INTERMOLD2023レポート

大量生産に欠かせない金型の一大展示会「INTERMOLD/金型展/金属プレス加工技術展2023」(日本金型工業会、日本金属プレス工業協会主催)が2023年4月15日までの4日間、東京・有明の東京ビッグサイトで開かれ、3万9045人が来場した。昨秋のJIMTOFから会期が近く、その再演というブースが多かったが、昨今の電気代高騰や脱炭素の流れから省エネをあらためて切り口にするメーカーが目立った。

【画像1】イメージタイトル
【画像2】安田工業のMC「YBM 950V Ver・V」
【画像3】ブルーム-ノボテスト「フォームコントロールX」
【画像4】牧野フライス製作所の7軸加工機「D2」とC&Gシステムズの「CAM-TOOL」を使って削り出した金型サンプル

「省エネ」「CO2削減」あらためて切り口に

電力消費 抑制

会場奥に最大ブースを構えた牧野フライス製作所はブース中央に人工芝エリアを設けた。そこに「放電加工機の省エネモード(待機時のポンプ・チラー停止、時限加工液機能)で待機時の電力消費を70%削減する」「環境温度変化による位置誤差を最小限に抑えるeSTABILIZERで実加工時の電力消費を12%削減する」といった数多くの省エネ性能をパネルで紹介した。実機としてはマシニングセンタ(MC)、ワイヤ放電加工機、形彫放電加工機の3台を出品。今展に合わせて機能強化した立形MC「V56iPLUS」はeSTABILIZERとテーブル温度安定機能で「実加工時の電力消費をさらに12%抑えられる」と言う。

新デザインのMC「YBM 950V Ver.V」(3軸および4軸仕様)を出品した安田工業は、長時間の安定した高精度加工を実現することに加え、インバータ型油圧ユニットの採用で省エネにつながることも紹介した。

新デザインで操作性・メンテナンス性が大幅アップした安田工業のMC「YBM 950V Ver.V」




キタムラ機械はMCのメカ的なつくり込みをアピール。主力機に採用するツインボールねじ+角スライドが省エネにつながるのだそう。「点接触のリニアモーター駆動と異なり、面接触のため振動が少なく刃物の寿命と切削スピードを2倍ほど高められる。主軸のギヤは4段切替えで小さなスピンドルでも重切削が可能」と言う。

ソディックはワイヤを回転させながら送ることでその消耗と加工精度アップを図った水加工液仕様ワイヤ放電加工機「ALN400G iGroove+ Edition」を出品。ワイヤの無駄づかいを防ぐほか、「電力消費の7割近くを占める水ポンプをインバータ式にしてその電力消費を3割削減した」のも売りだ。

省人化・自動化

アマダマシナリーはデジタル化したことでワークを最大400倍(従来は50〜100倍)に拡大して確認できるプロファイル研削盤「DPG-150」を紹介。「自動計測・補正機能を標準搭載し、熟練者でなくても微細な加工ができる」と言う。従来型のプロファイル研削盤も並行して販売を続けているが、「DPG-150が従来型の4倍ほど売れ、圧倒的に支持してもらえている」。

安田工業はMCの長時間の安定加工のほか、自動化にも貢献できると訴えた。「たとえばプロファイル計測で加工前、加工後の工具のR形状の摩耗を確認できる。ワークを取り外して3次元測定機で測って精度が不十分なら再加工するという時間の無駄をなくせる。また工具の摩耗量に応じてプログラムを準備することもできる」と話す。

ミツトヨは3次元測定機用自動測定プログラム生成ソフト「MiCAT Planner」(V2を今夏リリース予定)を紹介。「CADデータに寸法を測りたい位置が示されていれば、どんな順番で測定すればよいか、スタイラスの最適な大きさは何かといったことを指示してくれる」と特長を話し、中小企業に3次元CADの利用をいっそう促す。

ブルーム−ノボテストが出品した機上測定ソフト「フォームコントロール」は加工後のワーク測定を自動で行う。「5軸対応で、航空機関係のエンジンの金型加工向けに特に人気がある」と言う。今回披露した、新機能を携えた「フォームコントロールX」(主軸30〜50番の既存機に後付け可能)はクリックした箇所で測定パスを作成する際、最短距離を算出し最適化する。また、測定結果はウェブ端末を使って外出先から確認できる。

ブルーム-ノボテストは「フォームコントロールX」による自動測定を実演




新日本工機はAPCで運搬・設置された金型の位置決め修正作業を不要にし、無人化を後押しする。測定した傾き誤差をもとにパレットを旋回させ、機械X軸とワークの平面出し作業を自動化するというもの。「ワークを投入すれば自動で加工して出てくるという理想の形を提案している。その第一歩としてこの『ワーク平行出し機能』を導入してもらえれば自動化へ大きく前進できる」とする。

高精度・微細加工

西部電機が4月に販売を始めた超精密ワイヤ放電加工機「MM50UP」(JIMTOFでは参考出品)は標準機よりさらに性能を高め、ピッチ加工精度±1ミクロンを達成。コネクタの金型製造などに向く。同機で加工した様々な材種のサンプルワークを並べ、「SKD-11やモリブデン、チタンなど対応可能素材をこれからも広げていく。大型ワークに対してもミクロン単位で対応できることをアピールしたい」と話した。

C&Gシステムズは7軸対応のCAM「CAM-TOOL」を牧野フライス製作所ブースと連携するかたちで紹介。主軸旋回型では唯一という牧野の7軸加工機「D2」(テーブル回転のC軸と機械全体が下がるW軸を付加)専用ソフトとして同展出展を機に受注を始めた。牧野ブースではこれらを使って滑らかに削り出したおよそ1.5m角の金型サンプルを置いた。このCAMには異種金属を肉盛りして切削できるAM機能をオプションで用意した。

牧野フライス製作所の7軸加工機「D2」とC&Gシステムズの「CAM-TOOL」を使って削り出したおよそ1.5m角の金型サンプル(焼入れ材DHA-WORLD〈46HRC〉)




微細加工に対応した刃物も揃う。日進工具はCBN2枚刃ボールエンドミル「SMB200」(4月12日発売)を高硬度材の高精度加工用に提案。後藤弘治社長は「1枚刃はすでにあるが、100分の1R(毛髪の太さの7分の1ほど)の2枚刃を商品化するのはものすごく難しい。ただし加工速度は2倍になるのでペイできる(投資回収できる)確率はぐっと上がる」と話す。

最適な工具と加工法で製造コストの半減を目指す「PRODUCTION50」を掲げるMOLDINOは、1月に発表した側面切削用エンドミル「ER5HS-PN」をブース正面に展示した。これ1本で荒加工から穴加工もこなす。側面加工は長い刃長から出る切りくずによって切削抵抗が大きくなり、加工面が荒くなることがあった。本工具は外周刃に溝を入れることで切りくずを短く分断し、「金型の構造部を削るのに適している」と話す。

MSTコーポレーションは低温仕様の「焼ばめホルダスリムライン」がワーク奥深くまで入り込めることを訴えた。名前のとおりスリムなため金型加工から部品加工まで幅広く使え、高速切削に向く。「一般に刃物を取り換える際、刃物が振れていないかチェックしなければいけないが、これならその必要がない。金型業界では人手不足が深刻化しているが、熟練工でなくても同じ精度が出せる」と言う。

(日本物流新聞 2023年5月15日号掲載)

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