インタビュー
TECHNO REACH 代表取締役社長 加藤 正己 氏(SIer協会監事)
- 投稿日時
- 2025/11/25 14:01
- 更新日時
- 2025/11/25 14:04
SIer事業がロボ安全教育、設備メンテ、中古ロボ販売に繋がる
新たに自動研磨システムを提案
2020年3月に竣工した、60人収容のセミナールームを含む真新しい濃紺の3階建て本社ビルは自動化ニーズの拡大を物語る。パナソニックの溶接ロボットを専門的に扱ってきたが様々なロボットに対象を広げ、昨夏、社名を変更した(旧・松栄テクノサービス)。国際ロボット展では同社初の自動研磨システムを出品する。

――貴社は近年、事業領域を急拡大されています。
「当社はパナソニック製溶接ロボットのパーツ、補修部品、モーターアンプ、基盤関係をお客様の依頼に応じてお届けしたり修理したりすることから事業を始めました。近年はこれに他社製ロボットを加えたメンテナンス事業(自動車ティア1を中心に定期点検は年間約1千台)を中心に、モノづくりのエンジニアリング事業、安全教育などの講習を実施する教育事業、不要になったロボットを買い取りメンテナンスして販売する中古ロボット・レンタル事業、遠隔監視ツールなど新たな商材を開発する企画開発事業――の計6つがあります。当社1社で様々な仕事を担えたほうがお客様に対して長いお付き合いできますし、いろんな提案もできます」
「お客様に導入したロボット一台一台に管理番号をつけさせてもらい、これがマイナンバーのようなもので、番号を検索すればどのロボットがいつ導入されて、過去にどんな修理や点検をしたのかといった履歴がカルテのように出てきます。これがロボットを買い取る際に有効になりますし、メンテナンスを提案する際にも非常に効果的なツールになります」
――SIer事業がメンテナンス、中古販売などの事業に相互に結びついているわけですね。
「入れ替えのタイミングもしっかりわかります」
――最近の景況感は。
「当社が扱うメンテナンスサービスは景気の波があまりありません。その安定基盤の上で、モノづくりの仕事には波があります。とりわけ自動車部品メーカーさんはトランプ関税の影響もあって、設備投資に対し慎重な姿勢を見ています。今年は昨年の3割くらいの仕事量でしょうか。全社的に見れば凹みは少ないのですが厳しい状況です。売上の割合としては昨年度の約11億円のうち6割がメンテナンス、2割がモノづくり、残りは部品・中古ロボット販売や教育です」
――SIerとしての納入件数は。
「年間10〜15件くらいです。当社は溶接ロボットから事業が始まっているので、どちらかというとセルタイプの自動化溶接設備の製作を得意としています。ラインものではないので1件あたりの金額はおよそ1000万〜2000万円です。溶接の全工程を得意としていますが、ビジョンを使った検査、その後のピック&プレース、箱詰め作業の自動化も行います」
――国際ロボット展で何をアピールされますか。
「新たに手がける自動研磨システムを出品します。台湾の研磨ツールメーカーDS Technology様と協業し、ベルトサンダーや研磨ツールに装着するサンドペーパーを自動交換して研磨を効率化できるシステムです。それと軌道・経路パス生成ができるオフラインプログラミングソフト『Robotmaster』を使います。バリ取りであれば人がティーチングできますが、曲面や個体差がある一品ものでは難しいからです」

台湾DS Technologyの研磨ツールを搭載する自動研磨システム
■世界展開狙う台湾DSTと協業
――どうして研磨分野に進もうと考えたのですか。
「台湾を視察した際にDS Technology様の工場を見学させてもらいました。ドアノブなどをロボットが手際よくポリッシングしていて、感銘を受けました。台湾の人口は2300万人くらいで人手不足にあります。研磨や溶接、塗装などいわゆる3Kと呼ばれる工程は若者はあまり求めません。台湾はそういった工程に絞って国が助成金を出し自動化を推奨しています」
――この研磨装置で貴社が担当される部分は。
「ファナック様のロボットに研磨ツールがついたシステムを輸入し、それを加工設備としてまとめ、実装検証を行い、加工条件を出します。溶接ロボットシステムを組み上げるのと同様で、アナログ的な技術が多いです。DS Technology様は世界展開を視野に入れ、日本のパートナーを探していました」
――自動化研磨システムはどんな業界に納める予定ですか。
「たとえば船のスクリューの加工など、ワークが大きく人が付く作業。粉塵が出て作業環境も良くありません。そうした工程を探して、自動化により最も効果の高い作業から提案していこうと思います。ツール部に伸縮機能の付いた自動研磨装置は1千万円くらいするのが普通ですが、当社のシステムはコストをその2分の1から3分の2にできます。それに加えて当社はメンテナンス事業をメインとしていますからサポート力に自信があります。また遠隔でサービス提供することも可能です」
――課題はありますか。
「本当に人ですよね。我々の仕事はお客様の声を聞いて、出向いて修理するというアナログで、土日の仕事もあります。となると若い人に敬遠されがちです。ですからモノづくりの楽しさをアピールし、この仕事の認知度を上げて魅力を感じてもらえる仕事にしていく必要があります」
株式会社TECHNO REACH(旧・松栄テクノサービス株式会社)
1984年設立、社員60人
愛知県長久手市作田2-909
SIerとしてはロボットシステムを年間10〜15件納入
本社から東へ100-200kmずつ離れるかたちで浜松、静岡、埼玉、仙台に営業拠点と、P&Dセンター(長久手市)をもつ。年間売上約11億円の6割を占めるメンテナンスを主力に、モノづくり(2割)や部品・中古ロボット販売、教育、レンタルなどの事業をもつ。扱うロボットの98%はパナソニックの6軸溶接ロボットだったが、15年ほど前から他社製品も扱い、10年ほど前からは協働ロボットも扱うようになった。
(日本物流新聞2025年11月25日号掲載)