インタビュー
ニッセイ 減速機事業部 営業企画部 RC企画課 課長 岡本 浩平 氏
- 投稿日時
- 2025/11/26 11:37
- 更新日時
- 2025/11/26 11:40
設備力を武器にロボット向け減速機アピール
歯車(生産能力は年間600万個)と減速機(80万台)の両方を製造するのがニッセイの強みだ。減速機では多くの標準製品をラインナップする。これまで同社の減速機は食品機械・工作機械・搬送機械や自動ドアなどに採用されてきたが、近年発売しラインナップを強化する「UXiMO(アクシモ)シリーズ」はロボットを睨んで開発した。

――最近の景況感は。
「昨年と同等か少しよいくらいですが、あまりよくない国があり、その筆頭に韓国があります。日本は直近については悪くありません。当社の減速機の海外向け売上は40%前後で残りの約60%が日本向けです」
――貴社は歯車単体の加工技術に長けているので、それを使った減速機の品質も高いということですね。
「そうですね。当社の減速機は売上高全体の約80%(2024年度)を占める主力事業です。本当のコア技術は何かと問われたら、やはり歯車(売上の約20%)の加工技術になります」
――以前取材させていただいた時、実際に工場内を見ることはできませんでしたが、著名な米国の歯切盤を何十台も設備されているとお聞きしました。
「高精度の歯車を製造するため国内トップクラスとなる150台以上の歯切・歯研盤を保有しています。歯車加工設備については熱処理炉を社内で持っていることをPRさせていただいています。熱処理加工は外注されるメーカーさんも多いのですが、2022年に新たに熱処理工場を設立し、社内に2カ所の熱処理設備を有します。自社で焼入れ時の歪みなどを細かくコントロールできることは大きな利点ですし、多品種、短納期にも対応できます」
――貴社の減速機の需要分野は。
「当社の減速機は中型と小型ですから主に食品機械、工作機械、輸送機械で使われています。静音化、コンパクト化できることから公共・交通機器にも利用されています」
■球状歯車も出品
――国際ロボット展では何をアピールされますか。
「ロボット向けの製品として、4年前に発売した高剛性の減速機『UXiMO(アクシモ)シリーズ』をメインに、直径10㍉前後~250㍉のオープンギヤ、開発中の球状歯車――の3つを出品します。UXiMOには高剛性・高トルク・豊富な減速比のDGS、高剛性・高トルク・大きな中空径のDGH、扁平・軽量・入力ベアリング内蔵のDGFの3タイプがあります。径の小さなオープンギヤは最近話題のヒューマノイドロボットの指の関節にも使えると思います。金属製球状歯車はまだ世にない技術のため現在マーケティング段階です。ヒューマノイドでは人間の肘や肩の機能を補うかたちで使えると考えています。その他の用途は模索中ですが、ほかに宇宙空間の人工衛星上のソーラーパネルの角度を微調整することもできそうです。山形大学さんが考案し、商社の兼松さん、当社の3者が共同で製品化に向けて進めています」
――UXiMOの売れ行きは。
「思いどおりにはまだ普及していません。当初はロボットの関節用途として開発をしましたが、ロボットの関節用の減速機となると、ものすごく重要な部品になるため、従来品から別のものに簡単に切り替えるには、相当な年月が必要となります。そのため1、2年あるいはもっと長い時間をかけてテストしていただいているところです。一方で、ロボット以外では、FAや工作機械、AGV/AMRの足回りの用途から、多数のお引き合いをいただいており、産業界のニーズに応える形で提案しております」

高剛性減速機「UXiMO(アクシモ)シリーズ」
――課題はありますか。
「産業用ロボット業界はコスト競争が非常に激しいですし、開発や評価に時間がかかります。産業用ロボットに限ったことではありませんが、スピード感は海外企業の方が断然速いです。そのため技術的に認められると、すぐに検討いただけます。もちろん用途によっては日本と同じくらい高精度なものが要求されますが、新しくていいものがあればちょっと使ってみようという考えがあるので、海外向けはもっと伸ばせると思います」
――主に中国向けですか。
「中国をはじめとして韓国、台湾などのアジア向けが中心ですが、米国も視野に入れております。米国市場では現地ウェブサイトにUXiMOをアップしましたし、海外市場に関してはさらに注力していきます」
(日本物流新聞2025年11月25日号掲載)