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【2026年ソリューション別展望】働き方改革、26年は高齢者対応強化へ

投稿日時
2026/01/23 10:41
更新日時
2026/01/23 13:20

働きやすい職場づくりが稼ぐ力に

働き方改革という言葉は、長時間労働の是正や有給休暇の取得促進といった文脈で語られてきた。しかし近年、工場や倉庫といった現場を取り巻く環境を見ると、その射程は大きく広がっている。慢性的な人手不足に加え、女性や高齢者、外国人材など、働き手の多様化が進む中で、現場の安全性や作業環境そのものを見直す動きが強まっている。

背景には、労働安全衛生規則をはじめとする関連法令の段階的な強化がある。転倒や挟まれといった従来型の労災に加え、気候変動対応や多様化する現場作業者への対応など、事業者に求められる管理水準は年々引き上げられてきた。現場任せの安全対策や経験則に頼った運用は、もはや許容されない段階に入っている。

20256月には職場での熱中症対策が義務化された。気候変動の影響もあり、夏場の高温環境は年々厳しさを増している。屋外作業はもとより、空調設備を備えた工場や倉庫であっても、作業強度や人の密集度によっては深刻なリスクを抱える。これを受け、暑さ指数(WBGT)を用いたリスク評価、作業時間の短縮や休憩の確保、水分・塩分摂取、服装や装備の工夫、体調変化の早期把握などを、組織として体系的に対策を講じることが求められるようになった。

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昨年6月の熱中症対策義務化で黒球計が注目を集めた

現場では、こうした制度対応と並行して、対策製品やサービスへの注目も一気に高まった。スポットクーラーや大型送風機、ミスト、遮熱・断熱、冷感ベストといった装備に加え、WBGTの常時監視、ウェアラブルによる体調兆候の把握、異常時のアラート連携など、管理の省力化を後押しする提案も増えている。ある現場責任者は「労働安全衛生に関連する設備投資は、脱炭素関連と同じくらいの予算をつけている最重要課題の一つ」と話す。

■26年は高齢者対応強化へ

こうした流れは2026年以降も続く。11日施行された下請法の取適法への改正の動きは、直接的には商取引の見直しの問題だが、中小企業の働き方を改革するための制度設計と無縁ではない。また、4月からは物流効率化法の見直しが更に一段階進み、一定規模以上の荷主に対しても現場の効率化と負荷低減が求められる。

加えて、高齢労働者への対応も、今後の現場運営において避けて通れないテーマだ。定年延長や再雇用の進展により、工場や倉庫では60代後半から70代の作業者が珍しくなくなっている。高齢者は経験や技能という点で貴重な戦力である一方、転倒や腰痛などの労災リスクが高まりやすい側面もある。

4月からは高齢労働者への労働災害防止対策が努力義務化される。求められる取り組みは単なる注意喚起ではなく、加齢に伴う変化を前提とした現場設計である。具体的には段差の解消や床材の見直しといったハード面の改善に加え、重量物の取り扱いを補助する機器の導入、作業動線の短縮、視認性を高める表示の工夫など、身体的負荷を前提にした職場設計が重要となる。また、体力や健康状態の個人差を踏まえた作業配置やシフト設計、定期的な健康チェックといった運用面の配慮も欠かせない。

こうした一連の制度改正だけでなく、法案提出は見送りになったものの約40年ぶりの労働基準法の改正議論も進んでおり、労働時間管理や安全に対する目は一層厳しくなる可能性が高い。対応を先送りすれば、法令違反リスクだけでなく、人材確保や現場運営の面でも競争力を失いかねない。

一方で、見方を変えれば、現場改善を進める好機でもある。高齢者に限らず、女性や未経験者、外国人材を含めて誰もが働きやすい職場づくりは、結果として現場全体のリスクを下げることにもつながる。同時に、自動化・省力化投資を進めることで、さらなる安全性や生産性の向上にもつながる好循環を生み出す余地は大きい。

工場や倉庫の働き方改革は、もはや個別施策の積み上げではない。法制度の変化を見据えながら、現場の設計思想そのものを問い直すことが求められている。




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(日本物流新聞2026年1月25日号掲載)