インタビュー
オリオン機械 産機営業本部 機器営業部 柴本 暢行 部長
- 投稿日時
- 2022/12/13 13:57
- 更新日時
- 2024/08/19 13:18
自然の力で脱炭素化導く「エコハイブリッドチラー」
チラーや精密空調機の国内トップシェアを誇るオリオン機械。戦後間もない昭和21年から酪農機器開発で培ってきた真空・冷熱技術をベースに、高度化するモノづくりの現場に無くてはならない各種機器を世に送り出してきた。そして現在、業界のトップランナーは、製品とその製造過程、さらには流通までを視野に入れたカーボンニュートラルへの取り組みを進めている。
――昨今、貴社製品に寄せられるユーザーニーズをお教えください。
「やはり環境に配慮した製品への需要が高まっています。グローバル企業は脱炭素に向け、具体的な数値目標を掲げて真摯に向き合っていますし、企業規模にかかわらず使命感を持って取り組む会社が増えています。こうした流れに沿った製品でないとご購入いただけない時代が来ています。数年前は製品のスペックと価格がお客様の第一の関心ごとでしたが、いまは環境性能が最も重視されるファクターになっていると強く感じています」
――エネルギー価格も右肩上がりで高騰しています。
「現状よりもう一段階上の省エネを強く意識されているお客様が増えています。東日本大震災の時にエネルギー需要が逼迫し、企業における省エネへの取り組みが進みましたが、現在はその時以上に省エネ機運が高まっていると感じています。特に日本は火力発電メインですから、製品の省エネ性能が直接CO2削減に繋がります。ですので、当社は『CO2削減に貢献』に主眼をおいた製品開発を進めています」
――近年発売されたチラーの省エネ性能についてお聞かせ下さい。
「生産プロセスに最適な中温モジュールチラー『エコハイブイリッドチラーFCMC55A』は、自然エネルギーを最大限に活用したフリークーリングシステムを採用しています。フリークーリング自体は目新しい技術ではないのですが、従来の一般的なものは、クーリングタワーや制御盤、チラー、電磁弁等を合わせた複雑なシステムを構築しなければならず、調整も大変でした。これをワンパッケージにし、導入を容易にしたのがエコハイブリッドチラーです」
――フリークーリングと通常のチラー運転を組み合わせた「ハイブリッド」なのですね。
「はい。周囲の温度や熱負荷によってチラー運転、フリークーリング運転、チラー+フリークーリング運転を自動で切り替えます。当社のある長野県ですと、11月中旬から~2月はフリークーリング運転、6月から9月はチラー運転、3~5月と9月中旬~11月中旬まではチラー+フリークーリングで運転するイメージですので、無駄な電力を極力使いません」
――一般的な汎用チラーと違い、用途を15~35度の中温に絞ることで大きな省エネ効果を得られるわけですね。
「金型の冷却や金属加工といった、中温の冷却水をお使いになられる現場にはうってつけのチラーです。昨年4月に発売させて頂いた製品ですが非常に売り上げ好調で、すでに来年度納入予定の商談も進んでいる状況です」
「エコハイブイリッドチラー FCMC55A」は2022年のグッドデザイン賞も受賞している
■自社の脱炭素化にも注力
――フロン問題に対応したチラーも好調と伺っています。
「当社の『ノンフロンインバーターチラー』は、ノンフロン冷媒であるHFO―1234yfを採用していますので、フロン排出抑制法に抵触しません。従来からある代表的な冷媒は、同法に抵触しているものが多く、保全、点検、記録など多岐にわたる項目を管理しなければなりません」
――特に顕著なニーズがあるのはどういった業界でしょうか。
「自動車関連など、従来型のチラーを多数導入しているユーザー様から高評価をいただいています。ユーザーにとって、導入台数すべてフロン排出抑制法に沿った運用をすることは、設備担当者に大きな負担がかかりますから。ノンフロンインバーターチラーは、こうした煩雑な負担を無くしています」
――貴社では製品を通した脱炭素貢献以外にも、CO2削減に積極的に取り組まれていますね。
「以前から製造工程におけるペーパーレス化に取り組んでおり、今年度は年間約30万枚の紙削減を目指しています。また自社製品を北海道から本州へ運ぶ際、以前はトラックを使用していましたが現在は海上輸送の併用といったモーダルシフトで年間100㌧以上のCO2排出量削減を実現しています。さらには、2024年竣工予定の新工場は、省エネと創エネを実現したカーボンニュートラル時代を見据えた製造拠点となる予定です」
ノンフロンインバーターチラー
(2022年12月10日号掲載)