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インタビュー

クリナップ 社長 藤原 亨 氏 
製品から体験へリフォーム市場深耕

投稿日時
2026/04/09 09:06
更新日時
2026/04/09 09:10

4月1日付でクリナップの社長執行役員に就任した藤原亨氏は、開発部門出身者として初めて同社トップに立つ。6月の定時株主総会後には代表取締役就任も予定する。ベストセラーシステムキッチン「クリンレディ」の立て直しを導いた経験を持つ新社長は、何を守り、何を変えようとしているのか、その針路を聞いた。

ふじわら・とおる。京都府生まれ。東京造形大学デザインマネジメント学科卒。1989年入社後、一貫して開発・企画部門の要職を歴任。主力商品「クリンレディ」の再建リーダーとして、部門の垣根を越え業界初の「フロアコンテナ」を開発・導入し、V字回復をけん引した。趣味は家族旅行。週末は妻の買い物の運転手を務める。同社の強みを「困難に際し全社が一つにまとまれる『団結力』」とみる。

――社長就任のお話を受けた際、率直にどう感じられましたか。

「重責だな、というのが率直な感想でした。内示をいただく際、若い感覚でクリナップを新しい方向に導いてほしい、という趣旨の話がありました。私にとっては、その『新しい方向性』とは何かを考えることが、最初の大きなテーマとなっています」

――方向性は見えてきましたか。

「まだ整理の途中ですが、1つの方向が見えつつあります。昨年、全社員を対象にアンケートを行い、クリナップらしさとして何を守り、何を新たに加えるべきかを探りました。その中で、今もあり今後も大切にすべきものとして挙がったのが、『永く愛される』と『人を大切にする』です。これは当社の土台として、これからも守るべき価値だと思っています」

「一方で、今はまだ十分ではないが、これから必要なものとして強く挙がったのが、『夢のある』『ワクワクする』という要素でした。守るべきクリナップらしさの上に、新しい期待感や高揚感をどう加えていくか。そこが、新しい方向性を考えるうえでの大きなテーマになるとみています」

――未来キッチンプロジェクトの取り組みなどが、そこにあたるのでしょうか。

「そうですね。未来キッチンプロジェクトは、その方向性を象徴する取り組みの1つだと思っています。今の商品開発の延長だけではなく、もっと先の暮らしや価値を考えようと2019年に始まった取り組みで、先が見えにくい時代において我々がどこへ向かうべきか探る機会となりました」

「実際、プロジェクトに関わったメンバーは、普段の仕事とは少し違う視点で考えることができたと思います。こうした感覚を、一部のメンバーだけで終わらせず、少しずつ全社に広げていくのが大切だと考えています。4月21日からはイタリア・ミラノで行われるフォーリサローネに10年ぶりに出展します。これもその延長線上にある取り組みです。未来キッチンプロジェクトから生まれたモビリティキッチンのコンセプトモデル『mobility Fixtures』を海外で発信し、外からの刺激も取り込みながら、社内の意識に新しい風を入れていきたいと考えています」

■リフォームを体験価値に

――2026年度は24中計の最終年度と重要な年です。まずは、足元の市場をどう見ますか。

「正直に言えば市場環境は厳しいです。人口の減少などで新設住宅着工戸数は年々下落傾向ですし、建築費は高騰しています。簡単な状況ではありません。当社としても、26年度は24中計の仕上げの年であると同時に、30年度の長期ビジョン(クリナップ サステナブルビジョン2030、以下CSV30)につながる重要な年と捉えていますが、目標数字達成へのハードルは高いと見ています。特に、CSV30の目標数値である営業利益95億円以上の達成、そしてその水準の安定的な確保は非常に高い目標だと感じています」

――対応策はありますか。

「短期的にはやはり中級価格帯キッチン『STEDIA』の数字をどう達成していくかです。昨年リニューアルした新モデルへの入れ替えをしっかりと進め、まずは計画している販売数をきちんと達成していく。加えて、STEDIAはいろいろなチャネルで販売しており、単価や利益が変動するため、それをどうコントロールしていくかが26年度の数字の達成の一番のポイントになります」

「さらに、高級価格帯キッチン『CENTRO』では、STEDIAとの差を少し縮めたライトパッケージも出しています。この2ブランドをどれだけ厚く提案できるかが鍵になります。また、24年にはシステムバスルームを『SELEVIA』『rakuvia』に刷新しました。強みのシステムキッチンを軸に、水回り全体の提案にどう広げていくかが今後の課題になると考えています」

――最後に、今後に向けたお考えを一言お願いします。

「当社が提供できる価値というのは、もっとあると思っています。力を注いでいるリフォーム分野も、現在は設備や内装を替えるだけとなっていますが、その前後にはキッチンを選ぶところから始まって、古いものを外し、新しいキッチンを収め、食器をどう収納していくかまで含めた一連のリフォーム体験がある。そこに対して、当社ができることはまだたくさんあると思っています。今でも、整理収納アドバイザーの方と契約し、収納のお手伝いを一部でさせていただいています。当社が独自に提供できる価値は製品だけではないとステークホルダーの皆様に知っていただき、一連の体験としてお客様に喜んでいただける提案を広げていければと考えています」

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中級価格帯キッチン「STEDIA」が2024中期経営計画達成の鍵を握る

(日本物流新聞2026年4月10日号掲載)