暑く・長くなる日本の夏。それと共に夏物商戦の重要性は増すばかりだが、エンドユーザーにとっても夏物商品は涼を得る風情あるものではなく、過酷な暑さから身を守るための重要なアイテムとなりつつある。今年も昨年同様の暑さが到来すると予測されている。さらに、6月1日から職場での熱中症対策が義務化されたこともあり、熱中症対策グッズには例年以上に関心が集まっている。本特集では暑すぎる夏を安全・快適に乗り越えるためのアイテムに注目した。


今年の気温は令和の米騒動の熱気の影響か、昨年ほどは上昇していない印象だ。実際に、「GWが昨年よりも暑くなかったため、夏物商品の滑り出しは若干遅い」といった声も聞かれる。しかし、気象庁の観測によると、5月1日~6月4日までの間に全国で真夏日を記録した日数は昨年が23日であったのに対し今年は22日、猛暑日に関しては昨年が6月12日まで記録がないのに対し、今年は5月21日に岐阜県飛騨市で記録がある。スタートは遅れたものの、今年もしっかり暑くなりそうな気配がある。

記録的な猛暑で伸びたのがエアコンだ。ルームエアコンの国内出荷金額は23年度が7820億円だったのに対し、24年度は8371億円と大きく伸長。25年度は「前年の反動減がある」(〈一社〉日本電機工業会)と予測されていたが、25年4月度は前年比20.3%増と大きく伸びた。全国的に気温が高かったことや早期試験運転の推奨などもあり、出荷数量も同15.2%増と4月単月としては過去最多となった。

一方、メーカー各社には27年に新たに適用される省エネ基準に向けた製品開発と、25、26年の実販売の両立という難しい舵取りが求められている。「今回15年ぶりに改められる省エネ性能の目標基準はこれまでよりも最大3割以上高く、製品価格の上昇は必至。駆け込み需要や補助金の可能性など、まだ予見できない部分が多い」(空調機器メーカー担当者)

各社「まずは現行モデルの供給を絶やさないようにしたい」といった声が多い中、コロナは省エネ性と清掃レスの機能で差別化する。フラッグシップモデル「Relala SPシリーズ」は人感センサーで人の有無を検知し、自動でひかえめ運転へのシフトや運転の停止を行う省エネ性能の高さが特徴。また、運転停止後にエアコン内部の乾燥運転を行い、自動で送風ファンと送風路を掃除する「よごれま扇」も搭載する。

白くまくん誕生から50年を迎えた日立グローバルライフソリューションズも、熱交換機を自動で凍結し洗浄する「凍結洗浄」技術を搭載した機種を推す。自動で汚れを落とすだけでなく、通風路やフラップ、フィルターなど汚れが溜まりやすい部分をステンレス製にすることで、「そもそも汚れにくい」仕様とした。

ハイセンスジャパンはカラー展開で差別化を図る。4月に発売した黒い筐体が特徴の「Sシリーズ ブラックモデル」は、基本的な性能を備えたスタンダードモデル「Sシリーズ」をベースとする。同社の担当者は「他のメーカーでは高価格帯で展開されることの多いブラックモデルをスタンダードなラインでも選択できるようにした」と話す。

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ハイセンスジャパンは4月に黒色のルームエアコンを発売した。普及帯の製品でのラインナップは珍しいという

一方で、「近年の猛暑の影響でエアコンなどの空調機器が東北・北海道地域でも急伸している。これまで大きな需要が無かった地域のため設置業者が足りず、室外機や設置工事が必要ない窓用エアコンや床置きタイプのスポットクーラーも大きく伸長している」と話すのは山善・家庭機器事業部商品企画1部の村上幸輔MD。

「今年も暑くなることが予測されているので、全国でエアコンが求められる方向性は変わらないと思う」とし、今年発売した移動式エアコン「YEC-S22」を推す。冷房・除湿・送風が1台にまとまった製品で、冷風運転は室温設定16~31℃に対応し、1日当たり19リットルと十分な除湿能力を持つ。キャスターがついているため部屋のどこにでも楽に移動・設置が可能だ。

■使い方・使い所を選ばないスタイルが主流に

あらゆる場所が暑い日本の夏には、このように使い場所や使い方を選ばない製品が求められる傾向にもあるようだ。特に顕著なのがハンディーファンやコンパクトファンと言われる分野だろう。街中でも様々なタイプを見かけることが増えたが、2WAY、3WAYは当たり前で、卓上扇やスマホスタンド、モバイルバッテリーなど5WAYで使える製品も出てきた。開発したNAKAGAMIの担当者は「移動中に手で持って使用するだけでなく、オフィスのデスクなどでも使われている。それに合わせて機能が追加されている」と理由を明かす。

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NAKAGAMIの5WAYハンディーファン。卓上扇としても機能する

山善が3月発売した「PC仕様扇風機シリーズ」は、ハンディータイプなどを除く本格的なDCリビング扇風機・サーキュレーターとして初めてUSB Type-C、PD(Power Delivery)仕様の給電に対応した。従来、一体となっていた本体、ケーブル、コンセントプラグを分離し、本体部への給電をPD対応のケーブルとアダプターから行えるようにした。これにより、市販のPD対応のモバイルバッテリーなどからも給電できるようになり、コンセントのある場所に限らず扇風機やサーキュレーターを使用できるようになった。開発を担当した村上MDは、「キッチンや脱衣所などは空気がこもりやすい一方でコンセントが限られており、扇風機などは意外と使いにくい場所。本製品ならモバイルバッテリーと組み合わせることで、今まで使いにくかった場所でも活用でき、災害時など『もしも』の時にも使用できる。リリースしてからまだ数カ月だが、滑り出しは良好」と話す。

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山善が3月に発売した「PC仕様扇風機シリーズ」






冷却衣類、熱中症対策義務化で需要増

ファン付き、水冷、ペルチェ


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山善のペルチェ搭載のファン付きウェアは、ペルチェプレートを太い血管が通る首元に配置することで、適切に体温を下げることが期待できる

厳しい夏の暑さに対し、体を冷やす目的の機能性衣類市場が広がりを見せている。これまで、ファン付きウェアが市場をけん引してきたが、最高気温30℃超えの真夏日が続出し、日によっては40℃を超える日本の夏に対し、直接体を冷却する水冷服や冷却効果を高めるためにペルチェ素子を搭載した衣類なども食指が伸びている。

「粉塵が舞うなどの理由でファン付きウェアが使えなかった現場で使用されるのはもちろんのこと、ファン付きウェアもこれまで通り使用しながら、真夏の時期には他の機能性衣類に切り替えたり、組合せて使う方も増えてきた」(山善・家庭機器事業部商品企画3部の俣野剛志部長)

さらにこの状況を後押ししているのが、6月1日から義務化された職場での熱中症対策だ。職場での熱中症による死傷者数が全国で増加しているのを受けた改正で、熱中症を予防するための衣類にも注目が集まっている。5月末に行われた展示会でも、冷却衣類を展示する企業のブースには人があふれ、ブース担当者は「義務化を知って来ていただく方が多い印象」と話す。

「現場環境の改善や休憩所の設置などよりも手に取りやすい対策の一つとして、機能性衣類に目が向いています。一方で、水冷服やペルチェ式はまだまだ知らない方も多く、今回の義務化を契機に更に多くの方に知っていただきたい」(俣野部長)


【インタビュー】山真製鋸  代表取締役社長  山本  剛 氏

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――水冷服が好調なようですね。

はい。最高気温が35℃以上の猛暑日の日数が全国各地で過去最多を記録した昨年から、急激に伸長しており、昨年は用意していた17万セットが7月頭には完売している状況でした。今期も6月1日からの職場における熱中症対策の義務化を受けて、昨年よりも注文が先行している状況です。

――なぜ水冷服が選ばれている。

冷却衣類市場をけん引するファン付きウェアは、気温が30℃を超え体温に近づいてくると、身体の冷却効果が薄まります。昨年のように外気温が40℃を超える日には、熱風が衣類の中に入ってきて逆効果になる場合もあります。水冷服は内部の氷や水が冷えている間は、気温に関係なく体を冷やしてくれるので、厳しい暑さを乗り切るために関心をいただいています。

――今年は新製品も出されました。

水冷服と空冷服を組み合わせた「アイスマン HYBRID-PRO」と噴射式の「アイスマン HYBRID-AIR」をラインナップしました。いずれもベストの内部にダクト構造を組み込んでいるため衣類が膨らまず、首や脇などを重点的に冷やすことが可能です。PROは気温に合わせて空冷・水冷・ハイブリッドと使い分けられ、AIRはハーネス装着が可能なため高所作業にも向く製品となっています。

――新たな製品も出揃いました。今後の展開は。

今期は20万セット用意しており、滑り出しは好調です。まずはこれを売り切りたい。加えて、既に台湾などから引き合いが来ておりますが、海外でも暑さ対応が求められています。日本発の冷却衣類をグローバルに広めていきたいです。






新富士バーナー、ガストーチに新規制

越境品の事故多発にメス


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今回の規制に合わせ空気調節機能をなくしたフィールドチャッカ―「ST-450」

今年2月、ガスバーナー(ガストーチ)に新たな規制が課された。海外製のガストーチを中心に、製品不具合による火災事故が多発しているためだ。(独)製品評価技術基盤機構に通知のあった情報では、2019年度から23年度までの5年間にガストーチの事故は129件。調査中の案件20件を除いた109件の事故の内、製品不具合に関係する事故が7割を越え、事故を起こした製品の生産国は「海外」と「不明」が100%となっている。

「近年、『越境EC』のような格安な輸入品を簡単に手に入れられる機会が増えてきました。ガストーチでもその状況は変わりません」

そう語るのは、東京とパリのオリンピック/パラリンピックで聖火リレートーチの燃焼部を製作した新富士バーナーの山本雄貴氏。

「越境EC製品の全てがそうではありませんが、中には十分な検査体制が整っていないまま出荷されるものもあると聞きます。一般的な製品と異なりガストーチでそれを行うと重大事故に繋がりますし、既に負傷者を出す事故も発生しています」

今回の規制は、液化石油ガスの器具などにおいて国の定める技術基準に適合している製品を示す「◇PSLPGマーク」を取得した製品でないと販売が出来なくなるというもの。2月から規制は始まっているが、1年間の経過措置期間(来年2月5日まで)が設けられているため、「◇PSLPGマークに準拠していないものを入手する可能性がある」と山本氏は指摘する。

「当社では規制以前から独自の基準を設けて全数検査を行ってきています。今回の規制適用に合わせいくつかの製品で一部仕様を変更し、6月から◇PSLPGマークの付いた製品が店頭に並び始める予定です」

山本氏は今回の規制の流れを歓迎する。「安全性に疑いのある製品の多くが市場から排除されることに加え、事故によるガストーチ=危険な物というイメージダウンを防止することにもなる。当社にとってはプラスに働くのではないか」と期待を示す。






アラミック、猛暑をシャワーで吹き飛ばす

水道料金上昇で節水性に熱視線


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BIRAKUシリーズの「MAT BLUE」

シャワーヘッドにこだわる家庭が増えてきた。富士経済の調査によるとファインバブルを発生させる市販用のシャワーヘッドの市場は、2025年に190億円に達すると予測され、5年前の20年と比べ4倍近い金額に達すると見込む。

注目を集めるシャワーヘッド市場だが、実は夏場が需要のピークの一つ。「複数回シャワーを浴びることが増え、水道の使用量が気になる時期です。近年の猛暑で、朝夕だけでなく昼間にもシャワーを浴びてさっぱりしたいという方も増えており、より節水性能の高い製品が求められています」(アラミック・営業部営業2課の甲斐山朔耶氏、以下同)

一部地域では進んでいた水道料金の値上げが今年4月から適用された地域も多く、千葉県や埼玉県などでは来年度さらに20%ほど値上げする予定など、水道料金が家計を圧迫する可能性が高まっている。

山善(アラミック)のBIRAKUシリーズは直径0.3ミリの極小穴が多数開けられた節水型超精密散水板によって、従来製品と比べ約60%(ナノバブルシャワータイプは50%)も節水効果がある。さらに、「手元に一時止水ができる安心ストップ機能もついているため、手間なく節水可能」という。

「散水板には増圧効果もあるため、汗や皮脂が気になる夏場でも優しくしっかりと汚れを洗い落します」

節水と併せ夏場にシャワーヘッドが求められる理由がこの美理容目的。甲斐山氏によると「高機能なシャワーヘッドは女性が使用するイメージがありますが、夏場は皮脂汚れを起因としたにおいやかゆみが発生しやすく、男性の方からも関心が高まる」という。

BIRAKUシリーズには汚れに強いハードクリアコート仕様を施した「COATING」と手触りの良い「MAT BLUE」、ナノバブル機能を搭載した「ナノバブルシャワー」の3タイプがある。ナノバブルシャワーには、軽くてしなやかなステンレスシャワーホースがセットになった「ステンレスホースセット」も用意する。






【山善・家庭機器事業部】東京・大田で冬物商談会

デザイン性高めた新製品が続々


山善の家庭機器事業部(中山尚律事業部長)は5月16日までの4日間、「オリジナル家電総合商談会」を東京都大田区の東京流通センター内の展示ホールで開いた。主に今年の秋から冬にかけて発売する冬物家電(電気暖房機器、電気毛布、加湿器など)や調理・家事家電、AV機器などを並べた会場には、流通業などから87社・348人が訪れた。

同事業部の入部康久副事業部長は足元の夏物商戦について「GWの気温が上がらなかった分、昨年より少し動き出しが遅い」と触れる一方で、「熱中症対策や防犯・災害対策、花粉や黄砂など人体へ影響のある事象への対策など『○○対策商品』は、地球環境や社会環境の変化によって必要性が高まっている」と説明。冬物製品でも「ヒートショック対策や空気清浄への関心は高い」と話した。

シーズヒーターやセラミックヒーター、カーボンヒーターなど幅広いラインナップを展開した電気暖房機器ゾーンでは、デザイン性を高めた新製品が並んだ。同事業部商品企画1部の加美将希MDは「デザイン性と機能性の調和を意識した。例えばセラミックヒーターでは、筐体デザインを長方形から円筒形に一新。動作時も占有面積を最小化できる」と説明。搭載する機能についても「ユーザーが気になるスペックは確保しながら過剰にならないようにし、山善らしい値ごろ感を確保した」と話す。

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電気暖房機器ゾーンではデザイナーとコラボした製品などが並んだ 

電気毛布ゾーンでも、着る電気毛布としてヒット中のくるみケットシリーズにジェンダーフリーで使いやすいデザインの新製品を提案。「コンビニくらいなら着たまま外出できる製品を出したかった。また、男性でも使いやすい見た目のため、従来よりも幅広い方にお使いいただける」(商品企画1部大西琢也MD)とした。

調理家電ゾーンでは炊飯器やコーヒーメーカーの他に、2026年6月から義務化される転倒流水対策基準に準拠した電気ケトルが並んだ。商品企画1部の近藤富昭MDは「山善では義務化に先駆けて、全製品に転倒流水対策を搭載している。また、ただ対策を施すだけでなく使い勝手にこだわることで、意識しなくても対策が機能するようにしている」とした。

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転倒流水対策基準に準拠した電気ケトル。使いやすさにもこだわった 

他にも、昨年発表したバッテリー家電シリーズ「ELEIN(エレイン)」を始めとし、コードレスで使用できる製品が各所で見られた。AV機器ではモバイルモニターやタブレットなどコードレスで使用できる製品の提案を強化しており、調理家電でもフードシーラーやタンブラーミキサーなどでコードレスタイプを提案。商品企画1部の井原知宏部長は「3月に発売したPD対応の扇風機シリーズの滑り出しは好調」と期待感を示すとともに、「コンセントに繋がなくても使用できる製品を各所で提案することで、ELEINシリーズで訴えたかった世界観をイメージしやすくした」と話した。

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様々な製品と連携して見せたELEINシリーズ

(日本物流新聞2025年6月10日号掲載)