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食品工場スマート化総合展、自動化ニーズで規模倍増

投稿日時
2025/11/06 16:42
更新日時
2025/11/07 09:12

4万人の来場を見込む西日本最大級の食品展示会「ファベックス関西」内で開催される「食品工場スマート化総合展」(主催:日本食糧新聞社、特別協力:日本物流新聞社)が、11月26〜28日にインテックス大阪で開かれる。食品業界で深刻化する人手不足やDX推進の波を受け、出展社数・小間数ともに昨年比で倍増。関西における食品工場自動化への関心の高まりを象徴する。


惣菜を中心とした中食市場の拡大に合わせて成長してきたファベックスは、食品・食材だけでなく、容器メーカーや製造・包装機械メーカーも集う“食の総合展”として発展してきた。主催の日本食糧新聞社・平山勝己副社長は「機械と食品を同じフロアで見られる展示会は今でも少ない。食材を探しに来た来場者が『ついでに容器も』『そろそろ工場設備も更新を』と、思わぬ出会いが生まれる」と話す。

関西にはFOOMA JAPANのような大規模な食品機械展がないこともあり、同社は2023年に「食品工場スマート化総合展」を新設。創設3年目を迎えた今年は「関西の食品産業を支える製造・設備の展示会」として、規模・内容ともに拡大路線に入った。平山副社長は「来場の8割以上が関西圏。東京とは違う商流や課題がある。地場に根ざした展示会として、独自の価値を発信したい」と語る。

■AI・ロボットが省力化を後押し

今回は『スマート化』を一層強化。中国協働ロボット販売首位のDOBOT社の製品を扱うフレアオリジナルが出展し、協働ロボットによる食品製造支援を紹介する。 また、機械工具商社の山善は、ディープラーニング(深層学習)AIを活用した画像検査装置「EYEbe Genesis」を披露。具材盛り付けの検査(具材の抜けチェック)や包装後の印字検査を自動化し、食品工場の生産性向上を支援する。

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さらに、キャッチパレットトラックで知られるをくだ屋技研は、油圧作動油の代わりに水系制御液「エネスイ」を採用した食品対応搬送機器を展示。象印チエンブロックも、食品工場での衛生基準に対応した製品を提案する予定だ。

このほか、A・R・Pやユニバーサル産業、A&Cサービスなど、省力化・自動化技術を手がける注目メーカーが多数出展。食品業界の「人手不足」「品質管理」「省エネ」といった課題解決に向けた最新提案が一堂に会する。






(一社)日本惣菜協会 AI・ロボット推進イノベーション担当 フェロー 荻野  武 氏

惣菜製造の全工程にロボ実装盛付ロボ普及段階に

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人手不足が深刻化する食品業界の中でも、とりわけ惣菜分野の自動化ニーズは高い。担い手不足が深刻だからだ。一方で盛り付け工程などは非定形作業も多く、機械化の難易度が高いとされてきた。こうした中、経産省のロボフレ事業(革新的ロボット研究開発等基盤構築事業)のもとで、惣菜製造現場の自動化が急速に進展している。取り組みを主導してきた(一社)日本惣菜協会 AI・ロボット推進イノベーション担当 フェローの荻野武氏に、これまでの歩みと今後の展開を聞いた。

——なぜ惣菜分野のロボット化が求められているのでしょうか。

「食品製造業は約120万人が従事する製造業で最も人手を要する分野です。中でも惣菜製造はそのうちの半分近くを占めながら、労働生産性が最も低い領域です。特に不定形で頻繁に内容が入れ替わる盛り付け工程は自動化が難しい。人手不足の深刻化により、産業の維持が困難になっています。こうした課題は、2020年に経済産業省を中心に議論されたロボット技術の活用促進の中でも問題視され、『ロボット化の一丁目一番地』との認識が共有化されました。その解消を目的に始まったのが惣菜領域のロボフレ事業です」

■全行程のロボ化完了

——ロボフレ事業の取り組み内容について教えてください。

「これまでにも盛り付け工程の機械化・ロボット化は試みられてきましたが、成功例は大手メーカーが多額の資金を投じ開発した自社専用の高性能システムに限られていました。本事業は業界の99%を占める中小企業でも導入できるよう共通の課題を業界全体で集約し、複数の装置メーカーやユーザーが協働で取り組むことで、開発コストの分担と量産効果を高めた点に大きな違いがあります」

——具体的な取り組みは。

「2021年度にマックスバリュ東海の現場に向けて「ポテトサラダ盛り付けロボット」を開発したのが出発点です。デジタルツイン技術などを駆使しながら、わずか半年で装置開発、現場実装しました。翌22年度には和惣菜を含む多品種対応(関東ダイエットクック、ブンセン)と小型化(ホームデリカ)を進め、23年度にはマックスバリュ東海に現場を戻し、容器供給から盛り付け、検査、トップシール、ラベリングまで一貫して自動化した『惣菜盛り付け統合システム』を構築しました」

「ロボフレ事業の最終年度となった昨年度には、前年までに開発した17種類のロボットシステムに加えて5種のシステムを開発。麺惣菜、寿司弁当、フライ弁当の全工程に対応したロボットシステムをそれぞれ現場実装しています。他にも自動搬送システムなど周辺技術の開発・現場実装を行い、ほぼすべての盛り付け現場・工程に対応可能なソリューションを整えました」

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——ロボフレ事業が終了した現在、どのような取り組みを行っていますか。

「これまでに実装してきた技術の普及拡大に取り組んでいます。ロボフレ事業で支援をいただいた経産省が進める『ロボット導入地域連携ネットワーク』やロボットシステムの標準モジュール化の取り組みと連携し、様々な地域・分野へと活動を広げています」

「一方で、ロボフレ事業の流れを引き継ぐ形で、農林水産省の中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)においてロボットシステムの小型化・低価格化を進めています。ロボフレ事業でも連携してきた食品分野の装置開発スタートアップのコネクテッドロボティクス、FingerVision、Closerを中心に13社が参画。昨年度から4年をかけて、対応具材100種以上のハンドリング技術の開発やシステム製造原価500万円以下への低減などを目指し取り組みを進めています。他にも保全・販売・リースといった共通基盤を整え、より現場に実装しやすい環境を整備していきます」

——ロボフレ事業を振り返っても年々システムが大幅改善されています。ユーザーとしては導入時期が難しいように感じます。

「ご指摘の通り、まだスピードや精度に改良の余地のあるシステムも残っています。一方で、当初より取り組んできた惣菜盛り付けロボットシステムは、実用化できる段階に達していると思います。今年度中には量産にも対応したモデルが発表される予定です。ポテトサラダなどの物量が多い惣菜の盛り付け分野でお困りの企業は導入を検討してもよいのではないでしょうか」

「他のシステムを実装した企業でも、生産性の向上はもちろんですが、それ以上に現場の雰囲気が大きく変わったと感じます。最初こそロボットに対する戸惑いはありますが、ロボットと一緒に現場を少しずつ作り変えていくことで『チャレンジしてもいい』という雰囲気が生まれ、やりがいを感じる方も多いようです」

——効果は生産性だけでない。

「そうです。ロボットを導入することで本来取り組むべき業務に集中できるようになり、従業員のモチベーション向上などの良い影響がありました。『ロボットフレンドリーな現場構築が結果としてヒューマンフレンドリーな現場づくりに役立った』と話す企業もいます。他にも業務の棚卸しやノウハウの見える化など、今後、デジタル化や生成AI活用が必須となる中で企業を維持・成長させていくのに避けて通れない領域の準備にも役立ちます。このようにロボット導入をきっかけとして、持続可能な惣菜業界の実現に寄与できると信じています」






食品工場スマート化総合展 注目出展企業


A・R・P

【ブース番号:1A-23】

食品包装の密封不良を自動検出


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リークチェッカー(仮称)は、食品包装の密封不良を自動で検出する検査装置だ。袋を一定の力で加圧し、その際に生じる反発力をロードセルで測定、設定した閾値との比較によりOK/NGを自動判定する。これにより、「人手による検査のばらつきや見逃しを防ぎ、検査工程の省人化と品質安定を同時に実現します」(同社)とアピールする。




A&Cサービス

【ブース番号:1D-20】

積付け、搬送工程を自動化・省力化


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「ストレッチフィルムやめませんか?」をキーワードに、荷崩れ防止用グルー塗布システム「グルーマスター」を活用したソリューションを提案する。同製品は水平方向の滑りに強い水溶性接着剤の塗布システム。パレタイジングロボットなどと組み合わせることで、積付け作業と荷崩れ防止策を同時に自動化できる。積付け後にストレッチフィルムを巻く必要がないため、包材の廃棄量の削減にも寄与する。

他にも、重量物搬送をサポートする真空方式バランサー「イージーリフト」も提案。真空の力を使うことで270キログラムまでの荷物を種類や形状を問わず楽に搬送できる。レバーを引くだけの簡単操作のため、ロボット導入が難しい現場でも取り入れやすい。




象印チエンブロック

【ブース番号:1C-20】

混入対策 食品向けチェーンブロック


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食品向け対応の各種チェーンブロック、ステンレス製のチェーンスリングなどを展示。塗装や油を嫌う場所などに最適のチェーンブロックで、設備・機械メンテや材料をホッパー投入時、製造ラインに使用できる。「ファイバーホイスト」(=写真)はチェーンもワイヤーも使用しないポリエステル製ベルト巻上機。食品・粉体・化学などの油分やホコリを嫌う工場で使用が可能だ。メッキ仕様手動チェーンブロック「PIH」は本体・上下フックなど各種部品を可能な限りメッキ仕様に。ロードチェーン・ハンドチェーンはステンレス製で、食品工場やクリーンルームなどで使える。




フレアオリジナル

【ブース番号:1C-18】

中小でも導入可能な協働ロボ


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中国協働ロボット販売首位のDOBOT社の協働ロボットを出展するフレアオリジナルは、日本国内で最もDOBOT協働ロボットを販売している長野県のロボットSIer。食品加工現場における導入実績も豊富で、ヒトが集まらない現場の最適な自動化、省人化のノウハウを熟知している。

DOBOT協働ロボットは国内ロボットメーカーに勝るとも劣らない性能ながら、コストパフォーマンスに優れる。現場における教示のしやすさも抜群で、初心者でもすぐに扱えるのが強み。可搬重量3キロ~30キロのラインナップに加え、粉塵・湿気・油分の多い環境にも対応するIP68対応モデルも揃う。会期中は実機による不定形物のピック&プレースのデモンストレーションを中心とした展示を行う。




山善

【ブース番号:1G-20】

AI活用で検査工程を低価格で自動化


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「EYEbeGenesis TEXT」で包装に印字された文字を認識する様子

AI画像検査装置「EYEbe Genesis」を活用した食品工場の検査工程の自動化・効率化を提案する。「実演では、具材盛り付けの検査(具材の抜けチェック)や包装後の印字検査をご覧いただけます」(同社)とする。

「EYEbe Genesis」は最新のディープラーニング(深層学習)AIを搭載し、難しいプログラミングは不要だ。その上でオールインワンパッケージとして低価格を実現する。

一般的な装置と異なり、数十枚の撮像でAI構築が可能であり、国内開発製品のため、迅速かつ安心のサポート体制を提供する。他にもAI画像検査装置「EYEbe Genesis TEXT」も提案。こちらは文字認識検査に特化したモデルで製品包装後の凹凸・湾曲面でもAI技術で数字・文字認識検査が可能となる。製品が傾いていても数字・文字認識検査が出来る。




ユニバーサル産業・軒本技研

【ブース番号:1D-22】

包装・出荷ラインを省人化


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物流関係において人手に頼っている梱包・出荷ラインの省力化を推進する。「自動梱包機械とパレットへの吊り上げ省力化ラインを見ていただきたい」とする。

自動梱包機(PPバンドマシン)「NK―6550」(=写真)は主に段ボールを自動でPPバンド梱包するもの。足踏み式で一分間50回以上とスピードが速いのが特徴だ。タッチパネルで張力の数値を変える事が可能だ。張力源はサーボモーターを使用し調整が簡単に行える。

250㌔タイプ上下電動・左右主導クレーンは倉庫作業で、箱への積み込み、移動、パレタイジングを簡単に人手で行え、作業を省力化する。低コストを重視し、大きな工事がいらないとアピールする。500㌔、1000㌔などのラインナップもある。




をくだ屋技研

【ブース番号:1F-20】

水系制御液仕様のキャッチパレット


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「衛生+環境:既存油圧機器からの置き換え」、「衛生+環境+省力化:油圧機器の新規導入」、「衛生+省力化+専用機:ユーザーに合わせた多様なカスタマイズ」の3点を訴求する。具体的な注目製品は「環境配慮キャッチパレットトラック:ステンレスタイプ」(=写真)だ。エネスイ(水系制御液)を油圧作動油の代わりに使用した。エネスイは成分の約70%以上が水で構成されており、環境負荷を大幅に低減し、万が一液漏れした場合でも土壌汚染、海洋汚染を最小限に抑え、環境保護にも貢献する。

他にも食品業界など、衛生環境に適したステンレス素材のパワーリフターやリフトテーブルキャデを提案する。 








自動化遅延の食品業界

構造的課題に挑むロボットSIerの参入戦


農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」は、2030年までに食品製造業の労働生産性を3割以上向上させることを目指す。しかし、現状(2020年)の労働生産性(付加価値額÷総人員)は、製造業全体の7362(千円/人)に対し、食品製造業は4836と著しく低い水準にある。AIやロボットを活用した自動化・省人化は急務である。また、流通の合理化も進められ、飲食料品卸業における売上に占める経費の割合を10%へ縮小することも図られている。

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日本の食品企業は中小企業が多く、デフレ下の熾烈な価格競争に晒されてきた。この構造的な背景が、自動化やロボット導入といった設備投資を後回しにしてきた主な要因である。

現場の経営判断においても、自動化へのハードルは高いままだ。うどんなどを製造する恩地食品の恩地宏昌社長は、「具材を載せるにしても、エビの天ぷら、ちくわ、おあげと種類が多く、少量多品種を製造している。協働ロボットを使ったとしても、毎回セッティングをし直すとなると、まだまだ人の手でやったほうが早い、という経営判断になる」と述べる。

即席麺を製造するイトメンの伊藤充弘社長も、「展示会などでロボットや自動化提案を見ると『いいな』と漠然とは感じる。ただ、各作業工程自体は一定程度機械化されており、人がやっているのは“イレギュラー”な対応で、それを自動化できるか、コストに見合うかを考えると、具体化までは進みにくい」と、個社ごとの課題が自動化を妨げている現状を語る。

■自動化遅れる焦燥感

一方で、金属加工や自動車業界では大手を中心に自動化が一定の限界点を迎えている。例えば、自動車向けドアなどを製造するヒロテックのA0ラインは、約80台のロボットを密集配置しながらも、干渉なく稼働している。現在、最終品質チェックに人間が一人関与するのみで、完全無人化にも目途が立ったという。自社工場を持つ地方スーパーマーケットの社長は、「自動車工場などに見学に行くと、もうラインにほとんど人がいない。振り返って、自社工場では何十人もパートスタッフがいるので、自動化はまだまだだとため息が出る」と、他産業との自動化レベルの格差に対する焦燥感を露わにした。

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完全無人化も視野に入るヒロテックのライン。自動車産業では自動化技術もある種の限界点を迎えつつある。

髙丸工業は、小説『蟹工船』のような過酷な環境にあった鰹節工場を自動化したことで有名だ。同社のシステムは、重労働であるカツオの籠立て用と、極めて危険な煮熱用の2つのロボットシステムで構成されている。特筆すべきは、食品工場の苛酷な環境への対策である。接点のあるセンサーはサビや血で固着し、レーザーセンサーや画像システムはボイラーの湯気に影響されるため、同社は原則として近接センサーのみで制御するという独自の技術を採用し、難題をクリアしている。

また、惣菜や野菜など、柔らかく掴むと偏荷重が起こる食品の取り扱い自動化という難題に挑むのがFingerVisionである。同社が開発したフィンガーは視触覚センサーを搭載しており、モノを掴む際に「滑り」と「力」の分布情報を正確に得て、人間に近い繊細な取り扱いを可能にしようとしている。これは、多品種少量生産におけるデリケートな食品の自動化に道を開く技術である。

一方、コスト面から自動化を諦める企業が多いという現実に対し、異なるアプローチを取るのがA・R・Pだ。「どんなにすばらしい自動化装置でも1千万円、2千万円するとお客様は自動化を諦める」とし、高額なロボットシステムと、その半額程度に抑えた専用機の2本立てで提案する戦略を採る。

さらに、HCIは、大阪・関西万博で各種ロボットシステムを展示し、自社運営のロボカフェで培った知見を注いだ「モバイルマニピュレーションAIロボット」を開発・販売している。

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関西万博で披露された、HCIが手掛けたモバイルマニュピレーションAIロボット

食品業界を専門とする日本食糧新聞の平山勝己副社長は、「食品業界は人手不足が深刻化して切羽詰まっている。食品メーカーは大なり小なり、みんな工場を持っているので、今後自動化・省人化の需要は膨大にある」と指摘する。参入が容易ではない市場であることは間違いないが、食品業界特有の課題を解決した先には、巨大な潜在市場、すなわち「ブルーオーシャン」が広がっていることを示唆している。






食品マテリアルハンドリング特集


冷凍冷蔵搬送が熱い

倉庫の供給加速、マテハン各社も注力


建築費の高騰と供給過多によって需給バランスが崩れた結果、一般的な物流センターの新規供給数は急減した。ただ冷凍冷蔵倉庫に限れば、旺盛な需要と老朽化を背景とする建て替えニーズによって今後も供給が加速する方向だ。マテハンメーカー各社もこの分野での成長を模索する。


近年の旺盛なマテハン需要を牽引した物流倉庫の新設ラッシュ。特に関東の圏央道沿線は巨大施設が競うように新設されてきたが、ここにきて空室率が供給を抑制するほど上昇しつつある。不動産サービス大手・CBREがまとめた首都圏の物流施設の空室率は、25年4~6月期が10・9%と前四半期比で0・2ポイント下がったものの、高止まりしている状況だ。特に供給過多が続いた圏央道エリアは一時20%近い水準に達し「解消には時間がかかる」と見られている。

世界最大手の物流不動産企業・プロロジスの山田御酒日本法人会長も「コストも高い中、作っても埋まるかわからない状況のため着工が控えられ、供給が一気に減っている」と話す。建築費の高騰は落ち着く気配がなく、回復は27、28年ごろになるとの見方を示す。

一般的な物流倉庫の新設が難しくなる一方で、冷凍冷蔵倉庫への関心が高まっている。コロナ禍以降、冷凍食品やネットスーパーの伸長で冷凍冷蔵ニーズは拡大。都心部の冷凍冷蔵倉庫の庫腹占有率は9〜10割とひっ迫状況が続く。加えて、2030年に生産停止が決まっている特定フロンを使用する築20年以上の築古倉庫が約4割を占めることから、代替需要や建替え需要が発生すると見られているのだ。

ここ数年、低温度帯倉庫の新設をけん引してきた霞ヶ関キャピタルは、22年に千葉県市川市の冷凍冷蔵倉庫を竣工して以降、驚きのペースで開発を進めてきた。冷凍冷蔵倉庫は規模次第で数百億円にのぼることもある建築コストの高さがネックだが、プロロジスは自社で建てた冷凍冷蔵倉庫を事業者へ提供。各社が供給を加速している。

マテハンメーカー各社もこの動きに追従。オートストアは24年に1つの自動倉庫の中でマイナス25℃の冷凍ゾーン~6℃の冷蔵ゾーンを設置できる機能を発表した。シャトル式の自動倉庫に強みを持つイトーキ、設備機器営業統括部システム機器販売部の平本淳部長は「食品のEC化率はまだ4・29%で依然低水準。コロナ以降、消費行動が変化する中で共働き子育て世代の時短ニーズが強まっておりさらに成長が期待される」と低温搬送分野の成長に期待を示す。

同社は冷凍対応の自動倉庫「SAS—C」を展開。タイミングベルトを使うことで、台車の位置ずれを防ぎマイナス25℃でも高速処理を実現する。一般的な自動倉庫は霜の影響で台車がスリップしてしまうためスピードを落として運用しなければならないが、その必要がない。「業界最速の荷捌き性能だ」とする。






アイコムが免許、ランニングコスト不要のWi-Fi無線機

低温環境の食品工場にも


適切な温度設定が求められる冷凍・冷蔵倉庫は、内部の冷気を保ち外気の熱気を遮断するための断熱材の使用などで、通常の倉庫に比べて壁が厚くなる。倉庫や工場で一般的に使われるデジタル簡易無線機の電波がその分厚い壁により遮蔽され、無線が繋がらないという状況が起きやすかった。

アイコムの「IP110H」は無線LANを利用するWi-fiトランシーバーで、無線LAN環境があれば高層階と低層階、地下など従来のトランシーバーでは電波が届きにくい場所もカバーできる。「コロナ禍でEC物流が増加し、高速道路沿いなどに物流倉庫が増えた。管理システムなどの導入のために倉庫のインターネット環境の整備もかなり進んだ」(宣伝広告課八田恵梨子プランナー)という背景も合わさり、注目が集まっているという。

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低コストかつ手軽に導入できるとして注目が高まっているWi-Fiトランシーバー「IP110H」

既存のWi-Fi環境を活用でき同じアクセスポイントを使用するため、トランシーバー本体などのイニシャルコストを除けば、通信費が不要でランニングコストがかからない点も好感されている。

アンテナを本体に内蔵することで従来のトランシーバーに比べてコンパクトかつ約146㌘と軽量に。一方で、携帯電話と異なり一度に多くの人に情報を一斉に伝えられ、ボタンを押して話すだけで素早く連絡できる。シンプルな操作かつ迅速に繋がる無線機の強さを持ちつつ、携帯電話での通話のように双方向で同時通話できるという便利さも備える。

IP67の防塵・防水性能、USB Type-Cによる急速充電にも対応し、4時間の充電で20時間以上の利用が可能。登録や資格や免許もいらず、手軽に始められる点も人気の1台だ。

■IP無線機と通信できるインカムアプリ

さらにフレキシビリティを持たせたい現場に向けてAndroid/iOSのスマホに対応したインカムアプリ「ICOM CONNECT」も今年7月に登場した。手持ちのスマホやタブレットを活用してアプリ間での通話や、トランシーバーのように複数人への一斉連絡が可能だ。

特長は、通信内容の文字起こし(テキスト化)ができる点。「工場や倉庫では口頭ベースでの重要なやりとりが多く、聞き漏れも起こる。文字起こしにより伝達漏れを防げる上、タップすれば音声が再生され聞き直しが可能」(八田プランナー)という。同じ操作画面でテキストメッセージを送れ、合成音声による再生も。画像の送付も可能で現場確認などの情報共有がより容易になる。23言語対応の同時通訳機能を備え、話した内容をテキストで翻訳するなど多機能なインカムアプリだ。

最大の強みは同社製IPトランシーバーと通信できること。「現場スタッフは無線機で管理者がスマホ、あるいは部署によって異なる通信ツールを使う企業も多い」とし、業種やシーンに応じた使い分けや、これまで導入したIPトランシーバーをそのまま活用できるなど、拡張性の高い通話システム構築が可能。働く人の国籍や、使われているオペレーションも様々な食品工場の現場においても、シームレスに「素早く・迅速に・繋がる」ことを追求する。

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インカムアプリ「ICOM CONNECT」は音声やテキストメッセージ、言語や通信ツールの違いなどを超え、シームレスな通話システムを構築できる




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(日本物流新聞2025年10月25日号掲載)