2026年新年度、転換期 強い経済へエンジン始動
- 投稿日時
- 2026/03/20 11:15
- 更新日時
- 2026/04/01 11:28
有力各社の注力分野・商品
4月——変わる制度
26年度国家予算は、1月通常国会の冒頭解散によりゴールデンウイーク頃に成立とみられたが、3月13日に衆議院を可決通過した。この原稿執筆時(同18日)は年度内成立困難との見方が増えているが、新政権がいう「スピード感のある政策運営」は有言実行されている。産業人としては一般会計で2年連続過去最大となる122兆3000億円規模の予算が日本復活にどう貢献するか気になるところだ。
付言すればプライマリーバランスの見直しや複数年度の予算措置も俎上に上がっており、来る新年度は、積極財政を旗印に重要なターニングポイントに挑む年となるだろう。
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そうしたなか、私たちが働く場も様々変わってくる。げんに4月以降、制度改革が目白押しだ。
産業界で関心を呼びそうな制度改革を並べてみたが、今年1月施行の改正下請法=取適法に続き、高年齢者の労災防止を努力義務とするなど「働く」に広く関連し改革が相次ぐ。なかでもまだ検討段階ながら、新年度に実現すれば40年ぶりとなる労働基準法の改正は、基本、長時間労働による健康被害を防ぐ方向で案が進みそうだ。

この流れは構造的な人手不足問題とも絡み、ロボット化・自動化、職場の環境・安全の確保といった流れを間接的に加速させるだろう。すでにマーケットでは高齢者の労災防止や労働基準法改正を見越した提案が広がっている。
モノづくり産業、回復傾向へ
他方、新年度の景気動向を睨むと、業種によってバラツキはあるが、モノづくり産業全体としてみれば前年度より上向くとの見方が多数だ。足元も回復傾向が見られ、四半期ごとに行う法人企業景況予測調査の直近結果(今年1~3月期)でも、中小企業こそマイナスながら大企業全産業で3期連続プラス、中堅企業もプラスだった。業種で半導体製造装置関連、データセンター関連が景況上向きに貢献しているほか、低調感のあった自動車産業もプラス要因に。テーマ的には省人化のニーズ拡大が上向きを後押ししたと見られる。

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ただ企業規模で格差は広がっている。大企業の売上高・経常利益が近年の好況期のピークだったコロナ禍前の水準を大幅に超えているのに対し、中堅中小企業は回復傾向とはいえ相対的な伸び悩みが目立ち、その差は特に利益面で年々広がっている(左上グラフ参照)。モノづくりを支えるサポートインダストリー関連業種も最終セットメーカーの好調さに比して厳しい状況が続いている。
生産財メーカーはどうか。やはりおおむね、コロナ感染症が広まる前の18年にいったんピークをつけた後、大きく落ち込んで底打ち回復に転じ、筆者の肌感ながら2~3割ほどのメーカーは既に売上で18年水準に比肩するか超えるかしている。残るメーカーも多くは落ち込みの8割がた回復している印象だ。半導体、データセンター、造船、物流、ロボット、防衛、航空宇宙などの注目業種では中堅・中小のモノづくり企業を含めビジネス参入機会が増えつつあり、そのための設備投資に伸びしろが見込める。省エネ・省力・省人化をめぐっても需要は右肩上がりが期待視される。
切り札となる成長戦略
もう少し成長分野を見据えると、今夏を目安に取りまとめる予定の「成長戦略」が注目される。政府は成長17分野への重点投資とともに、関連して「大胆かつ挑戦的な」研究開発制度(ムーンショット型研究開発制度)を推進予定だ。
成長戦略を巡っては「日本成長戦略会議」で議論検討されており、第3回会議(3月10日)では官民投資ロードマップの素案を提示するとともに、成長17分野に関し先行して開発を進めるべき製品等を具体的に上げている。その一部を列挙すると―。
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先行して製品化を急ぐものには次のようなものがある。
○2040年に関連市場約60兆円が見込めるとされる「フィジカルAI」(特にAIロボット)。○データをAIで利用可能な状態にする「データプラットフォーム」。○30年に世界53兆円の市場が予測される光通信関連市場を支える「オール光ネットワーク」。○40年頃に14兆円以上の市場が見込まれる「量子コンピューティング」。○防衛に絡む装備品として重要性を増す「小型無人航空機」。○今後20年で2倍の成長が指摘される「民間航空機」。○技術開発段階ながら40年に200兆円市場ともされる「空飛ぶクルマ」。
ほかにもロケット、次世代船舶、永久磁石、バイオものづくりと次代を牽引するであろう製品システムは枚挙にいとまがないほど。政府の成長戦略会議ではさらに主要な製品・技術などを追加していく構えにある。
中小支援策の方向性
こうした成長分野の市場プレーヤーとして中堅・中小企業の貢献も期待されている。
そのことは新年度に予定される政府・自治体の補助支援事業にも滲んでいる。
新年度の支援事業は、賃上げや大規模投資に絡むものや、人手不足解消のためのロボット化、省人化、AI導入に重点的に行われる見通しにある。
具体的には、「小規模事業者持続化補助金」、「中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)」、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」が目下申請受付け中のほか、「中小企業省力化投資補助金(一般型)」が4月中旬から新たに申請受付。ほか旧来の事業再構築補助金制度などを引き継ぐ「中小企業新事業進出促進補助金」や「中堅・中小企業成長加速化補助金」が実施見通しだ。
このうち中堅・中小企業成長加速化補助金は売上100億円を目指す中小企業を支援するものだ。
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近年の中小中堅企業政策の傾向をみると、中堅企業への支援を重視する流れにあり、同時に中小企業から中堅企業への成長を目指す企業に手厚く補助を与える方向も明確にしている。言い換えれば「地域経済を担ってもらう」ことを重視し、中堅企業や、中小から中堅への脱皮を目指す会社の「大規模設備投資」などを応援する姿勢が明確だ。
ちなみに昨年度の中小企業白書は「売上100億円を目指す企業」を支援する背景として次のことを記している(抜粋要約)。
「スケールが大きくなるほど賃金水準も高い傾向」、「(100億円企業への)スケールアップ実現により域内経済への貢献度も増す(域内需要創出)」、「輸出による外需獲得に貢献する」と。
有力各社の注力分野・商品
愛知産業、先端技術提案 ワールドワイドな協業で強化

インテリジェント・デジタル溶接電源(Fronius製)
◇新年度に向け
新年度は接合技術、金属AM(積層造形)、製造自動化などの先端製造技術を軸に、エネルギー、重工業、自動車などの製造分野への技術提案を強化するとともに、航空宇宙・防衛分野への展開にも取り組む。
国際ウエルディングショー(9月)やJIMTOF(10月)への出展に加え、相模原事業所で自社展示会「ASテクノフェア」の開催も予定しており、実機展示を通じた技術提案を進める。
◇海外先端メーカーとの関係活かす
海外先端メーカーとの強いパートナーシップを活かし、接合技術、金属AM(積層造形)、高精度加工機、研削・研磨自動化設備などの分野で設備およびエンジニアリングを提供。
接合分野では Fronius(オーストリア)の溶接システムや Liburdi(カナダ)の自動溶接技術。研削・研磨分野では PushCorp(米) や ACME(米) の研削・研磨自動化設備を展開。加工分野では Hermle(独)の5軸マシニングセンタや Hamuelの航空機エンジン部品向け加工機などを取り扱う。
金属AM分野でも海外有力企業とのタイアップで大型金属造形などの提案を進め、製造技術高度化を支援する。
政府が掲げる成長投資分野のうち「航空・宇宙/防衛産業」、「資源・エネルギー安全保障・GX」等の分野において、加工設備、接合設備、補修関連設備などの導入提案を鋭意進める構え。
AIRMAN、営業強化し多様なニーズを掴む

インバータ仕様SAS-Vシリーズ
◇新年度に向け
80年以上の歴史と実績を持ち、主にコンプレッサ、発電機、高所作業車などを製造・販売するメーカー。この3月に営業体制を一層強化。国内産業機械ルートの展開を強化し、DX推進等の成長戦略を加速させる。この方針下、3月21日付けで組織再編を行い、営業は国内営業本部と海外営業本部に分割。国内営業本部には、建機営業部、産機営業部、販売促進部、部品・サービス部(カスタマーサポート部から改称)を設置した。同社は「さらなる飛躍に向けた改革期」と位置付ける中期経営計画(27年度まで)を進めており、経営と事業の変革を積極実践中。
◇多様なニーズ満たす商品群
主力のスクリュコンプレッサはインバータ制御をはじめとするさまざまな容量制御方式、屋内設置/屋外設置、給油式/オイルフリー式とバリエーションが幅広く、ラインナップが豊富。多様なユーザーに対応できる。
このうちインバータ制御仕様は高い省エネ効果を得られ、オイルフリー式は食品や医療品、半導体、精密機器などの産業分野で高実績。また、屋外設置型は配管の短縮化による圧力損失の抑制や、エア漏れリスクの低減などの利点がある他、コンプレッサ室が不要になるなど導入コストの削減につながる。
カネテック、豊富な応用実績 ソリューション提案強化

真空機能付き強力型永電磁チャック
◇新年度に向け
マグネット応用機器の総合メーカー。主力製品のマグネットチャックは旋削・切削・研削用から、放電加工向けや5面加工用など特化機種も揃え、多彩なラインナップ。脱磁作業の自動化、板物ワーク材の歪み取り、ピッキング、各種搬送、異物除去などマグネット技術の応用範囲は超ワイド。
こうした分野での実績と取り組み成果をベースに、新年度は「高度化するカスタマイズ化のニーズに対応する」が一つの重点注力事項。加えて加工素材の多様化に伴い、非鉄金属のワーク固定などにも対応可能な真空チャックの拡販を強化する。
◇ハイブリッド商品などで多様なニーズ満たす
ユーザーへのソリューション提案から生まれた真空機能付きマグネットチャック(真空チャックとマグネットチャックのハイブリッド製品)を多様化する加工素材に適した新たなワーク固定の手法として提案を強化する。
また話題の成長分野では「AI・半導体」「造船」を含む様々な分野で同社のマグネット製品が活用されており、ユーザーの「お困り事」へのソリューション提案をベースに、新製品開発と新規ニーズの開拓を目指す考え。
キャドマック、板金加工の高効率化にソフトで貢献

◇新年度に向け
板金加工にフォカースするソフトウェアメーカーとして、板金の3次元・デジタル化や自動化に貢献。機械メーカーの垣根を超えて加工データをつなげる「板金加工のオープンプラットフォーマー」としても注目される。
ソフトウェアで現場を支える姿勢を一貫させ、次々とソフトを開発。また市場の要望に応える新機能を付加した新バージョンが相次ぎ、新年度は板金の高度化・高効率化を一層市場にアピールへ。
◇デジタルでプロセスを変革
昨年来、曲げ加工自動化システム、現場専用端末を開発・市場投入し、秋には板金設計の3DCADを刷新。提案の引き出しが高度に増えている。
そうしたなか、デジタル技術で板金加工ビジネスの変革をうながす板金製造データシステム「MACsheet DataPocket」の拡販にも力を入れる。これはシンプルなユーザーインタフェースが特徴で、新たなアップロード等を必要とせずにユーザーが使用するフォルダやファイルを管理。板厚・材質といった属性情報の抽出・検索や、他社製CADCAMデータの一括共有ファイル(DXF)化、またDXFデータから3Dデータへの一括変換などでシームレスなシステム連携を実現する。タブレットを使った現場でのデータ活用機能「MACsheet TouchPocket」もあり、2つのソフト連携で現場の業務改善も大幅に進む。
三共製作所、高精度・高速性能活かし先端成長分野へ挑む

脆性材研削加工用の円テーブル「RPSシリーズ」
◇新年度に向け
機械運動の方向を変える「カム」技術で他を圧倒する強みがあり、精度、剛性、高速性に優れるローラードライブやCNC円テーブル、搬送・位置決め装置などのハイエンド要素部品で先端モノづくりに貢献。バックラッシ「ゼロ」の技術が差別化を支える。
新年度に向けては、高精度分野における技術的アドバンテージを活かし、生成AIやデータセンターの増設といった市場拡大傾向の半導体分野に向け、新製品をアピールしていく。
◇脆性材研削加工用円テーブルなど投入へ
半導体業界は、市場拡大によりセラミックスや石英ガラスといった脆性材の加工需要が増えており、新製品は、それら脆性材加工をターゲットに開発。脆性材研削加工用の円テーブル「RPSシリーズ」がそうで、独自の機構と特殊なシール構造を採用することにより、高速回転と安定した長時間連続加工を同時に可能にした。また、脆性材の細かな粉塵や加工油の侵入といった過酷な環境にも対応すべく、保護等級IP66(国際規格の、完全な防塵性能で最高クラス)の仕様に。
加えて新年度は「AI・半導体」ほか「航空・宇宙」などの成長分野をターゲットにしたポジショナやパレットシステムを続々投入予定。「期待して欲しい」(同社)とする。
ハイオス、ねじ締めの高品質化をパッケージ提案

ハイオス電動ドライバー「熟練工」シリーズ
◇新年度に向け
トルクコントロールが高精密にできる電動ドライバーでパイオニア。これを中軸とした電動工具をはじめ、トルク計測器、ねじ製造で長年の実績。
新年度は、同社が提唱してきたねじ締め工程の高品質化や、属人化からの脱却提案を強化する。これらを課題とする中小企業に対し、DX活用による作業効率向上を「トータルパッケージ」と呼ぶ具体的な形で市場提案を広げる。
◇協業で「高品質ねじ締め作業」実現
このパッケージはハイオスの「熟練工ドライバー」を軸に他社の作業(教育)マニュアルなどで構成。斜め締め、ねじ浮き、異種ねじ混入などのエラーをリアルタイムで自動検知できる。作業者の能力を問わない高品質なねじ締め作業を実現する。
強みを出し合う他社との協業をベースにしたのが大きな特徴で、同社製ドライバー、他社の教育マニュアル、ユーザーに代わってDX生産ラインの構築を担うシステムインテグレーターが一体となって対応、さらにユーザーがDX化を実現するための補助金申請支援を行う企業もチームに加わっている。DX化に躊躇しがちなユーザーに対し、真っ向からトータルな課題解決を図る。
ユニフロー、品質・施工・利便性等でドアの価値高める

主力のスイングドア(断熱タイプ)
◇新年度に向け
各種ドアを製造販売して半世紀以上、「開口部商品のトップメーカー」として知られる。商品はスイングドア(自在扉)/スーパースイングドア(自在扉)/ミニスイングドア(自在扉)/鋼製軽量ドア(引き戸・開き戸)/バリアフリー住宅ドア/高速シートシャッター/スリットカーテン/オープンショーケース用ナイトカバー/フィッティングルームとラインナップ豊富。
26年度の市場環境について同社は厳しいと見立てるが、主力スイングドアの品質と供給体制を安定的に維持することを最優先事項として取り組み、一段の成長へチャレンジ。現場ニーズに合わせた鋼製軽量ドアやシートシャッターとのセット提案を強化し、施工性・利便性の向上を通じて顧客満足度を高める方針だ。
◇改良重ね、実用価値高める
施工性向上や省メンテナンス化につながる改良の検討を継続中。現場の利便性や快適性の向上に貢献できる製品ラインアップの充実を進める。
政府が掲げる成長投資分野のうち、「防災・国土強靱化」に関連する施設の安全性確保に寄与するほか、省エネ性や現場環境の改善につながる製品提供を重視。施工性向上やメンテナンス負荷の低減など、現場で求められる実用的な価値の創出を進めていく。
(日本物流新聞2026年3月25日号掲載)