【EMO Hannover2025】 インタビュー集
- 投稿日時
- 2025/10/24 09:00
- 更新日時
- 2025/10/24 09:15
各社の戦略は
紀和マシナリー 代表取締役社長 紀和 伸政 氏
カスタムの強み欧州でも
小型40番=目玉の横形MC「KH-4200kai」は生産性が高い。40番でこうもコンパクトな機械は他にないだろう。ジョブショップから量産の引き合いもあった。当然複数台を入れることになり、コンパクトという利点がより活きる。カスタムが得意な個性は欧州でも曲げない。長年カスタムを宣伝したためか、いわゆるゲテモノ的な依頼も来るが信頼の証と捉える。欧州は景気が冴えないが医療に期待。一部、人工骨の加工に我々の機械が使われている。
GROB Japan シニアセールスマネージャー 松元 康平 氏
工具交換含めた完全無人稼働へ
メガ・ギガ=2本のユニバーサル主軸が独立して動くギガ・メガキャスト向け大型加工機を披露。1台のスペースで主軸2本分の仕事が可能だ(機械横に他機より30%早い、と記した看板があった)。ギガ・メガワークは鋳造機で成形してすぐ加工する流れで、車両工場も隣接するため加工機をコンパクトにする要求が強い。そこでワークを上部からガントリーで投入する構造で省スペース化した。
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完全無人=横形5軸MC「G550」に新型パレットチェンジャー(PC)を搭載。機械側で対応OKでもPC側でワーク高さに制限がある場合があったが、最大3段だったPCを最大4段、あるいは3段に留めて高いワークも収納可能に。パレット数も最大でほぼ倍増する。欧州限定だがAMRとの連携用シャッターも設けた。スタンドアローンの加工機を複数用意し、別の場所の段取りステーションと各機をAMRで接続する未来に向け、ユーザーと取り組みも進行。工具もAMRで交換する。完全無人運転が可能になる。
村田機械 取締役副社長 (工作機械事業部長) 村田 洋介 氏
シリーズ最大対向2軸で大型部品狙う
大型機=初披露の対向2軸ターニングセンタ「MT300」はシリーズ最大。油圧機器や建機、農機など大型ワークの複合加工に対応できる。欧州代理店から大型ワークを扱う機械に商機がと要望がありシリーズに加えた。ロボットだと機械前面が制限され作業性が悪くなる。プログラミング知識も必要だ。我々のガントリーローダーは直交3軸。機械のプログラムと同じ感覚でオペレーターが非常に操作しやすい。据付も機械と同時に済むのが利点だ。
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復興=欧州は競合も多く売上比率もそこまで高くないが、ポテンシャルは大きい。MT300は対象ユーザーがある程度限られる。そのぶん代理店も的を絞った営業活動をしてくれており手応えは悪くない。先行きはウクライナ紛争が終息に向かうことに期待したい。道筋が見えれば復興需要も望めるだろう。
DAIKIN Airconditioning Germany General Manager Oil Hydraulics 吉田 公紀 氏
油圧・チラーの省エネ化、独に訴求
パートナー=国内工作機械の油圧・冷熱機器で高シェアだが独で知名度が低い。独工作機械業界に入るのは簡単ではないが、22年にデュプロマティック社(伊)、今年7月にDELTATHERM社(独)を買収。道が開けた。デュプロマティックの油圧機器に我々のインバーターを組み込んだ製品が広まっている。独は省エネ機運が日本ほど高くなかったがエネルギー危機で風向きが変化。油圧機の価格に厳しい市場だが量産機に採用されれば機械の販売戦略も変わるはず。ダイキンの空調向け量産モーターを採用し競争力も高めた。
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省エネ=ダイキンのチラーを複数の独企業で試験。40~60%の省エネ効果が出た。DELTATHERMは買収間もないがスピード感を持ちダイキンの技術移転を進める。数年後に共同開発した製品を出す予定。油圧とチラー双方をインバーター技術で省エネにし、製品を面で採用頂くのが理想だ。
ブラザー工業 専務執行役員 星 真 氏
100本マガジン反応が楽しみ
BT30=EMOは縮小傾向にあるかもしれないが我々はこの欧州市場で成長したい。ゆえに外せない展示会だ。40番を好む欧州で30番のプレゼンスは小さいが我々は30番で生きるしかない。どのモデルも自動化・工程集約をクリアする必要がある。その上で生産性、省エネ、設置面積、コストなど他メーカーが提供できない価値を発揮するのが存在意義だ。我々の機械はアジアで認められており欧州でも価値が認められる仮説は十分成り立つ。マジョリティは難しくとも(機械全体の需要の)2、3割は狙えるだろう。欧州の景気は良くないが我々はチャレンジャー。悪いなら悪いなりにやる。展示機でも30番MCの100本マガジンは斬新なコンセプト。どれだけ受け入れられるか楽しみだが(取材はEMO初日)、欧州、米国など先進国が導入すると見ている。
松浦機械製作所 取締役 営業・技術本部 管掌 松浦 悠人 氏
工程集約と無人運転より強化
半導体=代理店に市況を聞くと感触は渋いが、半導体に期待。2月のオランダ出張時「次のブームは絶対に来る」と、ユーザーが軒並み生産能力を増強していた。年末か来年の初めに動き出すとの見方が。これは良いサインだ。ただ他の市場は自動車を筆頭に苦しい印象。自動車比率が低い我々も多少影響はある。反面、英国はF1などモータースポーツが活況。ジョブショップも設備投資しており今後も期待できる。
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4→7=展示の目玉は旋削機能付き5軸複合MC+自動化の「MX-520T PC7」。旋削機能付き5軸は今までハイエンド機がベースで、代理店が在庫するより特定のユーザーに作る機械だった。比較的リーズナブルなMXシリーズに旋削機能を搭載。評判は想定通り良い。従来4枚だったパレットも7枚に増加。見た目はPC4とほぼ変わらないがそれがすごい。面積はほぼ同等ながら無人運転の時間が伸びる。
ホーコス 取締役 工機営業本部長 沖田 浩 氏
鉄→アルミの置き換えに商機
大型アルミ=自動車の投資は冴えないが、鉄からアルミダイカストへの置き換え需要を狙いロングストロークタイプのベッドレスMC「NX70」を出展。一見50番だがベースは30番~40番のMCで、X・Y軸の早送り(90m/min)を上げて大型ワーク加工のサイクルタイムを短縮するコンセプトが極めてユニーク。ベッドレス構造で下部がフリー。機械幅は小さいが最大径1410mmの大型ワークを振り回せる。アルミの大型ワークは嵩張り素材置き場も必要だからこそ機械はコンパクトでなければ。ベッドレスは切削油の使用を少量に抑えるiMQL技術とも好相性で、水溶性MQLはベタつかずエアブローだけでアルミ切粉をほぼ取り除く。サブフレームのアルミ化に伴い販売も増えてきた。
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省スぺ=欧州は自動車が全般良くない。ただモノづくりある限り工作機械は不滅であり、省エネと省スペースを押さえていれば今後も外すことはないだろう。出展したもう一台の横形50番MCは複合ツールに対応し、かつストロークを必要最小限に抑えたことで自動車メーカーに実績が豊富。汎用機は大きく構えるが自動車はワークが限られ我々はジャストサイズを狙える。ドイツ経済もやがて回復するだろう。EV一辺倒からの方針転換で車の補助金の対象が変われば上がり目になり得る。
(日本物流新聞2025年10月10日号掲載)