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【2026年ソリューション別展望】DX、特化型AI活用で生産性向上へ

投稿日時
2026/01/23 10:31
更新日時
2026/01/23 10:40

現場の「価値」取り戻す

帝国データバンク(TDB)の調査によると、従業員の離職や採用難、人件費高騰を原因とする2025年の「人手不足倒産」の動向は全体で427件と過去最多で、3年間連続で過去最多を更新した【グラフ1】。特に建設・物流をはじめとした労働集約型産業で増加が顕著であり、中小・小規模企業の経営を直撃している。

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別のTDBの「『倒産リスク』分析調査(2025年上半期)」では、高リスク企業として「製造業」が33465社と最多で、人件費高騰や原材料・エネルギー価格上昇の影響から倒産リスクが増加していると指摘されている。従来の収益構造や人材確保の仕組みでは経営基盤を保つことが難しくなりつつあるのが現状だ。

製造業は日本経済の中核を担うが、労働生産性は主要先進国と比べて決して高い水準ではない。OECD(経済協力開発機構)データによれば、日本の製造業の労働生産性は主要国平均より低位にあり、かつて2000年にOECD諸国でトップだったものの、落ち込みが続き、15年以降では15~20位で推移している。競争力向上と労働投入量の最適化が課題となっている。

直面している構造的課題を克服するため、生産性向上とデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が不可欠である。政府の「ものづくり白書」でも、個別企業のデジタル化だけでなく、サプライチェーン上の企業間連携による事業効率や付加価値向上、さらにはAI・ロボット技術の活用が強調されている。人手不足という制約下で、機械やデータを起点とした柔軟な生産体制を構築することを推進し、稼ぐ力の向上やGX推進に加え、サプライチェーン強靱化にも資する取り組みに政府も力を入れる。

製造業におけるDXは単純にデジタル化するということだけではなく、IoTAI、スマートファクトリーに代表される現場データを経営判断につなげるための連携と利活用への転換を意味する。作業者の経験・勘に頼る工程管理や紙ベースの記録から脱却し、生産ライン全体をデータで把握・制御することで、生産性と品質の両面を高めることが可能となる。

人手不足倒産を回避し持続的成長を実現するには、まず業務プロセスの見直しと標準化を進め、DXによる単位労働生産性の改善を図ることが重要である。これは従業員一人当たりの付加価値を増やすだけでなく、熟練人材の負担軽減や新規採用時の教育負荷低減にも繋がる。加えて、製造業全体としては人材育成とデータ活用能力の強化が不可欠であり、経営資源の最適化と組織的な変革が求められている。

人手不足倒産の増加は、人材の確保が困難な状況が企業経営の危機に直結していることを示す指標でもあり、製造業においても同様のリスクと圧力が存在する。DXによる生産性向上は単なる効率化ではなく、倒産リスクを低減し、現場の余力を取り戻し、原資を生み出して企業競争力を維持するための必須戦略だ。

■特化型AI活用で専門性強化

あらゆる産業において生成AIの活用が急速に進んでいるが、その選択肢はChatGPTGeminiなどに代表される広く普及した「汎用型AI」と、業界固有のデータ学習・蓄積などに強みを持つ「特化型AI」がある。製造業でのAI活用が、現場の専門性や判断力そのものに変化をもたらし始めていることがキャディが2025年に実施した調査で明らかになった。

まず、AIの業務上の位置付けについて、特化型AI利用者の44.0%が「業務判断の質を高めるために活用」と回答し、さらに24.7%が「AIがないと業務が成り立たない」と回答している。合わせると、特化型AIの利用者の約7割が業務に深く組み込んでいる実態が示された。一方、汎用型AI利用者は67.3%が「補助的な利用」に留まり、AIの役割が主に補助であることが分かった。

製造業特有の専門的な業務に関しても差が顕著である。特化型AI利用者の回答では、「図面・仕様の理解」が38.7%、「最適な工程・ルートの自動判断」が39.3%、「原価・リードタイム算出」が38.0%と、特定業務におけるAI活用の効果を実感する割合が4割近い水準となった。一方、汎用型AI利用者はいずれの項目も10%未満に留まり、専門領域での有効性に差が見られる。

長年の業務課題である「経験や勘に依存した業務」に対するAIの効果についても、特化型AI利用者の767%が解消を実感している。これは、経験則への依存や属人的な技能がデータやAIによって置き換えられつつあることを示す数値である。

また、AI活用による専門性の発揮・注力のしやすさについては、特化型AI利用者の約54.7%が「専門的部分への注力がしやすくなった」、22.7%が「専門性を発揮しやすくなった」と回答し、計約77.4%が専門業務の改善を実感している【グラフ2】。これに対して、汎用型AI利用者では35.3%が「特に変化を感じない」としており、専門領域での効果が限定的であることが明らかとなった。同社の川村良太AIエバンジェリストは「注目すべきは、AIが人を置き換えたのではなく、人の専門性を取り戻している点。人材制約が強まる中で、特化型AIにより技術者が本来の専門業務に注力できている結果として、個人の頭の中にブラックボックス化されていた知見がAIによって組織の『資産』へと転換され始めている」と話す。社内のAI活用企画コンペを通じて翻訳ツールを導入した入江工研(左に関連記事)もAI導入後「業務に専念できるようになった」と言う。AI導入の目的を「効率化」や「不足する労働力の代替」だけに限定せず、本質的な仕事に時間・人的資源を充てることで専門性を伸ばせ、現場のポテンシャルを発揮し企業の成長にも繋がるという視座で捉えることが重要と言えそうだ。

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NEXT STAGE、建築業界に業界特化型学習アプリ


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住宅ソリューション事業を手がけるNEXT STAGE(大阪市阿倍野区)は、住宅建築業界の教育環境を改善するため、業界特化型学習動画アプリ「ACRO5(アクロファイブ)」をフルアップデートし、2月に再始動する。住宅建築業界を支える地域工務店では人材不足と教育課題に直面している。若年層の就業率も低く、長時間労働の常態化により現場では「教える時間がない」「教える人がいない」という慢性的な課題がある。

同社は2020年にリリースしたACRO5にさらに新機能を持たせ、「能動的な学習の場」と「日常の習慣」となる仕掛けを提案し、学習ハードルを下げる。

業界ニュースやセミナー情報を確認できる「メディアプラットフォーム機能」を新設し、コースの視聴数や時間に応じて付与される「バッジ機能」による利用者のモチベーション向上と継続的な学びの動機づけを図る。企業ごとにカスタマイズ可能な教育カリキュラムやテストの構築が可能で、専門カリキュラム・テストを簡単に設計・運用できるようにフルアップデート。気軽に視聴できる短編動画も多数配信し、eラーニングによる習熟度分析も可能だ。「今回のリニューアルにより、技術承継や若手育成の効率化、OJT教育の標準化促進など、建築業界全体のスキルアップに繋がる学習環境の進化を図る」(同社)




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【インタビュー】入江工研 執行役員 兼 部長 信安 勇二 氏




(日本物流新聞2026年1月25日号掲載)