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提案・営業力で尖った技術をアピール

投稿日時
2024/03/11 10:18
更新日時
2024/03/11 10:24
周囲に熱が伝わる前に加工を終えられるフェムト秒レーザー加工機ならティッシュペーパーに焦げ目なく文字を切り抜ける(ニッシン・パーテクチュアルが加工)

発信力高める製造業

日本は先進国のなかで労働生産性が低いと指摘されて久しい。製造業の大半はそれに対して危機感を抱いている。機械・工具商社の調査によると大手製造業の89.1%、中小製造業の83.5%が危機感をもつ。

この課題に対して最優先で解決したいことを挙げてもらうと、「人手不足」(33.0%)、「技術の継承がうまく進まない」(17.9%)、「新たな技術開発が進まない」(11.9%)、「営業力不足」(9.5%)が上位を占有。要は「人手」「営業力」「技術力」の増強・継承が喫緊の課題と言えそうだ。

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■ウェブで発信

ただ、コロナ禍を経てメーカー各社のPR力はずいぶんと強まったようだ。長時間連続加工を満たすAPC付きのコンパクトな5軸加工機を売りにする松浦機械製作所はオンラインマーケティングに力を入れる。対面営業が難しくなった時期にDX推進室を立ち上げ、長短さまざまな動画を1年で約300本内製した。これまで1000本以上を国内外へ公開し(英語版も用意)、「動画を契機に海外の方に機械が売れるなどその効果を実感している」(松浦悠人取締役)と言う。さらにユーザーの困りごと(タッチプローブのキャリブレーション方法など)に対する回答を動画で先回りする会員制サービス「Mymatsuura」を用意するとともに、個人名義のXも運用(フォロワーは7千人以上)。「顔の見えない状態で一方的に情報発信するより、その人自身に興味を持ってもらうところから始めれば効果に違いが出る」(同)と見ている(10面にインタビュー)。

SNSの活用は牧野フライス製作所も積極的だ。昨年2月からSNS発信を始め、名古屋市で昨秋開かれたMECTの出展について「ユーチューバーとのコラボ動画やそれを紹介するSNSなどが会期中にどんどん広がっていくのを感じた。工作機械周辺機器や刃物メーカーが発信していることが横に繋がることによって相乗効果が生まれる」(インサイド営業部の黒﨑一成ゼネラルマネージャ)と手応えを話す。

■尖った技術

高まる危機感をしっかり行動につなげる事例が見られ始めた。ヘッダー金型メーカーのニッシン・パーテクチュアル(埼玉県春日部市)は社員24人の規模ながら、1億円以上するフェムト秒レーザー加工機(スポット径15ミクロン)を20227月に購入した。スイス製の5軸加工機や放電加工機を多く揃えるもレーザー加工機の導入は同社にとって初めて。中村稔社長は「使い道は考えつかなかったが、漠然と考えていた『新しいこと』とはこういう機械を使ったものだとピンとくるものがあった」と導入理由を話し、この機械を使った微細加工事業を柱に育てる考えだ。

設立5周年を昨秋迎え、設立当初から16社増え会員企業が75社に増えた(一社)微細加工工業会(東京都台東区)は最も元気な工業会の1つと言えそうだ。国内外の展示会出展や工場見学、加工コンテストを実施するほか、高い技術力を世界に売り込もうと微細加工サンプルを配布しようとしている。

サンプルには図面、測定データ、適用事例、関わった企業情報(英語版も用意)を入れたUSBメモリーを添える。関聡彦会長(hakkai社長)は「寸法データを除けば微細加工にJISはほとんど関わらない。サンプルを配るのは会員企業の加工品に対して客観的な指標・評価を盛り込みたかったから。たとえばこのワークは特級3に値するから加工料金はいくらになる、といった適正な評価につなげたい」と取組みの背景を話す。微細加工工業会はまずはドイツ、シンガポールの工業会と連携し、年内に配布を始める予定。内田研一事務局長(入曽精密執行役員)は「技術自慢で終わることなく、市場開拓の一助になるように活用してきたい」と言う。

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昨年11月に微細加工工業会の会長に就いた関聡彦氏(右)と退任した戸田拓夫氏

(2024年3月10日号掲載)