インタビュー
TOYOイノベックス 取締役 山本 博之氏
日精樹脂工業との経営統合は成形で世界と戦う意思
- 投稿日時
- 2026/03/11 13:08
- 更新日時
- 2026/03/11 13:17
4月1日に日精樹脂工業と経営統合し、持株会社・GMSグループのもとで新たなスタートを切るTOYOイノベックス。山本博之取締役は海外成形機メーカーとの競争激化が統合の背景にあると明かし、「統合で国産成形機のプレゼンスを高めたい」と決意を語った。経営統合の背景や社名に込めた思い、新技術への期待など注目の質問をぶつけた。

――日精樹脂工業との経営統合の背景を。
「私もこの業界に35年いますが、成形機の専業メーカーの統合は稀なケース。プラスチック素材、そして射出成形自体は今後も世界で需要が伸び続けると確信しています。複雑形状を短時間で量産できる利点は他になく、雑貨から医療、自動車まで裾野も広い。ただ国内メーカーを取り巻く環境は楽観視できません」
――出荷台数が伸び悩んでいる。
「国産機は2021年をピークに出荷台数が減少し、年間1・1万台割れが続く。最大の要因は中国メーカーの台頭。彼らは潤沢な資金と生産能力を持ち、エネルギーコストも安い。もちろん日本製は品質が高く、特に“繰り返しロットの安定性”――つまり同じものを同じ条件で作り続ける能力では、海外勢より優れているとお客さまからも評価されています」
「ただすべてが高精度を要求する成形品ではなく、フードコンテナや生活雑貨等、“形になれば良い”ものもある。そうした市場は安価な成形機に流れやすい。特にインド等の成長市場は、日本のように人手不足を機械で補うより初期投資の安さを優先します。何も手を打たなければ日本の成形機全体がシュリンクしかねない。その危機感が統合の出発点です」
――新社名の「GMS(Global Molding Solution)」に強い意志を感じます。
「まさに『成形(Molding)で、まだまだ世界でやってやるぞ』という意気込みの表れです。もし別の事業に色気があれば違う名前にしたでしょう。将来的には金型、ゴム、フィルムなど成形に関わる様々な分野をグループ化し、世界へ打って出る構想もあります。統合後の売上規模は約800億円。専業では国内トップ級、世界でも十分に戦える規模です」
――具体的な相乗効果は。
「最も早く効果が出るのは調達です。鋳物やボールねじなど共通部材の共同購買でスケールメリットが出る。開発面も大きいです。今後の成形機は『電装・制御・AI』が競争軸。当社は『成形をモット簡単に!』というパーパスを掲げていますが、誰でも使いこなせる機械にはAIやビッグデータの活用が不可欠です。2社が組めば開発リソースが倍増しデータ取得量も増える。単独では難しかった“次世代の成形機”――例えば油圧から電動に変わった時のような、全く新しい駆動方式も具現化できるかもしれません」
――製品ラインナップや販売網は。
「多くが補完関係です。中型以上の電動機は我々が強く、日精樹脂工業は竪型や二色成形機、あるいは2000㌧級など大型機で評価が高い。顧客層も日精樹脂工業は大手企業での実績が豊富ですが、我々は中小企業も含めた幅広い層を持つ。各々に強い地域や市場があるため、互いのピースを埋め合えるベストパートナーです」
――営業提案の幅がぐっと広がりますね。
「ええ、これまで超大型機の需要はお断りするしかなかった。今後は日精樹脂工業の製品を我々が売る、あるいはその逆のクロスセルが可能になります。サービスも同様です。人手不足が共通課題のメンテナンス領域で、互いの機械を修理・点検できればサポート力は大幅に向上します」
■単純合算以上の力を
――競争が激化する中、日本メーカーとしての「勝ち筋」をどう描く。
「価格勝負には限界があります。性能の底上げはもちろん、購入後のサービスなど付加価値が重要です。当社の姿勢は『NOと言わないTOYO』。『できません』と断るのではなく、要望に応える方法を常に考えてきました。カスタマイズの柔軟性は今後も強みとして維持します」
――今後のスケジュールは。
「4月1日以降、膝を突き合わせ詳細を詰めます。まずは中計を立て、3~5年後の目標を明確にする。1+1を単に2にするだけでは統合の意味がない。3や4を目指し出荷台数と利益を伸ばす必要があります」
「元々ライバルでしたから容易でない面もあるでしょう。ただ、他の国内メーカーや海外メーカーとの統合も含めたあらゆる可能性を俎上に上げた熟慮の結果、最もシナジーが出ると選んだのが日精樹脂工業です。足元の市場は自動車も含め厳しい状況ですが、当社も自動車メーカーの生産移管で大型成型機の需要が見込める九州の拠点強化やインドでの在庫販売拡大など、攻めの手を打っています。4月からはGMSとして、国産成形機のプレゼンスを一段高めたいですね」

電動サーボ射出成形機 「Si-7シリーズ」(画像)のように、TOYOイノベックスは全軸サーボ駆動の成形機に強みを持つ
次世代成形機はずみつくか
「一番は“次世代成形機”の開発ですね」。経営統合で最も化学反応を期待する分野は、と問うと山本氏はそう答えた。新たな機械を開発しテストを繰り返す…という開発工程は膨大な時間とコストを要する険しい道のり。ただ経営統合によるリソース強化と技術的シナジーが相まることで「この部分が加速し、油圧やサーボに留まらない新たな駆動の成形機ができるのでは」と期待を寄せる。ただそれでも開発は容易でないようで、「完成した時にはもう私も引退しているかも」と笑う。
(日本物流新聞2026年3月10日号掲載)