2023:今夏を乗り切る省エネ暑さ対策

日本の夏が暑く、そして厳しくなっている。特に昨年は6月から記録的な暑さが続き、全国各所で「観測史上初」の文字が乱れ飛んだ。今年も万全の暑さ対策を施したいところだが、足元の電気代は高騰し、脱炭素へのコミットもいっそう強く求められるようになっている。そこでここでは、今夏こそ現場に導入したい、エコフレンドリーな暑気対策ソリューションを紹介する。

【画像1】タイトルイメージ
【画像2】鎌倉製作所・有光工業
【画像3】昭和電機・スイデン
【画像4】ダイキン工業・フルタ電機・ナカトミ

2022年の天気を表す漢字はズバリ「暑」だった。もちろん記者個人の見解ではない。毎年年末にかけて(一財)日本気象協会が発表している、気象予報士を対象にした調査の結果だ。

6月には群馬県伊勢崎市で2度も観測史上初(国内)の40度超えを記録。7月に入っても暑さは増すばかりで、7月1日には同日に全国6地点で最高気温が40度に達した。結局、夏の平均気温は平年よりプラス0.91度と統計開始以来2番目に高い数字に。気象庁の「暖候期予報」(6〜8月)によれば、今年の気温も沖縄・奄美を除く全国で「平年並みか高い」と予想されている。大阪ではすでに3月としてははじめて25.2度と夏日を記録しており、昨年ほどの異常な暑さではないとしても、今夏も十分な暑さ対策を講じるべきなのは言うまでもないだろう。

エコフレンドリーな暑さ対策を

ここまで暑さ対策の必要性を綴ったが、一方で例年と今夏とでは状況が異なる。ロシアのウクライナ侵攻やそれに伴うエネルギー価格の急騰を受け、電気料金の高騰が続いているからだ。
帝国データバンクが昨年末に行った調査によれば、有効回答企業1265社のうち電気料金の総額が1年前と比べて増加した企業は86.6%。増加率は平均すると28.7%となり、ごく一部の企業を除き電気料金の値上げに直面している状況がうかがえる。

東北電力、中国電力など5社が経済産業省に申請していた今年4月からの規制料金(電力自由化以前から提供されている電気料金プランで、上限変更に国の許可が必要)の値上げはとりあえず見送られたものの、自由料金や高圧の電気料金は多くの電力会社がすでに値上げ、もしくは今後の値上げを予定している。工場の消費電力のうち空調は約11%を占めるとされ、ここにメスを入れられれば高い費用対効果が期待できる。そうでなくともあらゆる企業がカーボンニュートラルへのコミットを求められるようになりつつあり、今夏の暑さ対策はエコフレンドリーな製品を優先したいところだ。
とはいえ暑さ対策製品はそれぞれ一長一短があり、自社の現場に適した設備を選定・導入することこそが、結局のところ省エネにも通ずる最良の道といえる。ここで紹介するソリューションをぜひ参考にしてほしい。

鎌倉製作所:屋上換気扇「ルーフファン 省エネ形 RF-Eシリーズ」

ベストセラー製品が省エネ・低騒音に

鎌倉製作所の誇る屋上換気扇のベストセラー「ルーフファン」シリーズ。建屋の上部に溜まった熱気を効率的に排気できる製品だが、なかでも2018年に登場した「省エネ形RF-Eシリーズ」が注目を集めている。発売以来、数量ベースで前年比1.5〜2倍の成長を毎年続けているのだ。

本体内部の風の抵抗になる要素を減らすことで、元々省エネだったルーフファンからさらに26〜49%の消費電力低減を実現。従来機種比1〜9dBの静音化にも成功した。昨年にはファン径105cmの大型機種も発売。従来のルーフファンとファン径が同じなら本体を乗せ換えでき、他社製品との交換も容易という。



有光工業:環境細霧システム

気化熱で環境と人に優しい暑気対策

水が蒸発するときに周囲の熱を吸収する。気化熱と呼ばれるこの自然現象を暑さ対策に利用したのが、有光工業の細霧システムだ。空気中に噴霧した微細なミストの力で夏の暑さを和らげる。冷えすぎによる「冷房病」にならず、小型ポンプを動かして稼働するため電気料金も安い。人にも環境にも優しい暑さ対策と言えるだろう。

同社では固定配管式やポータブル式をラインアップ。いずれもエアコンの効きづらい大空間や半屋外のような開放的な空間のクールダウンに有効だ。ファンに取り付ければ風との相乗効果で冷却効果もアップし、視覚的にも涼しくなれる。



昭和電機:大型サーキュレーター「ウインドレーサー」+熱解析

熱解析+送風機で暑さを根本改善

「なんとなく暑いが、なぜ暑いかがわからない」。そんな悩みを抱えたまま、場当たり的に冷房機器を導入する人は多いのではないか。しかしそれでは電力のムダ遣いにもつながってしまう。昭和電機の「ちょこっとエンジニアリング」を活用したいところだ。

同サービスは現場の課題をメーカーならではの視点で解決に導くもの。暑熱対策では熱流体解析ソフトを活用し、熱気の滞留や温度分布を見える化する。シミュレーションで問題を炙り出すからこそ、効果の高い暑熱対策が可能になるわけだ。こうした解析を行ったうえ、同社は大型サーキュレーター「ウインドレーサー」などの機器を最適な形で配置。同製品は気流で温度ムラを改善するほか、冷房の効率化にも有効だ。



スイデン:環境型スポットエアコン「SS-25DK-1」

環境に向き合うエコ冷媒の新型エアコン

耳にする機会の増えたGWP(地球温暖化係数)という言葉。「CO2と比べ何倍の温室効果があるか」を数値化したもので、例えばメジャーな冷媒「R410A」のGWPは2090。端的に言えばCO2の2090倍の温室効果を持つ。この問題に向き合うスポットエアコンを、スイデンがいち早く開発した。

今年発売の「SS-25DK-1」は、GWP675のエコ冷媒「R32」を採用した環境型スポットエアコン。エコ冷媒の採用と同時に冷媒封入量を従来品比10%減、そして消費電力も同14%削減した。冷房能力はそのままで、環境に配慮しながらしっかり現場を冷やせる。電源100V、キャスター付きで首振りも可能と使い勝手も良い。SDGsに向き合うエコフレンドリーなスポットエアコンで、夏の暑さを乗り切りたい。



ダイキン工業:工場向けエアコン「MULTI CUBE(マルチキューブ)」

ムダなく遠くの人まで快適な風を

工場の空調設置には制約が多く、大空間のため各人に合わせた温度調整は行いにくい。そういった空調の悩み解決にハマるのがダイキン工業の工場向けエアコン「MULTI CUBE(マルチキューブ)」だ。

1台ごとに温度や風量の設定、オン・オフ制御ができ、作業者ごとに適した暑さ対策を行いながらムダな稼働を抑える。大型プロペラファンによる最大風量毎分15㎡の大風量は「長時間あたっても疲れないほどやわらかで心地よい」(同社)という。別売品の吹出口アダプターと整流板を取り付ければ、風を約4m先の遠くの人まで効率的に届けられる。ダクト工事不要のため据付や移設がカンタンで、設置方法も台置きや天井吊り、連結など自由度が高い。



フルタ電機:吊り下げ型送風機「フォローウインド FW22h」

諦めていた場所へ涼風を

風速1mの風を16m先まで、しかも蛍光灯1本以下の30Wの電力で届ける。これを可能にしたのが、「フォローウインド FW22h」だ。吊り下げ型の送風機(本体重量9kg)で、今まで暑気対策を諦めていたような場所にも柔軟に設置できる。騒音値も52dBと、工場内で稼働させても気にならないレベルに抑えた。

使い方は様々で、例えば熱や蒸気の滞留を解消したり、スポット空調を効率化させたりと幅広い用途で活用できる。三相200V、単相100V、単相200Vをラインアップ。配線工事も簡単だ。



ナカトミ:拡散送風クーラー「PFC-3」

拡散とスポット、どちらを選ぶ?

「スポット」ではなく「ワイド」な涼風が欲しい――ナカトミの拡散送風クーラー「PFC-3」は、そんなシーンで活躍する製品だ。プロペラファンで前面に広がるような風を生み出し、さらにオートスイング機能も搭載。スポットクーラーより広い範囲にしっかりと冷たい除湿された風を届ける。1台で2〜3人の暑気対策が可能で、扇風機とクーラーの良さを掛け合わせた製品と言えばわかりやすいかもしれない。

メリットの多いPFC-3だが、必ずしもスポットクーラーより性能が優れているということではなく、重要なのは現場に応じた使い分けだ。例えば限られた場所に送風したいなら、従来のスポットクーラーが合っているだろう。ナカトミはPFC-3と首振り機能付きスポットクーラーをほぼ同等の価格で提供している。ピンポイントかワイドか、この夏は適する方を選びたい。

(日本物流新聞 2023年4月25日号掲載)

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