1. トップページ
  2. 特集記事一覧
  3. 作業工具の新定番 〜安全・効率・耐久の品質革命〜

作業工具の新定番 〜安全・効率・耐久の品質革命〜

投稿日時
2025/11/12 09:05
更新日時
2025/11/13 11:04

現場の基盤となる作業工具。高い精度と耐久性が求められ、国内メーカーは品質の高さで信頼を築いてきた。近年、労働力不足や職人の高齢化により効率化や負担軽減、製品の長寿命化によるランニングコスト低減、あるいはデザイン性の向上など、ユーザーの価値観が多様化している。今の現場で選ばれる作業工具の魅力を探るとともに、次代の定番となるツール像は何か。各メーカーの最新動向と最新提案を追う。


建設現場や設備工事、製造ラインの保守や自動車整備など、幅広い現場で使われる作業工具。労働力不足が常態化するなか、作業時間の短縮や負担を軽減するツールがより求められている。軽量化や握りやすいグリップ、狭所で扱いやすいヘッド形状など、操作性を重視した改良が一段と進んでいる。電動工具の普及がひろがる中でも、仕上げや点検、微細な設備保守では手による作業は不可欠。精度や職人の感覚を伴うハンドツールの強みはいっそう明確化している。

各メーカーは用途別のラインナップ拡充や、耐久性の向上、あるいはブランド化により消費者意識に訴えるなど、提案型の製品展開の動きを強めている。現場の課題解決にいかにコミットできるか。かつての「定番」をさらにアップデートし、新しい定番を生み出す機運が高まっている。

製品選択の大きな要素としてデザイン性も無視できない。スマートなスタイリッシュさを求める業界もあれば、メタリックカラーや虹色加工が高い人気を得ている業界もある。真空蒸着技術により光の反射で玉虫色に輝くように調整するレインボー蒸着は、通常のめっきより弱いため仕上げの際に気を遣い、値段も高価になるという。それでも「想像以上に売れる」(某メーカー)など、実需はたしかにあるそうだ。

また、オーエッチ工業から出た「錫ハンマー」はニッチではあるが、打痕が付きにくく板金用途として用いられる製品。「他メーカーが生産終了してしまって困っている」という声に応えて上市。作業工具メーカーとして、ニーズが大きくなくとも「定番」製品を現場に届けるという姿勢を表した。

■「見せる工場」で地域振興にも一役

製品開発とは別の話として、最近のトレンドとして地域一体型のオープンファクトリーの参加企業が増えてきた。これまで一般向けに公開してなかった生産現場を、担い手不足や事業継承の課題が取り巻く中、近隣企業と連携し公開することで、地域資源の価値の創出に取り組む。 

大阪・関西万博の勢いも後押しし、関西地区のオープンファクトリーは多く開かれている。とりわけ作業工具メーカーは戦前・戦後から続く老舗企業が多く、地場産業との結びつきが強く、今後もその動きは続きそうだ。

作業工具特集_本文画像.jpg

地域一体型オープンファクトリー「FactorISM(ファクトリズム)」ではフジ矢工場に老若男女問わず人が訪れた

2025年10月23日(木)~26日(日)には門真市や大東市、八尾市、東大阪市など大阪や名張市を中心にした「FactorISM(ファクトリズム)」が開催され「こうばはまちのエンターテインメント」という言葉の下に、6年目となる今年は92社が参加。初参加となるフジ矢は実際に稼働する工場見学と、ペンチやニッパーを使ったVA線のマスコットづくりや工具の試し切り体験などを実施。家族連れも含めて57人が訪れ賑わいを見せた。






フジ矢、上質工具ブランドに圧着工具登場

軽い力で確実に圧着し、作業時間短縮


黒地に金のポイント装飾を施した、フジ矢の上質工具「KUROKIN」シリーズ。一世紀にわたり築いてきた老舗工具メーカーとしての信頼と品質の高さと、スタイリッシュなデザイン性が多くの職人の心を掴んでいる。今年8月から、待望の圧着工具が4アイテム登場し注目を集める。開発に携わった同社・開発本部 電設工具開発課の林淳美リーダーに話を聞いた。

フジ矢様_林様_楫様.jpg

開発・デザイン設計に携わった開発本部 電設工具開発課 林 淳美リーダー(右)と量産設計を担当した楫 健太郎氏

――圧着工具がKUROKINのラインナップに加わりました。

「これまで自動車の電装部品に使われる簡易圧着は扱っていましたが、電気工事で使う本格的な圧着工具はフジ矢としても新規カテゴリー。ずっとKUROKINユーザーの方からは『圧着工具を出してほしい』と言う声を多くいただいており、デザイン性の高さと機能面でも魅力のある圧着工具を形にできました」

――特長は。

「第一は圧着の軽さ。ダイスの圧着面積を最小限にし、圧着の力を集中させることで軽い力で確実に圧着できます。グリップを少し長くし、大きな端子や力が要る端子では外側を握れるため、てこの原理を活かして少ない力で圧着できます。連続・長時間作業でも疲れにくく効率的に作業できるよう設計からこだわっています。ロンググリップ仕様としながらも職人さんが使って違和感がないレベルで調整しています」

――電設現場の生の声を取り入れながら開発されました。

フジ矢_圧着工具.jpg

ユーザーから要望の多かった圧着工具が「KUROKIN」シリーズから誕生

「現場の声が如実に表れたのはグリップ面ですね。従来の圧着工具に比べ、本体の金属部分の露出を減らした形状に設計しました。実際の現場では電気を切ったと思っても流れている場面もあるそうで『作業する手が触れないようにしてほしい』と安心して作業してもらえるように、万が一の感電リスクを減らす工夫を持たせました。また、長年使っているとグリップの接着剤が緩んでズレたり抜けたりするため、『返し』をつけて構造的に抜けにくい設計にしつつ、手が当たる部分は柔らかい素材を採用して握りやすくしています」

■一丁を長く使える高耐久性を

――上質工具としてワンランク上の圧着工具に。

「破損原因として多いバネ部に、通常使われる丸線バネではなく角線のバネを採用しました。社内での連続耐久試験で4万回の開閉に耐えられ、タフに長く使っていただける設計にしました」

「ダイス部の表記も大きなこだわりの一つ。ダイスの形状に合わせて、対応端子サイズが分かりやすい表記デザインで視認性をアップ。レーザーマーキングで表面を荒らしてUVプリントを施しているため経年により剥がれることもありません」

――圧着部分がKUROKIN特有の黒メッキ仕上げで重厚感があります。

「あらゆる『黒』を試して、最もしっくりくるデザインをじっくり模索しました。強みであるデザイン性を前面に出しながら、『使い心地が良いもの』も追求しています。グリップが長くなり、重厚感のある外観ですが、実際に持つと手元に重心があるため軽く感じていただける。ラインナップは裸端子・裸スリーブ用のサイズ違いで2種、銅線用・リングスリーブ用、絶縁被覆付閉端接続仕様の主要な4アイテムを上市しました。今後もラインナップを増やしていく予定です」






ロブテックス、明るさでなく色の『再現度』を徹底追求

99シリーズ発、ワークライトの新定番


ロブテックスが発売したLEDワークライト「J-CRAFT99 JBLWL1/JBLWL2」は、工具業界に“色の再現度”という概念を持ち込む新しいライトである。重視したのは明るさを表すルーメン(lm)ではなく、演色性(Ra)という製造業界隈ではあまりなじみのない数値だ。照らした物の色をどれだけ忠実に再現できるかを表す指標で、100に近いほど自然光(太陽光)に当たった際の色に近いとされる。JBLWL1/JBLWL2のRaは97で、つまりこのライトで照らすと極めて太陽光に近い色が再現できる。美術館で求められるレベルがRa90以上と言われることを鑑みれば、これがいかに高い数値か伝わるのではないか。

IMG_2098.jpg

配電盤の筐体やエアコンの室外機などにマグネットで取り付けて使える

IMG_2132.jpg

クリップ式と折り畳み式の2種類

作業用ライトをかざしたときに照らした物が本来の色味とかけ離れてしまうのは『あるある』だ。特に昨今のライトはLED化で明るくなったぶん、いわゆる白飛びも起こりやすい。配線のほか産業機械や車の修理など込み入った箇所の作業はどうしても手元が暗くなりがちで、配線やオイルの色が正しく判別できないと作業は途端にストレスフルに。外観検査で微妙な塗装の色ムラを見分けられないと不良品のリスクにもなる。これらの諸課題を解決する商品が様々な業界で望まれており、その声に応える形で同製品が生み出された。

太陽光比較16_9.jpg

ワークライトは海外製品が多いが、J-CRAFTは“日本品質”を重視しており今回のJBLWL1/JBLWL2は一貫して国内製造だ。クリップ式(JBLWL1)・折り畳み式(JBLWL2)ともに「強すぎず弱すぎない絶妙な塩梅のマグネット」(国内営業部営業企画チーム渡邉達哉氏)を採用しており、細部の使い勝手にこだわった。このサイズでこうも演色性を重視したワークライトは「(工具業界では)おそらく初」という。クラウドファンディングでの先行発売は初日に目標を達成、8月の正式発売後も売れ続けており取材時点で「欠品も間近」と嬉しい悲鳴も聞かれた。

色味はっきり_.gif

■職人の工具を揃えたい

ワークライトを含む「J-CRAFT99」は所有感を満たす格好良いデザインをエビ印の品質で形にした、新たな工具シリーズだ。並んだふたつの9が表すのは「常に百(完璧)を目指して進化を続ける」という思い。同シリーズはハイペースで新製品を発表し、最近ではモンキレンチやペンチニッパなどの定番工具のみならず、空調工事用の水準器やボード鋸カッターなどややニッチな工具もラインナップし始めた。

IMG_2118.jpg

国内営業部 営業企画チームの桜井舞花さん。LEDワークライトを手に

「最終的には職人さんの工具を一式すべて揃えたい。彼らが本当に求めているものを開発するのが99シリーズだ」と渡邉氏は力を込める。そのためにユーザーの生の声を拾うことを重視しており、職人が集まる場に足を運んで課題を集めたり試作品を持ち込んで使い勝手を試してもらったりする。ワークライトもこうした生の声から生まれた製品だという。

明るさより演色性を重視することで、ワークライトの新境地を開いた同社。今後は「演色性の高いライトの種類を拡充したい。色が判別しやすいライトをロブテックスの新定番にできれば」と展望する。






ミノル工業、進化する電設工具の「定番」

開発力で軽天作業の効率化極める


国産電設工具メーカーのミノル工業。創業50年を超えて蓄積してきたノウハウで次代の定番となる工具を生み出してきた。同社の信条は「世の中にないモノ以外はつくらない」。求められる定番をそのまま受け継ぐというより、自ら新たな進化や変化を積極的に創り出し、作業負担を減らし効率化をかなえる作業工具で電気工事の現場を支えてきた。

ミノル工業_Mバーカッター.jpg

ヘッドが360度回転し、干渉物を避けるMバーカッター「MC30M500」は精度においても作り込まれている



ミノル工業様_Cチャンカッター.jpg

切断初期から力を最大限加えられる機構を採用したCチャンカッター「MC30C500X」

省エネや蛍光灯の製造中止とともに増えているLED照明へのリニューアル工事。既設の建物への工事は深夜や場合によっては営業中に行うこともあり、騒音や火花を避けなければならない。電気工事に必須のMバーカッターとCチャンカッターにもミノル工業独自の機構に工夫が凝らされる。

開口補強や照明器具の埋込みなどの軽天作業では工具のハンドルなどが壁面などに干渉してしまい、施工しづらい場面がある。Mバーカッター「MC30M500」は、ヘッドが360度回転し、ハンドルが干渉する壁面をよけて天井などを吊るMバーを切断できる。髙橋功社長が「干渉物を避けられる軽天道具を作れないか」と研究開発メンバーに投げかけ、生み出された同製品は特許も取得済み。また、ハンドルにある2つの軸が両手の力を刃に伝え、作業者の身体負荷を軽減。2軸で刃を上下させる機構を採用しており、力が入りやすいタイミングで切断されるためハンドル荷重が軽い。両ハンドルを均等に動かさなければならないため精度が必要で、同社のこだわりが詰まった専用工具だ。

他にも、独自のツインカム・オート偏心機構を採用したCチャンカッター「MC30C500X」もベストセラー製品の一つ。連続的に移動するカムのあたり面を中心軸の代わりとして利用した機構で、両サイド軸とあたり面の角度を大きく開けられるため、常に最適な力が出るポジションで動き、軽い力で切断できる。従来では大きな力を加えられない切断初期段階から力を最大限活用でき、作業時の負担を軽減する。Cチャンの形状を踏まえた最適設計を活かすために個性的な形状の刃を採用するなど改良を進めている。旧モデルの全長680㍉から500㍉とコンパクト化し、頭上で行う作業工具の軽量・小型化も進めている。






スーパーツール、ワザ際立たせる「黒」で配管工具を刷新

ベアリング装備チューブカッターなど3機種


幅広い産業で使われる多くの作業工具を開発・製造してきたスーパーツール。多彩な看板商品を持つ同社が、スタイリッシュなカラーリングを施した配管工具でデザイン性を追求。新たな幕を開こうとしている。

スーパーツール_安岡様_中井様_02_補正済み.jpg

新コレクション「黒の匠」を手に持つ営業企画開発部 営業企画開発課の安岡亮係長と技術開発部 技術2課の中井美歩氏 

金属製のパイプや塩ビ管など筒状の管を真円に近い状態のままで切断するチューブカッター。電動工具と違い、音も静かで火花も出ないため場所を選ばず作業できる。中でもスーパーツールのチューブカッターは、刃の切れ味のよさで定評があり国内で大きなシェアを持つ。その人気のチューブカッターのラインナップが今冬、確かな品質と実績をあらわす黒一色で彩られ、新シリーズ「黒の匠」として展開される。

美観向上だけでなく、支持が厚い作業工具に絞って品質の高さをあらためて訴求する「黒の匠」シリーズ。初陣を切るのはプロ向けからDIYまで幅広く高評価されているチューブカッターの売れ筋3機種の9種類だ。

スーパーツール01.jpg

黒をまとわせた高品質工具や定評のある製品を「黒の匠」として訴求強化する

空調配管などに使う銅管に特化した「TC-NB」は、特殊合金鋼のカッタホイールに最適な熱処理を加えた鋭い切れ味が特長。切りくずが出ず、切り口もきれいに仕上がる。管のサイズにより4種類をラインナップし、5~28㍉の外径対応の「TC104NB」はミニボディでありながら使用範囲が大きく狭所作業でも使いやすい。

ベアリングを装備した「TCB-B」シリーズはステンレスパイプ対応の人気商品。ステンレス向けに切れ味と耐久性を両立するため刃の先端の角度を調整しており、回転を滑らかにするベアリングが、管を支えるローラー部とカッタホイールの両方に装備。「抵抗なくするすると軽く回せる。硬い管も軽い力で切断できる」(技術開発部技術2課・中井美歩氏)と好評な一品だと言う。管のサイズに応じて3種類を揃える。

スーパーツール02.jpg

ベアリング装備のチューブカッター「TCB-B」は軽く回せて楽に切断できると人気の製品

TC-NBもTCB-Bもどちらも肉厚3㍉まで対応。支持ローラーとカッタホイールで管を挟んで回転させるチューブカッター。管に対して直角に刃を当てられ、「断面のかえりを抑えるため、カッタホイールの刃の角度や、熱処理の加減など、長年のノウハウで絶妙な調節で仕上げている」(中井氏)と実績とこだわりを体現する工具でもある。

ストレート管以外には蛇腹形状のフレキシブル管対応チューブカッター「TC105NFB」「TC107FB」も黒の匠のラインナップに加える。管を受けるローラー部を長形で広くし、補助ローラーで安定して挟めてフレキシブル管も最後までスッキリと切断できる。

また、販売形式もアップデート。従来品は本体と替刃をそれぞれ別売りだったが、黒の匠からはセット購入が可能。「セット売りの要望はこれまでもあり、その点でも需要が期待できる」と営業企画開発部 営業企画開発課の安岡亮係長は予想する。

同時に「評判の高いスリムヘッドウォーターポンププライヤもラインナップに追加予定」(安岡係長)と黒の匠の波が続々と到来する。






ベッセル、電動ラチェット新定番化

万博出展の未来キャビネット構想へ


ベッセル.jpg

電動スリムラチェット(左)と電ドラボールⅡを手にする営業企画室の岩﨑凌実氏

手動と電動のハイブリッドで整備現場に新風を吹き込んだ、ベッセルの電動スリムラチェット「No.400ER3」が定番の地位を築きつつある。ボルトナットの早回しは電動で、本締めやゆるめは手の感覚で行う。送り角6度の細かな操作性で狭所でも自在に回せることから、作業効率を大幅に高める製品として注目されている。

発売当初は人気が先行し、一時的に生産と流通が追いつかない状況もあったが、現在は生産体制の整備により安定供給を実現。エアラチェットを電動化した他社製品も並ぶ中でも、同社は「既存のハンドツールを電動アシスト化する」という独自のコンセプトで差別化を果たした。

「ハンドツールを普段使う現場には特に刺さる商品。エアツールを導入していない工程、例えば機械保守・メンテナンスやセル台の組立などでの省力化効果は大きい」と企画部の長田吉生氏は語る。

また、同社の代名詞的商品である「電ドラボール」も今年7月にフルモデルチェンジを果たした。新シリーズ「電ドラボールⅡ 220USBC」は、USB Type-C充電に対応し、出力トルクを従来の2.0から3.0N・mへと強化。堅牢性も向上した。

「これまでの改良の集大成であり、次世代を見据えたフルモデルチェンジです。ユーザーの声を反映しながら、次の派生展開も計画しています」と長田氏は話す。

さらに、同社は5月、大阪・関西万博「大阪ヘルスケアパビリオン」で開催された「リボーンチャレンジ」に出展。空飛ぶクルマの整備工場を想定し、必要な工具を自動で運搬・選定する“未来のツールキャビネット”を公開した。

「2035年の整備現場を想定したコンセプト展示。日々の開発はもちろん、こうした“ロマンを持った研究”も次世代製品の発想源になります」と長田氏は語る。

ベッセルは現在、工具メーカーとしてひとつずつ、「1番」を目指す戦略を取る。そのひとつとして2か月に1度の新製品発表を掲げ、「最も多く新製品を出す工具メーカー」を目指す。

営業企画室の岩﨑凌実氏は「未来のツールキャビネットにふさわしい製品を、ひとつずつ磨き上げたい」とし、未来のツールキャビネットをひとつひとつ埋めていく。






エンジニア、高機能性×魅せるカラーで注目

ジェンダー不問で人気色のピンク


ネジトラブル解決のための独自工具を開発、販売するエンジニア。頭が潰れて回せなくなったネジや錆びたネジを挟んで外せる看板製品「ネジザウルス」シリーズに、ブラックと鮮やかなピンクで彩った「PINK&BLACK」シリーズを新展開。機能性の高い製品をチョイスしグリップ部をブラックとピンクのビビットなカラーコーディネートで仕上げた。

代表製品はモンキーレンチとパイプレンチの2つの機能を融合した「TWM-13P ハイブリッドレンチ」。モンキーレンチ(最大対辺38ミリ)とパイプレンチ(径6~45ミリ)の2つの機能を併せ持ち、それぞれ両方の用途でも使える。なめてしまったボルトも回せる「ネジレスQ」機能も搭載。高精度なウォームギアでスムーズに開閉できる。工具袋に収納しやすい薄型グリップやカラビナが通しやすい径10ミリのストラップホールなど現場の職人が求める利便性にも配慮。ストラップホールはグリップ内部の金属本体も貫通した高強度設計としている。「発売前から予約注文が多く入っていた」(同社)と当初から注目を集める製品だ。

エンジニア_ピンク&ブラック_TWM-13P_c.jpg

なめたボルトも回せる、モンキーレンチとパイプレンチが融合した「TWM-13P ハイブリッドレンチ」。黒とビビットなピンクでファッショナブルに

このほか、ネジ外し機能を搭載したラジオペンチ「PZ-61P ネジザウルスZ Plus」も同シリーズに登場。細丸棒を掴める四角溝や、アルミスリーブを平らにつぶせるフラットプレスなど、多種多様な溝でマルチに使えるラジオペンチで、ファッショナブルなピンクと黒の組み合わせが幅広い作業現場にフィットする。

当初はターゲット層として「『ゲンバ女子』向けに使いやすさを意識していた」(同社)というが、発売後は「目立つため工具箱の中でも探しやすい」、「個性を表せられる」と性別を問わず支持されているという。感度の高い若い世代だけでなく、一目で見つけられるカラーリングと機能性の高さであらゆる世代に選ばれる「ジェンダーフリーかつエイジレス」と次の定番となるポテンシャルを持つ新シリーズ。現在29製品を展開しており、今後24製品がラインナップに加わる予定だ。

■万博の熱気受け継ぐ、公式ライセンス商品も好調

会期後半にかけて駆け込むように注目が高まり、大盛況のうちに幕を閉じた大阪・関西万博。公式キャラクター「ミャクミャク」の関連グッズも好調で「ミャクミャクロス」という言葉も上がる中、エンジニアから「機械工具業界で唯一の公式ライセンス商品」(高崎充弘社長)の「PZ-58MM ミャクミャクザウルス」(税込み3630円)が販売中。数量限定・期間限定でネットショップだけで販売されているが、万博の熱気冷めやらぬ中、売れ行きは好評だという。「ネジザウルス GT」の本体にミャクミャクのレーザーマークを施し、グリップを赤と青のミャクミャクカラーで仕上げた特別仕様(専用キャップ付き)。つぶれたネジを簡単に外せる機能はもちろん、ビールの栓抜きやジャム・はちみつの瓶の蓋をグリップで回すなどキッチンでも活躍する。「可愛らしさと実用性を兼ね備えたミャクミャクザウルスは、女性を中心に人気が高まっている」(高崎社長)。

エンジニア_万博_PZ-58MM.jpg

なめたボルトも回せる、モンキーレンチとパイプレンチが融合した「TWM-13P ハイブリッドレンチ」。黒とビビットなピンクでファッショナブルに






オーエッチ工業、特許取得の新型ベルトラッシング

荷締めの安全性と作業性向上


職人の目線に立ち、職人の手元を支える工具の改良を通して現場の効率・生産性向上に力を注いできた作業工具メーカー。作業工具と共に物流機器も手掛けてきたオーエッチ工業は、同じ姿勢で物流現場の困りごとにも独自の製品で対応する。

オーエッチ工業様_上野山様.jpg

開発部・上野山歓紀主任

トラックに積載した荷物を固定し荷崩れや落下を防ぐために使うベルトラッシング。通常、ベルトラッシングは巻取り側にラチェット機構があり、ハンドルを複数回往復させてベルトを巻き取り、荷物を固縛する。もう片方のベルト長さは固定されており、そのためトラックや荷物の形状や大きさによってはバックル本体と荷物が接触してしまい、荷物に傷がついたり、きちんと荷締めできないといった課題があった。

オーエッチ工業がこのほど開発した「VANTIS(バンティス)」は、固定側の長さが調整でき、最適な位置にラチェット本体を自在に移動できる機構を備え、荷物に合わせて柔軟に固縛できる。ラチェットに開閉機能を組み合わせた特許取得済の本体金具により、固定ベルト調整機能を備えた独自のベルトラッシングだ。金具が当たって運搬中にくい込んで荷物を傷つけてしまうリスクを減らせる。

オーエッチ工業_金具本体.jpg

VANTISの左側にある金具が独自の開閉機構となっており、ベルトの長さを変えられる

本製品は固定ベルト側のバックルを開放しベルトを引っ張るだけで位置調整が可能。本体をちょうどいい場所まで調整した後は、通常のベルトラッシングと同様に巻取り側のベルトを引っ張り、テンションをかけ、ラチェットを動かし荷物を締め付ければ完成。

「今夏のJAPAN DIY HOMECENTER SHOW に参考出品し、いよいよ量産体制に入る。今後の売れ行きに期待が持てそうな手応えがある」(開発部 上野山歓紀主任・以下同)

VANTISの由来は「Variable New Tie System」の頭文字をとったもので、可変式のベルト固縛のシステムを意味する。固定側のベルト長さは0.3~1mの間で変えられる。「これまで現場では、固定ベルト側の長さが異なる2つのベルトラッシングを用意して、荷物に応じて使い分けていたが、位置を変えられるVANTISなら中間の長さにも対応できるうえ、同じもの2つを持ち運ぶムダもない」。

挟まれ防止のストッパー付きで、絞り縫製とJフックを標準ラインナップ。使用荷重は750重量キロ、破断荷重は3000重量キロ。

「新しい機構を付け加えることで、ハンドルを閉じた際の干渉が生じたり、それを避けるために本体が長くなってしまう。キックばねの採用や不要な部分をなくしたり、金具のオーバーセンターバックルの寸法もぎりぎりまで調整した」と最適な位置関係を実現した。






リングスター、まちと工場が出会うオープンファクトリーも

老舗工具箱メーカーが挑むオーシャンプラスチック


高耐久性プラスチック工具箱のパイオニア、リングスターは頑丈で割れないかつ軽量なプラスチック工具箱にエシカルチョイスという新しい選択肢を提案している。

長崎県対馬市に漂着した海洋プラスチックごみ(オーシャンプラスチック)を使用した「対馬オーシャンプラスチックバスケット」を今年の大阪・関西万博で協賛品として提供した同社。公式ストアのショッピングバスケットとして多くの来場者の手に触れ、高耐久性を活かしバックヤードの補充などでも大いに活用された。万博会場で6月に開かれた「対馬ウィーク」ではリングスターが本社を置く奈良県生駒市と、対馬市の中学校が交流し、唐金祐太取締役営業部長によるトークセッションなど、プラスチック製品を通した海洋汚染解決の最前線に立った。

リングスターTOPプラ.jpg

漂着ごみとなったオレンジ色のブイを10%配合した対馬オーシャンプラスチックによる高耐久性ツールボックス。中皿の高さや位置を調整可能で使いやすい

年間約2万個以上が漂着するというポリエチレン製の青いポリタンクを10%配合しており、バスケットの他、プラスチックボックスやパーツケースなどラインナップを増やしている。

4月には対馬市に漂着したオレンジのブイを回収し再ペレット化したものを10%配合したボックス(=写真)も展開。柔らかなオレンジ色のツールボックスはこれまでない色合いで、目立ちながらも、どのような場面にも馴染む存在感が魅力。

持ち前の耐久性や機能性へのこだわりで生み出した「再生プラスチックなのに長く使える」というコンセプトで、青いポリタンク由来の再生プラスチック同様、独自のリブ構造などにより従来製品と同じ耐荷重を持たせた。便利な中皿は、左右にスライドしたり高さが調整可能など使い勝手もよい。同シリーズであればスタッキングもできるためスペースも有効活用できる。

漂着時には汚れや破損があり、回収からリサイクルまでのプロセスに時間とコストがかかるオーシャンプラスチック。「強度とリサイクルを両立できるのが10%配合までだが、長く使っていただくことが大切。再利用で使用量を増やせば解決ではない。海洋プラスチックごみの現状を知ってもらうために作っている」(同社)と説く。

工事現場や建設現場でも広いシェアをもつ同社の工具箱は、釣具箱としても人気が高い。「釣り好きな方や、社会貢献したい方に響いている。『リングスターが出すなら信頼できる』と言ってくださる」(マーケティング室広報篠田玲羅リーダー)と長年培ってきた品質と信頼でサステナブルなプラスチック工具箱の支持を増やす。

■工場の扉開き、「まちの縁」繋ぐ

地域活性化や採用力のアップにつながるオープンファクトリーが近年増加している。11月22日(土)には、生駒市の製造企業6社が集まり、工場を一斉に公開する初のオープンファクトリー(主催生駒市)が開催される。創業130年を超えるリングスターを初め、イーグルクランプや森田スプリング製作所、フジフレックスなど高い技術力をもつ工場が参加し、家族連れやモノづくりに興味がある一般向けに工場を紹介。無料巡回バスも運行し、生活を支えているモノづくり企業と地域を繋ぐイベントだ。

大阪・関西万博では関西地域のモノづくり企業がフィーチャーされる機会が多くあった。地域一体型オープンファクトリー参加企業も増加しており、モノづくりと地域の関わり方は新たな展開の中にいる。






現場に『ちょうどいい』作業工具【1】


東日製作所、Win・iOSと通信可能なトルクレンチ

Excelや帳票電子化シスに自動入力


241125作業工具_東日製作所.jpg

東日製作所の無線式データ伝送トルクレンチ「CEM3-BTLAシリーズ」は、HOGPプロファイル(キーボードインターフェース)を搭載することで、WindowsやiOS機器との無線通信を可能にした。Excelへのデータ入力や市販の帳票電子化システムと連携できると共に、タブレットなどとの連携もしやすくなった。

Bluetooth搭載のデジタルトルクレンチ3機種(CEM3-BTS、CEM3-BTD、CEM3︱BTAシリーズ)を1機種に統合した「CEM3-BTシリーズ」の特殊仕様品であり、単方向通信のBSTシリーズと双方向通信のBTDシリーズ、角度センサー搭載のBTAシリーズそれぞれの機能を追加購入なく使用できる。 また、トルクと角度を測定することで2度締めや「かじり(焼き付き)」による回転角不足でのトルクアップの検出など高度な合否判定も行え、本質的な締付けの信頼性向上が期待できる。

現状、連携が確認されているシステムは、i-Reporter(シムトップス)、XC-Gate(テクノツリー)の2つ。ファームウェアバージョンがVer2.1以降であれば、送信データ末端のエンドコードに「TABキー」が選択可能となるため、XC︱Gateへのデータ入力の自動化にも貢献できる。




現場に『ちょうどいい』作業工具【2】


MCCコーポレーション、多サイズ対応のプリセット形トルクレンチ


MCC.jpg

プロ向け配管工具を手がけるMCCコーポレーションからは多様なサイズに対応できる「プリセット形トルクレンチ30・50」を紹介。

設定値に達したらカチンという音とクリック感で締め付け完了を知らせるプリセット形トルクレンチ。主目盛と副目盛を回転させて簡単にトルク設定が可能で、汎用性が高く連続作業を効率的に行える。

CWTP(ポリパイレンチ)ヘッドを搭載した「TQC3-30」(設定トルク範囲40~140N・m)と「TQC3-50」(同80~200N・m)は通常のコーナーレンチよりもワイドな口開きで、円形だけでなく、六角形・八角形の材料でもラチェット操作が可能。加えてTQC3-30は13ミリメートル、TQC3-50は18ミリメートルの極薄歯幅が大きな特長。つかみしろが狭い材料でもトルク管理が行え、配管作業現場で重宝する。

プリセット形トルクレンチとCWTPヘッドの組み合わせで鋼管をはじめ円形、ポリエチレン管金属継手等の六角形・八角形の材料にも対応し、幅広い作業のトルク管理を効率化する。

「TQC4-50」(設定トルク範囲80~200N・m)にはCWVDA(白管・エンビ被覆管兼用)ヘッドを搭載。「塩ビ系被覆管の締め付けトルク管理がメインの現場には、歯山の細かいTQC4-50が最適」(同社)とおすすめする。

専用スチールケース付属で、精密工具のトルクレンチの保管・運搬も安心できる。




現場に『ちょうどいい』作業工具【3】


ミノル工業、圧着工具にNEWハンドル、開き幅狭めた新仕様


ミノル工業_製品画像_圧着工具.jpg

ミノル工業による自社ブランド工具「M Creative」から登場した、新仕様のハンドル採用の裸圧着端子・スリーブ用圧着工具「MC10H002J」。ハンドル開閉時の開き幅を約20%狭くし(同社比)、握りやすさをアップさせた。「制御盤やハーネスの圧着作業は女性の作業者が多く、握りはじめを狭くして小さい手でも握りやすい仕様にした。圧着荷重も軽減できる」(同社)という。

安全・確実に圧着作業を行えるJIS製品で、手にフィットするグリップは連続作業でも負担が少ない。端子・スリーブの呼び1.25平方ミリメートル、2平方ミリメートルに対応。全長167ミリ、質量は235グラムと軽量かつコンパクトだ。

電線作業にかかわる圧着工具は、圧着端子のかしめ不足や緩みが発熱や火災のリスクに繋がる。髙橋功社長は「1丁ずつ同じ品質と加工状態を保ち、安全面には特にこだわる」とし、「JIS規格の認定条件である3万回の連続試験に追加して5000回、合計3万5000回の耐久試験を課している。これを3年に一度、全形式に実施。耐久性も大事だが、圧着不良を起こさないために、ダイスの嚙み合わせなど数マイクロの調整で最適化している」と作業工具を通して電設現場の安全と信頼を守る。



(日本物流新聞2025年11月10日号掲載)

Mono Que公式SNS