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インタビュー

サイダ・UMS 代表取締役社長 斎田 匡男 氏

投稿日時
2025/01/06 09:00
更新日時
2025/01/06 09:00

世界に誇るクールな汎用旋盤

JIMTOF2024のサイダ・UMSのブースで、海外からの来場者たちが驚いたように足を止める。彼らの視線の先には1台の汎用旋盤があった。こんな光景が幾度となく繰り返されたのは、その汎用旋盤がカッコ良いからに他ならない。工作機械のOEM製造を主力とする同社が開発した21世紀型の汎用旋盤「VERSEC-neo」。その魅力をJIMTOF会場で斎田匡男社長に取材した。

斎田匡男社長とVERSEC-neo。JIMTOF2024の会場にて

――「VERSEC-neo」は重厚感があり非常にカッコ良いですね。ただ、なぜ汎用旋盤を。

「これは我々自身の歴史と紐づいているんですが、工作機械を50年にわたり、しかも機械加工から組立も含めた完成品までOEM製作しています。中でも旋盤系は長らく手がけてきました。また我々の名義で船用の汎用旋盤「舶用旋盤」も製造していました。ただ舶用旋盤はそこまでの精度が求められず、時代の流れでだんだんと海外の安価な汎用旋盤に取って代わられ、最後は我々も撤退したんです。何が言いたいかというと、我々は昔から旋盤を製作してきました。ただ現在、日本製の汎用旋盤を手がけるメーカーはほぼ残っていません。世の中の主流はNCですが、だからこそ生き残りとして技術を形に残す必要がある。それでVERSEC-neoの開発がスタートしたんです。15年くらい前の話ですね」

――会社のルーツが旋盤で、その価値をいま一度、時代に合わせて再定義されたんですね。

「その通りです。また特徴的なのがデザイン。VERSEC-neoはカッコよく、一見しただけで触りたくなるデザインにしています。このデザインは三鷹の森ジブリ美術館の等身大ロボット兵も手掛けた金工作家の鯱丸邦生氏に担当していただいています。彼の作品はレトロなオーラを持つものが多く、また金属加工で作品を製作するのが彼のスタイル。つまり彼自身も旋盤を使うなかで『こういう旋盤があったら良いな』という思いをデザインに込めました」

――機能もかなり普通の汎用旋盤と違いそうですね。

「機能もデザインもですが、やはり若い人にとって汎用旋盤は『むき出しで怖い』と、とっつきづらいイメージがある。だからこそ若い人に使ってほしいという思いがありました。普通の旋盤はレバーでギヤを切替え、ギヤ比で送りを調整します。つまり条件を変えるには機械を止めなければいけません。しかしVERSEC-neoは加工中に操作パネルで主軸の回転数と送りのピッチを設定し、加工条件が変えられる。主軸の回転数も無段階で変更できます。初心者に限らずどんな作業者でも通常の旋盤より効率よく作業をすることができるので、作業時間を短縮することができます。作業内容にもよりますが、お客様によっては30%程度の工数削減が出来たという声も伺っています」

――最も良い条件を探りながら加工できるわけですね。

「仰る通り加工の様子を見ながら条件を変更できるのが大きな特徴です。しかもレバーの位置は汎用旋盤とまったく一緒で、使い勝手は同様。一日あれば誰でも操作を習得できます。初心者の方も一度さわれば勝手がわかるので導入が非常にスムーズで、実際この会場で配っているノベルティのマグネットは新入社員がVERSEC-neoで削りました。端面が非常に綺麗に仕上がっていますが、それは最高毎分3000回転で周速が稼げるから。普通の旋盤は2000回転までしか回りません」

――正直、私も汎用旋盤はとっつきづらいイメージでした。これなら使えそうな気がします。

「とっつきやすさという点では安全機能も重要。特にVERSEC-neoの安全機能は大手企業にも非常に評価されています。主軸のカバーは開くと主軸の回転が止まるよう、インターロックがかかっていて安心して使える。また普通の汎用旋盤はチャックハンドルを挿した状態でも動作できてしまい、ハンドルが飛んで作業者がケガをする恐れがありました。しかしチャックハンドルも所定の場所に納めないと、主軸が回らない仕組みにしています。万が一に備えた緊急停止ボタンもあります。加工中に送りを変えられる使い勝手や安全機能が大きな特徴であり、それが活きるのは特に若手や初心者の方が操作するシーンです」

――教育現場にちょうど良さそうですね。

「既に舞鶴工業高等専門学校と三条市立大学の2校に納入いただいています。また朝から晩までずっと汎用旋盤で作業をする会社は稀ですが、一品物や小ロット品、あるいは傷の修繕や最終工程で一発で加工したい場合など、『プログラムを打つまではなく汎用で加工した方が早い』シーンは生産現場でも数限りなくある。そうしたニーズに合うと思います。教育的な観点でも、ベテラン技術者が現場を去る際に若い人がとっつきやすい旋盤があれば技能を継承できます」

――先ほどから来場者が足を止めていますが、今回展の手応えは。

「おかげさまで今回は興味を持ってくれる方が非常に多い。感触は正直、良いです。JIMTOFには大半の人が最新の工作機械を見るために来ているはずですが、意外と汎用旋盤の買い替えを検討している方も一定数おられるんです。ただ体感では7割がこの機械をご存知なく、我々もまだその方々へ訴求しきれていないと感じています」

――認知が広がれば潜在需要の掘り起こしが期待できそうですね。ちなみに使い心地はどこで試せますか。

「我々の工場に2台の実機があり、お客様に操作いただくお試しブースがあります。汎用機なので、やっぱり最後は実際に削りたいですよね。ぜひ静岡・焼津にお越しください」

(2025年1月掲載)