まだまだ「カイゼン」できる後工程

モノづくりのQCDを左右する後工程。多品種少量生産が主流になりつつある昨今、自動化や効率化につながる最適解を導き出すのは一見すると難しく思えるが、各社から提案されている最新ソリューションは劇的なカイゼンに繋がるケースも少なくない。人手不足のいまだからこそ、ボトルネックになりがちな「後工程」にこそ勝機がある。

【画像1】タイトルイメージ
【画像2】バーテック「ロケットエンドブラシ」
【画像3】レヂトン「ハイパー」シリーズ
【画像4】ファーロボティクス社の空圧ハンド

バリ取りに「勝機アリ」

人手による作業にも改善の余地がある

日本国内の刃物輸出額の5割を占める刃物の街・岐阜県関市。鎌倉時代の刀剣鍛錬から脈々と続く伝統と技術が融合した「MAID IN SEKI」は北米を中心に欧州やアジアでも人気を博している。そんな「関の刃物」にちょっとした異変が起こっている。

「刃物を研ぐ人が相次いで引退して、後継者がどんどん居なくなっているそうです」。こう話すのは東海地方の有力ロボットSIer。実際に研磨の工程を自動化できないかと相談を受けているという。

同様の話は国内屈指の金物、洋食器の一大生産地である新潟県燕市、三条市や打刃物に代表される和包丁が有名な大阪府堺市でも聞かれる。その主な要因はやはり深刻な人手不足に起因する。「人が集まらないから」「後継者がいないから」といった理由で廃業する事業者が昨今、急増しているのが現実だ。

一方、早くから自動化に取り組み、ロボットと人材をうまく調和させている現場も少なからずある。ダイカスト部品のバリ取りや研磨に強みを持つ仕上げ専業メーカーは「現状の設備と人員では捌き切るのが精一杯の仕事量になっている。にもかかわらず、新規の引き合いや相談はひっきりなしに来ている」と話す。

モノづくりが続く限り、必ず生じる後工程。技術を持ち、かつ一歩先を見据えた自動化を進める事業者には、今後ますます仕事が集中していくだろう。

■進化する後工程ソリューション

一方で、すべての後工程が自動化できるかと言えば難しい側面も多々ある。どうしても人手に頼らなければならない工程が存在するのも事実だ。

これら「人手に頼らざるを得ない」作業に対しては、アプローチを変えて生産性を向上していくほかない。これまでの工程見直し、使用している道具や研磨材、メディアの見直しなど、カイゼンできる部分は間違いなくある。工具メーカー、研磨材メーカーはいずれも開発の歩を止めず、毎年のように「使いやすさ」や「生産性向上」を意識した製品開発やアップデートを行っている。

こうした最新製品の情報をいち早くキャッチし、いかに自社の加工工程に組み込んでいくかが「安定的かつ継続的な就労」や「ワークライフバランスの創出」に直結していくものだ。

無論、自動化技術も日進月歩の進化を遂げている。従来はA地点からB地点まで動かすだけで一苦労だったロボットティーチングも、直感的に教示できるシステムや加工プログラムを流用した教示など、使いやすさに主眼を置いた開発が進められている。また、バリ取りや後工程の自動化スペシャリスト集団も続々と名乗りを挙げている。

QCDに直結する処理工程の「カイゼン」。取り組むなら今が絶好の機会だ。




《後工程「カイゼン」製品-1》

バーテック「ロケットエンドブラシ」

バリ・サビをロケットアタックで撃破

バーテック「ロケットエンドブラシ」

産業用をはじめデータセンター向け、衛生管理用、防虫用などと手広く「ブラシ」を提供するのがバーテック。

米国の安全規格基準(ANSI)を自主的に取り入れるなど「安全性・生産性」を重視し、特にハイエンド(中~高級)なブラシでユーザー支持を得ている。

数多い研磨・バリ取り用ブラシのなかでも、ユーザーご指名の多いのが、やや異色の「ロケットエンドブラシ」(写真=ストレートグラインダー装着例)。

先端をテーパーカットした独特の形状がミソで、高速回転しても毛が広がらず、ブラシの金属疲労と飛散を抑制しつつ狙ったバリ・サビを強力撃破する。

ブラシワイヤーの線材には特殊熱処理鋼ワイヤーを採用し、高い研磨能力と長寿命を両立させた。外径16㍉、22㍉、29㍉の3サイズにそれぞれスチール、ステンレスをラインナップしている。

「コーナー部溶接後の研磨、タービンのフィンのカーボン除去研磨、エンジンのオーバーホール作業などでご活用頂いている」(同社)




《後工程「カイゼン」製品-2》

レヂトン「ハイパー」シリーズ

独自の「溝」が仕上げ加工を効率化

レヂトン「ハイパー」シリーズ

湾曲形状でワークとの接触面積を拡げ、高い作業効率を確保するレヂトンのオフセット型砥石「ハイパーGS」と「ハイパーGT」。GSは一般鋼・ステンレス両用の弾性フレキシブル砥石、GTはハードな作業に向く重研削砥石。

作業負担を減らす砥粒配合に加えて、研削面には独自の「ウェーブライン」と呼ばれる溝が施されている。

「砥石の溝に形成されたブロック形状や配置は、一見でたらめなように見えて意味がある。従来製品のように碁盤の目状を入れた場合、一定方向に傷が入りやすい。そこで溝の回転方向も、外周に対して、右回りでも、左回りでもない『S字』のウェーブ状にすることで、良好な仕上がり面が得られる」(同社)

ソフトなタッチ感で使用できるGSは、スパッタ取り、仕上げ、面取りなどを想定して開発した。粒度は#36~#120まで5種類の展開。鉄系、ステンレス系の軽研削から重研削まで幅広く対応可能だ。




《後工程「カイゼン」製品-3》

柳瀬、磨きのプロが勧めるロボ研磨

空圧ハンドと先端工具をキットで提供

ファーロボティクス社の空圧ハンド。様々なワークに対応する豊富なアタッチメントが用意されている。

研磨とバリ取りのスペシャリストとして知られる柳瀬が、「磨き」を自動化する協働ロボットシステムの導入実績を増やしている。研磨とバリ取りは人の肌感覚に頼る繊細な作業だけに、長年自動化が難しいとされてきた。柳瀬はこの壁を、オーストリアのロボットハンドメーカー・ファーロボティクス社の空圧ハンドで突破する。

ファーロボティクス社の空圧ハンドは、独自の「アクティブ・コンプライアント・テクノロジー(ACT)」を搭載している。ワークの形に合わせて角度や押し付け力を自動調整するもので、反りや波打ちのある物体でも表面を沿うように一定の圧力をキープできるのが特長だ。ワークの形のみならず、研磨材の摩耗によって生じる圧力の誤差も高速で修正する。

「通常のバリ取りロボットは重力の影響を受け、上から押し付けるか下から押し付けるかで圧力がばらついてしまうのが課題だった」と柳瀬の営業1部FT推進部の森清隆部長は語る。その点ACT搭載の空圧ハンドなら、ジャバラで圧力を自動補正できる。難しいプログラミングも不要で、始点と終点、通過点を教示するだけであとの経路は自動で生成。現場にロボットのリテラシーを要求せず、職人の感覚をそのまま代替できるシステムだ。

柳瀬はこの空圧ハンドに、作業内容に応じた研磨アタッチメントを組み合わせた11種類のキットを取りそろえる。例えば狭所の研磨・バリ取りにはベルトサンダーを搭載したキットを、広い面や力強い研磨作業には5インチタイプのアングルサンダーを搭載したキットを提案する、という具合だ。適切なキットはワーク形状や諸条件をもとに柳瀬が選定。ユーザーはプロの知見を手軽に現場に持ち込める。

「溶接やバリ取り・研磨はいずれも今の若い方があまりやりたがらない作業で、これから職人不足はますます加速するだろう」と森部長は危機感を募らせる。「溶接は多くの現場で自動化されつつあるが、バリ取り・研磨が取り残されてしまうと本質的な解決にはならない。人手よりも磨きの品質を安定化できる我々のシステムで、現場の自動化を加速したい」

(日本物流新聞 2023年7月10日号掲載)

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