タイ、「タイランド4.0」実現へ
- 投稿日時
- 2021/05/17 14:36
- 更新日時
- 2024/08/19 13:18
デジタル人材育成を税制優遇
これまでタイの発展において重要な役割を果たしてきた製造業。だが、近い将来に訪れる少子化による労働力人口の減少が見込まれる中、労働集約的な産業に頼った成長には限界がある。このため、タイでは国家を挙げて付加価値の高い産業に対応できる人材育成を急いでいる。
日系企業が数多く進出するタイにおいて、産業人材育成の重要性は年々高まっている。特に、モノづくりのデジタルシフトが加速する中、デジタル人材の確保は喫緊の課題となっている。
こうした背景から、タイ国投資委員会(BOI)は2019年に発表した誘致プロジェクト「タイランド・プラス」において、高度人材育成に関する投資優遇政策を打ち出した。これは高度なスキルを備えた人材等の育成のため、科学・技術・工学・数学(STEM)分野の専門的なトレーニングか、教育機関の設立などを奨励することを目的としている。
トレーニングと見習い支援については、以下の人材育成に係る投資であれば下限制約なしに法人税の免除額の上限に算入できる。
①職業訓練プログラム、共同訓練プログラム、科学・技術分野プログラム関連の費用100%を、法人税の免除枠に含めることができる。いずれも高等教育・科学・研究イノベーション省または東部経済回廊(EEC)事務局からプログラムの内容の承認を受け、社内外で高度なSTEMトレーニングを行う場合、その費用の最大200%を法人税の免除枠に含めることができる。
②教育あるいはトレーニング機関ではない企業が、高等教育・科学・研究イノベーション省が認めた教育機関、職業訓練学校を設立する場合、設立関連の投資資金の100%を上限に5年間、法人税が免除され、機械の輸入税も免除される。
いずれも2021年末までの申請および、そのプロジェクトの法人税免除期間内であることが条件となる。
■デジタル技術者の育成拠点
民間におけるデジタル人材育成も活発化している。タイ大手通信事業者Trueはバンコク市内に「Trueデジタルパーク」を開設。同施設の社長を務めるタナソーン氏は「東南アジアで最大のデジタルイノベーション拠点を目指す。スタートアップ企業からハイテク企業にまで最適な環境を準備した」と語る。
同施設は会議室や催事場を備えたオフィススペース、ハイテク大手(グーグル、アマゾン、アリババ、リコーなど)が入居する技術革新スペース、イベントとビジネスサービス用スペース、利用者間の交流を促進する共有スペースを用意した。
「IT大手と連携し、不足しているデジタル技術者の育成を図る講座も用意している。また海外のデジタル人材獲得に向けて、ビザ手続きを支援していく」(タナソーン氏)。
現地に進出した日系企業も、自前での人材育成の取り組みを進めている。ソニーグループにおいてイメージセンサやディスプレイデバイスの製造を手がけるソニーデバイステクノロジータイランド(SDT)。バンコクから約35㌔の距離に位置する同社は現地雇用を中心とした従業員847名が在籍している。
自社の人材育成に取り組むSDT
同社では従業員に対し、レベルに合わせたきめ細かなトレーニングコースを用意。各担当業務に関する専門知識を、ベテラントレーナーやエンジニアによる座学講習で学んでいる。これら座学の内容は生産現場でのOJTを通すことで、知識と技能の習得を図っている。また多くの大学や高等学校の生徒に対して、インターンシップの場を提供。「実際に技術を学び、現場での経験を通して就職に活かしてもらっている」(SDT・永田浩文社長)
さらには技術分野で学ぶ学生に対し、奨学金を付与しバックアップするなど、人材育成における様々な支援活動を行っている。
取材協力:日本アセアンセンター/タイ投資委員会(BOI)