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インタビュー

パナソニックコネクト 執行役員 大塚 隆史 氏 
造船好調 新溶接機に大きな期待

投稿日時
2026/03/31 10:18
更新日時
2026/03/31 10:28

世界トップシェア目指す

溶接作業の現場において、溶接品質と生産性・効率性の両立は重要なテーマ。パナソニックコネクト 溶接プロセス事業部は、溶接電源、溶接ロボット、プロセス制御技術を軸に、安定した溶接品質を実現するシステムを展開する。長年蓄積してきたプロセスノウハウとデジタル技術を融合し、現場の省人化や自動化を支えるソリューションを提供している。

パナソニックコネクト 溶接プロセス事業部 事業部長 執行役員 アソシエイト・ヴァイス・プレジデント 大塚 隆史 氏

――25年を振り返っていかがですか。

「地域により凸凹はありますが、数字としては前年度比5~6%ほどの成長となる見込みです。前半はトランプ関税により設備投資が様子見で勢いに欠けましたが、昨年末に新商品を出して持ち直せたかなと。ただ自動車の新車種のサイクルが長くなっている印象。製造工程における溶接プロセスは、お客様の現場では一度条件を決めれば、溶接条件は変えませんので、次の次の、さらに次のモデルに向けた溶接条件を検討されることになります。期初のトランプ関税影響で生産ラインを、どの国で投資すべきかなど考慮されていた分、さらに設備投資を様子見される懸念はあります」

「中国は、内需は厳しい状況でEVへの補助金政策も不透明ななかで、勝ち組や、輸出に活路を見出すメーカなど、二輪を含め優勝劣敗の色が見えてきています。当社の中国の現地法人は、その動きにしっかり追従でき、堅調を維持できました。もう一つは造船。日本も建造量倍増という国策を出しましたが、タンカー含め世の中の船が老朽化を迎えるタイミング。現状、造船は中国・韓国・日本の三国で大半ですので、ドッグは30年超まで予約で埋まっていると聞いています。当社の中国現地法人では、新しい船の建設に向けた買い換え需要を捉えて含めて大きく回っており、増産対応したほどです。競合との価格競争が厳しくなりますが、この需要は30年まで続く見込みです」

――あらゆる業界で使える新溶接機「YD―350NR1」を出されました。

「フルデジタル溶接機Nシリーズ第3弾として、フラッグシップモデル機「NE」で実現した優れた機能・性能を継承しつつ、フルデジタル溶接機のベストセラー機「350GR3」や「350VR1」で評価の高い特長も引き継いだNシリーズのスタンダードモデルです。価格は手に取っていただきやすく大きな期待を寄せています。『溶接コンシェルジュ』機能は、熟練技能者でなくても波形ベースの溶接パラメーターを提案してくれ、状況にあう溶接条件を選び溶接をサポート。脱着できる冷却ファンや天板、側板が外しやすいケース構造でメンテナンス性も向上しています。USBでソフトウェアを随時アップデートでき、スパッタを最大81%抑える『低スパッタ』もオプションとして用意。アップデートで新素材や新工法にも対応していきます。かゆいところに手が届く1台です。次は鉄骨など中厚板の溶接に向く溶接電流500Aタイプも視野にあります」

パナソニックコネクト_NR1_image_persp_GRR1.jpg

「YD-350NR1」は電気代とCO2排出量を最大22%減らせ、初心者でも簡単に溶接条件を設定できる新機能「溶接ナビ」も搭載。オプションソフトで最大81%スパッタを低減できる

――500A機は造船現場にも使えそうですね。

「造船は大きな成長が見込める産業。先述した中国の造船現場に大量に入れている『YD―500EL3』を日本向けにカスタマイズしたインバータ式『YD―500EL3HAE』をリリースしました。頑丈さが求められる造船現場ではサイリスタ機が根強く残っていますが、中国ではほとんど省エネで小型、高速かつ高精度溶接が可能なインバータ式に入れ替わっています。当社独自の制御技術の省線化もウリ。広い造船現場は電源からケーブルを長く伸ばして使うため、3本から2本にケーブル本数を減らせれば取り回しがかなり軽くなります。従来の『CLシリーズ』とも互換性があり、そのままお使いいただける仕様です」

■溶接条件のデータ集積が肝

――溶接工程の高度化、脱技能化がますます求められます。

「溶接条件の設定はかなり複雑ですが、AIと掛け合わせれば最適な溶接条件をより簡単に出せるようになるのではと注目しています。ロボット教示もAIでもっと簡易化できるはず。溶接後の外観検査など、『AI×溶接』の領域をメーカーとしてきちんと進化させていきます」

AIに一番大切なのはデータの集積。しかし溶接のデータは無造作に世の中に落ちているものではありません。溶接機メーカーや生産技術に強いユーザーがそれぞれ蓄えていますが、価値が高いがゆえ共有されていない。溶接人材が少なくなっている中、協会団体などによる働きかけも含めてプラットフォームとなりまとめられれば一番いいのですが」

――貴社の統合溶接管理システム(iWNB)で集めることも可能では。

「今はオンプレミス環境での提供ですが、クラウド化を構想しています。クラウドを通じて機器メンテナンスの案内や、より良い溶接条件を提示するなど、お客さんにとってメリットになる形で提供したいと考案中です。データの集積が業界のスタンダードとなれば」

――中長期的な目標は。

「グローバルでのトップシェアを目指していきたい。溶接は付加価値が高い加工工程の一つ。溶接機メーカーとして新商品や新しい溶接プロセスの提案に力を入れます」




AI外観検査の立ち上げ負担


溶接外観検査「Bead Eye」のAIによる計測を進化させた新たな「M edition」がこのほど登場する。AIによる欠陥の検出と寸法の自動検出で閾値による判定が可能となり、導入時に必要となるパラメーター数を約8割削減。導入の足かせになっていた負担をグッと減らす。現行のBead Eye比で計算処理時間が約6割減るなど、高速処理も可能になった。



(日本物流新聞2026年3月25日号掲載)