インタビュー
マキシンコー 取締役 名張工場長 北岡 浩 氏
- 投稿日時
- 2022/12/26 09:00
- 更新日時
- 2022/12/26 09:00
シンプルな機構が特徴のウォーム減速機に特化するマキシンコー。創業当初からの「Sシリーズ」と高トルク・高効率が特長の主力「MAシリーズ」などを用意し、ユーザーの細かな要望に1製品から対応する。
――最近の景況感は。
「ここ数年、短納期対応のカタログ品や受注後3カ月以内の注文が少なくなっています。反対に納期の長い製品の受注は増える傾向です。なので注文残台数はあっても生産はまだ先というものが少なくありません。当社の期は6月21日始まりで今期は半年ほど経過し、売上高は前年同期比で1割ほどのプラスです」
――サーボモーターに対応する遊星減速機の生産を終了され、ウォーム減速機ひと筋と言えますね。
「遊星減速機の用途は広いのですが、当社は後発メーカーで販売が思うように伸びず今年8月に生産を終えました。ウォーム減速機は当社売上高の半分を占め、それを組み込んだ縦型回転式自動棚『ロータリーストッカー』、ジャッキがそれぞれ20%前後を占めます。主力のウォーム減速機『MAシリーズ』はこの20年以上にわたり製造・販売を続けています。高トルク・高効率(理論値で93・9%も)で高回転入力(一般的なウォーム減速機の約1・7倍の毎分3000回転も)が可能なことが特長です」
「入力軸と出力軸が直行するウォーム減速機は、軸の配置が種々にとりやすく、幅広い用途に対応できます。コンパクトな機構で大きな減速比が得られます。減速機をたくさん並べてベルトコンベアなどに使うこともできます。意図しない逆回転を起こさない『セルフロック』の効果が期待できるのも利点です」
――貴社のウォーム減速機の主な需要業種は。
「半導体関係、舞台装置をはじめ、様々な用途に使用いただいています」
――ここ名張工場ではどんな生産設備をお持ちですか。
「ウォームホイール加工用のホブ盤が22台、ケース加工用のマシニングセンタが22台、軸物加工用の旋盤は8台ほど。それにねじ切り盤18台、ねじ研削盤10台と合計80台くらいでしょうか。あと高周波焼入れ装置もあります。他の減速機メーカーさんで当社ほどの設備を持っているところはないかもしれません。これらの設備でウォーム減速機を中心に、それを組み込んだジャッキなどを含め月に約3000台生産します」
「カタログ品に加え、お客様の要望に合わせた仕様の製品を製造し、1台の注文にも対応しています。ギヤ部品は一部を除きほとんどを社内で加工しています。長年蓄積した技術と検査機の整備で精度のよいギアを製造しています」
――減速機の歯車の加工で最も重視していることは。
「当たり前のことですがギアの精度には気を配っています。そのため定期的に加工設備を更新し、先ほど申し上げたような設備数になりました。恥ずかしながら、これまで歯当たりの確認はしていましたが、測定機は5、6年前まで更新できていませんでした。測定機でギアの仕上がり精度を数値で見ることで、歯当たりが出ないときにホイールとウォームねじのどちらに不具合があるのかを数値として把握できます。こうしたことで小さなバックラッシを指定するお客様に対しても、発生しやすい歯ツマリを出さないように制御することができています」
「ギアの加工は心臓部と言えますから、社内で完結できるようにしています。逆にそれ以外の部品の加工は、品質を維持してコストを削減できるよう複数の新規供給者を開拓しているところです。コロナ禍の影響で調達が滞ることがないようにしなければなりません」
――今後の製品展開や新たな需要開拓の予定は。
「新シリーズの投入を検討はしています。ただ、ウォーム減速機ひと筋で来ていますからそこから大きく外れることはできません。まずは現行品のオプションを広く用意しようとしています。ターゲット分野としては、ロータリーストッカーの受注がコロナ禍を受けて好調なこともあり、物流関係に力を入れようと考えています」
ねじ研削盤で大型ウォームねじ(長さ443mm)を仕上げ加工する様子
株式会社マキシンコー
1963年設立、社員222人(連結)
大阪市中央区谷町7-3-4(名張工場=三重県名張市夏見2832)
主力の名張工場でウォーム減速機やジャッキ、ロータリーストッカーなどを月に約3000台生産
生産拠点として名張工場(建屋1万1332㎡、社員約140人)と四条畷工場(1270㎡、約20人)を構え、国内に6営業所、海外には上海駐在員事務所をもつ。伝達製品だけでなく、動力源・連結・位置制御など周辺製品を含めた機械装置設計を幅広く手がける。
(2022年12月25日号掲載)