インタビュー
新日本工機(SNK) 代表取締役社長兼COO 中西 章 氏
- 投稿日時
- 2025/09/12 09:00
- 更新日時
- 2025/09/12 09:00
5年10年先を見据え、顧客と共に経済圏を広げる
新日本工機(SNK)の大型工作機械は、世界中で30年間以上にわたって稼働し続ける。中にはオーバーホールをしながら50年間近く稼働している機械も珍しくない。納入した機械の30年後、50年後に責任が持てる経営をすることが大型工作機械を事業とする企業の責務だという。大型工作機械のリーディングカンパニーとして自動車や飛行機、建設機械、産業機械、半導体など様々な産業で新たな価値を生み出すか、中西章社長に話を聞いた。

――大型工作機械の市況は比較的好調だが貴社の進捗は。
「過去10年で最高水準の受注を頂いています。専用機、大型機、門形機中心に自動車、重工、造船、航空機、防衛など多岐にわたる業界向けで好調に推移しています。今日的な傾向ではデータセンターの発電関連も引き合いが増えていますね。要因としては大型工作機械の特殊対応が出来るメーカーが減ってきている中で、他社が出来ない機械を提供できることがアドバンテージになっていますね。30年前に入れた海外機の老朽化更新をしないといけない。だがもうそのメーカーはないからSNKさん、何とかならないかと困られて対応しているケースもありますね」
「自動車自体の動きが良くないことはご承知の通りですが、OEMを中心に金型加工の改善進化や次世代金型への対応などに向けた投資は継続されています」
――航空機はいかがですか。
「比較的好調ではありますが新しい機体がなかなか出てこず、大きな投資をするより今ある設備を使ったり、価格を抑えた加工機を求められます。以前は価格が高くても性能がよく最新の加工が出来る機械にニーズがありましたが、LCCの普及により運賃も安くなり、機体も価格競争のコモディティ化が進んだ結果、価格圧力と性能要求の最適解を求める加工機が必要になっています。そこを一定意識しない開発やマーケティングだと、市場ニーズとズレかねないですね」
■AI全盛時代に残るベテランエンジニアの必然性
――顧客と共に長期的な戦略が必要ですね。
「お客様には『5年10年先を見据えたことを一緒にやりましょう』と申し上げております。急に投資が決まっても、我々が納期に対応できず、お客様が求められる機能や性能に十分対応できない事態になっては申し訳ありませんので、お客様のモノづくりを長期的にどう進化させたいかなど、ビジョンを共有して頂きながら適切な機械開発を提案しています」
「技術継承が課題で、AIやDXなどで担えればいいですが何十年に一回しか作らない機械もあり、それはAIに任せるだけの学習データがないですよね。数千枚の図面があるだけでは20年後にオーバーホールしたり、バージョンアップした新型機を作るのは不可能です。じゃあどうするかと言えば、その機械の設計、加工、組立を経験したエンジニアや社員に会社に残って頂く。終身エンジニア雇用に近いシステムで80歳代になる現役社員もいるんですよ。これが出来るメーカーが少なくなったからこそ冒頭に申し上げた当社の特殊対応ができるという強みにつながっています」
「ただしDXにも当然注力しており、予防保全などを含めた弊社のデジタルソリューション“SDS(SNK Digital Solution)”は顧客の評価も高いですね。ソフトウエアも基本は内製しており、お客様の『お困りごと発』で組み上げています。例えば、各軸の駆動部の設計寿命に対してどれぐらい消耗しているかを見える化して適切なメンテナンスを行うSi︱PMや、自己診断プログラムで機械を稼働させてその変化量をモニタリングし、予防保全の対策を講じるSi︱Checkなどがあります」
――成長戦略は。
「一品一様の機械は価格が高くなりますが、それでも買ってもらえる価値を提供しないといけない。原価計算をして機械の値段を決めるようなやり方では行き詰ってしまいます。あるティア2の自動車金型企業にOEM企業が使っている高速形状加工機DCを導入していただき、我々のネットワークを使い完成車メーカーとマッチングし、その企業がティア1になりました。機械の価格ではなく、お客様のビジネスや経済圏をどう広げていくかが重要になってきています」
「モノからコトという言い方がありますが、機械というモノがあるからこそ、コトを広げていけます。我々は選択と集中をせずあらゆる産業に関わっています。それは非効率かもしれないですが人と人、企業と企業を繋ぐ価値にもなります。バリューチェーンまで含めた拡大提案が出来る人材はまだまだ社内に少ないのでどう増やしていくかが課題ですね」
HF-MⅡシリーズ
HF-MⅡシリーズエコ機に一新
昨年のJIMTOFで発表された門形5面マシニングセンタ「HF-MⅡ」シリーズ。X軸・Y軸をリニアガイド化しZ軸・W軸のバランスシリンダーを廃止。油の使用量を最大70%削減。必要油量の削減によるポンプの小型化やオイルマチックのインバーター化で電力使用量を最大18%削減した。「重工業で使用される超大型のカスタマイズ機で、ライバルメーカー含めちょうど老朽化更新の時期となっています。生産性や速度を上げながらエコ対応にリニューアルし、ユーザー企業が求められているカーボンニュートラルに対応することでより貢献したい」(中西章社長)と話す。
(日本物流新聞2025年9月10日号掲載)