進化する省エネと環境対応
- 投稿日時
- 2025/03/26 09:00
- 更新日時
- 2025/03/28 11:12

冷媒問題に向き合う
脱炭素実現に向けて加速している省エネや再エネの普及。各メーカーは省エネ性能を切り口に、技術革新と新製品開発に力を入れている。省エネ性能が進化する一方で、地球温暖化防止のために重要な軸の一つに冷媒問題がある。本特集は「進化する省エネと環境対応」と題し、省エネ性能に留まらず、冷媒問題に先んじて取り組むメーカーのインタビューや取材を行った。
熱を移動する際に必要となる冷媒。性能はもちろん、安全性や経済性、環境性などが求められる。しかし近年、特に重視されているのは環境性で、主流として使われる冷媒の変化が進んでいる。その動きの一端となったのは2016年、「モントリオール議定書」で改正採択された「キガリ改正」だ。冷媒用途に使われるフロンについて、オゾン層を破壊する「特定フロン」(CFC・HCFC)だけでなく、高い温室効果をもつとして「代替フロン」(HFC)も排出抑制の対象にし、段階的削減を義務づけた。日本では19年1月1日より規制が開始している。
■グリーン冷媒への転換へ
次世代の冷媒として、地球温暖化係数(GWP)が低く環境への影響が少ない「グリーン冷媒」への転換が求められる。政府は低GWP冷媒の開発や導入の推進に向け、経済産業省では23~27年度の5年間(25年は5億円を概算予算)、グリーン冷媒・機器への転換を進めるために必要な技術開発を推進する。環境省は、実用化しつつもコスト面に課題がある分野への自然冷媒機器への導入支援を行うなどしている。
しかし低GWP冷媒の多くはHFC冷媒に比べて微燃~強燃性があるなど、冷媒として用いるには安全対策も必須だ。経済産業省は業務用冷凍空調機器からのフロンの漏えい防止のため、漏えいが想定される接合部や配管の接続部に対して、技術講習会を通して施工品質の向上や施工技術者の育成を支援している。そのような中、グリーン冷媒の開発や空調機器への低GWP冷媒の導入など先進的に取り組んできたダイキン工業は、フレア加工が不要の配管継手「フレアレスジョイント」を標準搭載するなど省施工を含む安全対策にも力を入れている。フレアレスジョイントにより、漏えい想定箇所から除外でき冷媒漏れを検知する検知器の設置が不要になるなどのメリットもある(詳しくは左のインタビュー)。
2050年の脱炭素達成に向け、国は代替フロン分野ではグリーン冷媒への転換や普及拡大、フロンの漏えい防止や回収をポイントにして進んでいく構えだ。省エネ技術と関連する冷媒問題。規制強化を通じて進化する冷媒技術にも注視する。
ノーリツ、自然冷媒R290採用で環境負荷軽減
ハイブリッド給湯システム
地球温暖化係数が低く環境負荷が少ない自然冷媒「R290」を採用した「業界唯一」という「ユコアHYBRID」
2025年も給湯省エネ事業の補助金が継続される。24年は予算総額580億円に対し、補助金申請額の割合は97%に達した。25年も580億円(うち32億円は電気蓄熱暖房機および電気温水器の撤去に対する補助を予定)を予算としており、、国は給湯器の高効率化に力を入れる。
補助金対象となっているノーリツの「ユコアHYBRID」は、空気熱で湯を沸かすヒートポンプ給湯器と、瞬間式で湯を作る高効率ガス給湯器(エコジョーズ)の長所を融合したハイブリッド給湯システム。省エネや経済性をかなえながらも、しっかりとした湯量と湯切れのない快適な給湯を実現する。
特徴的なのは自然冷媒「R290」をヒートポンプユニットに採用している点だ。R290はLPガスを原料とした自然冷媒で、地球温暖化係数(GWP値)が非常に低く、「業界唯一」(2021年12月同社調べ)同社がハイブリッド給湯システムに用いた。集合住宅タイプでは「地球温暖化係数が低い自然冷媒採用のため、容積率緩和の適用範囲内となり住戸の面積を大きくすることが可能」(同社)と話す。
■太陽光発電からの給湯・保温もより効率的に
貯湯時のエネルギー消費のムダを抑える独自の「スマート制御」でさらに省エネ性と経済性を追求する。家庭ごとに異なる湯の使用パターンを季節や曜日、時間ごとに記憶・蓄積。「集めたデータから予測し、効率のよい貯湯タイミングと必要な湯量により放熱ロスを最小限に抑える」(同社)。年間給湯や保温の光熱費は従来給湯機より低減できる。
さらに戸建て用の太陽光発電消費優先モデルは、モードを選択することなく、使用開始時から電力の自家消費を優先する。必要な量のお湯だけを学習機能で予測して貯めるため、太陽光で発電した電気をムダなく使える。標準モデルと比べて年間の給湯・保温一次エネルギー消費量は約45%削減できる。「住宅内で使う一次エネルギー消費量を削減できる省エネルギーな給湯システムで、ZEH住宅に最適」(同社)と普及に力を入れる。
2025年4月から! ビル用マルチエアコンでR32対応義務化
安全対策で設計・施工・管理負担増?
総合力で進める環境対応
環境性能・省施工・DXで差別化
ダイキン工業 東京支社 空調営業本部 事業戦略室 企画担当課長 埴岡 浩 氏/営業開発部 副参事 澤田 宏司 氏
ダイキン工業・東京支社空調営業本部の事業戦略室企画担当課長の埴岡浩氏(右)と同営業開発部副参事の澤田宏司氏
4月1日から新設用ビル用マルチエアコンの冷媒が、R410AからR32へ移行が義務化される。ダイキン工業も昨年11月からR32対応のビル用マルチエアコン「VRV7」の販売を開始。地球環境への負荷を低減する取り組みを加速させている。今回の取り組みについてダイキン工業・東京支社空調営業本部の事業戦略室企画担当課長の埴岡浩氏と同営業開発部副参事の澤田宏司氏に聞いた。(以下、敬称略)
――4月1日からビル用マルチエアコン(ビルマル)でR32冷媒対応が義務化されますね。
埴岡 2018年に家庭用エアコンから始まったR32冷媒対応は、店舗・オフィス用エアコンに広がり、ついにビルマルが指定製品化(義務化)となります。4月1日から対象となるのは新設用の冷暖切替機だけですが、当社はそれに加えて、冷暖同時運転機でもR32対応した「VRV7シリーズ」を用意しています。
――R32対応によって変わることは。
澤田 R32冷媒は従来冷媒R410Aより地球温暖化係数(GWP)を3分の1程度に低減できます。一方で、微燃性があるため万が一に備え、従来はなかった遮断装置の設置など安全対策を取る必要があります。今回の改正は我々メーカー側だけでなく、様々なステークホルダーに影響を与える内容となっています。
――R32対応で先行してきましたが、ここからは横並びになります。どう差別化する。
埴岡 仰る通り、冷媒自体の差というのはなかなか生まれづらいと思います。VRV7シリーズでは、効率的な冷媒制御による環境性能向上と安全対策の簡素化、DXにも繋がる制御面の拡充の3点で差別化を図っています。
――まず環境性能による差別化ポイントを教えてください。
埴岡 R32の方がR410Aに比べて冷媒効率が高いため、冷媒充填量を減らすこと自体は各社可能です。しかし、制御の仕方によって削減できる量は変わってくるので、R32に合わせた制御をどう行っていくかが差別化ポイントとなります。当社はR32をいち早く空調機器に搭載してきました。また、ビルマルも市場に先駆けて展開し約45年の実績があります。一番歴史のあるメーカーとして、一日の長があると自負しています。実際に、VRV7は冷媒配管を細径化し、冷媒充填量を10%以上低減しています。
VRV7シリーズの室内機。検知器を標準搭載する
■従来と変わらぬ導入しやすさ維持
――安全対策についてはいかがでしょうか。
澤田 安全対策については、(一社)日本冷凍空調工業会がまとめたガイドラインがあり、各社それに則った安全対策手法をラインナップしていると思います。しかし、従来よりも手間やコストがかかるため、ビルマル自体の市場優位性が損なわれる可能性もある内容となっています。当社としては環境対応と安全対策を両立しながら、従来と変わりのない導入しやすいシステム設計にこだわっています。
――具体的には。
埴岡 VRV7は、漏えい想定箇所から除外可能な配管継手「フレアレスジョイント」(ねじ接合継手:ISO14903適合)を標準搭載しています。一般的に室内機はフレア接続で施工されていますが、フレア接続部は冷媒の漏えい想定箇所となります。つまり、室内機ごとに検知器を設置する必要があるということです。また、検知器を居室内に設置する場合、設置箇所が定められているため、施工だけでなく設計段階からの作業負担増が予測されます。フレアレスジョイントを使用すれば、そもそも検知器を設置する必要がないため、設計・施工の手間を省くことができます。なお、現地配管の接続部には同様のねじ接合継手である「クイックパイパー」をオプションで用意しており、当社製品の配管接続部分は検知器レスを実現できます。
澤田 空調業界は担い手不足や高齢化などが進み、短工期での施工が求められる現場も増えています。フレア処理は銅配管の広げ方や締め方に技量がいるため、施工品質の均一化が困難なことも問題になっています。両製品は誰でも簡単、迅速かつ施工品質を一定に保てることも特徴です。こうした継手を室内機ユニットに標準搭載しているのは当社だけであり、安全対策が義務化された今、大きな差別化ポイントになると見ています。
――制御面はいかがでしょうか。
埴岡 機器単体と管理の2つの側面で工夫を凝らしています。機器単体では、新たに設置が必要になった遮断装置や通風装置を使って制御をより高度化しています。遮断装置で用意した「マルチ冷媒温度制御」は、遮断装置を使って室内機に送り込む冷媒量を調整することで、運転を止めずに快適な温度をキープします。狭い居室などでよく見られる頻繁にON/OFFが切り替わる無駄の多い運転を改善できると見ています。
澤田 管理側では、VRV7の設置とオプションの設備管理サービス「DK-CONNECT」を契約いただいた方に、AIを使った制御システム「遠隔自動省エネ制御」をお使いいただけます。お客様の稼働データと建物の向きや環境情報などを学習し、先回りして制御を行うものです。(25年春提供開始予定)
――効果のほどは。
埴岡 お客様の利用状況や建物状況によって変わってくるのですが、実証実験を行わせていただいたヤマハ様の本社ビルでは年間消費電力量を最大2割削減できました。
――制御の部分は今後もアップデートされていきそうですね。
埴岡 そうですね。設計、施工人材だけでなく管理者側も人手不足が深刻です。今後は、年1回求められる回路検査もDK―CONNECTを使って簡易検査可能なシステムを構築したいと考えています。
澤田 R32対応で新たな安全対策機器の設置が必要になりました。ただ機器を設置するのでは、お客様からすると単純なコスト増にしかなりません。VRV7シリーズは安全対策にも付加価値をのせています。システム全体で一石二鳥、三鳥の環境対応をしていきませんかと提案していきたいです。
【売れ筋製品】電気代高騰で再注目
販売方法工夫し小規模事業者でも導入容易に
電気代の高騰によって店舗・オフィス向けエアコン「FIVE STAR ZEAS」に大きな注目が集まっている。小規模店舗や事務所向けエアコンのフラッグシップモデルで、業界トップクラスの省エネ性能を誇る。
「小規模店舗や事務所様では、何にどれだけ光熱費を使っているのか把握されていない方も多く、エアコンにこだわる方はあまり多くなかった。しかし、年々電気料金が上昇していたことに加えて、昨年の電気・ガス料金への補助の打ち切りで風向きが変わった」(埴岡氏)
2023年に発売された現行モデルは、室内外の温度や湿度、床温度をセンシングし、風量や風向をAIで自動制御する「ダイキンスマートAI」や温度村を気流循環により抑制する「アクティブ・サーキュレーション」などの特徴をもつ。
■修理・管理含んだサブスク提案も
こうした最新技術により年間15%程の省エネを見込め、15年前のモデルと最新モデルを比較すると電気料金が半額になるケースもある。省エネ性能に抜群の強みがあるが、提案方法や販売方法への工夫も採用増を後押しする。
省エネ提案ツール「どこでもパートナー」は、QRコードを読み込み現在使っている機種や設置年、購入予定の機種を選べば、電気代やCO2排出量の差を即座にグラフで提示する。
「10年、15年使う気で入れ替えを検討されている方が多いので、年間の電気代削減量や何年で元が取れるかがわかると、省エネ性能の高い製品を選んでいただける」(澤田氏)
しかし、まとまった手元資金を確保できない場合もある。定額サービス「ZEAS Connect」は、そうした小規模事業者のニーズも取りこぼさない。
「機器設置から修理・管理がサブスクでワンパッケージになっている。電気代を低減できるFIVE STAR ZEASの方が、普及帯のECO ZEASよりも電気代を含めた月々の支払額が抑えられることもあり、構成比を押し上げている」(埴岡氏)
経費処理できれば節税効果も見込める場合もあることから、「ユーザー様にとってお得な情報も含めて更に拡販していきたい」(澤田氏)という。
(日本物流新聞2025年3月25日号掲載)