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インタビュー

山田マシンツール 代表取締役社長 山田 雅英 氏 
自動旋盤使った究極の工程集約を日本へ

投稿日時
2026/03/31 09:39
更新日時
2026/03/31 09:43

山田マシンツールは各種産業用マーキング装置を製造販売する一方、輸入品を含めた工作機械・各種工具の販売、FAも担う。精密部品の加工現場におけるメーカー、商社、プロセスインテグレーターの3つの顔をあわせ持つと言っていいだろう。近年、精密自動旋盤や複合加工旋盤1台で様々な加工をこなすSMAP(Single Machine All Processing)工法の本格提案を始めた。

――貴社の経営環境はよくなりそうですか。

「売上、利益とも今年は昨年を上回ると思います。ただ当社は工具・装置の輸入が多く、円安で利益が圧迫されるかもしれません。為替次第のところがあります」

――近年、SMAPと呼ぶ工法を提案され、自動盤1台でホブ加工や内径キー溝加工、ねじ転造など様々な加工ができるそうですね。

「はい。SMAP工法とは、CNC工作機械に様々な特殊加工を可能にする工具を搭載することで素材から完成部品までをワンプロセスで加工完結させる革新的な工法です。きっかけは弊社のタイ子会社のお客様です。電子部品の加工を主業とするお客様が欧州の内燃機関部品に参入される際に頂いた、『他社で複数の工作機械を駆使して製作されている部品を電子部品のようにバー材から1台の機械で全加工したい』との要望をSMAP工法で実現したところ、『大幅なコスト低減と品質安定性の両立』が評価されて全面的に受注されました。その後もこの工法をAI水冷、ドローン部品など、多くの案件でご採用いただいています。また、同工法でインプラントやボーンスクリューなどの精密医療機器に参入されているお客様もいます」

――貴社が用意されたアタッチメントはスイス製でしたね。

「スイスの弊社仕入先はお客様が高級時計産業ですから、提供するものは非常に精密です。日本のクォーツに対抗して機械式で高付加価値化を進めてきたスイス時計の部品は非常に微細で、精密自動旋盤による『掴み換えゼロ』の加工でないと量産できません。弊社仕入先はそのニーズに応えて長年に渡って高精度なアタッチメントの種類を増やしてきました」

――メリットについてもう少し詳しく教えてください。

「まず第一に省人化と品質安定性の両立です。工程間の『ワークの掴み換え』こそがコストとリスクの発生源です。SMAPであればハンドリングを原因とする品質上の懸念を機械精度で保証でき、操作や検査の要員の削減と不良率の低減が高レベルで両立します。ロボットやカメラによる省人化が注目されがちですが、当社はそれらは掴み換えを極限まで削減した後に検討するべき課題だと考えています。次に、工程間の滞留がないため、仕掛在庫は不要になります」

――しかもそのアタッチメントは後付けできるので、設備投資を大幅に抑えられそうです。

「中期的な設備投資の低減が可能です。弊社のアタッチメントは決して安くはありませんが、先述のコスト低減効果が上回るため回収は容易です。また、汎用設備を使用するので、生産量に応じた増設や余剰設備の他プロジェクトへの振替が可能になり、機械という固定資産が流動化します。加えてアタッチメント自体も類似の加工要素に転用可能です。つまり、初期投資より効果のほうがはるかに大きいのです。現在は、日本社会がデフレマインドに侵されている状況ですが、これまでのように眼の前の案件に対する初期投資額の多寡にこだわり過ぎると長期的な競争力を失うことになりかねません」

■高まる高気密性部品の加工ニーズ

――SMAP工法を広める上でどのような課題がありますか。

「まだ認知されていない工法なので、今後は新規案件の検討過程の上流でご相談頂けることが必要です。特に特殊な加工要素のある案件については、当社と仕入先の経験とノウハウから最適なご提案が可能です。当社の仕入先は複合加工の知見が豊富で、実績のない機械や加工の組合せに対しても試作に間に合うように設計製作する柔軟性もあります。修理等アフターサービスについても当社内で迅速に対応できます」

――新工法を使った複雑加工のニーズは増えそうですか。

「これからの加工部品のキーワードは『気密性』です。水漏れが許されないAIデータセンターの水冷システム部品、今後需要の回帰が予測される内燃機関分野では噴射圧の上昇や鉄すら透過する水素燃料の到来など全てのテーマで気密性が要求されます。その結果、これまで2〜3部品で構成されていた部品の一体削り出し、材料の難削材化、要求精度の厳格化などが同時に求められています。そこでは、従前の掴み換えを前提とした工程設計では量産品としての歩留まりの確保が難しく、今まさにSMAP工法がその解決策として必要とされる環境になってきました」

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SMAP工法は工程移動による不良をゼロにする。


部品加工業の日本回帰に貢献


タイの顧客は、SMAP工法には日本人ならではの独創性と感性が必要との意見があるという。一方で、この工法で加工から労務が解放されれば世界中どこで作ってもコストは大きく変わらない。山田社長は「労働力が不足し円安が進む日本でこそこの工法を活用いただき、次世代技術で必要となる複雑な高付加価値部品の国内生産を伸ばすことで日本の加工業界を元気にしたいという強い思いを持っている」と言う。



(日本物流新聞2026年3月25日号掲載)