求められるマテハン機器
- 投稿日時
- 2024/08/26 16:03
- 更新日時
- 2024/09/04 17:39
2024年問題の影響ジワリ、人件費高騰・人手不足にマテハンで対応
4月1日、ついに働き方改革関連法がトラックドライバーにも適用された。いわゆる「物流の2024年問題」の影響が顕在化するとの懸念もあったが、昨年度には朝の情報番組などで話題となるなど業界を挙げた周知活動によって、今のところ大きな混乱はみられていない。
一方で、全日本トラック協会が公表するトラック調達のスポット価格の動向を示す成約運賃指数(年度)において、令和6年度は126.3と過去最高水準で推移しており、懸念されていた物流コストの上昇は免れていない。6月1日には国土交通省がトラックの標準的運賃の水準を8%引き上げたことからもこの流れは止められそうにない。
運賃引き上げ=トラックドライバーの賃金上昇=人手不足解消による好循環とも考えられそうだが、実態は「人件費上昇による収益悪化」などを理由に24年上期の道路貨物運送業者の倒産件数は186件(前年同期比39.8%増)と4年連続で増加(帝国データバンクの「道路貨物運送」倒産動向から)。09年に次ぐ高い水準となっており、2024年問題関連の影響がジワリと出始めている。
現状、荷主企業による2024年問題への主な対応は、受け入れた物流コストの増加分の製品販売価格への転嫁であるが、今後更にドライバー不足が深刻化すると更なる対策が求められる。昨年は各所で「2024年問題は2024年4月で終わりではない。そこから深刻化していく問題だ」と聞いたが、まさにそうした状況が生まれつつある。
人件費高騰はドライバーだけの問題ではなく、倉庫内で働く作業者の人件費も上昇している。人手不足と相まって現場では頭の痛い問題となっている。そうした中で求められているのが自動化・省力化・高生産性を適える物流マテハン機器であり、本特集では今求められているマテハン機器を紹介する。
■ソーター・小型自動倉庫
柔軟なロボ式仕分け機で物流危機に対応
波動処理に自動倉庫活用も
2024年問題の影響で運送会社から出荷ルールにもメスが入っている。特に出荷締切時間の前倒しは深刻で、「これまで6時集荷である程度融通が利いたにも関わらず、1~2時間程度の前倒しと時間厳守を求められるようになった」(荷主企業)といった声もある。一方で、当日・翌日配送に慣れた荷受け先からの配送に求められる品質は高く、誤配送や配送遅延には厳しい目が注がれている。
そうした中で、人の手を極力介さない自動化機器が求められているが、特に出荷締切時間に間に合わせつつギリギリまで当日受注分を処理するためには、人手による仕分けやピッキングからソーターや自動倉庫への転換が重要になる。しかし、都市部のスペースが限られた物流拠点では、従来型の重厚長大なシステムの導入が難しかった。
柔軟で小型なシステムが求められるなか、国内で140拠点以上、4800台以上のロボットを納入している+Automationが提供する仕分けロボット「t-Sort」は、床置きのパレットや架台の上に走行用マットを敷き、マットの上に小型AGVや投入シュートを設置すれば運用可能な柔軟性の高い仕分け装置。最短1日で導入・始動可能で、設置面積も従来のソーターの約3分の1から2分の1程度に抑えることができる。取り扱い品目もA5サイズからオリコン20~70㍑まで対応。契約方法もいつでも解約・プラン変更可能なサブスクリプション方式を用意するなど、仕分け作業の自動化の第一歩として定評がある。
省スペースかつ高速処理が必要な場合は、立体型ソーターが適している。Gaussyの倉庫ロボットサービス・Robowareが提供する立体型仕分けロボット「OmniSorter」は、平面型ソーターに比べて仕分けスペースを省スペース化できる。宛先100件を幅8・1×奥行3・4㍍の10坪程度で導入可能なのが大きな特徴。処理能力も毎時1200~1400ピックとロボット式ソーターの中では高い。
■自動倉庫も小型化
荷待ちを起こさないためには庫内物流をいかに整流化した状態を保つかが重要だが、季節・時間波動による繁閑が起きてしまうのが物流現場だ。そうした波の抑制に活用できるのが自動倉庫。従来は大型な物しかなかったが、近年は小型かつ高速処理可能な製品が現れてきている。
機体上部にバッファエリアを設けることで約5坪に300以上の仕分け間口数を確保できる「ナノ・ソーター」を手掛けるROMSは、100~300平方㍍ほどの限られた空間でも高密度・高性能処理可能な自動倉庫「NFC(Nano-Fulfillment Center)」を用意する。搬送方式にはシャトルやAGVもラインナップするが、標準仕様は処理能力とコストバランスの良いスタッカークレーン方式を採用する。
「小型なため考えずに運用すると処理能力を超えて身動きが取れなくなってしまう。アルゴリズムの調整や回避プログラムを構築することで全体の信頼性を高めている」(同社担当者)
ROMSの小型自動倉庫「NFC(Nano-Fulfillment Center)」
通貨処理機の世界最大手のグローリーも2017年に立ち上げたロボットSIer事業でバケット式小型自動倉庫を手掛ける。幅・高さともに最小2㍍から設置可能で、コンテナサイズや設置スペースに合わせた装置形状のカスタマイズにも柔軟に対応する。協働ロボットを活用した搬送にも強みを持ち、前後の物流工程も含めて自動化できる。
■AGV・AMR
国内メーカー多士済々
昇降設備連携で多層階運用も
矢野経済研究所が昨年9月に発表した調査によると、2024年のAGV・AMR世界市場は、3000億円規模だった21年の約2倍の6404億円になると見る。各国でAGV・AMRの生産や導入に対する支援が継続していることなどもあり、2桁成長は続き26年には9000億円を超えると予測する。
日本市場も設備投資が旺盛で、中国をはじめとする海外勢の参入も本格化している。しかし、そうした中で国内メーカーによるジャストフィットな製品にも注目が集まっている。中小企業の集合体・エムジーホールディングス傘下のGEクリエイティブも導入しやすいAMRを昨年から提案。市場からの注目を集めている。操作の簡易さを突き詰めた牽引型の「AMRキャリ太郎」は「導入の敷居を極限まで下げ切ったAMR」(同社担当者)で、操作は物理ボタンで機器連携は前提としない誰でも使える簡易なインターフェースが特徴。食品製造分野などこれまで自動化に及び腰だった分野からの問い合わせも多いという。
GEクリエイティブのAMRキャリ太郎
福岡発のロボットベンチャーの匠も純国産にこだわったAGV・AMRの開発、製造を手掛ける。FIGグループと提携を結ぶことで、量産体制の整備から運行制御などのサービスも含めてワンストップで提供できる体制を敷く。海外勢の多い市場で、柔軟でスピーディーな体制が安心感を醸成し、「自動車メーカーはじめ大手顧客が多い」(同社担当者)という。
■進む多層階運用
日本にある工場や倉庫が海外と大きく異なる点の一つは多層階の建物が多いことだ。平面移動を得意とするAGV・AMRだが、階をまたいだ立体的な運用には向かなかった。そんな中、エレベーターや昇降機と連携して多層階での活用を目指す取り組みが進行しつつある。
国産の搬送ロボットを手掛けるLexxPlussの「LexxHub」は、エレベーターなどのPLC制御機器と有線接続することで既存設備をネットワークに接続。同社のAGVとAMRのハイブリッド搬送ロボット「Lexx500」と直接連携できるIoTソリューション。Lexx500の動きに合わせてエレベーターを呼び出すなどの協調作業が簡単に行えるようになる。エレベーターの場合、従業員の呼び出しボタンによる信号と、LexxHubからの指示信号が同じ仕組みとなっているため、不具合が発生しづらい安心設計。
LexxPlussのハイブリッド搬送ロボット「Lexx500」
昇降機器側からの提案もある。垂直搬送機を手掛ける鈴木製機は、AGV・AMRとの連携を強化している。AGVリフターは同社のトレーリフターをベースに様々な無人搬送台車と連携できるもの。トレーリフターはパレットやかご台車を載せたカゴ(トレー)自体がリフト内に入って昇降するため、様々な荷姿の物を運べる利点がある。加えて、AGV・AMRとエレベーター連携には扉の隙間が問題となるケースが多々あるが、トレーリフターにはその心配がない。
「既存のエレベーターとの連携はメーカーから断られる場合や改修に数千万円かかったケースもあると聞く。トレーリフターは構造がシンプルなので、簡単に改修でき導入コストも抑えられる」(同社担当者)
鈴木製機のAGVリフター活用イメージ
■パレタイジング・ローディング
協働ロボットの活用も
トラックローダーで荷待ち時間削減
2024年問題で問題視されているトラックドライバー不足の解消に向けて最も即効性があるとされるのが、ドライバーの荷待ち時間の削減だ。現在1運行あたり3時間程度の荷待ち・荷役作業などが発生しているとされているが、政府はそれを2時間以内に収めることを指針としており、達成企業に対してもさらなる削減を求めている。
構内の整流化にバース予約システムなどのソフトウェアの活用が進んでいるが、高いトラックへの積載効率と庫内作業の効率化を両立するパレタイジングシステムにも注目が集まっている。
Mujinのロボットパレタイザー「MujinRobotパレタイザー」は、混載や複数什器への対応をロボット知能化技術「MujinMI」によってロボットが自律的に「見て・考えて・取って・置く」ことができる。主に垂直多関節ロボットと荷姿に応じてカスタマイズ可能なMujinハンド、視覚を担うMujinビジョン3D、それらを統合制御するMujinコントローラーからなる。Mujinコントローラーが前後工程の自動化機器とも連携するため、複雑な工程を組んでも臨機応変に対応する。
Mujinのロボットパレタイザー
近年増えているのが協働ロボットを活用したシステム。可搬重量が向上したことや人と共に作業できることなどを理由にロボットの未実装分野でも採用が進む。
オークラ輸送機は1984年にパレタイジングシステム第1号機を投入して以降、これまでに8000台以上のロボットパレタイザーを納入してきた。今年6月に協働ロボット大手のユニバーサルロボット(UR)と披露したパレタイジングロボットシステム「EasyPAL(イージーパル)」は、同社の長年のノウハウが詰まったティーチング支援システム「OXPA-Qm」とURの20㌔可搬の協働ロボット「UR20」を組み合わせたもの。PC上で積付け製品のデータを入力すると、1000以上ある標準積付けパターン(パターン追加も可能)から適したパターンを提示。選択したデータをロボットに送信するだけで稼働でき、積付けパターンの変更も即座に行える。食品業界など自動化・ロボット化が十分ではない分野でも、「パレタイジングや協働ロボットといった言葉を知らない人でも簡単に使える。既に引き合いもある」(同社担当者)という。
オークラ輸送機の「EasyPAL(イージーパル)」
■トラックの荷付け・荷下ろしも自動化
パレットを活用した荷姿の統一がなされたとしても、トラックへの積み込み、積み下ろし作業が自動化されていないと、フォークリフトなどを使ってパレット単位で積み下ろしをする必要がでてくる。荷待ち時間削減のためにもトラックローダーの活用・検討が進んでいる。
ローディングソリューションのリーディングカンパニーである英Joloda Hydrarollはあらゆるパレット積み荷を2分以内に自動でトラックに積載、積み下ろし可能なスリップチェーンパレット・ローディングシステムを手掛ける。空圧昇降のチェーンとトラック内の搬送システムを組み合わせることで、パレット化された荷物を自動で搬入出できる。搬入出の高速化と自動化による製品への損傷の最小化、安全性向上などに寄与する。「2024年問題によってトラックの荷役作業の効率化に注目が集まっており引き合いが増えている」(同社担当者)。モジュラー設計を採用しているため、様々な現場やトラックに合わせたカスタマイズも容易。
Joloda Hydrarollのスリップチェーンパレット・ローディングシステム
一方、現実はすべてがパレット化できるわけでなく、人の手で積み付けているケースも多い。そうした作業も自動化・半自動化する動きがでてきた。
中国に本社を置くXYZ Roboticsのローディングロボット「Rocky」は垂直多関節ロボットを搭載した可動式架台と伸縮式コンベヤを組み合わせたシステム。ロボット架台がトラックのコンテナ内部まで入り積まれた荷物を荷下ろしする。最大SKU重量25㌔、時間あたりの処理数は最大450サイクル。動作経路も3DビジョンとLiDARセンサーを組み合わせたシステムによって自動生成するため、事前に箱の情報などを登録する必要がない。
より簡便で柔軟なシステムとしてはアムンゼンが提供する「イージーデバン」がある。輸入コンテナからのデバンニング作業に対応したシステムで、XYZ Roboticsと同様に自走式のユニットがコンテナ内に侵入してデバンニング作業の負荷軽減に役立つもの。ユニットには真空方式バランサー「イージーリフト」を搭載しており、コンテナ内の荷物を吸着・持上げて伸縮式コンベヤで払い出す。より柔軟な対応が求められる現場で活躍する。
■AGF
フォークの自動化進む
中国系メーカーも続々参入
近年注目を集めながらも技術的な難しさから普及に一歩足が届かない印象を受けるAGF(無人フォークリフト)。実際に有人フォークリフトの年間販売台数が約8万台であるのに対しAGFは200台ほどと見られており、1%にも満たない状況だ。しかし、建物とトラックを結ぶ結節点であるフォークリフトの省力化は重要で、各所で大手フォークリフトメーカーと物流事業者との実証実験が行われるようになってきている。中国企業の日本市場への新規参入の流れの加速も相まって、さらに関心が高まってきている。
国内最多のラインナップを誇る豊田自動織機・トヨタL&FカンパニーのAGFは、運用方式に磁器誘導方式・レーザーSLAM方式・レーザーリフレクタ方式の3タイプを用意。それらを組み合わせることで日本で初めて4つの運転方式から選択を可能にしている。冷凍冷蔵にも対応しており、幅広い現場に対応できるのが特徴だ。トラック荷役に対応したAGFも開発中であり、センサーや自動運転技術を組み合わせることでトラック・パレット位置検出などを行えるようにする。
AGFのトラック荷役に関する実証で先行するのが三菱ロジネクスト。鴻池運輸と共同で行っていた実証を今年3月に完了し、鴻池運輸で実運用を始めている。所定の停車スペースに停められたトラックに2台のAGFで積載を行う自動化システムで、「実証実験下の積載条件であれば大型トラック1台に対し15分以内での満載が可能」という。一方で、トラック滞留時間削減などの影響もあり、現状は「有人フォークリフトでの作業が中心」にはなっている。
三菱ロジネクストと鴻池運輸の実証の様子
AMRを使ったピッキングソリューションで大きなシェアを持つラピュタロボティクスも昨年4月にAGF「ラピュタAFL」の販売を始めた。今年7月には3つの機能「トラック積み下ろし」「ランダムな高さに対応可能なパレット段積み」「狭いエリアでの平置き」を追加するなど開発に力を入れる。トラックの荷役作業の自動化にはトラックやパレットの停止位置のズレや処理能力に課題があるが、ズレが発生しても柔軟に対応をし直せるようなシステム構築を進めており、現状1時間に最大30パレット処理可能。
ラピュタロボティクスのAGFもトラック荷役に対応する
■中国企業の参入加速
AGFが既に1万3千台以上稼働していると見られている中国から、日本に向けて参入する企業が増えている。9月10日から行われる国際物流総合展でも10社近い企業から中国製AGFが提案されることになりそうだ。
AGF専業メーカーで中国での売上高首位のVisionNav Roboticsも近年日本市場の開拓を進めている。販売価格が低価格帯のAGFではAGVなどの無人搬送台車と同等程度と驚異的だ。壁や天井などに貼ったQRコードから自己位置推定を行うため磁気テープや反射板の設置は不要だが、車体の位置決め精度は±10㍉と高精度。高い補正アルゴリズム技術により、位置や角度がずれたパレットや多段積み、複数サイズなどにも柔軟に対応することから、国内でも採用が増えて来ている。
VisionNav Roboticsの屋外向けAGF「VNE40」
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(2024年8月25日号掲載)