1. トップページ
  2. 特集記事一覧
  3. 官民連携で描く——「新技術立国」の商機

官民連携で描く——「新技術立国」の商機

投稿日時
2026/01/23 11:12
更新日時
2026/01/23 13:30

ロボット・AI人材300万人不足、事務200万人余剰の衝撃

政府は2026年、産業競争力強化法の改正を軸とした「新たなロードマップ」を本格始動させる。その目玉となるのが、設備投資への即時償却や大規模な税額控除を選択できる「大胆な投資促進税制」の創設だ。長らく横ばいが続いてきた日本の研究開発・設備投資を呼び覚ますため、国家が異例の厚遇で背中を押す。AI、半導体、量子、宇宙。これらの戦略分野において、もはや日本は「単独」で戦うことはしない。産総研の出資機能拡大や首脳外交を駆使し、内外の大学・産業界を繋ぐ「国際頭脳循環」の中に、我が国の生産・研究拠点を取り込むグローバル・バリューチェーンの再構築が急務となっている。

職種.jpg

■ホワイトカラーが余る

一方で、技術を形にする「人」の問題も避けては通れない。2040年に向け、事務職214万人・販売員51万人が余剰となる一方で、AI・ロボットを使いこなす人材は326万人不足するという厳しい予測がある(「2040年の産業構造・就業構造推計について」経済財政諮問会議経済産業大臣提出資料より)。だが現在の高校大学の半分は文系だ。このミスマッチを解消するため、教育のあり方も根本から覆される。文系・理系の垣根を超えた「高校教育改革グランドデザイン」や、2027年度を見据えた交付金の創設。さらに、AIを活用したポータルサイト構築による「戦略分野への労働移動」の円滑化。これらは、産業構造そのものを、時代が求める形へと「強制アップデート」するための布石である。

前特集で示した「大新陳代謝時代」という淘汰の荒波を乗り越えた先に、どのような景色が広がっているのか。

本特集では、新技術立国への到達を支える最新ソリューションの今と未来を、各記者が徹底分析。また、DXの先駆者である村田製作所、パナソニック コネクトによる対談を通じ、変革をリードする企業の「思考回路」に迫る。荒波の先にあるフロンティアへ。停滞の20年を過去のものにするための、新たな挑戦が今、始まる。








【対談】パナソニック コネクト・河野 昭彦 × 村田製作所・須知 史行  

モデルから実装へ、AIDXが製造現場を変える


対談パナソニック.jpg

【写真左】パナソニック コネクト 執行役員 ヴァイス・プレジデント CIO IT・デジタル推進本部  マネージングダイレクター 河野昭彦氏
【写真右】村田製作所 上席執行役員 経営DX本部 本部長 須知 史行 氏


村田製作所 上席執行役員 経営DX本部 本部長の須知史行氏と、パナソニック コネクト 執行役員 ヴァイス・プレジデント CIO IT・デジタル推進本部 マネージングダイレクターの河野昭彦氏が、「第1 製造業AIDX EXPO大阪」(202512月、マイドームおおさか)において、「製造業の未来を変えるDXモデルから実装へ」をテーマに対談した。DXの成否を分けるのはAIでもクラウドでもない。「ならでは」を磨き、データを現場で育て、挑戦が伝播する組織を作れるかどうか――。対談は、製造業DXモデル構築の時代〟から実装耐久戦の時代〟へ入ったことを浮き彫りにした。


須知「まず簡単に自己紹介します。村田製作所は電子部品をグローバルに提供しており、売上の9割以上が海外です。私は経理・経営企画畑を歩み、2022年からIT部門も管掌、2025年に経営DX本部が立ち上がり本部長を務めています」

DXを進める中で、最終的に腹落ちした定義は『競争上の優位を獲得すること』です。そのためにデジタルを使う。我々は『最先端領域で勝ち切る』と同時に、『コモディティ化する領域でも勝ち切る』という二正面で考えています」

DXが機能するかどうかは、『ならでは』があるかどうか。ITAIそれ自体は強みにならない。各社が持つこだわり、技術、プロセスをどう競争優位に転換するかです。

もう一つ重要なのがつながり〟。データとデータ、経営と現場、仕入れ先と顧客。村田ではバリューチェーンDXを一丁目一番地とし、プロセスをつなぎ、回転を速め、オペレーション自体を強みに変えようとしています」

■DXで「競争優位」を作れるか

河野「『ならでは』という言葉は本質ですね。日本は競争力が落ちているからDXに期待が集まりますが、『レガシーを変える=ITを刷新する』だけでは進みません。業務プロセス、ルール、評価制度まで含めてレガシーですから本気で変えないと、結局使われない」

DXが進む会社は、トップの覚悟、現場の納得、文化がそろっています。フラットで、新しいことを試していい空気がないと、『それ上に怒られるよね』で止まってしまう」

須知ITの世界ではレガシーは悪者にされがちですが、私はむしろ『ならでは』と通じる概念だと思っています」

河野「まさに。古いのではなく、『今風に解釈し直せていない』だけ。プロセスとUIを変えれば、価値は生き続けます」

■AIは現場で鍛えられる

須知「村田では、まだまだ勘・コツに頼る工程が残っています。熟練者は引退するし、ブラックボックス化も進む。そこでAIを入れ、これまで取れていなかったデータを取り、見えていなかったものを可視化する。AIが効く現場は、例外なく『データをつくる努力』をしています」

「重要なのは、AIモデルを作ることではなく、精度を上げ続けるプロセスを作れるかどうか。結局ぶつかる壁は、データが整理されていない、属人化している、非構造データにノウハウが眠っている――技術ではなく、仕事の仕方と文化の問題です」

河野「我々も同じです。当社では『ConnectAI』という独自ツールを展開しています。目的は生産性向上とAIスキルの底上げ。会社が公式AIを用意しないと、社員は勝手に外部AIを使い始める。これはシャドーAI問題で、情報漏洩リスクになります。2024年は約448000時間の業務削減効果が出ました。特徴的なのは、検索から『頼む』使い方へシフトしていること。フェーズとしては、汎用AI 自社特化型 業務組み込み。いまは3段階目に入っています。検査や照合の一部は、すでにAIに任せています」

「もう一つ大きなテーマが『個人に埋もれた知の回収』と『データの散逸』です。構造・非構造を問わず一元化し、プロセスとデータを同時に更新していく。業務を変える→ 文書を変える AIが学ぶ 判断が変わる。この業務プロセス改善とデータの更新のループの両立を作っていきたいですね」

須知AIの進化が速い分、経営は成果を求める。しかし成果以前に、データ整備とプロセス改革という地味な工程がある。このギャップは大きいですね」

河野「正直、耐えるしかない。DXは時間も金もかかる。何も成果が出ない年もある。ただ、短期で効くテーマと中長期テーマを同時に走らせテンションを維持する。これが現実解です」

須知「現場からは『AIを使わなくても今うまくいっている』という声も出ます。真の価値創造を阻むのは、属人化、個別最適、適用硬直化。村田では縦割りを横断する人材の価値を高めています。現場の人間が横串役を担った方が、実装は進みます」

河野「テクノロジー活用には、カルチャー、経営支援、アジャイルな内製力が不可欠です。そして最後の意思決定は人間にしかできない。情と知の組み合わせ――共感、自己否定、勇気はAIにはない。AIに仕事を奪われる心配より、『使い切る覚悟』が重要です。挑戦して、それを発信すると仲間が生まれる。DXは技術よりも、挑戦が連鎖する状態を作れるかどうかですね」




■関連記事LINK


【2026年ソリューション別展望】脱炭素、スコープ3義務化ついに始動


【2026年ソリューション別展望】自動化、工場のヒューマノイド利用は数年後か


【2026年ソリューション別展望】働き方改革、26年は高齢者対応強化へ


【2026年ソリューション別展望】DX、特化型AI活用で生産性向上へ




(日本物流新聞2026年1月25日号掲載)