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進化する省エネと環境対応

投稿日時
2025/03/26 09:00
更新日時
2025/04/24 16:16
地球温暖化係数が低く環境負荷が少ない自然冷媒「R290」を採用した「業界唯一」という「ユコアHYBRID」

冷媒問題に向き合う

脱炭素実現に向けて加速している省エネや再エネの普及。各メーカーは省エネ性能を切り口に、技術革新と新製品開発に力を入れている。省エネ性能が進化する一方で、地球温暖化防止のために重要な軸の一つに冷媒問題がある。本特集は「進化する省エネと環境対応」と題し、省エネ性能に留まらず、冷媒問題に先んじて取り組むメーカーのインタビューや取材を行った。

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熱を移動する際に必要となる冷媒。性能はもちろん、安全性や経済性、環境性などが求められる。しかし近年、特に重視されているのは環境性で、主流として使われる冷媒の変化が進んでいる。その動きの一端となったのは2016年、「モントリオール議定書」で改正採択された「キガリ改正」だ。冷媒用途に使われるフロンについて、オゾン層を破壊する「特定フロン」(CFC・HCFC)だけでなく、高い温室効果をもつとして「代替フロン」(HFC)も排出抑制の対象にし、段階的削減を義務づけた。日本では19年1月1日より規制が開始している。

■グリーン冷媒への転換へ

次世代の冷媒として、地球温暖化係数(GWP)が低く環境への影響が少ない「グリーン冷媒」への転換が求められる。政府は低GWP冷媒の開発や導入の推進に向け、経済産業省では23~27年度の5年間(25年は5億円を概算予算)、グリーン冷媒・機器への転換を進めるために必要な技術開発を推進する。環境省は、実用化しつつもコスト面に課題がある分野への自然冷媒機器への導入支援を行うなどしている。

しかし低GWP冷媒の多くはHFC冷媒に比べて微燃~強燃性があるなど、冷媒として用いるには安全対策も必須だ。経済産業省は業務用冷凍空調機器からのフロンの漏えい防止のため、漏えいが想定される接合部や配管の接続部に対して、技術講習会を通して施工品質の向上や施工技術者の育成を支援している。そのような中、グリーン冷媒の開発や空調機器への低GWP冷媒の導入など先進的に取り組んできたダイキン工業は、フレア加工が不要の配管継手「フレアレスジョイント」を標準搭載するなど省施工を含む安全対策にも力を入れている。フレアレスジョイントにより、漏えい想定箇所から除外でき冷媒漏れを検知する検知器の設置が不要になるなどのメリットもある。

2050年の脱炭素達成に向け、国は代替フロン分野ではグリーン冷媒への転換や普及拡大、フロンの漏えい防止や回収をポイントにして進んでいく構えだ。省エネ技術と関連する冷媒問題。規制強化を通じて進化する冷媒技術にも注視する。

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ノーリツ、自然冷媒R290採用で環境負荷軽減

ハイブリッド給湯システム


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地球温暖化係数が低く環境負荷が少ない自然冷媒「R290」を採用した「業界唯一」という「ユコアHYBRID」



2025年も給湯省エネ事業の補助金が継続される。24年は予算総額580億円に対し、補助金申請額の割合は97%に達した。25年も580億円(うち32億円は電気蓄熱暖房機および電気温水器の撤去に対する補助を予定)を予算としており、、国は給湯器の高効率化に力を入れる。 

補助金対象となっているノーリツの「ユコアHYBRID」は、空気熱で湯を沸かすヒートポンプ給湯器と、瞬間式で湯を作る高効率ガス給湯器(エコジョーズ)の長所を融合したハイブリッド給湯システム。省エネや経済性をかなえながらも、しっかりとした湯量と湯切れのない快適な給湯を実現する。

特徴的なのは自然冷媒「R290」をヒートポンプユニットに採用している点だ。R290はLPガスを原料とした自然冷媒で、地球温暖化係数(GWP値)が非常に低く、「業界唯一」(2021年12月同社調べ)同社がハイブリッド給湯システムに用いた。集合住宅タイプでは「地球温暖化係数が低い自然冷媒採用のため、容積率緩和の適用範囲内となり住戸の面積を大きくすることが可能」(同社)と話す。

■太陽光発電からの給湯・保温もより効率的に

貯湯時のエネルギー消費のムダを抑える独自の「スマート制御」でさらに省エネ性と経済性を追求する。家庭ごとに異なる湯の使用パターンを季節や曜日、時間ごとに記憶・蓄積。「集めたデータから予測し、効率のよい貯湯タイミングと必要な湯量により放熱ロスを最小限に抑える」(同社)。年間給湯や保温の光熱費は従来給湯機より低減できる。

さらに戸建て用の太陽光発電消費優先モデルは、モードを選択することなく、使用開始時から電力の自家消費を優先する。必要な量のお湯だけを学習機能で予測して貯めるため、太陽光で発電した電気をムダなく使える。標準モデルと比べて年間の給湯・保温一次エネルギー消費量は約45%削減できる。「住宅内で使う一次エネルギー消費量を削減できる省エネルギーな給湯システムで、ZEH住宅に最適」(同社)と普及に力を入れる。






【売れ筋製品】電気代高騰で再注目

販売方法工夫し小規模事業者でも導入容易に


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電気代の高騰によって店舗・オフィス向けエアコン「FIVE STAR ZEAS」に大きな注目が集まっている。小規模店舗や事務所向けエアコンのフラッグシップモデルで、業界トップクラスの省エネ性能を誇る。

「小規模店舗や事務所様では、何にどれだけ光熱費を使っているのか把握されていない方も多く、エアコンにこだわる方はあまり多くなかった。しかし、年々電気料金が上昇していたことに加えて、昨年の電気・ガス料金への補助の打ち切りで風向きが変わった」(埴岡氏)

2023年に発売された現行モデルは、室内外の温度や湿度、床温度をセンシングし、風量や風向をAIで自動制御する「ダイキンスマートAI」や温度村を気流循環により抑制する「アクティブ・サーキュレーション」などの特徴をもつ。

■修理・管理含んだサブスク提案も

こうした最新技術により年間15%程の省エネを見込め、15年前のモデルと最新モデルを比較すると電気料金が半額になるケースもある。省エネ性能に抜群の強みがあるが、提案方法や販売方法への工夫も採用増を後押しする。

省エネ提案ツール「どこでもパートナー」は、QRコードを読み込み現在使っている機種や設置年、購入予定の機種を選べば、電気代やCO2排出量の差を即座にグラフで提示する。

「10年、15年使う気で入れ替えを検討されている方が多いので、年間の電気代削減量や何年で元が取れるかがわかると、省エネ性能の高い製品を選んでいただける」(澤田氏)

しかし、まとまった手元資金を確保できない場合もある。定額サービス「ZEAS Connect」は、そうした小規模事業者のニーズも取りこぼさない。

「機器設置から修理・管理がサブスクでワンパッケージになっている。電気代を低減できるFIVE STAR ZEASの方が、普及帯のECO ZEASよりも電気代を含めた月々の支払額が抑えられることもあり、構成比を押し上げている」(埴岡氏)

経費処理できれば節税効果も見込める場合もあることから、「ユーザー様にとってお得な情報も含めて更に拡販していきたい」(澤田氏)という。




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【インタビュー】ダイキン工業 東京支社 空調営業本部 事業戦略室 企画担当課長 埴岡 浩 氏/営業開発部 副参事 澤田 宏司 氏


(日本物流新聞2025年3月25日号掲載)