インタビュー
スイデン 取締役 川合 雄一 氏
酷暑のさなかの急成長
- 投稿日時
- 2026/04/09 13:04
- 更新日時
- 2026/04/09 13:07
原動力は「人」
2025年度に過去最高売上を更新したスイデン。今夏も酷暑が予想される中、製販一体で豊富な在庫を揃え夏商戦を迎え撃つ。25年3月まで営業本部長を務め、同4月からは生産を統括する川合雄一氏に、目前に迫る創業80周年に向けた展望や戦略を聞いた。

スイデン 取締役 生産本部長 川合 雄一 氏
――史上最高の暑さが続きました。
「売上は全体で伸長。24年度も過去最高でした。ただそこへ後任の営業本部長が着任した途端、25年度は一気に20%以上も伸びました(笑)。スポットエアコンに限っても、直近3年で極めて大きく伸びています。酷暑に加え法改正による需要喚起もあります。自分たちも制御が利かない勢いでした」
――爆発的な需要に生産はどう追随した。
「実は裏話がありまして。当時は営業本部長でしたが、社長と車に乗っている時に『4月から生産を見ないか』と言われたんです。翌夏の生産計画を立てるわけですが、25年に需要が高まるのは目に見えていたので、生産本部長としてすべて自分に降りかかるとわかっていたからこそ、一気に『ぶわっ』と生産をかけました(笑)。前倒し生産で4月に潤沢な在庫を確保しましたが、それでも5月に一時切れたほど。以前は梅雨明けから盆前が需要の山でしたが、今は3~10月ずっと勝負です。秋に次年度の発注が来るほど購買意欲と時期が変化しています。我々も4月には販売を本格化し、生産も歩を合わせている。これが過去最高の売上を支えました」
――業界に先駆けたノンフロン型スポットエアコンはフロン排出抑制法の対象外です。手応えは。
「以前から自動車業界を中心に要望があった商品で、昨年は完売でした。ただ昨夏は業界全体が品薄。『スポットエアコンなら何でもいい』と、いわば“能力を問わない”注文もまざっていました。本当にノンフロンを求める顧客にどれほど届いたかは見極めが必要です」
――今夏の注力商品は。
「昨年発売したポータブルバッテリーはまだ認知が少ない。『スイデンがバッテリー?』と思うかもしれませんが目的は明確で、BCP対策です。数年前に発売したクーラーテントは官公庁等から大量に注文が来ていますが、屋外や被災地はスポットエアコンの電源がネックになる。通常のバッテリーは30分しか持ちませんが、トップメーカーの協力でスポットエアコンを約3時間動かせる仕様を開発しました。猛暑と災害は隣り合わせ。今夏はこれらを前面に出します」

スポットエアコンの長時間稼働に最適化した大容量ポータブル電源「NPB-24」
――今夏も猛暑予報です。
「前倒し生産で過去最大の在庫を用意しましたが、すでに欠品もあります。品薄だった昨年の余波から出足は好調ですが、正直、今の状況はポテンシャル以上の特需。一度落ち着くはずで、その先こそ真価が問われます」
■80周年に向けて
――競合も多い中、今後の勝ち筋をどこに。
「今日、たまたま面接で学生に『スイデンのスポットエアコンは一番だと思いますか?』と聞かれましたが、『思っていない』と答えました。一番の部分もあるけれど、学ぶべき点も多く、総合力で勝っていても甘えたり驕った瞬間にコケると思います。生産本部長として商品開発部門も見ていますが、スポットエアコンはある種、完成形に近いので改めて『難しい分野の仕事をしているな』と感じます」
――成熟商品ということですね。
「その中で勝つ原動力は、結局『人』なんです。営業は40人規模。この業界は今も昔もフェイス・トゥ・フェイスの付き合いが、認知拡大と販売機会に直結します。DXもAIも取り組みますが根本は人。この部分は決して他社に劣りません。ただ甘え驕りは禁物で、人だからこそ集められる情報を着実に積み重ねないといつかコケる。例えば今この場で交わされた、生の情報はAIで取れません。昨年も営業に7人加わり、足で稼ぐ若手も増え、面白くなってきましたね。新入社員には展示会で『今日は5個ミスしよう』と言います。キャパ以上のことに5個以上挑んだからこそ5個のミスが生まれるからです」
「開発にも『思い切ってやろう』と言っています。開発者は完璧を求めますが、自分の百点と世間の百点は別。スペックに長けた商品が売れるとは限らず、塩梅を間違えれば個人の研究と変わらない。ニーズと乖離すれば絶対売れません。昨年は開発もどてらい市会場に立ちました。商品への生の反応を見るためです。様々な企業の工場見学もしていきます。まだまだ商品は改善できるはず。その答えは現場にしかないです」
――生産本部長として現場を見て、モノづくりの強みは見えましたか。
「工場を回ると必ず足が止まるのが、モーター生産です。鋼板を抜いて曲げ、巻き線からすべて自社生産。スポットエアコン、工場扇、送風機、すべて内製モーターです。イチから十までやるのは業界で我々だけ。内製率が高いからトラブル対応が柔軟で、生産調整も利く。ただ生産能力はさすがにそろそろ限界。そこで内製を維持しつつ外部協力先も開拓し、量への対応も強化中です」
――27年に創業80周年です。展望と意気込みをお聞かせください。
「この商材に逆転満塁ホームランはありません。コツコツやるしかない。だからこそ、営業力であり人が要です。80周年に向け、社内の一体感をさらに高めたい。製販の距離が近いがゆえに、伝え方が甘い部分があったかもしれない。言わなくても様々な取り組みが全社で進んでいます。それを全方位でペースアップしたい。私が大事にしているのは『思い切ってやる、楽しむ』こと。これは現社長も言い続けている『スイデンらしさ』です。私がブレーキになったらあかんし、私がおもんない顔をしていたら、社員も絶対におもんないはず。世代交代も近づいています。自分自身も“らしさ”を活かし、グッと一本芯を持って腹を括るのが大事だと思います」
(日本物流新聞2026年4月10日号掲載)