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【EMO2025】日系メーカーの提案をプレイバック

投稿日時
2025/10/24 10:04
更新日時
2025/10/24 10:51

世界初披露の製品・技術相次ぐ




キタムラ機械、性能強化したオールインワン5軸


キタムラ機械画像.jpg

刷新=ロータリーテーブルとATC、APCを刷新した5軸MC「SU

PERCELL-300G」を披露。テーブルの回転速度が向上、特筆すべきはクランプトルクが従来比3~4倍に強化された点でかなりの重切削が視野に。ATCの搭載本数も増加、20枚搭載できるAPCも標準で付き「オールインワン・スマートファクトリーだ」とする。ワークサイズは従来比+50%の最大径330㍉まで。欧州の旺盛な自動化需要に応える。

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航空・医療=欧州は自動車の景況が良くない、と独現法のセールスマネージャーは言う。ただ航空が伸びており大型5軸でその市場を狙う。安定している医療にも注力。今展で見せた直径230mm、高さ180mmのワークを毎分3万回転の主軸で高精度に加工できるコンパクトな立形5軸MedCenter5AXは「横幅1.2mでここまでの加工領域の機械は知る限りない。欧州での人気も高い」とする。






中村留精密工業、省スペースの自動化・工程集約


中村留画像.jpg

自動化=よく似た自動化システムが散見される中、中村留精密工業が初披露した「ロボシンクTypeD」は構造がユニークだった。ロボ架台がスライド(引き出し)式の素材ストッカーを兼ね、ロボット自らスライドを引く構造でかなり省スペース。爪交換もロボットが行い架台上部の棚に格納。カメラでワーク位置を認識し教示も不要だ。

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小型複合=2タレット2主軸複合旋盤「NT-Flex+」は奥行1380㍉と見るからにコンパクト。だが既存機「NT-Flex」からR側主軸にX軸、下タレットにY軸が追加され重畳加工など複雑な加工に対応する。EMO最終日、販売促進部の掛山拓朗マネージャーは「EMO全体の来場者は減ったのかもしれないが質が高く目的意識があった。引き合いは減った気がしない」と手ごたえを語った。なお今夏に独現法が発足。販売をより強化する。






シチズンマシナリー、Miyano大型機で攻勢


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Miyano=10台を出展したがメイン通路に並んだのは全てMiyano機。好調の大型機を強化する方針で、メイン主軸φ80、サブ主軸φ65の「ABX-80THY3」を持ち込んだ。同機が狙う自動車や医療、建機の需要が足元でも堅調。初披露の「BNE-65ATC」は上タレットにB軸ユニットとATCを備え複雑形状を加工できる新機構。参考出品で正式販売は来年の見込みだが、注目を集め競合の視察も相次いだ。

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拠点拡張=元々ドイツ市場のシェアが高い同社。「ドイツ景気は落ちているようだがスペアパーツの販売を見る限り稼働は落ちていない。昨年は受注が落ちたが今年はかなり戻っており確実に底は打った。25年後半以降の本格回復を期待する」と、先行きに弱気な声が多い会場で気を吐いた。ドイツの販売子会社で約40億円を投じ本社を2倍の延床面積に拡張、欧州の販売・サービスを強化する方針だ。






ソディック、独製ロボでワーク・電極交換自動化


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自動化=前回のEMOより自動化を強化。ワイヤカット放電加工機と独Fruitcore社と共同開発したロボット装置(初披露)を組み合わせ、ワーク交換を自動化した。ロボット装置は機械デッドスペースにほぼ収まるサイズ。最大60のワークを格納でき、ステーション数はワークサイズに応じて変えられる。形彫放電加工機もFruitcore社のロボで電極交換を自動化。両システムとも販売は欧州から始める。

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部品加工=放電加工機が主力とする自動車業界は景気が停滞。「期待できるのは航空、医療、エネルギー」といい、自動化もこれらの分野の部品加工を意識した提案だ。部品加工の自動化ニーズはドイツが最も高い。今までも大型ロボを放電加工機に接続した例はあったが高額かつ面積が嵩んでいた。上述の自動化は省スペースで費用も比較的安く週末無人運転が可能に。






津田駒工業、旋削集約する円テーブル


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工程集約=旋削機能付き円テーブル「TDB-200」は「低迷する欧州市場で気を吐いている」と大河哲史取締役。当初はEVモーターのケーシングの旋削・切削を集約する狙いだったがEVに限らず時計やその他自動車部品などの用途を開拓している。EMOでは汎用機に後付けできる点をアピール。景気が冴えない中で5軸機を買うよりハードルが低いと訴える。大河氏が課題に挙げるのはデザイン。「欧州製品を見て外観も品質の1つと再認識した。製品自体はハイエンドに向かっているが外観の価値はまだ高められる」

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早期回復=「意見交換した全欧の代理店いわくドイツの市況はまだ土砂降り」と大河氏。ただ中長期的な投資は止まっていないとも。ドイツの景気はいつ上向くか。「そのいつかは、意外と早いと思う。EVから揺り戻された自動車の今後に期待だ」と展望した。






安田工業、欧州の周知拡大で潮目が変わった


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潮目=「潮目が変わった」と大下功取締役技術本部本部長。前回展まで興味本位の来場が多数。ただ今展は草の根的な周知活動が実を結び、機械特性を知った上での来場が体感的に増えた。欧州市場は停滞中だがドイツ含め堅調に売上が伸びており「売り負けていない。今後も期待が持てる」とする。金型は景気が良くないが「部品加工で我々の機械の特長が活きる領域をディーラーが理解し、マッチするユーザーを探してくれる」ことが背景。精度を求めるイタリアの医療関係のジョブショップで5軸機が好調。

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部品加工=出展機は大型ワークを取り込める5軸ジグボーラー「YBM Vi50」。本来のターゲットは金型だが、欧州の金型産業は停滞気味。そこで同機に大型ワークチェンジャーを接続。部品加工に24時間無人稼働と高精度な部品のアウトプットを両立できる点を訴求した。






THK、自社開発の電動車に新型サス


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自動車=自社開発の電動車「LSR-06」を初披露。自社製サスペンションユニットを採用しオーストリアで公道走行試験もこなした車だ。MRDTと呼ぶ可変ダンパーで路面の振動を吸収、ALCSシステムで車両上側の姿勢を制御し乗り心地を高める。自ら車を作るのは自動車部品の完成度を高めるため。展示ではALCSに予知保全サービス「オムニエッジ」のセンサーも搭載。「工場を止めないための技術だが車の故障防止にも役立つのでは。将来は自動車メーカーへ提案したい」と展望した。

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納期短縮=フルローラーLMガイド「ERGモデル」を世界初披露。「アジアはレールとブロックが一体のまま機械に搭載されるが、欧州は定尺レールとブロックを各々準備し必要な長さにレールを切って使う。そこでレールからブロックを抜いても中のローラーが抜けない機構にした」(常務執行役員飯田勝也氏)。代理店が在庫すれば数カ月の納期が1、2日に縮まる。「欧州製の牙城をこの製品とブランド力で覆したい」






高松機械工業、EVシャフトの工程集約


自動車=今展は本来は自動車業界が得意なメーカーも景気を鑑みてジョブショップ向けの提案を拡充する例が多かった。だが高松機械工業は「そうは言っても我々は自動車が得意」とEVのモーターシャフトを意識した複合旋盤「XTL-MY8」を訴求。「生産性と工程集約を推したい。機械上部のローダーが特徴で、シャフトワークをワンチャックで掴み、複合加工で一気に仕上げて完成品をローダーで出すコンセプトだ」とする。






北川鉄工所、ワーク径測るロボットハンド


計測ハンド=見どころは拡張機能を持つ独自のロボットハンド。物を掴むのは当然だが、ハンド内蔵のリニアセンサーでワーク径を測り寸法のOK/NGを判断する。「他にない製品だ。欧州はシュンクはじめ競合が強い。唯一無二にならなければ勝てない」と言う。発売は数年前だが認知は拡大傾向に。なお同社の欧州ディーラーの肌感をまとめると、景気は「difficult」の一言とのこと。担当者も「回復は来年になりそうだ」とこぼした。






日進工具、小径微細工具の価値を認められる市場


鏡面=日系工具メーカーの多くが出展を見合わせた今展でオレンジのブースが映えた。「鏡面加工が世界的トレンド」と海外営業部小玉周治課長。欧州は熟練技の金型の手磨き職人が不足。鏡面加工で手磨きを減らせることから鏡面サンプルワークを見せた。製品を前面に出さずワークやモノづくりのこだわりを紹介。独自開発の工具研削盤でエンドミル刃径公差を±1μm程度に抑えた点を訴求し「欧州は良い物を使い品質を高める意識が強い。我々のこだわりも共感を得られる」とする。

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人工骨=売上比率では中国や東南アジアの方が欧州より高い。だが「小径微細の利点が評価される市場。製品自体の相性は悪くない」と小玉氏は言う。主力の金型は自動車業界の景気低迷の影響下に。人工骨など医療分野の開拓を目指しており徐々に採用が増加中。






トーヨーエイテック、内外径と端面1台で研削


複合研削=単独では初のEMO。出展機はATCを備え内外径と端面を1台で加工できる複合研削盤「TVG-40S」だ。外径研削→内面研削に切り替わる際、ワークをわずかにオフセットさせる独自機構が内外径の複合研削を可能にしている。「シューセンタレス方式で内外を削れるマシンは世界的に見てもユニーク」と言う。欧州に同機を展示した狙いはベアリング業界の開拓。欧州の売上比率は高くないが「今回の展示機は欧州の工程集約ニーズに合致する。この機械を契機に他のラインナップも訴求したい」とした。




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(日本物流新聞2025年10月10日号掲載)