インタビュー
TPR大阪精密機械 代表取締役社長 田口 哲也 氏(日本歯車工業会常務理事)
- 投稿日時
- 2025/07/28 09:00
- 更新日時
- 2025/07/28 09:00
振れ、真直度、直角度でどこにも負けない歯車測定機
歯車測定機と、測定機を検査するためのマスターギヤを製造するTPR大阪精密機械。自動車分野向けでは圧倒的な存在感を放つ。この分野ではドイツに世界屈指のメーカーがあるが、同社は品質方針に「世界最高の品質を作り込み、顧客の満足と信頼を得る」を謳い、誰もが文句なく「世界一」と認めるような会社にしたいと言う。

昨年2月に導入したナガセインテグレックスの平面研削盤「SGD-2010」を紹介する田口哲也社長。プライベートでは昔から運動好きで、「テニス、サッカー、ゴルフ……と色々やってきましたが、この年になると月3回ほどのゴルフとウォーキングですね」。
――貴社は日本歯車工業会の会員ですが、歯車測定機メーカーであり異色です。
「当社の売上の7割以上を占める主力事業は歯車測定機の製造・販売。歯形・歯すじ・ピッチ測定機、両歯車かみあい試験機、歯車偏心測定機などを製造しています。国内の自動車産業では、9割以上は当社の測定機を使っていただいています。工業会の正会員は歯車メーカーである必要がありますが、当社は測定機を検査するためのマスターギヤをつくっているので条件を満たします」
――貴社の主な保有設備は。
「新日本工機さんの5面加工機を2年ほど前に導入したほか、昨年2月にナガセインテグレックスさんの大型平面研削盤も導入しました。当社は歯車測定機メーカーなので真直度をきっちり出すことが非常に重要です。またマスターギヤの最終仕上げを行うための歯車研削盤を2台保有しています。安田工業さんとスイスのMAAGさんの機械です。一次加工は外注することが多いのですが、最終の研削、研磨仕上げはすべて当社で行っています」
――歯車測定機を年にどれくらい生産されていますか。
「最近は60~70台ですね。5年以上前は100台近くつくっていましたが、コロナ禍を機に減り、また自動車産業も低迷していますから。ほとんどの測定機は国内外の歯車メーカーさん向けです。昨年は海外向けが7割ほど。多くは東南アジアや中国などの日系企業の海外拠点です。売上高は近年はほぼ横ばいでここ2、3年は少し上向いています。自動車業界が海外勢との競争もあって苦戦していますが、測定ニーズの高まりがあり、ロボット、工作機械、建機……といった産業も当社のお客様であり、しっかりサポートしていかなければなりません。中国は景気の波が激しく、またEVシフトなどビジネス環境の変化はありますが、いずれにしても歯車は必要で、その測定のニーズは高まっています」
全自動歯形・歯すじ・ピッチ測定機「CLP-DDSFシリーズ」は円筒歯車に加えハイポイドギヤ、サイクロイドギヤなど多種な測定を可能にした。
――EV化の流れで歯車に静粛性が求めらます。
「歯面の形状を測定するだけでなく、粗さまで測って評価したいニーズがあります。粗さの評価は歯車メーカーさんが行うことがありますが、幾何学的な形状である歯面の粗さを測るのに別段取りにするなど苦労されています。当社の測定機にも専用プローブをつけて機上で粗さまで評価できるように数年前から力を入れて取り組んでおり、去年のJIMTOFなどで自動測定をアピールしました」
――国内の歯車測定機で敵なしでは?
「栃木に東京テクニカルさんがあります。国内自動車産業に限れば当社のシェアが圧倒的首位だと思います。ただし、欧米には加工から測定まで一貫して機器・サービスを揃えるメーカーがあり、我々としては技術開発をもっともっと加速させなければなりません」
――いち押し製品は。
「3年前に開発した全自動歯形・歯すじ・ピッチ測定機『CLP―35DDSF』(最大歯車外径350ミリ)です。このシリーズには最大外径が150~1200ミリまでの機種があり、主力はこの35DDSF。測定機売上全体の7、8割を占めるほどです。欧州のクリンゲルンベルグさんなどが有名ですが、精度においては当社も同等を誇ります」
「測定機は回転の振れ精度や直交3軸の真直度、直角度が最も重要になります。回転の振れは歯車の評価に直接影響しますから1ミクロン以内に抑えねばなりません。また、XYZの3軸方向に動く際の高い真直度を実現するために、摺動面(ガイド)にキサゲを施したものを使用しています。最近は耐久性も考慮し、高速で動かせる高精度なガイドも使っています。ガイドでキサゲと同等の精度を出すための考え方では他社メーカーに負けません。技術力でカバーしています」
――今後の目標は。
「先ほど触れましたドイツのクリンゲルンベルグさんはこの分野で世界一とよく言われます。技術、サービスなどトータルで見ると当社は負けていないつもりです。ですので、世界一の歯車測定機メーカーと言われるような会社になろうと社員一丸となりその目標へ向かっているところです」
TPR大阪精密機械株式会社
1951年創業、社員90人
大阪府東大阪市御厨6-5-16
歯車測定機を年に90-100台製造(かみ合い試験機を含む)
自動車分野を中心に航空・宇宙・ロボット・工作機械などの分野の歯車生産現場に全自動歯車測定機(歯形・歯すじ・ピッチ)やマスターギヤ、カスタマイズしたソフトウェアを含む歯車精度評価システムを提供する。同社の歯車測定センターはISO/IEC 17025の要求事項に適合した歯車校正機関(日本初)として2008年にilac-MRA IAJaoanの認定登録を取得(JCSSO190)。顧客のマスターギヤや歯車測定機の校正で品質保証を提供する。
(日本物流新聞2025年7月25日号掲載)