インタビュー
日本金型協会 会長 山中 雅仁 氏
金型の価格決定力向上を
- 投稿日時
- 2026/04/06 09:00
- 更新日時
- 2026/04/10 16:15
自己肯定感が低い状況を打破すべき
「INTERMOLD2026」が4月15日から17日までインテックス大阪で開催される(名古屋開催は5月20日〜22日・ポートメッセなごや)。同展の見どころや、金型業界の中長期的な展望について、日本金型工業会の山中雅仁会長(ヤマナカゴーキン社長)に話を聞いた。

——INTERMOLDの見どころをお聞かせください。
「今回は『変革の力を結集し、世界をリードする日本のものづくりへ』をテーマに掲げ、各社が独自に磨き上げた『尖った技術』を披露します。当工業会の正会員からも100社以上が金型現物を展示しますので、具体的なマッチングや新ビジネス創出の絶好の機会となるはずです。発足当初の出展が20社弱だったことを思えば、着実に規模は拡大しています。また名古屋では『AM EXPO』を同時開催しており、『金型とAMは対立関係にある』という誤解を解消し、両技術の融合による新たな可能性を示す場にもなっています」
——喫緊の課題である「価格転嫁」の現状はいかがでしょうか。
「今年1月に下請法が改正され、ティア1層では価格転嫁への理解が浸透しつつあります。しかし、ティア2、ティア3といった下層構造では依然として道半ばです。『価格交渉を切り出すと簡単に転注されてしまう』という懸念も根強く残っています。公正取引委員会も取り組みを強化しており当工業会としてもガイドラインを策定し取引改善に努めていますが、最も重要なのは発注者と中小受託事業者の『意識改革』です。単なる『下請け』として指示を待つのではなく、優れた技術を提案する『対等なパートナー』としての自尊心を持ち、自律的に動く意識が不可欠です」
■自己肯定感の高い産業に
——今後の重点施策について教えてください。
「現在、4つの重点項目に対し、ワーキンググループを組織して具体的な予算を投じていきます。一つ目は『価格決定力の強化』です。緩やかな業界連携を通じて技術力と生産能力を底上げし、提案力を高めます。その過程でM&Aという選択肢も出てくるでしょう。サプライヤー過多という側面は否定できず、M&Aへのネガティブな印象を払拭するセミナー等の支援も行います。将来的には、グループ間で加工データを共有し、AIを活用した強力な資産化も視野に入れています」
「二つ目は『業界の魅力発信』です。ターゲットを明確に定め、ラジオ等のマスメディアとSNSを融合させた発信を模索しています。私が大学で講演した際、当初は『素形材』という言葉すら知らない学生がほとんどでしたが、熱意を持ってプレゼンした後は2〜3割の学生が『面白い』『選択肢に入る』と反応を変えてくれました。我々自身が現場へ出向き、アピールする努力が足りなかったのだと痛感しています」
「三つ目は『市場拡大(営業力強化)』です。受注に直結するポータルサイトとしての当工業会ホームページ強化を進めます。また、INTERMOLDの小間割りも、従来の地区別ではなく『お客様の目的(課題)』に合わせた配置にするなど、ユーザー目線の工夫が必要です。さらに、個社の『営業生産性』の向上も急務です。未だに『技術があれば注文が来る』という高度成長期の意識から脱却できていない企業も多い。最新の営業支援テクノロジーを活用すれば、伸び代は非常に大きい。自社の例で恐縮ですが、当社は特別なことをせずとも新規金型受注で今期は30%以上の売上増を実現しています。このポテンシャルは多くの会員企業に秘められているはずです」
「最後は『商品開発力』です。たとえば、個社のリソースには限界がありますが産学連携を強化し、大学の持つシーズを産業化に繋げる『ハブ』として工業会が機能したい。大学と共同でイノベーションを目指す試みも面白いと考えています」
——最後に、業界の長期ビジョンを。
「金型がなければ日本のモノづくりは成り立ちません。そのステータスを向上させることが当工業会の使命です。我々自身が『若者が金型に興味を持つわけがない』と卑下してしまっては、魅力は伝わりません。謙虚さを通り越し、自己肯定感が低くなっている現状を打破すべきです。私たちが自信を持って『金型は面白い』と胸を張る。その熱量こそが、次代を担う若者の心を動かす原動力になると信じています」
(日本物流新聞2026年4月10日号掲載)