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水回り空間で変わる、生活の質

投稿日時
2025/07/25 09:47
更新日時
2025/07/25 13:11

性能向上と家事らくで選ばれる住まいに

生活する上で重要な機能をもつ水回り空間。その選定基準は単なる機能面だけでなく、「省エネ性」や「効率」、「デザイン性」、そして「ゆとりある家時間の創出」などと大きく変化している。キッチンや洗面、給湯といった住宅の要所を支える水回り空間の設備機器にこそ、最も進化が求められている。本特集では注目の新製品や家事らくニーズを叶える機器を紹介する。


共働き世帯や高齢者世帯の増加、そしてコロナ禍を経て、水回りを取り巻く環境は速いスピードで変わってきた。機能や価格を比較検討していた時代から、SNSの浸透や住まいへのこだわりニーズの高まりで、並べられたものから選ぶのではなく、自分だけのこだわりを反映したオーダー空間や海外製品にも注目が集まる時代になった。「家事そのものを意識しない暮らし」、「ストレスのない整った生活」へとライフスタイルそのものへの志向が設備や製品選びの条件になっている。

別の言い方をすれば、継ぎ目や段差をなくし汚れが溜まらない仕様や、なるべく電気を使わない食洗機の乾燥方式により環境性と節約を両立する、細部のあしらいやこだわりにまで、人々の目が向くようになったのだ。「家事・生活の場」から「暮らしの質を象徴する空間」へと捉え方が変わりつつある水回り空間。どの機器を選び、どう見せるかが住まう人にとって重要な観点になっている。






生活の質を向上させる水回り製品


リンナイ、家事らく×速乾で好調のガス衣類乾燥機

気候変動でさらなる需要増も


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今春に発売した「乾太くん」デラックスタイプの軒下設置仕様。水やホコリを防ぐ操作パネルを採用

売れ行きが好調なリンナイのガス衣類乾燥機「乾太くん」。2024年度の国内販売台数は前期比16%増加し、さらなる成長を見込む。23年にデラックスタイプをフルモデルチェンジし、乾燥容量を6㌔/9㌔モデルに大容量化。糸くずフィルターをボックス型形状にし、ドアを開けてすぐに取り出せる場所に移動した。機能面でもプラズマクラスターを搭載するなど衣類ケアをより充実させ、時代のニーズを捉えながら進化している。

「ガス式乾燥機の強みは圧倒的な速さ」と経営管理本部広報部・土屋賢治次長(以下同)は話す。6キロの洗濯物を約60分、9キロでも約90分で乾燥できる。すぐに乾くため低コストで、毎日気にせずに使える経済性も併せ持つ。洗濯と乾燥が別々に行え1回目の洗濯物を乾かしながら2回目の洗濯が可能と、大量の洗濯物も効率的に片付けられる。パワフルな温風が繊維を根元から立ち上げ、ふんわりとした仕上がりも人気の理由だ。

今春には、デラックスタイプに「軒下設置仕様」を新たに展開。これまでスタンダートタイプのみだった軒下設置の間口を広げた。デラックスの機能やデザインをそのままに、水やホコリが侵入しにくい操作パネルなど、防水・防塵対策を強化。戸建てや集合住宅のベランダ設置にも対応する。

「人気の高い乾太くんだが、設置場所が一番のハードル。屋内での設置場所の確保や排湿管の穴あけ工事が難しい場合など、軒下設置用モデルでより設置場所を柔軟に選べるようにした」

■「外干し離れ」がニーズに拍車

実は乾太くんのブレイクの始まりは沖縄。 

「沖縄は急な雨や台風の到来が多く外干ししにくい環境。室内干しが多い土地の中でガス衣類乾燥機がハマりました。今では5軒に1台乾太くんが入るほど高い普及率をもちます」。

近年では本州においても急な雨や、極端な降雨量が持続する線状降水帯など沖縄に近い気候環境になりつつある。気候面に限らず花粉やPM2・5などを防ぐ目的で室内干しは一定の生活スタイルになっている。「ガスによる80℃以上の温風は、生乾き臭の原因菌(モラクセラ菌)を除去できる」と部屋干し時の悩みも払拭する。

他にも、共働き世帯の増加により夜間に洗濯する家庭や、口コミやSNSでの評判を通して人気はさらに急伸。予測できない気候面などの要因も手伝い、今後も乾太くんの需要増は見込めそうだ。今回の軒先設置タイプのラインナップ追加など設置のハードルを下げながら、次のブレイクスルーを狙う。






永大産業、浮かせる造作風洗面台に新ボウル

見た目そのままで実用性アップ


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アクア―ジュフロートのアンダーボウル。800㎜の見つけ高さですっきりと洗練された洗面空間に

手や顔を洗ったり、歯磨きや身支度に使われる洗面台は水しぶき跡やゴミも出やすい。使い勝手とともに「よく使う場所だからこそデザインに一味加えたい」と見た目の両立が求められるスペースだ。

永大産業がラインナップするフロートスタイルの造作風洗面台「アクアージュsai」「アクアージュフロート」はアイテムやカラーの組み合わせでオーダー空間のようなこだわりを持たせられる。いずれも洗面ボウルは置き型のベッセルタイプだったが、5月末より容量が大きく広々と使いやすいボウル形状やアンダーボウル形状を追加した。

12.4リットルの容量は、これまでのスクエア型(6.5リットル/8.2リットル)、ラウンド型(7リットル)の約1.5~2倍近くなり、底面形状は広く平らに。「洗濯の予洗いがしやすく、花瓶やバケツへの水くみも安定して置ける」(同社)。作業をしながら水栓に手を伸ばしたり、掃除道具や手入れグッズを取るなど手がふさがりがちな水回り。バケツもそのまま置ける広さを確保し家事がしやすく、両手が使えスピードアップにつながる。

また、カウンターとボウルには継ぎ目に段差がないフラットなシームレス仕上げ。汚れが溜まりにくく手入れが容易だ。カウンター素材は人工大理石とメラミンから選べる(ボウルは人工大理石製)。排水口部は、アクアージュsaiは口金が見えず汚れがたまりにくいフランジレス(アクアージュフロートはフランジあり)。どちらも排水床立ち上げ、壁出しに対応している。

高級感がありデザイン性の高いベッセルタイプと、すっきりとして清掃性にすぐれるアンダーボウル。家族形態や家事の頻度は家庭によってさまざま。掃除のしやすさにも影響する洗面ボウルの選択肢を広げ、フロートスタイルで抜け感のある空間はそのままに、実用性も格上げした。






人気の海外メーカー食洗機


家事時短の代表としてまず挙がるのが食器洗い乾燥機。共働き世帯や子育て世帯でのニーズの高まりやコロナ禍を経て、食洗機市場は活況を呈している。省エネ性能や静音性の向上に加えて、デザイン面や収納力、自動洗浄機能なども進化している。ヨーロッパ発の高機能モデルは、上質なキッチン空間と快適な暮らしを提案する存在として評価され国内でも人気が高い。


Miele、高耐久性と高性能システムで選ばれる食洗機


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ドイツメーカーとして耐久性と高品質を保ちつつ、バスケットはアジア仕様で丼や和食器を立てられる

ドイツの老舗高級家電メーカーとして品質と耐久性、デザイン性で高い評価を受けるMiele(ミーレ)は根強い支持を持つ。

庫内が広く、食器だけでなく鍋やフライパンなど調理器具も一緒に洗えるのがヨーロッパの食洗機の特徴だが、ミーレは日本・中国・韓国向けの「アジアンバスケット」を採用。「あえてピンのピッチを広げ、お茶碗やどんぶりなどが垂直に入るようにしている」(ミーレ・ジャパン 営業統括本部代理店チーム 井砂光弘氏・以下同)と深さのある和食器にも対応する。ワイングラスは爪の細かいシリコンパッドで、細いグラスの脚もしっかり固定できる。

ハンドルレスのスタイリッシュなドアは、2回ノックすると自動で扉がオープン。また世界で初めてとなる洗剤自動投入システム「AutoDos」は、独自の粒状洗剤「PowerDisk」で、選んだプログラムに応じて適量の洗剤が自動で投入。「ヨーロッパの洗剤は酵素の種類が多く、低温でも高い洗浄力で食器をぴかぴかに洗い上げられる」とアピール。洗浄プログラムは機種によって異なるが全15種類で「ビールジョッキ用のプログラムでは目の細かい泡で洗いあげ、ビールを注いだ際きれいな泡ができる」とドイツならではの機能も。

省エネ基準が厳しいヨーロッパでは、食洗機の乾燥にもこだわりがある。ミーレは余熱乾燥方式で、最高75℃の高温すすぎで洗い上げた後、吸気ファンで冷たい空気を取り込み、熱い空気と冷たい空気を交ぜて熱交換し、結露させて水滴を効率よく排水する。洗浄終了後にはドアがわずかに自動で開いて外気を取り込み、食器や調理器具の自然乾燥をさらに促進。「温風で乾かす方式もあるが、消費電力もかかり食器の傷みにも繋がるとヨーロッパでは余熱乾燥方式が主流になっている」






Bosch、予洗い不要とゼオライト乾燥でエコと時短両立


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特許を取得しているゼオライトを用いた独自の乾燥方式は人気が高い

世界47カ国で展開するドイツ家電メーカーBosch(ボッシュ)。日本市場でも高い洗浄性能と実用性で知られシェアを広げている。

幅60センチと45センチモデルを展開し、特に日本で出ているのは45センチモデル。とはいえ一度に62点の食器を洗浄できる収納力をもつ。家族4人一食分の使用食器+調理器具が洗え、家事時短の担い手として頼もしい。また静音性もウリで、運転音は「図書館と同レベル」という42dB。就寝時や新生児がいる家でも安心して使える。

そして予洗いが不要な点も時短に貢献する。「固形物だけ取り除けば、カレールーやマヨネーズなどの調味料はついたままでもOK。オートモードで汚れ具合をセンサーで感知し、低い温度で洗ったり、水量やすすぎ時間を最適化する」(G-Place Bosch事業グループMDAセールスチーム 橋本敏明氏・以下同)。また「庫内下部のスプリンクラーや上部のカトラリートレイの上からもシャワーで水が出て、バスケット全体に水が行き渡るように洗える点も特徴」と高い洗浄力を表す。

ボッシュの食洗機の最大の強みは電気を使わない独自の乾燥方式にある。水分が吸着すると熱を発生する特性を持つ鉱物のゼオライトを用いた「ゼオライト・ドライ」。洗浄時は庫内温度を高めて乾燥時に食器や庫内から放出される湿気を吸収して食器を素早く乾かす。ゼオライトは交換や補充の必要がないメンテナンスフリーで半永久的に使える。

温風による乾燥に比べてエコな点も、環境意識の高いヨーロッパらしい。「45リットルモデルも60リットルモデルも、使用する水の量は10㍑ほど」と節水効果も高い。電気と水道代もランニングコストを抑えられるなど、日本市場でもまだまだ需要が伸びそうだ。






ARIAFINA、レンジフード部品も洗えるハイエンド食洗機


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予約運転が可能で、オプティスタートをONにすれば定期的に水を噴射し、食器についた汚れが固まるのを防ぐ

上質なキッチン空間に調和する設備として注目されるのがARIAFINA(アリアフィーナ)。富士工業と、イタリアのエリカとの合弁会社で、レンジフードやキッチン家電を中心に美しさと性能を両立するハイエンド製品を提案する。

レンジフード「Viviana」はフード部とダクトカバー間のくびれで浮遊感を演出。調理状況を温度センサーで感知し、風量レベルを自動コントロールし、フード天面の色温度を自動で感知、周囲の灯りと調和する色温度に追従して変わるなど、美しさと機能面をとことん追求する。オイルを回転させるオイルスマッシャーがレンジフード内部への油の浸入をブロックし、10年間ファンの手入れが不要。その部品を洗える食洗機を開発し、去年の12月に発売した。

「ARIAFINAクリーニング」モードはレンジフードのステンレス部材を洗え、オート機能で汚れを感知して目安の作業終了時間も表示される。スイスのアプライアンスメーカーと共同開発し、スイスの精緻な感性を取り入れている食洗機だ。

「バスケットはあえて2段。その分下段のバスケットに深さを出して26㌢のフライパンを立てて入れられる。カトラリーも立てて洗え、水落ちもいい。また高さ780㍉で800の高さの日本のキッチンにも合わせられる」(同社)

独自のスチームフィニッシュは76℃の真空スチームを発生させて庫内に10分間噴射。食器類やグラスに残った水滴を落とし、仕上がりの水滴の跡を抑えられる。

騒音を抑える注水コントロール機能や防音素材を採用して、eco洗浄コースで38dBの静音運転が可能で、洗い上がりの美しさを追求しながら実用性も備え、上質な暮らしにマッチする食洗機だ。




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【インタビュー】ノーリツ 代表取締役社長 竹中 昌之 氏




(日本物流新聞2025年7月25日号掲載)