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インタビュー

SIRC(サーク) 部長 出口 智也 氏 
『アピール』から脱した脱炭素

投稿日時
2026/01/22 14:51
更新日時
2026/01/23 15:32

本当にCO2を減らすツールが求められる

工事不要で設備の消費電力を正確に測れるSIRCの「IoT電力センサユニット(以下電力センサ)」が好調だ。2022年の発売以来、販売が右肩上がりで増え続け前期(25年9月期)は前々期比200%超の売上を達成した。脱炭素の実現に向け、自社の消費電力を可視化したい企業のニーズに合致している。EVやESGの世界的な失速で脱炭素は踊り場を迎えているが、マーケティングセールス部の出口智也部長は「国内企業の関心は依然として高い」とする。「ただ必要とされる製品・サービスが変わっている。対外的なアピールではなくどうすれば本当にCO2を減らせるのか、より真剣に向き合うフェイズが来ている」

SIRC(サーク) ソリューション事業部 マーケティングセールス部 部長 出口 智也 氏

――電力センサを展開されています。概要を簡単に表現いただけますか。

「独自技術を用いたデバイスで、非接触で力率も加味した設備の正確な消費電力を測れます。工事不要で15秒で設置できるので設備を止める必要もありません」

――22年12月の発売以降、需要の変遷は。

「発売当初、脱炭素に向けた取り組みの中心は大手企業でした。我々も製造業の上場企業をターゲットにしていました。今は一連の動きがサプライヤー全体に波及しています。スコープ3を背景に中小企業も大手から具体的な要求を受けたり、大手主催の説明会で社内の誰かが情報を持ち帰ったり…とさまざまな形で中小企業にスコープ3が浸透している。我々も企業規模を問わず製造業すべてが潜在顧客になったと感じますね」

――脱炭素にとりわけ熱心な業界は。

「最も感度が高いのは自動車業界。トップダウンでサプライヤーへの教育を推進しています。この業界は悪い時も良い時も一緒にやってきたため縦の繋がりが深く、総じて感度が高い。メーカーとサプライヤー双方が脱炭素に繋がる技術を探しています。もちろん自動車以外も関心は高く、プライム上場企業は少なからず取り組みを進めている印象です。電力会社も中小企業に向けた省エネ診断を推進し、脱炭素を支援しています。国も関連する補助金を拡充しています。電気料金の高騰を背景に、単純にコスト増を嫌って省エネ活動を行う企業も多くあります」

――総じて電力センサの販売は好調ですか。

「25年9月期の売上は前期比で200%超でした。(電力センサの発売以来)今のところ毎年、倍増ペースの成長曲線をずっと継続できています。脱炭素に向けた施策は多様なアプローチがあります。その中でも、再エネ導入と省エネ活動は各社が優先的に検討する施策となっていますが、日本は古い設備が多く総入れ替えも難しい。とはいえ電力を可視化しムダを省くにも、従来の電力計は工事が必要でハードルが高かった。そこに工事不要で設備を止めずに取り付けられる我々の電力センサが合致したのでしょう」

――国外に目を向けるとEVの失速やESG投資に批判的なトランプ政権など、脱炭素に逆風も吹いています。そうした動きが冷や水になることは。

「確かに外資系企業の関心はトランプ大統領の就任以降、少し様子見の姿勢が強まった印象があります。ただ国内企業の感度は依然として高い。『関心を持っている人が誰か』が変わったのだと思います。つまり経営層から実務層に脱炭素の関心が移った、と」

――実務層に関心が移れば、より実用的なツールが求められる傾向になりますよね。

「展示会の感触ですが、一部のブーム先行で脱炭素効果が見えにくいツールについては、需要が一巡した印象があります。必要とされる製品・サービスが変わり、選ばれる製品・選ばれない製品が出てきはじめている。ある時期まで脱炭素は対外的なアピールが先行し、イメージ重視の側面もありました。ただ今では真面目に現場のデータを測定し、どうすれば本当にCO2が減らせるのか、真剣に向き合う方向に変わっています。『本当の脱炭素って何だっけ』と本質に立ち戻った。CO2を減らしてナンボだと気が付いた。だからこそ正確な一次データを取得できる我々の製品が好調なのかもしれません」

――確かに展示会でも一時は脱炭素のPR合戦が盛んでしたし提案も玉石混交でした。ブームは一巡し、脱炭素に取り組む企業側の目も養われ、結局は地道にやるしかないよな…と原点回帰したのですね。

「CO2排出量の削減はある程度のレベルまではどの企業も到達できますが、その先に踏み込むには一次データを測ってムダを削減する必要があります。地味でコツコツした取り組みが避けられません」

――さて国内では27年3月期から一部大企業を対象にスコープ3の開示義務化が始まる見込みです。これも踏まえて脱炭素関連製品の国内市場の先行きと、貴社の方針を教えてください。

「少なくとも30年頃まで脱炭素に関連する製品の市場は成長すると見ています。また我々は今期も前期比で200%の売上目標を掲げています。とはいえセンサ単体で目標を達成するのではなく、一次データの集積場所を提供するプラットフォーマーとして成長を目指す。当社が提供する『SIRCクラウド』は、昨年から一部の他社製センサにも接続可能となり、様々なデータを集約できるようになりました。データ分析・活用が高度化する中で、正確な一次データの重要性が一層高まっています。電力を中心に製造業に必要なデータを蓄積、集約、分析し、データに価値を与える。それが今後の方針です」

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IoT電力センサユニットは専門的な電気的知識を必要とせず既設設備に15秒程度で後付けし、力率も加味した正確な消費電力を可視化できる